EDM系で使われる歪んだ感じのエグいリードサウンドを作りたいけれどどうやって作ればいいかわからない。
こんな人は今回紹介するAIR-Music-TechnologのVacuum Proがおすすめです。
Vacuum Proのプリセットには暖かみのあるシンセパッドやPluck系の音からタイトルにもあるEDM系のエグいリードサウンドをかんたんに作成/選択することが可能なので、音を自分で作りたいという人から、プリセットからサクッとかっこいい音を選びたいという人まで幅広く使うことができます。
この記事では実際の曲作りの中でVacuum Proを使ってみて気がついたメリットデメリットやちょっとした使い方のコツについて解説していきたいと思いますので、Vacuum Pro購入の参考にしてもられば嬉しいです。
Vacuum Proとは
マルチ総合音源のXpand!2やEDM系に強いウェーブテーブル方式のソフトシンセHybrid3を作ったAIRMusic Technologyのソフトシンセです。
Vacuum Proはアナログモデリングソフトシンセですが、他のアナログモデリングシンセにはない機能として、バーチャル真空管(TUBE)を6発搭載することで、他のアナログモデリングソフトシンセと比べるとより暖かみがあり、それでいてエグいサウンドを聞かせてくれます。
最初の印象は「どうせ他と変わらないんだろうなー」くらいのイメージでしたが、プリセットから音作りまで非常にストレスなく行え、各パラメーターの配置も高度にデザインされたソフトシンセだと言えます。
Vacuum Proの価格
通常$133がセールで$41になっています。いくら安くても自分のほしい音がそこにないのであれば高い買い物になってしまいます。Vacuum Proはアナログモデリング特有のウォームな質感からEDM系のエグいリードが強いので、かっこよくて定番のEDMが作りたい人にはかなりお買い得だと言えます。
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Vacuum Proのメリット
バーチャル真空管6発でつくるVacuum Proだけのサウンド

Vacuum Proのユニークな特徴として6つの真空管を搭載(エミュレーション)していることです。ディストーションエフェクトというよりはアクの強いサチュレーションといった感じになります。
サチュレーションを搭載しているアナログモデリングソフトシンセはよくみかけますが、Vacuum Proはオシレーターからミキサー、フィルター、ゲインなどセクション毎にバーチャル真空管を搭載していて、オシレーター以外ではサチュレーションの深さまで設定することが可能です。
ソフトシンセを扱っていると外部でサチュレーションを使うことがよくありますが、Vacuum Proではセクション別にサチュレーションを調整することで自分の思い描く音色にさらに近づけることが可能です。かゆいところに手が届く孫の手ソフトシンセともいえます。
Vacuum Proだけ!フィルターカーブの可変幅を自由に設定できる
ソフトシンセに搭載されているフィルターの多くは6dB 12dB 24dB 大体この3つの中から1つを選択するという方式になっています。しかし、Vacuum Proはカーブを選択するのではなく自由に設定できます。
これは今まで多くのハードシンセからソフトシンセのフィルターを見てきましたが初めてみました。アナログモデリングは倍音を削って音をつくるフィルターが肝になるのでフィルターサウンドに拘りたい人にはかなり強力な武器です。
最初はこの凄さはいまいちわからないかもしれませんが、「フィルターのカーブを0dB〜24dBまで自由に設定できるソフトシンセを知っているよ」というだけで一目置かれる可能性があるほど、シンセ好きの間でも注目する機能と言えます。
シンプルなインターフェイスで簡易的な音作りができる
Vacuum Proでは音作りに関する多くのパラメーターがありますが。SMART機能を使えば複数のパラメーターを一度に同時で動かせるため、かんたんな操作で複雑な音作りをすることが可能です。
SMART機能のパラメーターは次の画像のパラメーターと連携しています。
COMPREXITY


デチューンであるQUADの幅を調整できるパラメーターです。設定次第でSUPERSAW的な音作りができます。ただ、メイン画面でQUADがONになっていないと反応しないので注意が必要です。
TONE


TONEではHPFとLPFのカットオフのみを調整します。
EMPHASIS


EMPHASISではハイパスフィルターとローパスフィルターのレゾナンスとミキサーでのボリュームを調整します
FATINESS


FATINESSではバーチャル真空管のDRIVE量をコントロールします。音の太さをかんたんに調整できその結果も満足できるものだと思いますが、使いすぎると他の音色とのバランスが崩れる可能性もあるので、注意して使いたいところです。(でも本当にVacuum Proのサチュレーションは好きです)
PUNCH


PUNCHではエンベロープのアタックを調整します。
LENGTH


LENGTHは音の長さであるエンベロープのディケイとリリースを調整します。
CONTOUR


CONTOURではローパスフィルターのカットオフとレゾナンスを調整します。
MODULATION


MODULATIONの深さ(DEPTH)を調整します。メイン画面のDEPTHを動かしていないとSMARTのMODULATIONが反応しないので注意が必要です。デフォルトではVTO1にPITCHが割り当てられています。この状態でMODULATIONを動かすとユーロビートでよく使われるシンセリード的なニュアンスになります。
セクション別のランダマイズが便利!
Vacuum Proではランダマイズ機能で自動で音色を作ってくれる機能があります。ランダマイズ機能は他のソフトシンセでも使われている機能ですが、Vacuum Proが珍しいのはセクション別にランダマイズ化できるという点です。

