「分離感のあるミックスを作りたくてEQやコンプ、いろんなプラグインを使ってるけど上手くいかない!どうすれば分離感って作れるの?」
「いくらコンプやイコライザーを使っても音に迫力がない」それは位相が原因かもしれません。
位相に問題があると「音の明瞭度が悪くなる」「コンプやイコライザーのかかり方も悪くなる」などミックスに様々な問題を起こします。
しかし「位相って何?」「聞いたことはあるけどどうやったら位相がよくなるの?」という人がいると思います。ここでは
その位相をかんたんに調整できるプラグインMAutoAlignを紹介します。
MAutoAlignとは
MAutoAlignはトラック同士の位相を調整できるプラグインです。この位相はミックスクオリティに大きく関わってくる重要な要素ですが、DTM初心者をはじめミックスになれてきたDTMerでも理解が難しく、思うようにコントロールできません。
それをかんたんに調整できるようにしたのがMAutoAlignです。
DTMの位相とは?
周期的に繰り返されている波形のことを「位相」いいます。位相がずれることで音質に影響が出ます。と言われてもいまいちピンとこない人もいると思います。
馴染みのあるところでいえば「SpuerSawもSaw波という位相を少しずつずらしたもので出来ている」といえばイメージが湧きやすいのではないでしょうか?
位相のズレによって方向に距離感、奥行きなども感じることができます。位相のズレが少ないと自然なサウンドとして認識できます。
レコーディングの世界では位相はシビアに考えられる傾向があります。なぜならこの位相があっているかどうかでミックスのクオリティが大きく左右される可能性があるからです。
ドラムのマイキングによる位相の問題
例えば、キック(前面と背面)スネア(トップとボトム)のように同じパーツに2本のマイクを使用する場合必ずどちらかのマイクの位相が反対になった逆相状態になっています。逆相のままだと「音が抜けない」「低音がなくなる」ということになってしまいます。逆に言えば位相を正しくすると音にパワー(迫力)があり楽器本来の音色を正しく聴かせてくれるため音の分離もよくなります。
下記の動画はMAutoAlignではありませんが、位相の重要性についてわかりやすく解説しているのでとても参考になります。
位相の合わせ方
プラグインの位相反転機能を使う
一番簡単なのはミキサーやプラグインに付いている位相反転ボタンを押すことで位相問題は解決できます。
DAWに付属しているもので問題ありません。LogicProXではGainの中にあるPhase Invertというのが位相切替ボタンです。他のDAWではイコライザーに付いている場合もあります。
タイミングを調整する
逆相の問題が解決しても演奏や発音のタイミングによって位相のズレが出てきます。これを補正するには手動でタイミングをあわせていくやり方がありますがかなり大変です。個人的には作曲家が時間をかけてやる内容ではないと思ったりしてます。作曲家の仕事は最高のメロディを作ることですから。
位相 プラグイン MAutoAlignを使う
上記の位相の調整の手間を省いてくれるMAutoAlignという便利なプラグインがあります。
これは位相レベルのズレを自動で直してくれるものです。使い方は簡単で、
使用したいトラック(例えば先程お話したキックのINとOUTやスネアのTOPとBOTTOMなど)にプラグインを指してGroupのところで位相をあわせたいもの同士を選択します。
下の画像では「Snare Drum1」となっているところです。これをせずにアナライズボタンを押すと次用な警告画面が出るので必ずGroupは統一しましょう。
ただし、アナライズボタンを押してからでは再生はできないので、再生ボタンを押してからアナライズボタンを押すようにします。数秒で自動で位相のズレを修正してくれます。
まず位相をあわせていないサンプルから聞いてください。
DTMミックス位相処理実例
次の曲で先程紹介した。MAutoAlignを使って位相のずれたドラムを修正してみたいと思います。
今回の曲のトラックは次の構成です。使っているプラグインはアンプシミュだけです。
- ギターX2
- ベース
- キックIN
- キックOUT
- スネアTOP
- スネアBOTTOM
- ハイハット
- オーバーヘッド
- ルーム
次に位相を合わせたサンプルです。
キックとスネアの質感に注目して聴いてください。
