AntelopeからリリースされているオーディオインターフェイスZEN Q Synergy CoreとZEN GO Synergy Coreは外観もよく似ているのに価格差が3万7千円程度、そこにどのような価値と意味を見出せばよいのか迷っていませんか?
この記事では、両者の機能や音質、操作性などを実際触って比較し検証しみてました。
結論から言えば「中級者以上ですでにオーディオインターフェイスを所持ているならばZEN Q Synergy Core」「初心者で最初の1台とするならばZEN GO Synergy Core」という認識です。
もちろん、初心者であってもZEN Q Synergy Coreは大活躍しますし、決して機能が多すぎて使えない!ということにはなりません。ZEN Q Synergy Coreでは使い勝手の面でかゆいところに手が届く印象です。
ZEN Q Synergy Core 外観
ZEN Q Synergy Coreは、24ビット/192 kHzのスペックを持ち、高品質なマイクプリアンプにDSPプロセッシング能力を備えたスタジオや音楽制作現場に最適なパスパワータイプのオーディオインターフェイスです。
特にマイクプリの音質については同価格帯の中ではトップクラスであり、その音質は耳の肥えたプロのエンジニアも認めるほどのものです。
それでは外箱からチェックしていきます。箱の大きさは以前紹介したZEN GO Synergy Coreとほぼ同じ大きさです。
付属品はスタートアップ・マニュアルとUSBケーブルにになります。
外観はマットな雰囲気で高級感もあり、見ているだけでもテンションがあがります。
公式では1.08kgと言われていますが、図ってみたところ809gです。ひょっとしたら箱こみの重量なのかもしれません。
軽すぎず重すぎずバランスのとれた重量といった感じがします。
またレビュー内容としては、主にZEN GO Synergy Coreとの比較をベースにしながら解説していきたいと思います。
ZEN Q Synergy Core サウンドレビュー
ZEN GO Synergy Coreのと同じディスクリートタイプのマイクプリになります。ZEN Q Synergy Coreに限らずAnelopeのマイクプリは音質が本当に素晴らしいです。ZEN Q Synergy CoreもZEN GO Synergy Coreには高品質なマイクプリが2つ入っているのでステレオ入力もできます。
音質的には多くを語る必要がないほど素晴らしく音の芯をしっかりと捉えて録音できるので細かなニュアンスまで残さず収録できます。この録音クオリティでなれてしまうと安いオーディオインターフェイスの音質もよく分かるようになります。
以下のデモはZEN GO Synergy Coreのページで紹介している音源と同じです。ギターを繋いで内蔵のDSPエフェクトを使って録音しました(それ以外は打ち込み音源を使用しています)
機能性および操作性
ZEN Q Synergy CoreとZEN GO で一番違うのは入力端子の数です。
マイクプリ | ライン入力 | ADAT | ||
ZEN Q Synergy Core | 2つ | 2つ | あり | |
ZEN GO Synergy Core | 2つ | 0 | 無し |
ZEN GO Synergy Coreでは、同時に2チャンネル(モノラルX2,またはステレオX1)までしか録音できませんでしたが、ZEN Q Synergy Coreはマイクプリとは別にライン入力が2つ追加されているので、4チャンネルの同時録音が可能になるため、小規模なバンド設定であれば同時に録音ができるのはZEN Q Synergy Coreのメリットです。
またマイクプリおよびラインインにはZEN Q Synergy CoreのDSPエフェクトを使ってかけどり録音が可能です。
その場合DAWで使用するのとは違い、レイテンシーがほぼ無いので音の遅れ等は一切気にしなくて良いのでレコーディングに集中できます。
外部エフェクターみたいなものだね
クオリティの高いリバーブもあるし使い勝手はホントに良いよ!
