T-RackS 6 MAXが気になってるけれどどうなのかな?
今回追加された9つのプラグインはどれもすごいけれど、Master Match Xは、参考曲を分析してその音質やバランスを自動的にマッチングしてくれるマスタリングツールは便利だよ
izotopeのOzoneみたいな感じ?
そうだね、でもOzoneより扱いは簡単だし、CPU負荷も軽いから低スペックのマシンでも大丈夫だよ!
メリット | デメリット |
---|---|
豊富なモジュールとクリエイティブなエフェクト 直感的なユーザーインターフェース | AIによる効率的なマスタリングサードパーティプラグインの非対応 コストの高さ |
T-RackS 6 MAX
2024年9月5日にリリースされたT-RackS 6はIK Multimediaが誇る総合エフェクトバンドルです。今回6になったことで下記のプラグインが追加されました。
名前 | 種類 |
---|---|
Triad Chorus | コーラス |
Bass ONE | ベースサウンドジェネレーター |
Channel Strip X | チャンネルストリップ |
Delay Lab | ディレイ |
Dual Spring | スプリング・リバーブ |
Filter Fusion | フィルター |
LO-FI Punch | ローファイジェネレーター |
Master Match X | マスタリングツール |
Pusher | サチュレーション |
軽く触った限りですが、9つのプラグインはどれもが即戦力クラスの音質であり、ミックスからマスタリングをさらに強化できるラインナップとなっています。
またMaster Match XではAIによるマスタリング可能になったため、izotopeのようなAIによるマスタリングアシスタント機能を使えるようになったのはT-Racksシリーズの中で一番大きなニュースです。
それではT-Racks6 MAXで追加された製品の仕様についてさらに詳しく解説しますが、レビューを読みたい方はT-RackS 6 MAXレビューからお読みください。
Triad Chorus
80年代にトップ・プロデューサーやセッション・ミュージシャンが秘密兵器として愛用していた、ラックマウントのステレオ・コーラスをベースにしているTriad Chorus。
3VOICEからなるコーラスはそれぞれBPMSYNCが個別で行えるのが他のコーラスプラグインにはない特徴です。
どのメーカーのコーラスプラグインはであっても後発であればあるほどクリアさが際立ちますが、現在リリースされているコーラスプラグインの中で抜群の透明度を誇ります。
Bass ONE
Bass ONE は、ローエンドの処理に特化したプラグインモジュールです。オールインワン・マスタリング・ミキシングプロセッサーとしてすでにリリースされているONEの低音版といったところです。
Channel Strip X
Channel Strip Xはディエッサー、イコライザー、コンプレッション、トランジェントからなるチャンネルストリッププラグインですが、ユニークなのは、イコライザーノブはブーストカットした周波数のバランスを一括で処理できるのが大きな特徴です。
イコライザー処理するにあたって、大まかなブーストカットポイントを決めておけば、あとはそれらのバランス調整だけで最適なサウンドを見つけられます。
Delay Lab
Delay Labはダブリング、ビットクラッシャー、サンプルレートコンバーター、クリッピングを搭載したディレイモジュールです。使い方もシンプルで、初心者でもイメージしたディレイサウンドが作れます。
ダブリングに関してはかなりの精度で自然な形で疑似ステレオ効果を作り出します。
Dual Spring
Dual Springは、2つのスプリングユニットを使用し、素材選択、トーン調整、減衰、ステレオポジショニングなどを細かく設定できます。ビンテージの温かみからモダンな輝きまで、多彩なリバーブ効果を実現します。2つのスプリングのブレンド比率も自由に調整可能で、ボーカルや楽器に深みのあるリバーブ効果を加えることができます
Filter Fusion
Filter Fusionは、Moog®トランジスタ・ラダーフィルターにインスパイアされた5種類のフィルター(ローパス、ハイパス、バンドパス、ピーク、ノッチ)を備え、6dB/octから24dB/octまでのスロープ調整が可能。
カットオフ、レゾナンス、ドライブの調整に加え、ステップシーケンサー、エンベロープフォロワー、LFOを搭載し、バーチャルジョイスティックで3つのモジュレーションソースを制御できます。これにより、繊細な音色調整から大胆なサウンドデザインまで幅広い表現が可能となります。
LO-FI Punch
Lo-Fi Punchは、¥¥歪み、サチュレーション、フィルター、ワウ・フラッター、ノイズ、ピッチの揺れ、コンプレッションなどの効果を組み合わせて、音に厚みや立体感を加えることができるビットクラッシャー系プラグインです。
