ArturiaのV Collectionは、ヴィンテージシンセやクラシックなキーボードのファンにとってまさに宝箱のような存在です。
その最新作であるV Collection Xは、一体どのような進化を遂げたのでしょうか?今回のアップグレードでは、ただ音色が追加されたわけではなく、アナログ感や表現力をさらに磨き、現代の制作環境にフィットする新機能も搭載されています。
特にサウンドの奥行きや再現性が向上しており、プロからアマチュアまで幅広いユーザーにとって価値のあるパッケージに仕上がっています。このレビューでは、V Collection Xの魅力と変化点を徹底解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
V Collection 10のアップグレードの詳細
V Collection 10では6つの新規インストゥルメントとバージョンアップしたインストゥルメントが2つそしてArturiaのすべての音源として簡易的に操作できるAnalog Labがバージョンアップしています。
特徴 | V Collection X | V Collection 9 |
---|---|---|
収録インストゥルメント数 | 39 | 33 |
新規追加インストゥルメント | MiniFreak V, Acid V, CP-70 V, Augmented GRAND PIANO, Augmented BRASS, Augmented WOODWINDS | |
リビルトインストゥルメント | Mini V4, Wurli V3 | |
プリセット数 | 10,000以上 | 9,000以上 |
追加プリセット | Inward UniverseInner City Soul Hyper Rave | |
アプリ内チュートリアル | あり | |
Analog Lab バージョン | Pro | V |
新しいインストゥルメントの紹介
新規のインストゥルメントはMiniFreak V, Acid V, CP-70 V, Augmented GRAND PIANO, Augmented BRASS, Augmented WOODWINDSになります。
Augmented シリーズでは今回PianoとBrassとWoodwindsが追加されたことで、9までに搭載されていた Augmented StringsとVoiceを使うことで壮大かつアブストラクトなオーケストラを制作することが可能になりました。
MiniFreakは、Arturiaが開発したハイブリッドシンセサイザーです。デジタルボイスとモデリングされたアナログフィルターを組み合わせことで、独自の世界観をもつシンセサイザーとして人気です。
ソフトウェア版:V Collection Xに含まれる「MiniFreak V」は、ハードウェアのMiniFreakをソフトウェア化したものです
音色の傾向としてはウェーブテーブルのような感じのものからアナログシンセ的なものまで見受けられます。サウンドエディットに関しては最小限のパラメーターで上手く構成されているので、初心者であっても楽しく操作できると思いました。
ACID VはローランドのTB-303をモデリングしたベースシンセサイザーです。
90年代のテクノで一世風靡したサウンドシーケンスベースサウンドはこれでかんたんに出せます。フィルターの効きもレゾナンスの効きの再現もよく出来ています。
またTB-303といえばディストーションと併用して使うのが主流であり、その流れをうけてACID Vには複数のディストーションが用意されています。
909系のリズムマシンとACID Vで遊びはじめればあっという手に一晩が過ぎ去るので、次の日に予定がある人は注意しましょう
最近何かと見直されることが多いYAMAHA電子グランドピアノCP-70をArturiaがモデリングしてきました。CP-70はNaitive Instrument のKomplte15にAlicia’s Electric Keysとし搭載されています。
Alicia’s Electric Keysと比較すると、CP-70 Vの方がモデリングという点もあってピエゾ感的な電子的な響きがあります。生のピアノであればこのピエゾ感はあまり好ましくないものですが、CP-70の場合ではそれがよい影響を与えいて、するどいアタックとCP特有の響きになっています。
既存インストゥルメントの改良点
既存のインストゥルメントとしてバージョンアップしたのはMini V4, Wurli V3の2つです。
Arturiaの独自のアナログエミュレートシステムやフィジカルモデリング技術により、より高品質な音源が利用できます。
Moogに関しては今さら説明の必要はないものですが、バージョンが進むにつれて、良くも悪くも音が変化してきました。個人的にはV2の音が好みだったので、V3になってからはあまり使うことがなくなりましたがV4になってからV2のニュアンスを踏まえながらさらに、音の解像度も高くなり使えるMoogサウンドとしてバージョンアップを遂げた印象です。
