どんなに単体で聞いたときにかっこいいキックやスネアであってもオケと一緒にしたら埋もれてしまっては意味がありませんよね。「ドラムのバランスはなんとなく取れたけど混ぜると埋もれる」こんな悩みを解消するための方法はゲートプラグインの使い方が重要です。
ここではキックとスネアが埋もれないためのゲートプラグインやエキスパンダーの使い方について説明します。
埋もれる原因
埋もれる主な原因は次の3つです。
- マスキング
- アタックの有無
- 余韻&音の被り
マスキング
これは先日も少しお話しましたが、ミックスはマスキングとの戦いです。マスキングとは以下のことをしめす言葉です。
二つの音が重なったとき、片方がかき消されて鳴っているのに聞こえないという現象が起こります。これをマスキング効果といいます。マスキング効果は、周波数が近ければ大きくなり、周波数が低い方が、他方の音をマスクする効果が大きくなります。
日本騒音調査より引用 https://www.skklab.com/archives/6520
ギターやベース、スネアなど帯域的にかぶっている部分がマスキングしている部分といえます。抜けないという場合は、出来る限りお互いの楽器の居場所を譲り合うアレンジが大切です。

アタックの有無
マスキングされていてもアタック成分があればその存在を確認することができます。
キックやベースを感じられるのはアタック成分があるからです。これがないと「何かがなっているけど何かはわからない」という存在の音になります。
このアタックの周波数はある程度抜ける音なのでわりかし聴こえることが多いのですが、当然他の楽器でマスキングされる場合もあるので音色選びとそれを活かすことができるアレンジが重要になります。
余韻&被り
キックとスネアは人によって余韻が少ないと感じる人がいるかもしれませんが、音色によっては余韻(リリース)が残ります。特にアコースティック系ではその余韻自体がも音色要素の1つとしてとらえることができるので、むやみにカットすればよいといわけではありません。
しかし、この余韻をそのままにしておくと音の濁りや抜けの原因にもなります。なぜなら小さい余韻であってもそれがトラックコンプや、バスコンプなどで大きくなってくることで他のサウンドに影響が出てくるからです。
余韻と同じくらい重要なのが生ドラムの場合は他のパーツの被りが入ってくることでサウンドメイクの邪魔になる可能性があります。可能性という言葉を使っているのは決してかぶりは悪いだけではなくその音も含めてドラムサウンドになるのですべてを取りきらなければいけないという話ではありません。
今回はこの余韻と被りについて詳しく見ていきたいとと思います。
タイトにするかデッドにするか?
余韻を消すということは音が短くなるような印象になります。その場合タイトになればビートは明確になりますが、その分ドラムサウンド特有の荒々しさがなくなるので、自分の楽曲をどのような雰囲気にしたいのか?という意図は明確にしましょう。
被りの取り除き方
キックの場合
まずキックにゲートかエキスパンダーをインサートします。
ゲートとは不必要な音を取り除くエフェクターです。使い方としては次のような場面で効果的です
- キックやスネアに入り込んだ他の各パーツの音を取り除く
- ギターで弾いていないときにノイズを取り除きたい
ちょっと応用的な記事ですが、こちらに記事でゲートについて説明しているので参考にしてみてください

エキスパンダーはかかり方が甘いゲートだと思ってください。
ゲートはスレッショルドを超えていない音を完全に消しますがエキスパンダーはスレッショルドを超えていない音は小さくするだけです。
ゲートでは音色によって意図どおりにゲートが閉じなかったりするために音が途切れてしまう可能性があります。そういうときはゲートよりエキスパンダーの方が使いやすいです。サンプルで確認してみます。BFD3のキックに被ったスネアやハイハットの音をエキスパンダーとゲートで取り除いてみます。
0:00〜0:03バイパス
0:04〜0:06エキスパンダー
0:07〜0:09ゲート
0:10〜0:13バイパス
ドラム音源の場合は設定で被りを削除することもできますし、ドラムソフト音源ではリリースの調整ができるものもあるので無理してゲートやエキスパンダーを使う必要はありませんが、マルチ音源に入っているドラムの場合は調整できないので、覚えておいて損はありませんが、基本的には生ドラムに適した抜けの調整です。
今回は私の求める音の傾向がエキスパンダーだったのでそちらを使うことにしました。
ゲートを使う時の注意点
ゲートではスレッショルドを下回った音を強制的にカットします。そのためキックのふくよかさを感じる余韻をなくしてしまう可能性があります。そうなった場合は、リリースを使って調整することで必要な余韻を消さずにすみます。
いかにキックのふくよかさ「胴鳴り」をコントロールしつつ、不必要な余韻をカットというのが腕の見せどころとも言えますが、音の輪郭がわからなくなりそうであれば、イコライザーでアタックである5kHz付近をブーストしコンプをガッツリ(10:1〜20:1)の間で設定すると、バスドラムの抜けがよくなります。
スネアの場合
スネアも基本被りを減らすのと余韻のコントロールをゲート及びエキスパンダーで調整します。この場合コンプで-5dB〜-7dBくらいのリダクションを目安にして、100Hz〜150Hzをブーストすることでスネアのビートを感を強調できる音色になります。
こえらを踏またサンプルが以下のものになります。
ポイントは0:00〜0:12はスネアに余韻があって少し奥に配置されいているように感じところそれが0:12〜0:19ではかなり前に押し出されているところに注目してください。
0:00〜0:12(エキスパンダー、コンプ、イコライザー、バイパス)
0:12〜0:19(エキスパンダー、コンプ、イコライザー)
0:20〜0:26(スネアにリバーブ)
使用したプラグインと設定
設定数値は今回使用した数値ですが、あくまで目安です。音色やアレンジなどによって変わるので参考程度にお考えください。
エキスパンダー
キック | スネア | |
スレッショルド | -24.5dB | -26.0dB |
レシオ | 0.5:1 | 0.57:1 |
ゲイン | +7.5dB | +8.5dB |
ニー | 1.0 | 1.0 |
アタック | 0.0ms | 0.0ms |
リリース | 2.0ms | 98.0ms |
コンプ
キック | スネア | |
スレッショルド | –22.0dB | -32.0dB |
レシオ | 19:1 | 4.6:1 |
ゲイン | 0dB | 0dB |
ニー | 0.7 | 0.7dB |
アタック | 23.0ms | 16.5ms |
リリース | 5.0ms | 32.0ms |
イコライザー
キック | ゲイン | Q |
158Hz | -2.5dB | 0.79 |
6600Hz | 9.5dB | 1.00 |
スネア | 0dB | 0dB |
86Hz | 24dB/Oct | 0.71 |
205Hz | 4.0dB | 0.83 |
スネアにかけたリバーブ
Arturia Rev Plate-140
Drive | -13.0dB |
Model3 | DECAY TIME2 |
BLEND WET | WIDTH 100 |
PRE-DELAY | 50ms |
さいごに
抜けるキックや埋もれないスネアに重要なのは次の3点でした
- マスキング
- アタックの有無
- 余韻&音の被り
とくに、今回は余韻にテーマを当てましたが、余韻を上手くコントロールすることで音を簡単に前に出してくることができます。余韻をコントロールしないままコンプを使うと、奥行き感のある音のまま前に出てくる感じになります。
それを意図としているのであれば問題はありませんが、分厚いオケの中でスネアやキックを上手く抜けさせるためには余韻&音の被りに注目することで問題を解決できる可能性があります。
是非試してみてください。