DTMの世界で上級者へとステップアップするには、ただのテクニックを超えたクリエイティブな思考が必要です。
この記事では、音楽制作における「解答」を求めるのではなく、「解決」を見出す力を養う方法を解説します。コンプやEQの使い方を超え、あなたの音楽制作プロセスを根本から変えるクリエイティブなアプローチを紹介。DTM初心者から一歩踏み出し、真の上級者への道を探りましょう
解答と解決の違い
解答は「誰もが認める共通する認識の解」答えることです。「ニュートンは何が落ちて万有引力を思いついたのか?」といったクイズはまさに「解答」です。一方解決は「決める」という言葉が使われていているので解は複数あることになります。つまり絶対的な正解かどうかはわからないがその問題を前にしたときに「最も優れた最適な解を決める」というのが「解決」になります。これをまとめると
- 解答は具体的な問題の対処法
- 解決は抽象的な問題の対処法
といえます。
つまり前提として「問題認識」によって「解決」「解答」が変わってくることになります。問題を具体化できてしまえばある解決ではなく解答によって問題をクリアできるようになる場合もあります。
解答と解決の使うシーンの違い
解答は誰もが共通認識を持って答えを統一する必要なシーンで使われます。つまり学校の勉強は問いも答えも具体的であるので「解答」を求める場です。 一方で「解決」は問題が抽象的なシーンで使います。例えばDTMにおいては「どうすればかっこいい曲が作れるか」という問いは千差万別です。もちろんある程度の共通認識における「解答」は存在します。しかし、すべてのDTMerが同じ解答にたどり着いてしまうと曲はすべて同じになります。
これではオリジナリティは存在しなくなります。それゆえ創作行為は「解答」ではなく「最も最適な解」を決める「解決」である必要があります。
解答を欲しがるDTMerは駄目なのか?
DTM初心者の多くは解答を求める傾向にあります。なぜならば解を決めるほどの知識を持っていないからです。それゆえにすでにある共通の認識である「答え」があれば少なくても自分の行為が間違っているわけではなくなるので、わからなければ解答を求めるわけです。
少し乱暴な言い方をするならば「楽して作っている」という言い方もできます。
この楽して作りたいというのは一見するとあまり良い行為には思えないかもしれませんが、時代の変化とともに作り上げるプロセスは変化しています。DAWがない時代に譜面で書いていた人からすれば我々はすでに解答行為によって創作している側面があるのは否定できません。往年のミキシングエンジニアが苦労して身につけたミキシングプロセスもマスタリングプロセスもAIプラグインによってその技術はマニュアル化し解決思考ではなく誰でもできる安直な解答思考として選んでいるクリエイターは数多くいるでしょう。
しかし、この手法自体も良い悪いではなく求められいてる環境と時代に最適化する問題解決のための1つの手法とするならば「立派な解決」であるとも言えます。
解決思考にたどり着くために
我々は良くも悪くも選ぶ時代に生きています。すでにある程度「解答」が用意され、それをどう選ぶか?なぜ選ぶのか?という視点こそがクリエイティブな行為と思うのがわかりやすいとのではないでしょうか?
