「The Legend」は、Synapse Audioによって開発された、Minimoogのアナログシンセサウンドを忠実に再現するソフトウェアシンセサイザーです。
この記事では、The LegendがどのようにしてMinimoogの太いオシレーターサウンドと独特のフィルター開閉ポイントをエミュレートしているのかを紹介し、Arturia Mini V3、Monarkといった他の有名なMoogエミュレーションソフトウェアとのサウンド比較を行います。
DTM制作で「かっこいい」と思われるベースラインやシンセリードを作成したいプロデューサーにとって、The Legendはその音作りのしやすさと動作の軽さで、理想の選択肢となります。
synapse audio the legend サウンド比較
いくらエミュレーションがよく出来ていると言われても実機を知らない人からすれば「ふーん」で終わってもおかしくありません。なので今THE LEGENDを選ぶ人のポイントは「自分が求めるサウンドがそこにあるかどうか?」です。そのために必要はなのはMoogエミュレーションをしているVAソフトシンセを比較してみることです。
MOOGエミュレーションで有名なのは、ArturiaのMini V3 U-heのDIVA REAKTORのMONARK が有名です。他にもMoogサウンドのソフトシンセはありますが、サンプリングされた音源はエミュレーションとは言えないので今回除外します。なので今回はこの中から、Mini V3 The Legend MONARKを比較してみたいと思います。
Arturia Mini V3
MONARK
The Legend
出来る限りパラメータは似せましたが、同じ場所にすれば同じ音がでるということでもないというのが各ソフトの個性ともいえます。どれも一長一短がありながら、MOOGらしいサウンドになっていると思います。
さて、実はこれすべて1OSCしか使っていません。しかし1OSCだけでも太さは十分に伝わったと思います。The Legendのふくよかさは素晴らしいものがあります。しかし、MONARKもV3も負けてはいないように思いますが、実は同じ音量にするべく各ソフトでボリュームを調整しています。その結果The Legendはかなり下げる結果になりました。
音作りのしやすさ
これに関してはシンプルGUIがMOOGのウリですからどのソフトもそれほど変わりありませんが、The Legendには実機にないオシレーターがあったりADSRのリリースが搭載されています。MOOGはこの部分がちょっと個性的だったので、より音が作りやすくなっといえます。
調べたら逆ノコギリ波というらしいのですが、違いがよくわかりませんのでもう少し調べてみます。
各ノブのレンジとエフェクターを設定できます。The Legendのエフェクターはとにかく音が抜けます。めちゃめちゃ綺麗な空間にほりこまれます。そして、SATURATIONが太さの元凶wめちゃめちゃ暑苦しい音にできますw
音は太いが動作は軽い
とにかく軽いです。ユニゾンモードにしてもかなり軽いです。
いくらでも立ち上げる!必要はないかもしれませんが、軽いのは正義ですw
Mini V3とLegendの違い
発音数
同じMiniMoogのエミュレーションですが、音作りは実機を遥かに凌げます。
Legendが同時発音数がMAX 4音に対して 3OSCに4音なので12VCO
Mini V3は同時発音数が最大で32音になります。 3OSCに32音なので96VCOということになります。
もうこんな発音数を選択できる時点で真の王族直系ではないですよねw
やろうと思えばMini V3はMemory Moogのエミュレーションも可能になります。
オシレーターの種類
Mini V3は実機のMiniMoodと同じオシレーターで左から、
三角波、三角ノコギリ波、
ノコギリ波(SAW UP)
矩形波 1、
矩形波 2(パルス幅 25%)
矩形波 3(パルス 幅 10%)
オシレーター3 は三角ノコギリ波の代わりに SAW DOWNが使われています。
ミキサーとフィルターについて
ミキサーについてLegendにはFEEDBACKがついていて音の太さを調整できるような使い方が可能です。
フィルターについても本来実機のMoogはLPFの24Poleですが、
フィルタータイプを切り替えられたり、LPFの他にBPFも装備しています。
そしてフィルターエンベロープとアンプエンベロープにもリリースが装備されています。
(本来のMoogにはリリースというつまみはありません)
結構チート感がありますw
謎の復活の呪文を打ち込んで最初から結構の武器を装備しているみたいなもんです。
それに対してArturiaはあくまで生粋のレベル1からの音作りをすることになります。
小学生同士なら「ずっこいやんけ!」と喧嘩になるかもしれませんw
同じパラメーターならどんな音の違いになるのか?
