キックはあらゆる楽曲の要です。とくにEDM系の曲ではキック一発で何億という価値がでるほどキックの責任は重大です。
そんなキックに最適のVST プラグインがKICKBOXです。とにかくだれでも扱えるほど超簡単で逆に言うと「たったそれだけ?」というくらいの地味なパラメーターですが、こいつを使えばやせることなく極悪爆発大低音なキックサウンドを作ることができます。
つまりKICKBOXを使えばフロアをガンガンに揺らしてみんなをアゲアゲにするキックを作れるプラグインです。
soundspot KICKBOXとは
基本はEQとコンプによるチャンネル・ストリップであり、つぎの3つの帯域をQカーブと +3dB +6dB +8dBの幅でコントロールします。
- WARMTH 50Hz 90Hz 110 Hz
- BOXINESS 180Hz 320Hz 430Hz
- CLICK 1kHz 1.5kHz 2kH
ユニークなのは中域にあたるBOXINESSだけが-6dB -8dB -12dBでカットになっている点です。またこれらのWARMTH BOXINESS CLICKはアイコンをクリックすることでミュートにもできます。このEQとコンプで音作りをしていくわけですが、実は通すだけで音がめちゃめちゃかわります。
そのサンプルデモは後ほどお伝えします。
システム要求
Mac
- OS X 10.7 and later (32 & 64-bit)
Formats:
- AAX
- Audio Units (AU)
- VST
- VST3
Windows
- Windows 7 and later (32 & 64-bit)
Formats:
- AAX
- VST
- VST3
3帯域へのアプローチについて
これは近年流行りのドラムの音作りのアプローチです。このアプローチなくしてEDM系のキックはつくられていないと思うほど、3帯域アプローチはよく使われています。ダンス音楽のキックは昔は909だけの時代もありましたが、上モノの情報量が増えることでそのバランスを取る意味からキックの情報量のコントロールとして3帯域へのアプローチによる音作りが浸透していったのではないかと思っています。
soundspot KICKBOXレビュー
実はコンプがエグい
正直、EQによる帯域別のアプローチであればそれほどこのプラグインは魅力的なものとは言えませんが。実はこれに付いているコンプがかなりエグい太さを作り出してくれます。コンプのパラメーターは基本的なレシオ スレッショルド アタック リリース MAKE UP(ゲインコントロール)になります。
むしろEQはおまけでこちらが本命ではないか?というくらいかかり方がエグいです。コンプによるサウンド変化がわかりやすいのでコンプ初心者が音の変化を掴むのに向いているかもしれません。
サンプルデモ
キック音源の代名詞KICK2を使って試してみます。まずは何もかけていないKICK2のデフォルトの音からです。
さすがKICK2です。これだけでもいい音なのです。
上記でもお伝えしていたように、「通すだけでも音が変わる」のを聞いてください。
コンプもEQも何もかけていないのにこの変わり方です。もはや「ナチュラルコンプ」とかそんな次元ではないです。通すだけでガチのサチュレーションが味付けされます。
それほど悪くない変化です。質のよいサチュレーションです。
これにコンプで音を整えるとこんな次のような感じになります。
この「ズン」の部分はリリースでもわかりやすく変化してくれるので好みの長さを調整しやすいです。
ちなみにこの段階ではEQは通していません。コンプだけでもかなりの太さを作ることができます。ちなみにEQをオンにするとこんな感じです。
かなりローエンドが強調されます。音の質感が以前紹介したPunchBoxに似てくる感じです。もちろん普通のEQとコンプを使っても近い雰囲気を作ることはできますが、キックの帯域に特化したコンプなのか低域が痩せないのは有り難いです。
KICKBOXから学べること
注目すべきはWARMTHの周波数帯域50Hz、90Hz、110 Hz です。基本的なキックに使われる周波数がまとめられているのがわかりますが、気をつけたいのは「OKわかったぜ!他のEQでもこれを使え!ってことだね」と思うかもしれませんが、先日もお話したように、これらのEQの周波数がこれから使おうとしているキックにどのような影響を与えるかを理解することで他のEQでも応用が聞きます。例えば50Hzですが、ここは曲に重みを与える周波数でもあります。
しかし例えば50Hzが弱いキックはここをむやみにあげても意味はありません。もともとない周波数は15dB持ち上げてもマイナスからスタートしていることを理解する必要があります。もしないのであればサイン波などを使って補う必要があります。そのうえで「あとどれくらい50Hzを持ち上げるのか」を考えるようにすることで、適切なEQ処理にが可能になります。
そしてこの周波数帯域はそれほど大げさに持ち上げるものではありません。だからこそKICKBOXの周波数変更可能が3dBと6dBと8dBという数値に収まっているのです。つまりKICKBOXでは8dBを超えるEQ処理を想定しない。むしろ「想定する必要がない」と考えているのがわかります。
ちなみに50Hzの音はおよそG1になります。つまりとても低い「ソ」の音です。90Hzはおよそ」F2「ファ」の音になります。A2「ラ」の音です。近年のEDMではキックの音にも音程を求める傾向があるので、サイン波などで音を作り込む場合はこの周波数も参考にするのが良いかもしれません。
BOXINESS 180Hz(F#3) 320Hz(E4) 430Hz (A4)(どの周波数もピッタリではなくおよそです)この周波数帯域は抜けにつながる周波数帯域でもあります。ここでキックが必要以上にこの帯域が入っている場合は削る目安として考えることで質のよいキックを作ることができる。だからこのBOXINESS はマイナス(カット)にしているのがわかります。
このように「なぜこの数値なのか?」ということを考えたときに目的から逆算する考えをもってプラグインを触ることでより深く理解できます。
誰のためのプラグイン?
KICKBOXというだけあってやはりキックに拘りをもつ人に使ってほしいところですが、実際拘る人はもっと複雑プロセスでキックを作り上げていくので、
- 突貫工事的な太さを得られるキックがほしい
- えげつないコンプで太さを作りたい
こんな人に向いているように思います。とくにえげつないコンプサウンドはかなり需要があるタイプの音だと思うのでコンプ狙いでも使ってみるのもよいかもしれません。
まとめ
とにかく通すだけで音が太くなるわかりやすいプラグインですが、それと同時にコンプの音の変化がわかりやすいので、コンプの音質の好き嫌いは覗いたとしてもコンプの習得にも役立つプラグインです。簡単でシンプルなキック調整プラグインKICKBOX思いの外使えて音の変化に楽しめるので重宝します。
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