そして、ADAT出力を装備したミキサーやマイクプリを使うことで同時録音は最大で12チャンネル(S/PDIFを使用すれば最大で14チャンネル)まで拡張できます。
スタンダードなバンド編成はZEN Q Synergy Coreで録音が完了できます。
自宅で一人で使用するのであれば、ZEN GO Synergy Coreでも問題ありませんが、楽曲のクオリティアップのためにドラムやギターをレコーディングしたい!となった場合はZEN Q Synergy CoreとADAT出力を装備したマイクプリの組み合わせがオススメです。
ライン出力が2つ独立して動かせる
ZEN GO Synergy Coreではライン出力は一つ(TRSとRCAのどちらかを使う)でしたが、ZEN Q Synergy Coreでは、それぞれを独立して動かせるため、一つはラージサイズのスピーカーに接続し、もう一つはIK MultimediaのiLoud Microスピーカーなどを使用することでミックス環境の切り替えられます。
使ってみるとこれはかなり便利です。
本来であればモニターセレクターを使用しなければいけない機能ですが、ZEN Q Synergy Coreはライン出力を2つにすることでその機能を果たしています。
コントロールパネルでも操作は可能ですが、ZEN Q Synergy Coreの大きなダイアルをクリックすることで今しているモニターのON/FFが切り替え可能なので、スピーディーに変更できます。
液晶パネルの明るさが違う
ZEN Q Synergy Coreの方がバックライトによる発光が大きいのか全体的に明るく見えます。個人的には明るく見える方が好きなのでZEN Q Synergy Coreの方が見栄えがいいですね。
ただ、ZEN GO Synergy Coreはコントロールパネル上で明度を変更できるモードがあったのに対してZEN Q Synergy Coreではそれがありません。
液晶パネルの消費電力がどくれいかはわかりませんが、ZEN GO Synergy Coreにもつけておいてもよかったのでは?と思ってしまいました。
USB端子が一つしかない
ZEN GO Synergy Coreではコンピューターに接続するUSB端子が2つありましたが、ZEN Q Synergy Coreでは一つしかありません。外部電源は音質に影響を与える一つの要素なので、これはZEN Q Synergy Coreにもあってよかったのでは?と思ったりします。
若干癖があるコントロールパネルも慣れれば平気な操作性
ZEN GO Synergy Coreも他のAnelopeのオーディオインターフェイス同様にランチャーとコントロールパネルを使って主な機能を操作します。
しかし必要以上に開いてしまうコントロールパネルなど少し癖がある面がありますが、それが操作性を邪魔して前に進めないほどひどいものかと言われるとそうではないように思うので、現状では仕様と割り切るくらいの方が気持ち的に楽になります。
コントロールパネルが必要以上に立ち上がる以外は安定!
上記でもお伝えしましたが、コントロールパネルの不必要な立ち上がりについては改善を望みたいところです。
スリープから戻るタイミングで毎回コントロールパネルが再起動するという部分に煩わしさを若干感じないでもないですが、プロジェクト中にコントロールパネルが落ちて作業が止まってしまうというような重いトラブルはなく私の環境では思っている以上に安定しています。
ZEN GO Synergy Coreより少し個体に熱を持つ
ZEN GO Synergy Coreが驚くほど発熱が少ないのに対して、ZEN Q Synergy Coreでは底面が少し暖かく感じます。機能が増えているのと液晶パネルのサイズがZEN Q Synergy Coreの方が大きく明度変更ができないためによる発熱かもしれません。
ですがこれらはZEN Q Synergy Coreを使用する上でまったく問題はないように思います。
価格
4
953.00ドル(メーカー価格)
ZEN GO Synergy Coreとのコストバランスをどう捉えるのかがポイント
ZEN Q Synergy Core | ZEN GO Synergy Core | |
マイク入力 | 2(XLR) | 2(XLR) |
ライン入力 | TRS | 無し |
モニターライン出力 | 2 | 1(TRS及びRCA) |
デジタル入/出力 | 2 | 2 |
ヘッドホン端子 | 2 | 2 |
コンピューター接続端子 | 1 | 2 |
コンピューター接続端子 | 1(USB3) | 2(USB+外部電源供給USB端子) |
ADAT入力 | 1 | 無し |
価格 | ¥ 99,800円〜 | 62,800円〜 |
機能面から価格を見ると、次の2点が購入検討材料になります。
- ZEN Q Synergy CoreはADAT入力の使用の有無
- マイクプリアンプとライン入力を同時で使うかの有無
- ライン出力を分ける
このポイントで3万7千円の費用を捻出できるかはしっかりと見極めたい
ZEN Q Synergy CoreはADAT入力の使用の有無
