VAソフトシンセは「負荷が軽くて音色がそこそこ良いもの」と「負荷が高いけど音色がめちゃめちゃ良いもの」の2つにわかれます。ARP ODYSSEYはどちからというと後者の割合もあるVAソフトシンセです。と言っても「すべてが高負荷」ではなく一部負荷の高いプリセットもあるという音源です。しかし、その音色の良さはかなりのものです。
今回は誰にでもオススメはしないけれど、使い込んだ人は個性的なDTMerになれることを約束できるARP ODYSSEYについてお話してみたいと思います。
音もGUIもキレイ
40年ぶりに復刻したARP ODYSSEYを2015年にソフト化したのがKORG Collection – ARP ODYSSEYです。とにかく質感の凄さがすごいです。TORIONに現れた千鳥のノブはそこにいませんが、ARP ODYSSEYのGUIもすばらしいものがあります。(注意ARP ODYSSEYはTRITONより前に発売されています)
このネタについてはこちらの記事でご確認ください。開発者本人を笑わせた懇親のレビューです。
楽曲の印象を5割増しKORG Collection-TRITONをすすめする5つの理由
ノブはいませんがスライダーの立体感やパネルの光沢感など相変わらずGUIの美しさがすごいです。
想像以上の音質に正直驚きました。2オシレーター仕様のVAソフトシンセですが、低域〜高域までバランスの取れた音質にトランジェントも美しく、音の輪郭がまで見て取れるほど音が生き生きとしています。今まで触ってきたVAソフトシンセとは次元の違う音質です。
とくにLFOの赤いランプには僅かな光の映り込みが再現されていたりします。そして見てわかるレベルの「37鍵盤」の雰囲気。この鍵盤は触ったらきっと「こんな感じなんだろうなー」という想像がつくほどよく作られています。
FILTERの開閉が美しい
音の変化がヌルっと動きます。良い意味ですごく気持ち悪いですw
Cutoffを開いていくときにおきる音の雰囲気が今までのVAソフトシンセのなかで一番しっくりきます。こういう良いVAソフトシンセをさわると改めてFILTERがどれだけ音作りに重要な要因を持っているのか気付かせてくれます。
インスピレーションを刺激するアルペジオプリセット
テクノならどんとこい!と言わんばかりのアルペジエータープリセットはかなり創作意欲を掻き立てられます。また全体のプリセットも200というほどよい量が最高です。太い音から攻撃的な音までとにかくアナログシンセの音作りの広さを堪能しながらもツボを抑えたプリセットは使いやすいものばかりです。
アナログシンセでありながらもFM的なベルもエレピも作れたりするので、本当に幅広い音作りができます
InitProgramは装備している
何度言っても言い足りないくらい重要な音を初期設定に戻すイニシャライズパッチは重要です。これがないと音作りがはじまりません。ARP ODYSSEYはプリセットごとにInitProgram装備していますが、メイン画面では呼び出せないので、ちょっと呼び出しに手間がいるのでフェイバリットプリセットに登録しておくのがよいかもしれません。
基本的に素晴らしいGUIと音質をもったVAソフトシンセですが、いくつかきになった点もあったので次にARP ODYSSEYのちょっと残念なところをお話します。
FILTERの切り替えがステップ形式になる
たいした問題ではないのですが、なぜこの仕様にしたのか気になります。
ARP ODYSSEYのRev1〜Rev3の素晴らしいFILTERを再現しているのがこの切替スイッチなのですが、なぜかRev1からRev3に切り替えようとしても1→2→3となってしまいます。
UNISONのVOISEASSIGNは任意の項目で選択できるのでバグの可能性もあります。
GATEの動きが不安定
ARP ODYSSEYの上段についているシンプルながら楽しめるアルペジエーターはGATEとしても使えます。GATEはコードの和音を押すと設定したバッキングパターンを再生してくれます。しかし、なぜか最初の音だけが単音になってしまいます。それ以降、そしてループ後はコードのバッキングになるのですがこれもバグの可能性がありそうです。
Favoritesの保存がブラウザ画面まで移動しないといけない
ほどよいプリセット量ですが、やはりお気に入りボタンはあったほうがいいです。ARP ODYSSEYにもAdd to Favoritesというお気にいりボタンがあります。ただ、ブラウザ画面に入ってから右クリックをするのが少し煩わしい時があります。メイン画面のどこでもいいので小さいボタンをつけてそれをダブルクリックするとAdd to Favoritesする。そんな機能があれば良いのではと思ったりします。
パッチによってはかなり重い
音の良さと比例してめちゃめちゃ負荷が高いパッチがあります。分厚くて存在感のある059 Dat 80s Brassはバッファ512でもCPU負荷50%近くになり若干音が途切れる傾向にあります。それ以外でもUNISON設定によっては100%になる音もあります。少し前のパソコンでは演奏には耐えられないプリセットもあるかもしれません。
しかし、その負荷もこれだけのクオリティを確保するためだったら納得できるほど音質はよいです。
使用環境
Macmini2018
CPU Corei7 3.2GHz 6コア
メモリ32GB
画面の拡大ができない
TRIONにはありましたが、ARP ODYSSEYには拡大機能がまだついていません。小さい文字が見に行くときもあるのでやっぱりGUI拡大機能はほしいところです。
KORG Collection – ARP ODYSSEYの価格
KORGショップでARP ODYSSEYは定価¥10,165 がSpecial Price税別: ¥6,473 税込: ¥7,120となっています。しかしこれだけ買うならば正直なところKORG Collection – Special Bundle v2の方がオススメです。KORG Collection – Special Bundle v2にはTRITON、ARP ODYSSEY、MS-20、Polysix、Mono/Poly、M1、WAVESTATION、MDE-X、合計8製品がバンドルされています。
TRITONがあれば当分マルチソフトシンセにこまることはありませんし、太いアナログサウンドはARP ODYSSEYを始め、MS-20、Polysix、Mono/Polyがあります。他にも最近流行の兆しが見えているWAVESTATIONも入っています。
本来はこれらのバンドルは¥43,890 がSpecial Price税別: ¥29,900 税込: ¥32,890です。もしDTM初心者の初めての拡張音源を購入予定ならばおすすめかもしれません。
誰のためのシンセ?
ARP ODYSSEYを単体で求める人はかなりマニアックなシンセフリークです。DTM初心者には少しむずかしいかもしれません。この音の良さを実感できるのもよほどVAソフトシンセを触りこんだ人だけかもしれません。というわけでARP ODYSSEYは
- テクノ系など無機質な質感の中に有機的な音を雰囲気を求めている人
- 往年の名機とよばれるサウンドを知っておきたい人
- 個性的なDTMerとして自分を高めたい人
これらの人に向いていると思います。
ゲーム的な曲や、歌ものなどがしたい場合はTRITONがオススメです。
まとめ
誰にでも「最強にオススメ!」とはいいませんが、おそらく音質に拘るDTMerの評価は高いと思います。そしてのその分の負荷の高さも納得ができるほどです。一球入魂ならぬ一音入魂音源としてここぞというときに使うと曲の世界観が広がると思います。
もしソフトウェアでは満足できない人はこちらがオススメです。
ちなみにベリンガー も37鍵アナログシンセサイザー ODYDDEYの復刻版を出しています。最近はベリンガーもリーズナブルな価格で出しているのでそちらも見逃せませんね
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