微妙な温かみから完全なクラッシュまで、幅広い音質の変更が可能で、トラックに質感、生命感、動きを与えることができます。
Master Match X
Master Match Xは、AI技術を活用し、最大3つのリファレンス楽曲の特性を解析して、ターゲットトラックのEQ、コンプレッション、バランスを自動的に最適化するAIマスタリングプラグイン。
Master Match Xは元々リファレンストラックを分析し、そのスペクトルバランスと知覚ラウドネスをキャプチャするMaster Matchという名前ですでに搭載されていたプラグインですが、今回はマスタリングに特化したプラグインとして生まれ変わりました。
直感的なインターフェースにより、経験レベルに関わらず簡単に使用でき、プロフェッショナルな音質を素早く実現できます。EQ、マルチバンドコンプ、リミッター、ステレオイメージャーを駆使して、リファレンスに近づけるよう調整可能
Pusher
Pusherは、5種類のサチュレーションアルゴリズムを備えたサチュレーションプラグインです。ドライブとカラーの調整により、柔らかな歪みから強烈なサチュレーションまで幅広い効果を得られます。
エンベロープフォロワーでダイナミクスを動的に制御し、ソロ機能やバンドのオン・オフ設定で各バンドの効果を細かく管理できます。音に厚みや温かみを加え、低音域の重厚感や高音域のエッジを調整することで、より深みのあるサウンドを作り出せます。
T-RackS 6 MAXレビュー
- AIによる効率的なマスタリング
- 豊富なモジュールとクリエイティブなエフェクト
- 直感的なユーザーインターフェース
- サードパーティプラグインの非対応
- コストの高さ
今回のアップグレードで追加されたのは以下の9つのプラグインです。この中で気になった2つのプラグインをレビューしていきます。
名前 | 種類 |
---|---|
Triad Chorus | コーラス |
Bass ONE | ベースサウンドジェネレーター |
Channel Strip X | チャンネルストリップ |
Delay Lab | ディレイ |
Dual Spring | スプリング・リバーブ |
Filter Fusion | フィルター |
LO-FI Punch | ローファイジェネレーター |
Master Match X | マスタリングツール |
Pusher | サチュレーション |
Master Match X
今回のアップデートの目玉はやはりMaster Match Xです。AI解析マスタリングツールといえばizotopeの Ozoneが有名です。では両者はどのように違うのかについてまとめてみました。
特徴 | IK Multimedia Master Match X | iZotope Ozone |
---|---|---|
主な機能 | リファレンストラック(最大3つ)の特性を解析し、EQやコンプレッションを自動適用して音質を最適化 | AIによる自動マスタリングに加え、個別パート処理や高度な音圧調整機能(ClarityやStem Focusなど) |
操作性 | シンプルで初心者にも扱いやすい直感的なインターフェース。 | プロ向けの詳細な設定が可能で、ElementsからAdvancedまで複数グレードが選択可能。 |
AI技術の活用 | リファレンス解析と自動適用に特化。 | パート分離や音質調整など多岐にわたるAI機能を搭載。 |
対象ユーザー | 簡単かつ迅速にプロフェッショナルなサウンドを求めるユーザー向け。 | より細かい調整や高度なマスタリングを求めるエンジニア向け。 |
追加機能 | プリセットによる簡易設定。 | Clarity(中高域強化)、Stem Focus(パート別処理)、Upward Compress(小音量強化)など独自機能。 |
izotopeとの違いは最大で3曲のリファレンストラックの特徴を解析し、EQやコンプレッションの音質を最適化するという点です。
また、リファレンスではMaster Match Xが用意しているジャンルのカテゴリからも解析は可能です。
では実際解析したデータをミックスに反映するとどのようになるのか聞いてみましょう。
まず何もしていない状態です。
以下のオーディオフィルにはMaster Match Xが使われます。音量にご注意ください。
今回はリンキン・パークのParpercut、ABBAのダンシング・クイーン、ジョン・ウイリアムズのレイダース失われたアーク、ジャンル的には、Alternative Rock、70’sPOP、Soundtrackというバラバラのジャンルにしてみました。
まずは、リンキン・パークのParpercut
ABBAのダンシング・クイーン
ジョン・ウイリアムズのレイダース失われたアーク
そして、最後はそれらを全部読み込んで解析させたもの
まったく異なる3つのリファレンス曲を同時に解析せた結果はわりとそれぞれの音の中間的な部分を捉えているように思いました。
ちなみにozoneとの音質の差はどのようなものか?気になりますよね?