ちょっと信じられないくらいの変化ですよね。
これらはキックINキックOUT、スネアTOPとBOTTOMのの位相をそれぞれ合わせただけです。コンプレッサーやイコライザーを使わなくても位相を合わせるとここまで音が前に出てきます。
この質感の変化が必ずしも正解ではありませんが、音の印象は位相をあわせた方が明確に伝わります。
またベースとキックの位相をあわせることでより良い結果が得られるケースもあります。
もし位相をあわせていない状態でイコライザーやコンプレッサーにマスタリング系のプラグインを多用しても音に迫力は出ません。質の悪い音をただ大きくしているだけです。
「私は生ドラムしないし、ドラム音源もそんなにいいの持ってないから関係ないのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、例えばEDMなどではキックやスネアはレイヤーによって音作りするケースが多いです。せっかく時間をかけて作ったかっこいいドラムサウンドも位相がズレていては台無しですよ。
シンセレイヤーにおける位相の話
キックやスネアでマイク2本を使うのは同じ音色の異なった要素を合わせる。つまりシンセで言うところのレイヤーサウンドと似ています。つまりシンセサウンドで「なんかこのリード音抜けが悪いなー」というときにも位相補正は役に立つ可能性があります。
例えばこれはMoogエミュレーションで有名なSynapsのSaw波ですが、
逆相にしたSAW波も内蔵されています。
1つ1つは普通のSAW波形ですが、同時に鳴らすと次のようなサウンドになります。
このサウンド自体に意図があるならばそのまま使うのがいいかもしれませんが、そうでないのであれば位相を合わせた方が芯のある音になります。
このような場合もMAutoAlignを使うことで位相問題を解決してくれます。
EQ(イコライザー)をかけると位相がずれる理由
イコライザーをかけると位相がずれるという話を聞いたことがある人もいるかもしれません。位相のずれがおきやすいのは基本アナログイコライザーです。なぜならアナログイコライザーはアナログフィルターで構成されています。フィルターを構成しているのはコンデンサーです。このコンデンサーをは電気を蓄えるためのもの、つまりここでほんの僅かですが信号に遅れが生じるのです。これが主にイコライザーで位相がずれると言われる理由です。
デジタルイコライザーでは基本、位相のズレはおこりませんが、デジタルフィルターにはFIR型とⅡR型の2つの演算タイプがありⅡR型の演算方式の場合位相のズレが発生する場合があります。
生レコーディング派の人
生ドラムを使っている人は人はかなり心強い相棒になってくれると思います。また生ドラムでなくてもミックスクオリティにごだわる人「なんか音に迫力がないな」と思っている人も位相の可能性がありその場合はMAutoAlignで解決できる可能性が高いです。
レイヤーサウンドを多用する人
上記のようにシンセレイヤーを多用する人もオススメです。またフリーのソフトシンセなどでは逆相になっている波形も多いので、そういう波形の修正にも使えるかもしれません。
リスナーに幸せなひと時を提供したい人
少しでも聞いてくれる人に最高の音を届けたい。自分の頑張って作った曲でリスナーを喜ばせたいと真剣に思っている人にはMAutoAlignは向いています。もちろんこれですべての問題が解決するわけではありません。コンプやチートプラグインを使った方がわかりやすい効果は得られるかもしれません。
でもそうではなく神は細部に宿るといいます。その細部をおろそかにしない人MAutoAlignを使いこなし、最良の音を作れるように思います。
まとめ
たかが位相されど位相です。(いややっぱり位相は大事です)今回の例はかなりわかりやすい変化になりましたが、位相を意識することでミックスクオリティは本当によくなります。また位相を意識するようになるとより演奏技術を意識するようになり結果的に演奏スキルも上達します。
MAutoAlignがあれば何でも完璧に位相をあわせられるか?というとそうではありません。実際のところまずは同じパーツにマイクを2本使うキックやスネア、そしてダブルで録音したギター、そしてベースとキックの位相問題これらでMAutoAlignを使うのがわかりやすい効果を得られると思います。
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