赤く囲った部分をクリックするとランダマイズされますが、そのとなりのVTO VTF ENV MOD VTA をクリックでランダマイズさせるかどうかのON/OFFを切り替えます。オレンジに点灯しているとランダマイズされます。
Vacuum Proのデメリット
ユニークなソフトシンセですが、ちょっとした注意点もあります。
真空管タイプが選べない
バーチャル真空管を6発搭載されていますが、真空管タイプを変更できるようなものでありません。使い方としてサチュレーションを付加させるかどうかというものです。
リリースされた時期ではそのような機能は求められていなかったと思いますが、もしいま似たようなコンセプトのソフトシンセが出てきたらおそらく変更できるのを売りにしてくるように思います。
もしVacuum Pro2がリリースされるようなことがあればぜひ真空管タイプを選べるようにしてほしいところです。
ブラウザ機能がない
気に入ったプリセットが見つかってもブラウザ機能がないためにFavorite音色として登録することができません。最近では当たり前の機能ですが、Vacum Proには無いのでお気に入りのプリセットはSAVEなどをして管理することをオススメします。
Vacuum Pro使い方のコツ
パートコピー方法
基本的な使い方として、パートコピーは最初に覚えておきたい機能です。パートAで作った音をベースにしたい場合や、同じ設定にしてパンだけ左右に振り分けることでダイナミックに広がる音色をつくることができます。
画像の赤い四角にある部分をクリックすることでパートコピーになりますが、例えばAをBにコピーしたい場合はパートBの=Aをクリックします。つまり
「Bのパラメーター設定にAのものを上書きするね」という解釈です。間違えるとちょっとショボンとするので間違えないようにしてください。

おすすめプリセット
Vacuum Proはアナログらしいパッドやリードのプリセットもありますが、やはりFUZZ感たっぷりのいかついリード音が魅力です。それらを全部オススメしたいところですが、今回は次の4つを紹介します。
MEET Vacuum Pro Skip Rope Bass
Skip Rope BassはLFOで制御された3連風シーケンス風ベース音色です。
この音色を使うときはちょっとコツがあって、DAWのグリッドより少し前から打ち込むとテンポにジャストするようになります。
LEAD Bright Sort Psy
Sort PsyはFuzzとフィルターを駆使したいかにもなリードサウンドです。
LEAD Bright Xtreme
スクエア波的な雰囲気のリードですが、Short Psyにたような音色でこちらもご機嫌です。
Basses Basses Door Smasher
左右にパンニングするド派手なベースです。
これらの音色を組み合わせると次のようになります。
ドラムはUVIのBeat Anthologyを使っています。

えぐい感じがてんこ盛りになっていると思いますが、このようなジャンルはサクッとつくれてしまうのがVacuum Proの強みだと思っています。
Vacuum ProCPU負荷について
上記の曲では5つ使いました。そのCPU負荷がこちらになります。

ポリフォニック数を増やしたりダブルモードにするとCPUの負荷は上がりますが、そこまで気にする必要はないように思います。
CPU負荷計測環境
パソコン Macmini2018
CPU Corei7(i7-8700B)6コア HT使用時12コア 3.2GHz/ターボブースト(TB)使用時4.6GHz
メモリ 32GB
システム OS10.15.7 Catalina
Audio/IF APOGEE Symphony Ensemble
バッファー 256
DAW LogicPro10.6.3
48kHz/24bit
再生ストレージ HDD
Vacuum Proの特徴
真空管回路モデリングを備えた4オシレーターポリフォニックアナログシンセサイザー。
超ワイドで太く、有機的なアナログサウンドは、クラシックなシンセサイザーの特徴を捉えています。
巨大な積み重ねられたサウンドのための2つの個別のシンセサイザーパーツ。
伝説的なサウンドデザイナーによってプログラムされた350以上の調整可能なパッチ。
Smart Sound Randomizerは、設定をユーザー定義のパラメーターにダイヤルインします。
キーパラメータのプログラミングとマクロ制御を容易にする8つのスマートノブ。
エコノミーモードは、サウンドへの影響を最小限に抑えながら、ホストプロセッサの負荷を軽減します。
64ビットプラグイン:VST、AU、RTAS、およびAAX形式。
引用:Plugin Boutique Vacuum Pro販売ページ翻訳
Vacuum Proシステム要求環境
PC:
- Windows 10、8、またはWindows 7 Service Pack 1
- 最小デュアルコア2GHz(Intel Core i5またはi7を推奨)
マック:
- Mac OS X 10.8.5-11
- Core Duoプロセッサー(Core i5またはi7を推奨)
プラグインフォーマット
VST(32ビットおよび64ビット)の対象:
- Ableton Live、Cubase、VIP、MPC
AU(64ビットのみ)の対象:
- Logic Pro X
AAX:
- ProTools 11+(64ビット)
RTASの資格:
- 32ビットProTools
- 最小RAM4GB(8GB以上を推奨)
- 1GBのハードドライブの空き容量(ダウンロードとインストール)
- インターネットアクセス(ダウンロードと認証)
Hybrid3やXpand!2ではiLok認証方式でしたが、Vacum Proだけインターネットアクセスによるオーソライズが可能です。
まとめ
バーチャル真空管を搭載したVacum Proの音の強みは綺麗な音よりそのサチュレーションを活かしたエグいリード音にあるような気がします。Hybrild3にはデジタル的な音を担当させVucuum PROはアナログ的な音を担当させることで音色の差もわかりやすいので使用頻度がふえると思います。
イケイケな曲(古い…)を作りたいDTMerにはオススメです。
通常$133がセールで$41ならば満足できるアナログモデリングシンセだと思います。
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