比較するときに一番てっとり速い方法はスーパーで買物をしているおばちゃんに聞くことです。「ほなあんたおんなじもん食べ比べてみたら一発やんか」ということです。
LegendとMini V3はまったく同じパラメータではないので完璧に揃えることはできませんが、収容パラメーターは同じにして比較してみます。
両者共通
Parameter | Value |
---|---|
Oscillator 1 Waveform | Triangle Wave |
Oscillator 1 Range | 8 |
Oscillator 2 Waveform | Up Saw Wave |
Oscillator 2 Range | 16 |
Mixer Free Volume | 10 |
Filter Cutoff (Legend) | 264 Hz |
Filter Cutoff (Minii V3) | 264.4 Hz |
Resonance (Both) | 0 |
ENV AMT (Legend) | 6.95 |
ENV AMT (Minii V3) | 69.6% |
Filter Envelope (Legend) – A | 2 ms |
Filter Envelope (Legend) – D | 112 ms |
Filter Envelope (Legend) – Sustain | 0 |
Filter Envelope (Legend) – Release | 2 ms |
Filter Envelope (Minii V3) – A | 1.94 ms |
Filter Envelope (Minii V3) – D | 110.80 ms |
Filter Envelope (Minii V3) – Sustain | 0 |
Amplifier Envelope (Legend) – A | 2 ms |
Amplifier Envelope (Legend) – D | 1.2 s |
Amplifier Envelope (Legend) – Sustain | 10 |
Amplifier Envelope (Legend) – Release | 0 |
Amplifier Envelope (Minii V3) – A | 1.96 ms |
Amplifier Envelope (Minii V3) – D | 1.22 s |
Amplifier Envelope (Minii V3) – Sustain | 10.0 |
Volume (Legend) | 4 |
Volume (Minii V3) | 12.73 dB |
Legendに関しては背面パネルでの音作りが若干可能ですが、できるだけ0にしています。
Legend
Mini V3
全然違いますw
スーパーで買い物しているおばちゃんにこれを言ったら
「ほなあんた好きなほうこうたらよろしいやん」としか言えませんw
冗談はさておき、フィルターの開閉がまったく違います。さてここで「どっちのフィルターが正しいのか?」という疑問が出てきます。ということで、次は他のフィルタープラグインを使って調べてみたいと思います。
Mini V3のフィルターCUT OFFのポイントを調べる
Fab Filterをつかって26.4HzまでHighCutを入れてみます。
(基本的にはLPFもHighCutもやっていることは同じです)
FF Pro-Q3
こちらの方がLegendと近い気がします。次にMoogフィルタータイプのエミュレーションプラグインを作っているKazogというメーカーのSyntWarmerというプラグインを使って試してみます。
SyntWarmer
こちらもLegendとFab Filterに近い音色になりました。どうやら、この結果から言えるのは
Mini V3のフィルターは開きすぎているように思います。
Mini Filter
Arturiaがエフェクトプラグインとして出しているmoogFilterのエミュレーションです。
最初はMini Vシリーズからフィルターだけを抜き出したものかと思いましたが、カットオフのポイントはノブの位置だけを見ていてもかなり違います。
カットオフの数値がHzで表示されずに0.264となっていますが、ノブに表記されている数値絡みても264Hzと見ても間違いなさそうです。
結果はこちらもLegendとFF Pro-Q3、そしてSynthwarmerと近いカットオフポイントのように思います。
しかしMini Filterはローがブーストされているのはエフェクトプラグインとしての効果をわかりやすくするための処置のようにも思います。
さてここで疑問に思ったのは「V3はこのフィルターの開きだけどV2はどうだったか?」ということです。実はV2とV3ではかなり音が変化しました。
その変化の違いからV2にこだわるユーザーもまだ大勢います。
こちらもLegendとV3と同じ設定にして調べてみました。
フィルターのカットオフがLegendと近いですね。
また音のゆらぎもV3と違ってかなり揺らぐポイントもLegendと似ているように思います。
V3による改善が「改悪」なのか「違ったmoogサウンドのエミュレーション」なのか
わかりませんが、別物であることには変わりません。ENV AMTとCUTOFFのポイントを使えばもう少しLegendに近づけることもできますが、
まったく同じにはなりません。
この辺りは実機と比べてみないとなんともいえない感じもしますね。ただ、フィルターの開きを一緒にしてしまっては味がありませんのでV3はV3のフィルターを使いこなす意識をもった方が「かっこいいMoogベースサウンド」を「使えるMoogベースサウンド」にしていけると思います。
アナライザーによる比較
E1の鳴らして比較してみます。
赤がMini V3で緑がLegendです。
Legendは第2倍音がかなり多く出ているので根音の音をより太く聞かせる役目を果たしていそうです。
一方Mini V3はフィルターの開きが大きいのもありかなりLegendよりも多くの倍音が出ています。
そしてMini V3とは違ってLegendはかなり音がゆらぎます。
この辺りがアナログ感の演出でしょうか?
Mini V3も若干はゆらぎますが、ここまではゆらぎません。
しかしこうやって聴き比べてみると
Arturiaの方が荒々しさを強く感じ
Legendのは非常に紳士的な雰囲気を出している音源だということがわかります。
Synapse Audio「The Legend」の価格
Arturia V3は単品では149€(2018/05/25現在1€128円なのでおよそ19,000円)
U-he DIVA 22,000円
MONARK 12,800円
Synapse Audio「The Legend」の値段は定価12,000円です。
たまにセールで40%くらになるのでセールが狙い目かもしれませんが、少しでも速く「音が太くて存在感がありクオリティの高いMoogサウンド」を求めるならば、12,000円は買いです、このさきよりリアルなエミュレーションが出てくるかもしれませんが、おそらく使用頻度の割合から言っても元はすぐにとれます。
公式サイトで購入後、メールにてダウンロードサイトが送られてきますので登録をすませてそこで正規版をダウンロードします。インストール後レジストリコードを求められるのでメールに書かれているコードをコピペして認識させます。認証方式はコンピューターによるオンライン認証です。
このときmacの場合AUしかインストールされないことがあるので、一度再起動するとVSTも認識されます。
まとめ
ArturiaのV3を持っていてもMONARKをもっていも買いです!とにかく音がいい。新旧の音の良さを取り入れたTHE LEGENDは非常に使いやすく誰もが求めるわかりやすい太さを提供してくれます。