DTMで作曲を始めるにあたって身につけたいのは打ち込み技術です。
打ち込みとは、DTMソフトであるDAW(デジタル・オーディオワークステーション)と呼ばれるソフトにピアノやギター、ドラムにベースなどのパートを入力していくことを「打ち込み」と言います。
この講座ではドラム、ギター、ピアノなどのパートの打ち込み方法について「基礎レベル」の技術を学ぶことができます。
打ち込みとは
音楽制作ソフト(DAW)を使って演奏データをプログラムしていく作業のことを通称「打ち込み」と呼ばれており、入力方法はおもに2つあります。
リアルタイム入力 | メトロノーム等に合わせて演奏しながら入力する |
ステップ入力 | 演奏せずにデータを一つずつ入力する。 |
演奏しながら入力?なんか打ち込みっぽくないような
打ち込みのイメージの多くは静止状態からの入力ですが、リアルタイムで演奏しながら入力するのもデータを打ち込んでいることに変わりないので立派な打ち込みです。
音の長さや音の強弱などを一つの画面で確認できるピアノロール機能を使って打ち込むのが主流です。
ピアノロールはDAWの基本機能であり、これを搭載していないDAWはありません。
しかし、昔はこのようなグラフィカルな表示ではなく、次のようなリスト上で音の長さや強さなどがすべて数値で入力されていた時代がありました。この時代の作業が「打ち込み」の言葉の起源でもあります。
このリスト機能はLogic Pro、Cubase、Digital Performer、Protools 等には搭載されていますが、Ablton Live、StudioOneには搭載されていません。
このリスト機能は昔のゲーム業界では一般的に使われており、ゲーム音楽を作っていた作曲家の中にはこのリストだけでメロディや和音等を読み取る強者もいました。
打ち込みの良いところは、演奏情報を入力できれば例えば演奏ができなくても再現できてしまうところにあります。実際プロの作曲家で楽器が弾けない人でも打ち込みを駆使して本物レベルのピアノやギターを再現しています。
ピアノロールのメリットとして音符の長さが具体的になっているので、譜面が読めなくても視覚的な情報で音の長さがわかるのも初心者にとっては嬉しいところです。
楽器が弾けなくても音楽が作れる。これを形にしたのはピアノロールによる打ち込みの簡略化があったように思います。
## では次から楽器別の打ち込み方法について解説していきます。
ドラム打ち込み
まずドラムの打ち込みについて意識したいのは次の5つです。
無機質なビート
有機質なビート
音色
タイミング
ベロシティ
無機質なビートとは人間味のないビートです。人間がドラムを叩くと、タイミングや強さは毎回変わります。逆を言えば、コンピューターは一切タイミングや強さを変化させずにビートを刻むことができます。
例えば昔のテクノなどは文字通り無機質なビートだったのでタイミングや強さはそれほどありません。一方でロックやポップスなどの生ドラムを用いいた曲の場合をドラム打ち込みはタイミングや強さに関してより人間みを追求しないと、それらしさが出てきません。
これらのことを踏まえることで「自分が作りたい打ち込みドラム」を自由にコントロールできます。
ジャンルは違えれどこれらはドラム打ち込みの超基本です。
これらをまとめた打ち込みドラムの超基礎編の記事がこちらになるので音色やタイミング、ベロシティについてしっかりと学ぶことができます。
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ギター打ち込み
DTMの中でもっとも打ち込みが難しいのがギターです。
ギターには演奏時におけるノイズや、スムーズにピッチ(音程)が変わる奏法がギターの醍醐味でもあるため、そこを正しく理解して打ち込まないとリアリティのない薄っぺらなギタートラックができてしまいます。
つまりギターを打ち込む場合には次の5つが基本事項になります。
タイミング(音のばらつき)
ギター演奏時に入ってしまうタッチノイズ
音色
どこまで音を伸ばすのか(音の長さ)
連続的なピッチの変化
例えばギターでジャラララーンと弾いた場合と素早く弾いた場合では一つ一つの音のタイミングが異なります。
