UniChannelはマイクプリ、イコライザー、コンプを3種類ずつ搭載し、最大で27種類の組み合わせを実現した変幻自在のチャンネルストリッププラグインです。
非常にシンプルでわかりやすいインターフェイスになっており、ボタン1つで自由に組み合わせを変更することが可能ですし、それらの機能を最大限に生かしたプリセットも多数用意されています。
今回はUniChannelの使い方と一緒に、それぞれのセクションの音質をわかりやすく比較するために複数のサウンドデモを用意しています。また、ミックス時に使う場合と、作曲段階から使う場合とで見えてきた、メリット・デメリット、などを詳しく解説しています。
UniChannel サウンドレビュー
プリセットによる音質比較として、ドラム、ピアノ、マスターとそれぞれでUniChannel のサウンドを比較してみます
ドラム
ベース
ピアノ
マスター
比較してわかったのはALL GEの音量がALL BR,ALL USと比べて4dBくらい大きいこと。そのためゲインでなるべく近い音量になるよう調節しています。
音量の差はあるにせよ。GEの質感とふくよかさはかなり気持ち良いです。USはカラッとすっきりとした音ですが、GEと比べると少し芯が細い印象も受けました。
それ以外に面白いと思ったのはコンプでゲインリダクションが触れていなくてもコンプのスイッチをOFFにするとかなり質感が変化するということ。調整になれるまで少しなれが必要かもしれませんが、音はかなり良いです。
機能及び操作性
UniChannelの魅力はマイクプリ、イコライザー、コンプレッサーがそれぞれGE(ドイツ)US(アメリカ)BR(ブリティッシュ)の3タイプが用意され、それらを自由に組み合わせることで最大27通りの音作りが可能になることです。
この3タイプを1つのプラグイン内で自由に組み合わせることのメリットは次の通りです。
DAWのプラグインスロットを占有しなくていい
音作りにおいてとてつもなく時短
マイクプリ、イコライザー、コンプレッサーというプラグインを立ち上げた場合、当然ながらプラグインスロットは3つ埋まることになります。3つもあるとそれぞれのパラメーターを把握するのにも一苦労になります。これらを1つのスロット内で完結することで、プラグインをまたいだ音作りの必要がなくなります。
「やっぱり違うから変えよう!」と思ったら毎回その3つのスロットのものを変更していくのはかなり大変
UniChannelではボタン1つでマイクプリ、イコライザー、コンプの切り替えが可能なので、音を変更したいと思ってもすぐに対処できます。
VARM Ⅱ Technologyによるアナログ回路の再現
UniChannelの音はふくよかであり高品質です。音が丸いと聞くと「こもっている」と捉えていしまう人もいるかもしれませんが、音に下品なギラツキがなく音に気品を感じます。その理由がVARM Ⅱ Technologyです。
VARM IIは、アナログ世界の混沌とした振る舞いとランダム性の知識に基づくテクノロジーです。VARM IIのおかげで、各プラグインインスタンスの動作は少し異なります。VARMは、実際の電気ユニットや実際のコンソールチャネルとまったく同じように、電気部品の値の微妙な違いのランダム性をモデル化します。その結果、ハードウェアユニットのサウンドが最も正確に表現されます。
このマイクプリモデリングしたDAW FRONTというエフェクトプラグインだけを販売するほどVARM Ⅱ Technologyはよく出てきています。(DAW FRONTはVARM ⅠTechnologyでありUniChannelはバージョンⅡになっています)
各セクションを任意にバイパスできる
イコライザーとコンプでは個別にBYPASSスイッチが搭載れています。
これはマイクプリはいいけれど、どうしてもイコライザーやコンプは他のものを使いたい!という要望に答えてくれるものです。「チャンネルストリップでイコライザーとコンプをBYPASSするのってチャンネルストリップの意味なくない?」と思うかもしれません。
たしかに先程お話しした違うプラグインを使うということは結果的にプラグインスロットを多く使うことになります。しかし、これはUnited Pluginのクリエイターに対する紳士な回答と私は受け取ります。自社のプラグインに自信があったとしても最終的にそれを使うかどうかの判断をするのはユーザーであり、そのユーザーが最高の結果を得るためにイコライザーやコンプや好みのものをチョイスできるようにする。
こういう考え方なのではないかと私は考えます。
各パラメーターはテンキー入力が可能
UniChannelではノブなどの上でダブルクリックすることでテンキーでの入力画面が表示されますし、右クリックではHelpおよび設定デフォルト値に戻す画面が表示されます。
音作りのための音質への拘りとそのために必要な操作性、それらを見事に融合させています。
もちろん、毎回私が口をすっぱくするほど言っている。イニシャライズプリセット(向上出荷時)もちゃんと用意されています。
