DTMをするときに開放型ヘッドホンと密閉型ヘッドホンのどちらにしようか悩みますよね。色々と調べていくうちに「開放型ヘッドホンは音漏れがすごい」という話を聴いたことがあるかもしれません。では実際どれくらいの音漏れがあるのかを使い方を含めて今回は調べてみました。
開放型(オープン)と密閉型(クローズ)の違い(メリット・デメリット)
まずはヘッドホンの種類から見ていきたいと思います。ヘッドホンには大きく分けて開放型と密閉型の2種類があります。
左側が開放型のヘッドホン ゼンハイザーHD599 右側が密閉型スタジオ定番ヘッドホンと言われているMDR-CD900ST です。
この2つ以外にも多くの開放型/密閉型ヘッドホンが存在します。
2つのヘッドホンの構造的には以下のようになっています。開放型というのは音が外に逃げる構造で、密閉型ヘッドホンは音が外に逃げくい構造です。といっても100%遮れるわけではないので、大きな音で再生すれば当然音は漏れます。
密閉型ヘッドホンの特徴は
- 音が漏れにくい(遮音性が高い)=外からの音も入ってきにくい
- スピーカーに近い構造(ヘッドホン内部での空間内での音の反射)なので低音が若干出やすい
というものがあります。
開放型ヘッドホンの特徴は
- 音に広がりがある。
- 装着感がやさしい
これらの特徴はある意味表裏一体になっていて、密閉型には装着感がきつい(側圧がきつい)オープンは音が外に漏れるなどがお互いのメリット・デメリットになります。
使い方のポイント
密閉型ヘッドホンは、音の遮音性が高いため、ボーカルレコーディングなどのマイクを使った録音時に有効です。
開放型ヘッドホンは音の広がりあるのでミックスやマスタリング時に使いやすいです。ですが、密閉型ヘッドホンをミックス時に使ってはいけないという話ではありません。あくまで使い方の傾向性の話になります。
ただ、開放型を外出時に使うものなら通行人や交通機関での使用はやめた方がいいでしょう。驚くほど音が漏れます。
使い分けるポイントまとめると以下のようになります。
開放型ヘッドホン
リスニング | ◯ |
ミックス・マスタリング | ◯ |
作曲 | ◯ |
マイクを使った録音 | ✕ |
密閉型ヘッドホン
リスニング | △ |
ミックス・マスタリング | ◯/△ |
作曲 | ◯/△ |
マイクを使った録音 | ◯ |
録音時による物理的な音漏れ以外では正直どちらでもOKです。なので結論としては「集中力を持続させる方を使うべき」になってくるように思います。
人間の集中なんてたかが知れていて、ちょっとしたことで乱れたり途切れたりするわけですから、そういう環境をなくせるのならそれに越したことはありません。
開放型と密閉型の音漏れの違いについて
では実際のところ、開放型ヘッドホンと密閉型ヘッドホンでどれくらい音漏れの違いがあるのかを聴き比べて見たいと思います。
実際のところは人に装着するので厳密な測定にはなりません。
なお、「たぬきの耳にヘッドホンが当たってないじゃないか!」という野暮なツッコミは甘んじて受け付けます。
それでは開放型ヘッドホン ゼンハイザーHD598から
まず-16dBのピンクノイズを数秒流したあと、ロック系のBGMを流します。
続いて、密閉型ヘッドホンMDR-Z1000です。
これらをスペクトラム・アナライザーで表示すると以下のようになります。
赤がHD598(開放型ヘッドホン)緑が密閉型ヘッドホンMDR-Z1000です。
4kHz帯域においては最大で29dBもの差があります。
歌声は70dB〜90dBくらいなので、このノイズの方が歌声より大きいわけではありませんが、開放型ヘッドホンの方の音漏れ周波数が4kHzあたりに集中しているのを見るとコンデンサーマイクでは十分に拾ってしまうかもしれません。実際このビデオはiphone11のビデオカメラでマイクの距離10cm〜20cmの間に設定しています。もっと感度のよいコンデンサーマイクならもっと拾ってしまう可能性は非常に高いです。
明らかに開放型ヘッドホンの方が高域がよく漏れているのがわかります。効果をわかりやすくするためにりかなり大きめに音を出しているので、実際の使用時はもう少し音漏れは小さくなると思います。
この2つの比較だけを持って開放/密閉型ヘッドホンの音漏れと断定することはできませんが、他のヘッドホンであったとしても似たような音漏れになるとは思います。
まとめ
開放型ヘッドホンと密閉型ヘッドホンどちらがおすすめかと言われると録音するか否かによってきまると言えます。なのでどちらにも使えるのは当然密閉型ヘッドホンです。ですが、可能であればリスニング用&録音環境以外では開放型ヘッドホンによる音の広がりや付け心地は密閉型ヘッドホンでは得られません。
可能であれば両方もっておきたいところです。