- ObsessionとOB-Xa Vというのはどちらも同じシンセをエミュレーションしているらしい。
- どっちの方が音がいいのかな?
- ネットの噂ではObsessionらしいぞ
どちらがいいかはあくまで主観です。最後は自分の好みで決めるのが1番ですが、もうちょっと詳しい情報が知りたいというマニアックDTMerのためにマニアックな視点で2つのソフトシンセの魅力を語ってみました。
Obsessionとは?
キングオブmoogエミュレーションと言われているLegendを始めVVA, Wavetable and FM SynthesisでおなじみのDUNE3などを作っているSynapse Audioが出してきたOberheimのOB-Xaをエミュレーションしたものです。
照らし合わせたのか、それとも偶然だったのか、ArturiaがOB-Xa Vを発売した数日中にSYNAPSEから同じOB-Xaをエミュレーションしたソフトシンセが出るということでSNS界隈がざわつきました。
ちなみObsessionの意味は執着です。
さて冒頭でもお話した「ネットの噂ではObsessionらしいぞ」の理由はLegendのエミュレーションレベルがArturiaのmoogエミュレーションソフトシンセMini V3より音の太さに定評があったからです。
OB-Xa Vとは?
アナログシンセのエミュレーションで有名なArturiaが出した。OberheimのOB-Xaのエミュレーションソフトシンセです。Arturiaのシンセは音だけではなくGUIにも細部までこだわっているのも特徴的です。
↑実機OB-Xa V
↓Arturia OB-Xa V
↓SYNAPSE Obsession
両者の違いをGUIから見ていくとOB-Xa Vの方が実機に近いGUIになっています。一方Obsessionは簡素に纏められた感じです。どちらも使い勝手には代わりはなく。
Obsessionの方が鍵盤部ないぶんすっきりとしています。
音作りにはどちらが良い?
同じシンセをエミュレーションしているので基本的なパラメーターは同じですが、音作りに関してはObsessionの方が上になります。なぜならば、Obsessionはオシレーター毎に「ピッチ、フィルター、エンベロープ」すべての挙動がコントロールできます。
本来であればフィルターやエンベロープの変化の割合は基本一定です。エンベロープのアタックをゆっくりにすればそのゆっくりの上昇する速度は変わりません。ですがObsessionはその速度等までもコントロールできますし、フィルターの開閉速度なども自在にコントロールできます。
そしてバックパネルを開閉するとマトリクスやエフェクトによる音作り、そしてSYNAPSEお得意?のサチュレーションとアナログシンセの挙動をコントロールするORGANICというパラメーターがあります。
このORGANICによる音のゆらぎが実に気持ちよいです。OB-Xa Vにはこれと同じ機能はありませんが、Function機能を使ってオシレーターを揺らすことで近い効果を得ることは可能です。
このことからわかるのは
- Obsessionは究極のカスタマイズOB-Xaを作り上げることができるソフトシンセ
- OB-Xa Vは実機の再現性を目指したソフトシンセ
ということが言えます。
ではここからもう少し深くお互いの違いを見ていきたいと思います。
今回できるだけお互いの音の違いを詳しく見ていくため音量も同じレベルにし、音作りに影響がでるようなパラメーターは基本すべてオフにしています。
DTM初心者の場合音作りの勉強をするときはできるだけ何ない加工されていない状態から1つ1つのパラメーターの位置を確認しながら作ることで音作りの基礎力が向上するのでオススメです。
8VCOオシレーターの挙動はほとんど同じ。
アナログシンセはデジタルシンセとは異なり発音するたびに少しずつ音が変わります。その音の変わり方が「アナログシンセらしい」と評される要素の1つです。
OB-XaもObsessionも8VCOの挙動による音の違いは再現されています。挙動による音の違いとはサンプル音源などで使われる8RR(ラウンドロビン)のような効果になります。
上記の動画では8回でループしているように見えますが、実際は発音させるたびにランダムに音が変化します。
音質の違いについて
シングルオシレーターの時はそれほどの違いはありませんが、2VCOを使用することでオシレーター同士の干渉を意味しているのかObsessionと比べるとOB-Xa Vの方が高次倍音が多いです。そのため音が明るく感じられます。ただ「高次倍音が多い=音が良い」というのは1つの見方であってそれが音色の良さの真理ではありません。
赤がOB-Xa V 緑がObsessionです。
パンニングも基本的に同じ
