楽曲レベルを上げる方法は色々とありますが、簡単で効果的なのは各楽器の発音タイミングをあわせるだけで見違えるように曲がよくなります。たくさんのソフトシンセを使っていながらエンベロープはなんとなくで扱っている人は結構いますが、実はエンベロープの設定で重要なアタックタイムがソフトシンセによって違う場合があるのを知っていますか?
似たようなエンベロープにしても実際は発音タイミングが微妙に違います。その結果タイトなタイミングを必要とする曲などではms単位でタイミングがバラけてしまいコンプが意図しない形で反応し、その結果マスタリングにも影響する可能性があります。なので今日は単純だけど奥の深いソフトシンセのエンベロープのアタックの話とその後のバウンスによるタイミングを意識することの重要性についてお話したいと思います。
エンベロープとは?
日本語で包絡線(ほうらくせん)という意味アタック、ディケイ、サスティン、リリースからなるソフトシンセのパラメーターのことです。(ソフトシンセによってはサスティンがない場合もあります)エンベロープの言葉の意味はざっくりとまとめると次のようになります。
音量ゼロの状態から最大音量アタック・レベル(Attack Level)までかかる時間をアタック・タイム(Attack Time)
アタックレベルに達した音が減衰し始める時間をディケイ・タイム(Decay Time)
ディケイ・タイム移行の音量変化のない時間の状態をサステイン・レベル(Sustain Level)
サスティン以降に音が消えるの時間をリリース・タイム(Release Time)
しかし、今回はアタックタイムのお話なのでアタックタイムだけ覚えてください。
表現の意味においてエンベロープはオシレーターより重要
ソフトシンセの多くは「何百のオシレーター(ウェーブテーブル)を搭載していることを売りにしているものが多いですが、実際のところそのオシレーターの生殺与奪を握っているのはエンベロープと言えます。なぜならば、エンベロープが設定されていないオシレーターサウンドには時間軸が存在しないために表現の幅がありません。もちろん機械的な表現を目指したエンベロープを設定しないという意図を考えている人もいますが、そうでないのであれば音色に何かしらの変化を与えることを目的とするならばエンベロープの設定は無視できません。
そのなかで音色の一番最初の特徴を決めるアタックタイムはタイミングにおいても重要です。なぜならば、アタックタイムが適当だと最大音量に到達するまでの時間に意図が発生しないので、音色のメッセージが伝わりにくいものになります。
ソフトシンセによってエンベロープは違う
多くのソフトシンセはデジタルの特性を生かしてアタックタイムが0msになっていますが、エミュレーションするハードによってはアタックタイムは異なります。
Jup-8 V3
アタック0ms〜6164ms ディケイ0ms〜34625ms サスティン0〜1.000 リリース0ms〜40194ms
Prophet V3
アタック0.15ms〜7400.00ms ディケイ0.50ms〜11000.00ms サスティン0.00〜1.00 リリース0.50ms〜11000.00ms
Modular V3
アタック0ms〜265s ディケイ0ms〜265s サスティン0.00〜1.00 リリース14ms〜471s
MIni V3
アタック0.52ms〜18s ディケイ0ms〜26.88s サスティン0.00〜1.00 リリースはオンとオフの切り替えの
ちなみにMIni V2の場合はアタック0ms〜250s ディケイ0ms〜250s サスティン0.00〜10.00
V2とV3の違いはオシレーターの雰囲気だけが違うと思っていたのですが、アタックタイムがかなり違いますね。これで下手にコンプをかけようものならば大変なことになりそうです。
ソフトシンセによっては具体的な数値化されないものがあります。(MASSIVEなどは数値化されていません)その場合は耳を頼りにするしかありませんが、具体的な数値がわかるのであれば、参考にした方がタイトなタイミングを作る目安にできます。
またアタックタイムが遅いということはそれだけコンプなどのプラグインの掛かり方にも影響が出ます。そういった意味でもなんとなくの感覚でアタックタイムを決めるのは音楽に悪影響を及ぼす可能性があるので注意が必要です。
書き出すタイミングを注意する
ソフトシンセが違えばアタックタイムは異なるケースがあるのがわかりました。また、同じアタックタイムでもオシレーターの倍音出方によってタイミングが異なって聞こえるケースもあります。
次にそれらのソフトシンセをバウンス(書き出す)するときにDAWによるものか、ソフトシンセの仕様なのかわかりませんが、書き出されたソフトシンセはタイミングが違うものもあります。例えばLOGICでMASSIVE、Jup-8 V3 TRITONは以下のようなタイミングで書き出されます。
MASSIVE
Jup-8 V3
TRITON
ソフトシンセでシビアにアタックを調整しても、書き出し時でここまで変わるケースもあります。これら3つのタイミングをあわせることで、マスタリングのクオリティも変わってきます。意図がない限り発音のタイミングは合わせる方がよいです。
まとめ
エンベロープのアタックのお話とバウンス時の書き出し時の話は関係のない話ですが、タイミングという点においてクオリティの影響するものなので同じテーマで扱いました。楽曲やミキシングのクオリティアップを目指している人はソフトシンセの発音タイミングの要であるエンベロープを疎かにせずにしっかりと調整しそれらを書き出したあとのタイミングも揃えるとより聞きやすく伝わりやすいサウンドになります。
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