- 楽曲のダイナミクスをもっと細かく管理したい!
- それらを一つのプラグインでやり終えたい
- どちらかに特化したものよりマスタリングでもミックスでも使えるプラグインであってほしい
こんな悩みはTDR Limiter 6 GEは最適です。一つのモジュール内に6つのダイナミクスモジュールを装備し自由に設定できる万能ダイナミクス VST プラグインです。
「でも、こういうのって絶対難しいに決まっている」と思っている人でも大丈夫です。
この記事では難しい説明は抜きにして「どんな音になるのか?」という音質面から説明しているので理解しやすい内容になっています。
TDR Limiter 6 GEとは?
TDR Limiter 6 GEは6つのモジュラーから構成されている非常に高機能なダイナミクスプラグインです。主にマスタリングで使用されることが多いですが、ミックスで使えます。
Tokyo Dawn Recordsって日本の会社?
Tokyoという名前がついているので日本の会社と思う人は多いですが、Tokyo Dawn Records(TDR)は、1997年にMarc Wallowyと友人で作った音楽集団の名前です。レコードという名前があるようにレーベル的な活動から始まり、それと同時に音楽制作プラグインの制作にも着手しました。
作られたプラグインはイコライザー、リミッター、コンプ、などがあり高品質にダイナミクスを管理できると世界中で評価されています。
またTDRはフリーのダイナミックイコライザーはプロアマ問わず人気です。(リンク先は後述します)
TDR Limiter 6 GEの特徴
TDR Limiter 6 GEは6つの高機能/高音質モジュールで楽曲のダイナミクスを細かく管理できます。
- ダイナミクスコンプレッサー
- クリッパー
- 高周波リミッター
- ピークリミッター
- 出力保護リミッター
- トゥルーピークおよびEBUラウドネスメーター
モジュールは自由に入れ替えることで意図としたダイナミクス管理が可能になります。
モジュール6個のうち4つは並び替え可能です。最後の2つのモジュール、OUTOPUTモジュールとメーターモジュールの位置は固定されています。
各モジュールは必要に応じてONとOFFを切り替えが可能です。
プロのエンジニアでさえもすべてのモジュールを使うことはまれなので、まずは自分使いたい機能だけから使うようにしましょう。大切なのは「全部の機能を使い切る」ことではなく「自分の曲をよくするための最適なツール選び」です。
TDR Limiter 6 GEの使い方
オーディオ信号の流れは左から右にながれます。モジュールの順番を考えるときは左がDAWでいうところのプラグインスロットの一番上と考えるようにします。
すべての機能を説明するのはあまりにも高機能なためいくつかポイントを絞って紹介します。
COMPRESSOR
TDR Limiter 6 GEでは4つのコンプレッサータイプを選択できます。
Alpha | クリーンな従来のコンプレッサーGlue用途に使える |
Sima | アグレッシブタイプなコンプレッサー 色が付きやすい マスタリング時には、DRYMIX機能と組み合わせて使用 するのが最適 |
Leveler | ※ |
Nova | ソフトニーコンプレッションタイプ 200Hz、3 dB / Octサイドチェーンフィルターを装備している。 ミックスバスに最適(低レイテンシーモードで実行するとライブレコーディングにも向いている) |
※レベリングコンプ 深くリダクションしてもナチュラル(光学タイプ的なコンプのかかり方?)
