自分では最高の一曲のつもりで作った曲を聞いてもらったら「スーパーの店内BGMみたい」と言われるとちょっとがっかりしますよね。歌がない曲をインスト曲といいますがが、「かっこいいインスト曲」と「スーパーの店内BGM」との差はどこにあるのでしょうか?
今回はその差を明確にするために7つの法則にまとめてみましたが、特に「音の派手さ」の項目で書かれていることは、DTM初心者にありがちな思い込みについても書いてあるので、ゆっくりとしっかりと読むことをオススメします。これらを意識して取り組むと曲にメリハリが生まれ、野暮ったい感じのインスト曲にはならなくなります。
ゲームインスト曲と普通のインストの曲の違い
ゲーム曲やBGM的アプローチなのか純粋なインスト曲なのかここをはっきりさせておくのが重要です。ゲーム曲の場合はどんな曲でもジャンルとシナリオのバランスのBGMとそれに伴う音楽の情報量を意識する必要があります。
例えばアドベンチャーゲームの場合はシナリオにそってゲームは展開します。その場合にBGMが何十もトラックがあってあっちこっちに音が飛び回るような派手な曲の場合「キャラ同士がおしゃべりしている情報量よりBGMの情報量の方が勝ってしまいます。これではプレイヤーがゲームに集中できないのでゲームのBGMとして成り立ちません。
アクションRPGのような曲の凡用曲(街など)の場合はグラフィックやキャラを動かすという視点もあってゲームから得られる情報量はアドベンチャーゲームに比べると多いです。なのでアドベンチャーゲームの凡用曲よりまだ情報量を増やしたフレーズやアプローチのほうがゲームの世界観をもり立てることができます。
純粋なインスト曲の場合は、むしろ一般的な歌ものの構成などは無視する方がリスナーに感動を与えられるケースが多いです。そもそも歌ものと同じにしてしまうのであれば「歌もの」を聴けばいい話になります。インストである以上歌ものにない魅力を作れないとインスト曲としての面白みはありません。
ゲームBGM系の場合は世界観構築のお手伝い
インスト曲はアプローチ自体が冒険しているかどうかで楽曲の良さが引き立つ
歌詞がないのでプレイや音色自体に強いメッセージ性が必要になる
インストと歌ものの一番の違いは「歌詞」です。歌詞は「あなたが好き」と言えば「あー好きなんだな」と誰でもわかりますが、インスト曲ではその「あなたが好き」をフレーズで伝える必要があります。つまり音色やフレーズ自体にそれを想起させるような意味合いを作り込むことがインスト曲のもっとも難しくもっとも楽しめる要素と言えます。
ダイナミックレンジはあまり気にしない
コンプでダイナミックレンジを少なくするのではなく整える程度にしします。それゆえにスケールや構成ごとに音量差が生まれますが、「音量の差」自体にも意味があるようにするなどの工夫が許されるのがインストのメリットでもあります。これは言葉を届ける必要がない分、ダイナミックレンジを大きくとることでスケール感を大きくすることが可能になるからです。
曲を単調にしない
先程もお伝えしましたが、歌ものと同じ構成にする必要はありません。歌詞の起承転結に縛られる必要がないので、リスナーを惹きつけられる自信があるならば「同じフレーズを引き続けるのもOKです」その場合、音色などの変化、オクターブで変更して聞かせる。などのアプローチが重要になります。
派手な音作り(重要)
聞いていて不快にならない程度に派手な音作りが許されるのがインスト曲の良いところです。主役であるインストが一番目立っているかどうかです。
派手といえば「高域が抜ける」という印象を持っている人が多いですが、実際は「情報量」としての認識で捉えるのが一番です。その視点から言うと「空気感」こそもっともわかりやすい情報量と言えます。この情報量がないと「スーパーの曲」になります。では空気感はどのようにすれば得られるのでしょうか?例えばギターで言えばアンプサウンドを取り込むときにアンプからマイクの距離を遠くすることで多くの空気感を取り込むことができます。ドラムでいえばOHやROOMの量も「空気感」=情報量です。つまり「オンマイク」ではなく「オフマイク」気味の音作りをするようにします。
そしてそれらをコンプを通すことでその情報量をコントロールします。逆に言うと「空気感がない音」にはコンプをいくらかけても情報量は得られません。アンプシミュの中にオフマイクとオンマイクの細かな調整ができるものもあります。
また、シンセの場合はルームリバーブなどでそれらしさを作ることができます、そのままだとキレイなルーム感になることが多いので、少しだけ歪ませてやるのがポイントになります。歪ませるポイントもサチュレーターからディストーション系のプラグインまでありますが、空気感による密度をコントロールできるのであれば任意で選ぶのが一番です。
ギターやベースを簡単に太くしたいときに便利!Berzerk Distortion
EQではなくサチュレーターを使うとMIXレベルが上がるかも!
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楽器ならではのテクニックが活かせるメロディ作り
ギターでいうところのチョーキングやアーミングなどの奏法はインストらしさの代名詞です。なぜならば連続する滑らかな音の変化には「人間味を感じる」からです。シンセサイザーではベンドで代用できます。しかしシンセのベンド幅は1音程度になっていることが多いので、ダイナミックなフレーズを作るためにも5音くらいベンド幅をもたせている方がスケール感が大きくなります。ベンドとビブラートの設定でより「ボーカルがいなくても問題ない」レベルの主役を作るのが望ましいです。
ミッドレンジを制するものがインストを制する
ボーカルが有無によってMIXが変わります。それは「歌詞を届ける必要がない」ためです。ボーカルはミッドレンジを大きく陣取りますが、インスト曲の場合はそこにインスト特有の楽器が入ります。ボーカルのバックに甘んじてた楽器が全面にでるわけです。当然ミッドレンジを自由に扱えるので、歪や音の作りの制限はありません。逆に言えばミッドレンジが適当だとインストらしさにはなりません。ミッドレンジが適当だと「スーパーの曲」になってしまう原因です。
定位に関して左右で異なる楽器を配置
ボーカルの定位は基本センターですが、インストではそれがすべではありません。2つのフレーズで対旋律を作る場合はLとRで分けてしまうのもインスト曲独特の定位と言えます。冒険心がないとこういう定位は思いつきませんね。
まとめ
せっかく頑張って作った曲ですからそこには意図があって聞く人に伝わってほしいと思いますよね。その意図とは「冒険心」「ミッドレンジ」「音の派手さの理解」これらのバランスが上手く取れている必要があります。それがとれていない曲は「スーパーの曲」と思われてしまうことが多いです。これらの法則はシンプルで効果的なのでぜひ意識してみてください。
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