さて、少し余談ですが、テンキーの画面に見覚えがある人もいるかもしれません。Autoformerの記事で書いていますが、United Pluginは多数のエフェクトプラグイン/音源をリリースしているmeldaproductionの支援を受けています。そのためなのかはわかりませんが、テンキーの雰囲気がよく似ています。
使用していないときはCPU負荷を下げるインテリジェントスリープ
CPU負荷を少しでも抑えることはプラグインデベロッパーの課題の1つです。UniChannelは使用していないと自動スリープになりCPUへの負荷を軽減してくれます。CPU負荷が原因で再生がとまるなどのトラブルを少しでもなくし、快適な音作りに集クリエイティブな時間をコミットしてくれるUniChannelは使えます。
CPU負荷について
CPU負荷はそれほど高くありませんので、ソフトシンセとの併用も可能です。
CPU負荷計測環境
パソコン Macmini2018
CPU Intel Corei7(i7-8700B)6コア
HT使用時12コア 3.2GHz/ターボブースト(TB)使用時4.6GHz
メモリ 32GB
システム OS12.6.1 Monterey
Audio/IF Focusrite RED 8PRE
バッファー 256
DAW LogicPro10.7.7
48kHz/24bit
再生ストレージ SSD
United Plugin UniChannelのデメリット
Logic Proでのプラグイン表記が少し分かりにくい
United Pluginには3つのブランドがありそれぞれで斬新でクリエイティビティなプラグインを制作しています。しかしそのため、DAW上でプラグインを選択するときはそれぞれのブランド名でカテゴライズされています。
個人的にはUnited Pluginでカテゴライズしてほしいところです。
コンプとイコライザーの順序が決まっている
UniChannelの音の流れはマイクプリ、イコライザー、コンプという順番です。しかし人によってはイコライザーとコンプを入れ替えたいという人もいるかもしれませんが、残念ながらUniChannelではそれができません。
次回のアップデートでこの順番の入れ替えができるようになると、さらに操作性がよくなるように思います。
このプラグインの順番(プラグインチェーン)は音作りにおいて意味を理解するとより音作りに深みがでるのでよければ下記の記事も一緒に読み進めていくことをオススメします。
パラメーター等を動かしても数値で表示されない
マイクプリやコンプなのノブを動かしてもそれが数値上でどのくらい動いたのかが表示されません。もちろん耳で判断するのが重要なのはわかりますが、自分が動かしているパラメーターが何デシベルくらい動いたのか気になる人も多いと思います。
一応、動かしたノブの数値は、テンキー入力画面で最初に表示されています。
電卓の上の部分に+3.07dBと書かれているのが現在のノブのポジションになります。個人的には動かしたらすぐ近く。または、下の黒い部分でもいいので表示してほしいところです。
United Plugin UniChannelの使い方のコツ
初心者にオススメのプリセットから使い始めよう!
UniChannelはマイクプリ、イコライザー、コンプのそれぞれにⅢ種類ずつタイプがあるとお話しました。自分で好みの組み合わせを楽しみたい!という前に試してほしいのがタイプ別のイコライザーです。
Rootと書かれたフォルダーの中にあるAll〇〇と書かれたプリセットはマイクプリ、イコライザー、コンプそれぞれをすべて同じタイプでまとめたものになります。まずはここでそれぞれの音質の方向性を確認していくとよいでしょう。
UniChannelのインプットとマイクプリエミュのインプット量を意識して音作り!
UniChannelにはプラグイン自体のインプット/アウトプットがあります。このプラグインに入ってくるインプット量を考慮しながらマイクのインプットを調節することでよりカラーが出やすくなります。
作り方は好みによるところもありますが、私の場合はプラグインへのインプット量はレッドゾーンにいかないようにゲインプラグインで調整しています。その方がマイクプリのインプット量による音作りの幅が広がると考えているからです。
まとめ
チャンネル・ストリップとしてはユニークな3タイプを組み合わ方式のUniChannel は音良し、使い勝手よし、見た目良しの万能チャンネルストリップです。
すべてのトラックに使いたくなるほど気に入っていますが、あまり使いすぎると飽和気味になってしまうので、インプット量を意識しながら、使っていきたいと思います。
DAWの付属のチャンネル・ストリップやコンプ、イコライザーに飽きた!。という人や同じツールばかり使っていると音がマンネリしてきます。「そんなことを言うやつは根性ないやつだ!」「DAW付属のプラグインでもいいものは良い!」という声もあるでしょう。その考え方を否定するつもりはありませんが、やはり新しいツールから得られるインスピレーションやワクワク感もまた否定できない事実です。
変幻自在のチャンネル・ストリップUniChannelで自分ならではの音を作り込んで見るのはいかがでしょうか?