実際のところ、最初の方でもお伝えしましたが、ホームスタジオで打ち込み音源を多様し、レコーディングはボーカルかギターのみ、という環境であればZEN Q Synergy Coreでなくても問題はありません。
ただ、音楽制作は年月を重ねる度に「あれもしたいこれもしたい!」「バンド録音をしてみたい」とという欲が出てきた場合にスムーズに対応できるとそれだけ新しい挑戦ができるため、よりDTMは楽しくなるでしょう。
マイクプリアンプとライン入力を同時使用の有無
こちらも上記と似たよな内容ですが、例えばZEN GO Synergy Coreはマイクプリアンプを2チャンネルまでしか同時に録音はできませんが、ZEN Q Synergy Coreはフロントのライン入力(G1、G2)も使う場合最大で4チャンネルの同時録音が可能です。
例えば、自宅でギターとベースとボーカルでちょっとした練習をしたい、それを録音したいといった場合にはZEN Q Synergy Coreではないとできなくなります。
ライン出力を分ける
サイズの違うスピーカーを繋いでそれらをコントロールパネルで切り替えることで再生環境の最適化を作り出せます。これはミックスの中級者以上の人にはありがたい機能のように思います。
現状の金銭面ではそこまでコストをかけられないという人はZEN GO Synergy Coreがおすすめですが、入力の多いプロジェクトや、モニタースピーカーの切り替えを考えている人はZEN Q Synergy Coreを選択した方がやりたいことをストレスなしにできるでしょう。
Antelopeは有名なマイクをエミュレートしたモデリングマイクを使用することで、最高の録音環境を手にすることができます。
ZEN Q Synergy Coreのレイテンシーについて
ZEN Q Synergy Coreのレイテンシーについて公式サポートについて訪ねたところ以下の解答が得られました、
計測内容はWindows10での計測、次にMacOS Venturaでの計測、これらはAntelope専用のドライバーをインストールしての計測で、最後はMacのCore Audioでの計測となります。
WINDOWS 10 | Zen Q SC USB | Zen Q SC TB3 | |
S.RATE | BUFFER | LATENCY | LATENCY |
44,1 | 256 | 15.102 ms | 11.723 ms |
48 | 256 | 14.562 ms | 10.771 ms |
88,2 | 256 | 8.878 ms | 5.907 ms |
96 | 256 | 8.635 ms | 5.427 ms |
176,4 | 256 | 5.068 ms | 2.999 ms |
192 | 256 | 4.938 ms | 2.755 ms |
44,1 | 512 | 26.916 ms | 23.696 ms |
48 | 512 | 25.896 ms | 21.171 ms |
88,2 | 512 | 14.785 ms | 12.075 ms |
96 | 512 | 14.292 ms | 11.094 ms |
176,4 | 512 | 8.520 ms | 6.264 ms |
192 | 512 | 8.271 ms | 5.755 ms |
44,1 | 1024 | 50.522 ms | 46.553 ms |
48 | 1024 | 48.562 ms | 42.771 ms |
88,2 | 1024 | 26.587 ms | 23.322 ms |
96 | 1024 | 25.625 ms | 21.427 ms |
176,4 | 1024 | 14.416 ms | 11.706 ms |
192 | 1024 | 13.938 ms | 10.755 ms |
MacOS Ventura | |||
Zen Q SC USB | Zen Q SC TB3 | ||
S.RATE | BUFFER | LATENCY | LATENCY |
44,1 | 256 | 15.034 ms | 11.859 ms |
48 | 256 | 14.271 ms | 10.896 ms |
88,2 | 256 | 9.127 ms | 6.043 ms |
96 | 256 | 9.333 ms | 5.552 ms |
176,4 | 256 | 6.905 ms | 3.124 ms |
192 | 256 | 7.375 ms | 2.870 ms |
44,1 | 512 | 26.531 ms | 23.469 ms |
48 | 512 | 24.938 ms | 21.562 ms |
88,2 | 512 | 14.932 ms | 11.848 ms |
96 | 512 | 14.667 ms | 10.885 ms |
176,4 | 512 | 8.819 ms | 6.026 ms |
192 | 512 | 10.042 ms | 5.536 ms |
44,1 | 1024 | 49.887 ms | 46.689 ms |
48 | 1024 | 46.250 ms | 42.896 ms |
88,2 | 1024 | 26.542 ms | 23.458 ms |
