低音処理に必要なベースのローカットをする前に覚えておきたいこと

ミックスで低音処理をするときには「ベースのローカットが大切」という話を聞いたことありませんか?しかし、このローカット具体的にはどういう処理をなのかを考えている人は以外に少ないです。「えっ?単に無駄な帯域を切ってるだけでしょ?」と思うかもしれませんが、そうではありません。ベースに限らずローカットするときに、この記事に書いてあることを知っているか知っていないかでミックスの考え方が変わります。

ローカットとは?

イコライザーなどについているカット専用のフィルターです。シンセなどではHPF(ハイパスフィルター)と呼びます。さて、このローカットですが、よく「不必要なノイズに鳴りやすい超低域はカットした方がコンプのかかり方などが良くなる。わからなければローカット」という考え方で使っている人が多いのですが、ベースのローカットについては少しだけ考える必要があります。

ベースの音域周波数

ベース(ここでは4弦ベースを例にします)で一番低い音はE1(41.2Hz)で一番高い音はF#4(370Hz)になります。さてここで思うのは「ベースのローカットは100Hz付近で」という話を思い出すと「そんなところローカットしたら一番低い弦の音を聴こえなくなるのでは?」ということです。

しかしローカットをしたことある人はわかると思いますが特に問題はありませんよね?では一体何をローカットしているのか?ということです。

それをこれから一緒に考えていきたいと思います。

41.2Hzってどんな音?

まずは普通に4弦ベース、4弦開放の一番低い音を聞いてください。

馴染みのある音ですね。この音(周波数41.2Hz)は音階的にはE1であり、88鍵盤のピアノでいうところの一番低いミの音になります。

ちなみにピアノのE1はこんな音です。

ピアノとベースをアナライザーを使って見てみましょう。

ベース

ピアノ

音源によって違ってはきますが、さてここで気づいてほしいのは、41.2Hzの周波数のところあまり上がってないように思いませんか?41.2Hzより82Hz辺りの方が大きいですよね。違うアナライザーでみるとこんな感じです。赤がピアノ緑がベースです。

拡大図

E1(41.2Hz)と比べてオクターブ上の E2(82.4Hz)や2オクターブ上のE3(164.8Hz)の方が振幅度合いが大きい=音量が大きいというわけです。私達が普段耳にしているベースは基音の41.2Hzではなく倍音であるE2やE3の成分をよく耳にしていることになります。

ちなみに41.2Hzという純音とはどんな音なのかを聴いてみましょう。(ヘッドホンでしか聴こえません)

アナライザーでみるとこんな感じです。

ここで「ベースはハイカット100Hzくらいまで入れてね」という巷のミキシングにおけるローカットの使い方は基音をごっそりカットしていることになるわけですが、ベースとして聴こえているのは倍音部分がメインになるので、実はそれほど大きな影響はでません。ただ、基音を無視してローカットするのはクリエイティブな視点とは言えません。

「キックより下にベースを存在させるべきかどうか?」という作曲意図との関係で考えたうえで「基音までカットするローカット」に意味をもたせるのが正しいミキシングに低音処理と言えます。

ちなみに6弦ギターの一番低い音はE1(82.4Hz)になります。これも実は「オクターブ上の音ばかり聴いてることになるの?」という疑問を持ってもおかしくありません。ということでアナライザーで見てみましょう。青がギターのE1です。

ギターはベースのように倍音をメインに聴いているわけはありませんが、それでもE1のオクターブ上E2にも同じような振幅があるので、感じ方としてはE2がギターの最低音と捉える人がいてもおかしくありません。

音の種類について

音は3つの種類に分けられます。

  • 純音 倍音を含まない規則的な音(サイン波)。音叉の音や、デジタル放送によって今では聴かなくなったテレビで流れていた時報の音
  • 楽音 規則的でありながら倍音を含む音 楽器から発生する音
  • 騒音 規則的ではない音 短時間しかならない(ドラムのアタック音など)

楽器の音が楽器らしく聴こえるの倍音が含まれているからです。倍音は第一倍音を基音とよび、それ以降を上音と呼びます。言い換えると基音以外の上音(倍音)をすべて取り除くと純音(サイン波)になります。

つまり、すべての音色は純音(サイン波)になりますが、その音色らしさを決定しているのはあくまで「倍音」であるという説明が成り立ちます。

純音だけの音(倍音を含まない楽器や音)というのは人工的に作られた音であり自然界には存在しません。ギターのハーモニクスなどは純音に違い音ですが、弾く瞬間には騒音が含まれますので、やはり純音とはよべません。

なぜここで小難しい話をしているのかというと、我々が普段聞いている音色は倍音によってそのイメージが決定されるからです。つまりここでの言葉を借りるならば「楽音」になります。

音の種類について正しい知識をもつことで、作曲もミックスもよくなります。

低い音程の楽器ほど「楽器の特徴的な倍音」の存在が大きくなります。

各楽器の周波数

音階を周波数で理解することで、イコライザーがどんな音階(周波数)をブースト/カットしているか理解できるようになります。

例えばピアノ

A0(27.5Hz)〜C8(4186.009Hz)

ギター

E2(82Hz)〜D#6(1245Hz)

ベース

E1(41Hz)〜F#4(370Hz)

になります。

私達が何かとイコライザ高域を扱う時は基本倍音領域の調整をしているのが多いと思いますが、ソフトシンセなどで倍音が少ない音色の場合高域をブーストするということはノイズを持ち上げているだけの可能性があるので注意が必要になります。

61鍵盤でベースを打ち込むときの注意

相対的な問題ですが、鍵盤の低い方=ベースの音域と考えてしまいますが、61鍵盤の一番低い音はE2となります。ベースでいうとそこは2弦2フレットのE2(82.4Hz)になります。なので61鍵盤でベースを打ち込む時はトランスポーズ機能か、打ち込み終わったあとピアノロールで1オクターブ下げる必要があります。

さいごに

まとめると以下のようになります。

  • ベースの基音である41.2Hzは聴くのではなく感じる音 耳に届いている音は第2倍音である82.4Hzから
  • ローカットする場合基音の感じさせ方がポイントになる。
  • ギターの一番低い音はE2(82.4 Hz)ベースと被っているように見えるが実際はベースの倍音がギターに重なっている。ただ低音の倍音は実音なみに感じるので何かしらのギターとの棲み分けを考える必要が出てくる場面もある。

闇雲にローカットと考えるのではなく感じる音の領域をどう扱うか、正直難しい部分ではあるので慣れいなければ「ローカット100Hz付近」を使ってもよいのかもしれませんが、そのローカットにどんな意味があるのかを知っておくことでベースの音の扱い方について深い考察ができるようにはなります。

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