WURI VのバージョンアップでもMoog同様に音の傾向が明るくメリハリのあるものに変化しました。このあたりの変化はユーザーにとって派手すぎるという印象を受ける可能性もあります。
V Collectironの場合は以前のものをそのまま残しておけるのでシーンに応じてV2とV3を使い分けが可能なのはありがたいことです。
V Collection 10の製品構成
ここではV Collection 10の製品構成について解説します。
各インストゥルメントの特長
V Collection 10の製品構成は次のようになっています。
インストゥルメント名 | 種類 | 特長 |
---|---|---|
Augmented WOODWINDS | ハイブリッド | サンプリングと合成を組み合わせた革新的な木管楽器音源 |
Augmented GRAND PIANO | ハイブリッド | アコースティックピアノと合成音を融合した先進的なピアノ音源 |
Augmented BRASS | ハイブリッド | 金管楽器のサンプルと合成音を組み合わせた多彩な音源 |
Augmented STRINGS | ハイブリッド | 弦楽器のサンプルと合成音を融合した表現力豊かな音源 |
Augmented VOICES | ハイブリッド | ボーカルサンプルと合成音を組み合わせた革新的な音声音源 |
Korg MS-20 V | アナログシンセ | 伝説的なモノフォニックシンセサイザーの忠実な再現 |
SQ80 V | デジタル/アナログハイブリッド | 80年代のクロスウェーブシンセシスを再現 |
CS-80 V | アナログシンセ | ヤマハCS-80の豊かで表現力のある音色を再現 |
Prophet-5 V | アナログシンセ | クラシックなポリフォニックシンセサイザーの忠実な再現 |
Prophet-VS V | デジタルシンセ | ベクターシンセシスを特徴とする革新的なデジタルシンセ |
Piano V | アコースティックピアノ | 物理モデリングによる高品質なピアノ音源 |
Analog Lab V | プリセットブラウザ | V Collectionの全音色にアクセス可能なインターフェース |
Vocoder V | ボコーダー | クラシックなボコーダーサウンドを再現 |
Jun-6 V | アナログシンセ | ローランドJuno-106を模した温かみのあるポリシンセ |
OP-Xa V | デジタル/アナログハイブリッド | オベルハイムOB-Xaの特徴的な音色を再現 |
Mellotron V | テープサンプラー | 60年代のクラシックな鍵盤楽器を忠実に再現 |
Synthi V | アナログシンセ | EMS Synthiの実験的なサウンドを再現 |
CZ V | デジタルシンセ | カシオのフェーズディストーションシンセを再現 |
CMI V | デジタルサンプラー/シンセ | Fairlight CMIの革新的なサウンドを再現 |
Clavinet V | エレクトロメカニカル | ホーナーClavinetの特徴的な音色を再現 |
Acid V | アナログシンセ | クラシックなアシッドサウンドを生成するシンセ |
MiniFreak V | ハイブリッドシンセ | デジタルオシレーターとアナログフィルターを組み合わせた革新的なシンセ |
CP-70 V | エレクトリックピアノ | ヤマハCP-70の特徴的な音色を忠実に再現 |
DX7 V | FMシンセ | ヤマハDX7の革新的なFM音源を再現 |
Buchla Easel V | モジュラーシンセ | Buchla Music Easelの実験的なサウンドを再現 |
Synclavier V | デジタルシンセ | 80年代の革新的なデジタルシンセを再現 |
Emulator II V | デジタルサンプラー | E-muの伝説的なサンプラーを再現 |
B-3 V | トーンホイールオルガン | ハモンドB3オルガンの温かみのある音色を再現 |
Mini V | アナログシンセ | Moog Minimooogの伝説的な音色を忠実に再現 |
Stage-73 V | エレクトリックピアノ | フェンダーローズの特徴的な音色を再現 |
Matrix-12 V | アナログシンセ | オベルハイムMatrix-12の複雑なモジュレーション機能を再現 |
Farfisa V | トランジスタオルガン | Farfisaコンパクトオルガンの特徴的な音色を再現 |
Solina V | ストリングマシン | ARP/Solina String Ensembleの温かみのある弦楽器音を再現 |
SEM V | アナログシンセ | オベルハイムSEMの特徴的な音色を再現 |
Jup-8 V | アナログシンセ | ローランドJupiter-8の豊かな音色を忠実に再現 |
ARP 2600 V | アナログシンセ | ARP 2600の多彩な音作りを可能にする半モジュラーシンセ |
VOX Continental V | トランジスタオルガン | VOX Continentalの特徴的な音色を再現 |