速く弾いたほど一つ一つの音のタイミングの感覚が短くなるとという感じです。
そして、弦を抑える場合などには「キュッ」といった音が鳴ったり、話すときに本来であれば不要と思われるようなノイズが鳴ってしまうことがあります。しかしこれらのノイズがギターにとって必要なわけです。
またギターの特徴としてディストーションやクリーンサウンドによる音色の違いがはっきりしています。
そして、チョーキングと呼ばれるスムーズな音程の移動にはピッチベンドと呼ばれる音程を連続して変化させる機能を使って再現するなど、とにかくあらゆる工夫と試行錯誤が求めまれます。
これらについてはこちらの記事で1つ1つ詳しく解説しているので参考にしてもらえればと思います。
しかし、これらを打ち込むのは本当に大変です。もちろん大変ながらに身に着けられるスキルも高いものになりますが、もっとギターをかんたんに打ち込みたいという人はギター専用音源を購入することで、かんたんにリアルなギタートラックを作ることができます。ギター音源についてはこちらの記事で紹介しています。
ベース打ち込み
ベースは曲を支える重要なパートです。DTM初心者では音域的に音が確認しずらいために、打ち込みをおろそかにする傾向がありますが、ベースがしっかりと打ち込まれていると、ノリがよくなり、曲の印象も非常によくなります。
ベースを打ち込む場合は演奏奏法と音のつながりです。
ミュートしながら弾くことでロックな歯切れのよい音になりますし、次のコードへの切り替わり時に音をスムーズにつなげれば、自然なベースラインを作れます。
ピアノ打ち込み
ピアノを打ち込む場合に大切なのは、ドラムやギターにもあった音の強さやタイミング、音色などを考慮したうえで
伴奏とソロの違い
を意識すると自然なピアノの打ち込みができます。
伴奏とは主旋律を引き立てるのが目的の演奏のことで、基本的にボイシングがあまり動かないことが大切です。
なぜ動いてはいけないのか?例えば主役の後ろで脇役が暴れまわっているようなドラマは邪魔だと思いませんか?
あくまで脇役は主役をもり立てるための存在です。
このあたりは基礎的な考え方ですが、多くのDTM初心者は「こんなこともできる自分がすごい!」とアピールするかの如く
伴奏であるピアノを動かすことが多いですが、そのピアノはどういう役割かを考えることでピアノの打ち込みスキルはよりプロレベルに近づいてきます。
ソフトシンセ打ち込み
ソフトシンセを打ち込み時に気をつけたいのは、ADSRと呼ばれるパラメーターです。これは音のアタックや長さ、減衰するまでの時間等をコントロールするパラメーターであり、選んだ音が曲の中でどのように存在したいかを作り出す重要な機能です。
EDMなどで使われるPluckと呼ばれる音色もこのADSRによって作られていると言っても過言ではありません。ソフトシンセに限らず、すべての音源において重要なパラメーターなので少しずつでもその機能と効果を覚えていくことをオススメします。
オーケストラ打ち込み
オーケストラは次のような楽器編成でそれぞれ音色も音域も様々です。
楽器 | 詳細 |
弦楽器(ストリングス) | バイオリン ビオラ チェロ コントラバス |
金管楽器(ブラス) | トランペット、 ホルン トロンボーン チューバ |
木管楽器(ウッドウィンズ) | ピッコロ フルート オーボエ クラリネット |
打楽器(パーカッション) | スネアドラム バスドラム タムタム シンバル その他のパーカッション |
オーケストラの打ち込みで大切なのはアーティキュレーション(演奏奏法)です。例えば、ストリングスなどではアルコ(弓とで長く引く)とスタッカート(音を短く弾く)ピッチカート(弦を指でつまんで弾く)などの奏法があり、それらを知っておかないと、イメージする音にはなりません。
最近のオーケストラ音源では、演奏奏法についてはキースイッチと呼ばれる低音or高音にアサインされている鍵盤をおすことで奏法をきりかえることが可能です。
次に大切なのは少し上級向けになりますが、和音です。オーケストラは様々な楽器が重なり合って複雑な音色になります。リアルなオーケストラを再現したいのであればこの音の重ね方は重要になります。