イコライザーが超高域を猛プッシュするのは私のミックスというか音作りがOzoneが学習した内容とかけ離れているのが原因です。
操作できるパラメーターもモジュールも異なるので、どちらが良いか?というのは最終的に「好み」でしかないと思いますが、Master Match Xの方が密度が感じられます。
Master Match Xの使い方について
Master Match XにはINPUT、EQ,EQ Balance、EQ Match、Compression、Sytle、Limiter,Stereo Enhance、という8つのパラメーターを操作できます。
機能 | 説明 |
---|---|
INPUT | リファレンストラックを最大3つまで読み込み、解析するための入力部分。 |
EQ | リファレンスに基づいて自動生成されたEQカーブを適用。 |
EQ Balance | マッチング後にカスタマイズ可能なチルトEQを追加し、音のバランスを調整。 |
EQ Match | マッチングの強度を0%から200%まで調整可能。リファレンス曲線とのバランスを微調整。 |
Compression | EQマッチングとリミッターの間に配置されたマルチバンドコンプレッサー。全体的なダイナミクスを強化。 |
Style | 3種類のコンプレッションスタイル(Gentle、Balanced、Hard)から選択可能。 |
Limiter | カスタマイズされたStealth Limiterを使用し、最適なラウドネスと明瞭さを確保。 |
Stereo Enhance | ステレオ幅を拡大または縮小し、トラックのステレオイメージを調整。 |
AI解析で行われるのは、楽曲のEQカーブの特性とラウドネスであって、解析された内容が7つのパラメーターに反映されることはありません。手動パラメーターはあくまでAI解析後にさらに音を追い込むために使用します。
これらの手動パラメーターはT-Racks6で追加されたChannel Strip Xと一部のパラメーターを除いてほぼほぼ同じです。
つまり、Master MatchにChannel Strip XをくっつけたものがMaster Match Xとも言えます。
Bass ONE
低音処理に最適なプラグインですが、ANALOG,DRIVE,HARMONICS+SUBが音作りの要となるパラメーターです。
生成されるSUBベースがひずみがちなので、ピッチによっては音が濁って聞こえる可能性があるのでHARMONICSパラメーターで調整が必要になります。
モデリング系のベースに生っぽい質感を与えたいときにBASS ONEを通すことでほどよい倍音が加えられモデリング奥有のピエゾ感が減り、リアルなサウンドに近づけました。
このあたりはぜひバージョンアップで改善してほしいところです。
価格(同価格帯製品との比較)
T-RackS 6には内容が異なるグレードが用意されており詳細は次のようになります。
製品名 | 収録モジュール数 | 通常価格 | アップグレード価格 |
---|---|---|---|
T-RackS 6 MAX | 60 | $329.99 | $219.99 |
T-RackS 6 Pro | 40 | $219.99 | $164.99 |
T-RackS 6 | 19 | $109.99 | – |
T-RackS Intro | 3 | 無料 | – |
T-RackS 6 MAXはマスタリングツールだけではなく、60近いプラグインをセットにしたミックスツールでもあります。その内容から考えると以下のバンドル製品が比較対象になります。
製品名 | プラグイン数 | 価格 |
---|---|---|
T-RackS 6 MAX | 60 | $329.99 |
Platinum Bundle | 67 | $1,999(セール価格129.99) |
UAD Signature Edition Version 2 | 56 | $1,098.90(セール価格328.90) |
T-RackS 6 MAXとPlatinum Bundle、UAD Signature Edition Version 2はミックスに特化した多数のプラグインを揃えているという点は類似しています。初心者〜中級者クラスの人であればそれらの音質の違いはそこまで大きな問題ではなく、あとは操作性等がポイントになってきます。
今回T-RackS 6 MAXはAI解析によるマスタリングプラグインを導入したのは注目すべき点で、この先はおそらくUADもWAVESも同じような製品を出してくる可能性はあります。
まとめ
メリット | デメリット |
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豊富なモジュールとクリエイティブなエフェクト 直感的なユーザーインターフェース | AIによる効率的なマスタリングサードパーティプラグインの非対応 コストの高さ |
名前 | 種類 |
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Triad Chorus | コーラス |
Bass ONE | ベースサウンドジェネレーター |
Channel Strip X | チャンネルストリップ |
Delay Lab | ディレイ |
Dual Spring | スプリング・リバーブ |
Filter Fusion | フィルター |
LO-FI Punch | ローファイジェネレーター |
Master Match X | マスタリングツール |
Pusher | サチュレーション |
今回追加された9つのプラグインの中で注目はMaster Match Xですが、他にもChannel Strip XやBass ONE、Pusherなどもユニークなプラグインであり、新しい音作りの可能性秘めていますし、従来から搭載されているSunset studio reverbやTapeエミュレーションシリーズなどはIKの独自性の強いもので多くのユーザーが使用しています。
ミックスからマスタリングまで対応できるT-RackS 6 MAXを使えば、DAW付属のプラグインにはない1ランク上の楽曲クオリティにできるでしょう。