レベリングアルゴリズムでは、動的なゲインの低下は発生しませんでした。ゲインは、信号レベルがウィンドウの上限または下限を超えた場合にのみ変化します。これは、透過的な方法で長期のダイナミックレンジを制御するのに特に役立ちます。従来のコンプレッサーとは異なり、このモードは信号に圧力/張力の感覚を課しません(マニュアル翻訳より)
今回は音質差を確認するためにかなり深くコンプレッションしています。
実際聴き比べてみるとAlphaにはかなり密着感が生まれます。またLevelerはタイトな印象になのがわかります。
Peak Limiter
一般的なリミッターからマキシマイザーまで使える万能モジュールです。必要に応じてマルチバンドとブリックウォールタイプの2つのモードを選ぶことができます。
音質的な変化はそれなりに感じます。下記の画像はキックを通しただけの状態です。
Limiterオフの状態とデフォルトで通した状態、
LimiterオフとMULTIBANDをONにした状態
LimiterオフとB.WALLをオンにした状態
LimiterオフとMULTI&B.WALLをオンにした状態
音色の傾向はマルチバンドが低域の圧縮度合いと比較してHighが伸びているのがわかります。
HIFとClipper
(2つにまとめています、それぞれ独立したモジュールです)
地味に役立つのがHIFです。これはディエッサー的なものと解釈されがちですが、ハイ専用リミッターです。周波数待機は1500Hz〜18000Hzとなっていて、周波数を下げるとハイが削られていきます。その質感は決して悪いものではなく、オールドコンプのような音質もなります。
うまく使えば距離感をコントロールできる(奥行き感の調整)便利なモジュールでもあります。
クリッパーは突発的なピークを抑えるモジュールです。そのための機能として3つのモードを選択することができます。
B.WALL ハードクリッパー
OPEN 高周波のトランジエントに反応しやすい、なめらかなサウンド
LF CLIP 低周波特有のクリッピング
使い方のコツはコンプレッサーのしきい値は、クリッピングしきい値より少なくとも3〜6dB低くするのが最適とされています。
OUTPUT
ここは特化した機能というより「出力保護を目的した」モジュールという考え方でよいと思います。B.WALL Limiterがあるは言え、ここまでの段階で音が割れているような状態にするのは避けるべきなので、ここでのリミッターは使わないのを前提とするという考え方ベストです。
使用環境
indows
- Win XP SP2 or above
- VST (32-bit / 64-bit)
- AAX (64-bit only)
Mac
- Mac OS X 10.7 or above
- VST, AU, AAX (64-bit only)
TDR Limiter 6 GEのメリット・デメリット
彫刻をするようにダイナミクスを調整できる
6つのモジュールを駆使すれば、調整できないダイナミクスはないでしょう。それは一本の木から作り上げる一種のアートにも似ています。ミリ単位でクオリティの高いダイナミクスを作り上げることができるプラグインは探せば色々とあるとは思います。
しかし、それらを集めるのはかなり骨が折れる作業です。その作業の悩みをTDR Limiter 6 GEは解決してくれます。
配信フォーマットへの調整が簡単
TDR Limiter 6 GEには優れたピークメーターがあり、そこで配信先のフォーマットを設定してメーター管理が可能です。
やり方は簡単です。
メーターの下部の青い方をSHORT TERMにします。
次にメーターの測定ボタンをクリックしてLUFSの値を設定フォーマットにするだけです。
動画で説明すると以下のようになります。
(あくまでLUFSの設定方法なのでミックスの方は気にしないでください)
CPU負荷は多少高い
- パソコン Macmini2018
- CPU Corei7(i7-8700B)6コア HT使用時12コア 3.2GHz/ターボブースト(TB)使用時4.6GHz
- メモリ 32GB
- システム OS10.14.6 Mojave
- Audio/IF Motu896HD
- バッファー 256
- DAW LogicProX10.4.8
- 再生ストレージ HDD
上記の環境でTDR Limiter 6 GEデフォルト設定(Precise)ですべてのモジュールをONにすると25%を超えてきます。
しかし、TDR Limiter 6 GEにはCPU負荷を調整できる機能があるので必要に応じて切り替えるとよいでしょう。
ECHO
Insane
Low Latency
まとめ
TDR Limiter 6 GEは
- 6つの高機能/高品質のダイナミクスモジュールからなるプラグイン
- CPU負荷は高いが設定変更で負荷調整が可能
- 配信フォーマットのLUFS設定が可能なピークメーター装備
TDR Limiter 6 GEはかなり高機能です。それゆえダイナミクス調整に不慣れな人にとってはわかりにくい部分もあるかもしれません。そういうときは
一つの一つのモジュールから覚えていくとよいでしょう。
「せっかく買ったんだから全部使えなければいけない!」という考えはすてて今自分の曲に必要な機能を絞って使うのも立派なセンスです。
彫刻レベルのダイナミクス管理ができるTDR Limiter 6 GEオススメです。