購入を検討している人に気をつけてほしいのは、V Collection 10は基本は往年のシンセサイザーを再現しています。そのため、他のマルチ音源のようなそれぞれの楽器を網羅的に収録はしていません。
もちろん、Emulator II VやCMI Vといったサンプリング音源も搭載していますが、それらもまたビンテージサンプラーのそれであって最新のIK MultimediaのSampletank4やスタインバーグのHALion7と比較すると網羅性という点においては劣っているように感じるかもしれません
ただ、一つ一つの音源のクオリティはマルチ音源では到達できないレベルなので、各パートの1音のクオリティを最大に高めたいという人にとってはV Collection 10は役に立ちます。
V Collection 10とV Collection 9の比較
ここではV Collection 10の前バージョンである9と8について簡単に比較してみたいと思います。
V Collection 9との違い
もう一度比較表を確認してみましょう。
特徴 | V Collection X | V Collection 9 |
---|---|---|
収録インストゥルメント数 | 39 | 33 |
新規追加インストゥルメント | MiniFreak V, Acid V, CP-70 V, Augmented GRAND PIANO, Augmented BRASS, Augmented WOODWINDS | |
リビルトインストゥルメント | Mini V4, Wurli V3 | |
プリセット数 | 10,000以上 | 9,000以上 |
追加プリセット | Inward UniverseInner City Soul Hyper Rave | |
アプリ内チュートリアル | あり | |
Analog Lab バージョン | Pro | V |
MiniFreak Vはデジタルシンセとアナログシンセによるハイブリッドシンセをソフトウェア化したものですが、今までのV Collectionシリーズには搭載されていない新しいシンセサウンドです。
使い方もシンプルですし、「アナログモデリングだけはちょっと飽きてきた」という人にとって楽しめるソフトシンセです。
同社のバーチャルインストゥルメント集「V Collection」から厳選されたプリセットを簡単に操作できる統合ソフトウェアであるAnalog LabもGUIとともにバージョンアップしました。
シンセサイザー、ピアノ、オルガンなど数千種類のサウンドが収録され、クラシックからモダンまで幅広いジャンルに対応可能。特にインターフェースは直感的で、サウンドの選択や編集が容易です。
また、必要に応じて各パラメータの微調整も可能で、プロフェッショナルにも最適な柔軟性を持ちます。Arturia製MIDIキーボードと統合でき、ハードウェアとの連携もスムーズに行えるのが特徴です。さらに、軽量なソフトウェア設計により、パソコンの負荷を抑えつつ高品質なサウンドを提供します。
4と比較するとややすっきりとしたGUIにまとめられました。その簡略化されたGUIからAnalog Labのポイントでもあってレイヤーサウンド方式が取り除かれたしまったかと思いましたが、上にあるプリセット名が表にされているウィンドウの一番左端をクイックして、左タブからExposeを選択すると右側レイヤーを選択できる画面が表示できます。
使ってみた感想(レビュー)
使ってみて思ったのは、やはりMini V4のブラッシュアップされた音質は個人的に評価が高く、近年他のメーカーから出てきたMoogサウンドと比較すると弱い印象がありましたがそれが解消された印象です。
ただ一つだけ残念なのは、V3に搭載されていた32ボイスユニゾンモードが取り除かれたことです。このユニゾン機能であればMemory Moogのような音色が出せただけにこの機能は残してほしかったですね。
あとすごく些細なことですが、ダウンロードアプリのダウンロード速度が早くなった気がしました。
まとめ
V Collection Xは38の音源からなるバンドルセットです。それぞれの音源は単体でも購入可能ですが、単体で購入するよりバンドルセットの方がはるかにお得に購入できるので、V Collection Xのラインナップに魅力を感じている人はバンドルセットでの購入がおすすめです。
類似製品としてUVIのVintage Vaultがあります。これは255ものハードシンセをサンプリングして作られたモンスターライブラリーです。
しかし、一部のソフトシンセではその機種を代表する音色が入っていないことに不満を覚えている人も多少いますし、V Collectiron10と違いサンプリング音源のためVintage Vaultは285GBのストレージ空き容量が必要になります。
もちろんVintage Vaultでしか得られない質感もあります。しかし、音源を購入後ストレージ空き容量が足りないために追加ストレージを購入するケースを考えると痛い出費に感じる可能性もあります。
(V Collection Xに必要なストレージの空き容量は32GB)