実機OB-Xaの特徴として、当時はモノラル出力当たり前の時代にステレオ出力が可能でした。その理由が、8のオシレーターにパンニングを調整できる機能があったからです。この機能によって、広がりのあるブラスやパッドなども得意としていました。
実機では両サイドのウッドパネルの右側にパンニング調節機能があります。OB-Xa Vにもパンニングの調整は鍵盤部のすぐ上にありますが、わかりにくいので、もうちょっとわかりやすくしても良いのでは?と思ったりもします。
SPEADの広がり方に癖が見受けられます。Obsessionでは音が少し後ろに下がる印象を受けるのに対して、OB-Xa Vは広がりながらも前面にへばりつくような
印象のサウンドになります。両者ともSPREADは12時あたりにしていますが、それ以上の広げ方は好みの世界だと思います。
UNISONの違い
UNISONリードベース的な音を作って比較してみました。またUNISONはCPU負荷がかかる音色です。
この音色からCPU負荷分散はObsessionの方が上手く出来ているのがわかります。
どちらも質感は近くオシレーターの挙動による音の違い程度でどちらか一方が秀でているという印象はありません。もう一つ同じフレーズでレゾナンスを使ったシンセベースです。
設定の違いもありますが、Obsessionの方がフレーズが聞き取りやすい感じがあります。ですが音の硬さではOB-Xa Vと言ったところでしょうか?
両者のCPU負荷の違い
- パソコン Macmini2018
- CPU Corei7(i7-8700B)6コア HT使用時12コア 3.2GHz/ターボブースト(TB)使用時4.6GHz
- メモリ 32GB
- システム OS10.14.6 Mojave
- Audio/IF Motu896HD
- バッファー 256
- DAW LogicProX10.5
UNISON等は使わずにデフォルト設定時の純粋な2VCOによるCPU負荷チェックです。
負荷逃しというのは、インストが入っていないトラック(オーディオトラックや空トラック)などを選択することでCPU負荷を分散することができることを私が個人的にそう読んでいるだけで正式な言い方は他にあるかもしれません。
Obsession CPU負荷
単音メロ
通常負荷
負荷逃し
2音メロ
4音コード
8音コード
OB-Xa CPU負荷
単音メロ
通常負荷
負荷逃し
2音メロ
4音コード
8音コード
負荷チェックをしてわかったのは、両者ともオシレーター波形(SAWやPLUSE)を追加した程度では負荷は変わりません。ただ
OB-Xaではフィルターの2Poleより4Poleの方が負荷が1%〜3%低くなります。
同じパラメーターでもかかり方が違う
最初にもお伝えしましたが基本的なパラメーターはOB-XaもObsessionもは同じです。ですが、お互いパラメーターの位置にはこだわりがあるのか、同じ位置にしても同じ音にはなりません。果たしてどちらが実機を再現したパラメーターなのかはわかりませんが、お互い個性があふれる音色になっているのはよくわかります。
音の良さとは?
多くの人は「音が大きい=音が良い」というイメージをもっています。大きい音ほど迫力があり細部を認識しやすくなるからです。そういった意味ではプリセットの音量の大きさはObsessionの方が大きかったです。しかし、お互いの音量を揃え、オシレーターレベルやエンベロープの挙動などから解析してみると、そこまで大きな違いはなかったように感じます。
では、それを踏まえたうえで「どちらが音が良いのか?」と言われたら
GUIを含むすべての要素を持って「自分のインスピレーションを掻き立ててくれるもの」になると思います。そこに音自体とは直接関係ないブランドネームも影響するでしょう。なぜならそのブランドだからこそ沸き立つアイデアもあるからです。
古い考えかもしれませんば「アートはやっぱりMac」みたいな感じです。
値段の差
Obsessionは2020年6月22日現在11,605円
OB-Xa Vは単体では199$2020年6月22日現在21,528円
よほどこだわりがない限りはObsessionの方がコスパが高くできることも多いのでオススメです。
まとめ
私はOB-Xa Vが販売スタートしたのと同時に購入しましたが、もし買っていなかったらObsessionを買っていたでしょう。ですが、両方保つ必要があるのかと言われたらOB-Xa Vでも十分にOberheimサウンドを堪能できます。
どちらも素敵で良いシンセです。デモを試して自分にぴったりのOB−Xaサウンドを見つけてください。
どちらも即戦力になるソフトシンセであることは間違い有りません。
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