初心者は初心者ゆえに問題を解決するための礎となる「答え」をしりません。なので「解答」を求める行為自体を否定する意味はありません。しかしそれではクリエイティブな思考は育ちません。わからない時はわからない時なりのクリエイティブな思考の育てか方が存在します。それが「なぜこれはそうなのか?」という視点です。
例えばコンプのプリセットで「POP」とあったとして「なぜこのコンプの設定がPOPなのか?」という疑問を持ちます。これがクリエイティブ思考の入り口です。ここで「まぁそう書いているのだからそうなんだろう」と思ってしまうとその設定の意図を感じ取ることができません。感じ取るというのは問題を認識するという行為とも言いかえられるので、その視点がクリエイティブな思考を育てる要素になるのは想像がつくと思います。
作曲するうえでの問題点を明らかにする
例えばクライアントからの作曲の依頼があった場合、現状の問題点をクリアにすると必要以上の迷いがなくなりお互いの意見にずれがなくなります。
そのために必要なのは分析です。なぜ分析が必要のかは次の理由からです。
- 要素や本質への問いかけが可能
- 構造や仕組みについての理解
- 問題の特質の認識
つまりどの音源を使うとかどんなエフェクトプラグインが必要なんてものは必要ではなく、求められているものの本質とは何か?これが分析によってわかります。
つまり「何のために?目的と手段の認識をクリアにすること」といえます。
例えばRPG風の曲が欲しいと言われてもあまりにも抽象的過ぎて答えようがありません。つまりここで必要具体的な情報です。ここが明らかにならないと手のつけようがないのですが、クリエイティブ思考で考えらないと「自分の知っている答え」を持って解決しようとしますが、これでは解決になりません。なぜならば相手が求めているものと一致しているかの判断がつかないからです。つまりクリエイティブ思考による問題解決は必ず「相手ありき」になります。
- どんなPRG風の曲なのか?
- なぜRPG風の曲が求められているのか?
- それがどのような効果を与えるのか?
これを絞り出すのかクライアントとの打ち合わせで明確化できるのかは環境次第としかいえませんが、少なくても「PRG風=自分の知っているPRG曲」よりはるかに具体的な音楽になるはずです。
「自分は一人で作っているから別にそんなのはいらない」という人であっても一人でも多くの人に聞いてもらいたい気持ちがあるとやはりそこには「相手」という存在が必要になります。そこで相手がどんなものを求めているかという視点はクリエイティブ思考の入り口であり「解答」ではなく「解決」のために頭を働かせるきっかけになります。
音楽以外のナゼを音楽につなげる
音楽のために勉強するのも大切ですが、それと同じくらい音楽以外のことに目を向けることでクリエイティブな問題解決思考を鍛えることができます。それが観察です。ただ見るのではなく「どうして?なぜ」の視点です。例えば、なぜギターの弦は手前から低い弦なのか?そこには何か意味があるはずです。すべての弦楽器は左から右に低い→高いという弦の並びになっています。ではこれはなぜなのか?
ここで大切なのはすぐに「解答」を調べるのではなく思考することです。その答えが正しいかどうかではなく、それに何の意味があるのかを問い続けることがことの本質を気づけるようになる方法です。
音楽をコトバで表現する
私のブログで何度もでてくる話ですが、音楽は抽象的です。それゆえに自分の頭の中だけでしかわからないものがたくさんあります。しかしそれを他人に伝えようと思うと、音楽の言語化が必要です。これも本質への問いかけ一種です。
「このメロディにはどんな意味があるのか?」「このコード進行は何をイメージしているのか?」「なぜこの音色なのか?」これらを即答できるようになると作曲者の意図が明確になり伝わるべき音楽の本質が現れます。
初心者、中級者、上級者について
まとめると、
- DTM初心者問題を認識できない。基礎(型)を覚える段階(常になぜという問いを持ち続けるのが重要)
- DTM中級者 作曲の型を覚えた段階で明確な解答ができる(どうすればそうなるのか?なぜそうなったのか?)
- DTM上級者 作曲における問題提起ができ解決と解答の違いを理解している(オリジナルを前提とした問いの解決を提案)
すべてにおいて重要なのは自分の立ち位置が明確であることです。
まとめ
上級者やプロになればなるほど自分の経験によって出してきた答えは誰かに用意された答えではなく「自分で出したもの」と信じ込みます。しかし先程も言ったように我々はすべにおいてゼロからものを作れない時代にいます。だからこそ「自分の無知」を知ること自分の行いは先人の出した答えを模倣しているに過ぎない。それをほんの僅かだけ変えるそのバランスがクリエティブであることを悟ることがクリエイターが意識すべき重要な要素ではないでしょうか?
問題解決についてのさらに深い学びを得たいのであれば、こちらの書籍が参考になります。