96 | 1024 | 25.333 ms | 21.552 ms |
176,4 | 1024 | 15.601 ms | 11.831 ms |
192 | 1024 | 15.380 ms | 10.870 ms |
Zen Q SC USB | Zen Q SC TB3 | ||
S.RATE | BUFFER | LATENCY | LATENCY |
44,1 | 256 | 15.624 ms | Can’t Test |
48 | 256 | 14.604 ms | Can’t Test |
88,2 | 256 | 9.762 ms | Can’t Test |
96 | 256 | 9.260 ms | Can’t Test |
176,4 | 256 | 6.587 ms | Can’t Test |
192 | 256 | 6.344 ms | Can’t Test |
44,1 | 512 | 27.846 ms | Can’t Test |
48 | 512 | 25.854 ms | Can’t Test |
88,2 | 512 | 15.884 ms | Can’t Test |
96 | 512 | 14.885 ms | Can’t Test |
176,4 | 512 | 9.688 ms | Can’t Test |
192 | 512 | 9.193 ms | Can’t Test |
44,1 | 1024 | 51.066 ms | Can’t Test |
48 | 1024 | 47.146 ms | Can’t Test |
88,2 | 1024 | 27.494 ms | Can’t Test |
96 | 1024 | 25.573 ms | Can’t Test |
176,4 | 1024 | 15.493 ms | Can’t Test |
192 | 1024 | 14.526 ms | Can’t Test |
Antelope ZEN GOと比較すると
48kHz/512BUFFER | |
Zen Q SC USB(Windows) | 25.896 ms |
Zen Q SC TB3(Windows) | 21.562 ms |
Zen Q SC USB(MacOS Ventura) | 24.938 ms |
Zen Q SC TB3(MacOS Ventura) | 21.562 ms |
Zen Q SC USB(Core Audio) | 25.854 ms |
Zen Q SC TB3(Core Audio) | Can’t Test |
Apogee Ensemble TB | 22.6ms |
Macの場合Core Audioでも動きますが、専用ドライバーをインストールするとわずかにレイテンシーが速くなります。
まとめ
メーカー | Antelope |
製品名 | ZEN Q Synergy Core |
スペック | 接続端子:USB 3.0 Type-C x1S/PDIF IN/OUT x1 ADAT IN/ x1 ヘッドフォン出力 x2 ライン出力 x2 マイク/ライン入力 x4 最大サンプリングレート:24bit/192kHz プロセッサー:Synergy Coreプロセッサー プリアンプ:DiscretePRO x4 ミキシング:DSP+ファームウェア ローパス/ハイパスフィルター:DSP+ファームウェア コンプレッサー:DSP+ファームウェア イコライザー:DSP+ファームウェア リバーブ:DSP+ファームウェア ディレイ:DSP+ファームウェア ギターアンプモデリング:DSP+ファームウェア幅216mm × 高さ42mm × 奥行き155mm 重量:1.08kg |
マニュアル | 公式サイトに日本語あり |
価格 | 953.00ドル(メーカー価格) |
改めて両者の違いを見ると、コスパ的にはZEN GO Synergy Coreの方が良いように思いますが、これは自分が関わっているプロジェクト及び、自分が何をしたいかによってその価格差は埋められるように思います。
ZEN Q Synergy Core | ZEN GO Synergy Core | |
マイク入力 | 2(XLR) | 2(XLR) |
ライン入力 | TRS | 無し |
モニターライン出力 | 2 (個別出力可能) | 1(TRS及びRCA) |
デジタル入/出力 | 1 | 1 |
ヘッドホン端子 | 2 | 2 |
コンピューター接続端子 | 1(USB3) | 2(USB+外部電源供給USB端子) |
ADAT入力 | 1 | 無し |
アナログ同時録音 | 4(ADAT及びS/PDIF使用時14) | 2(S/PDIF使用時4) |
価格 | ¥ 99,800円〜 | 62,800円〜 |
最初のオーディオインターフェイスとしては申し分ない機能と音質です。セカンド機として持ち出し用にも十分な入出力があれば安心ですし、S/PDIF経由でAnelopeの高精度なクロックジェネレーターとして使用も可能です。
また、モニターライン出力が2系統なのは思っていたより便利です。これがあればスピーカーセレクター的なものを購入しなくてもよいので、その部分で2万くらいのコストカットを図れるとすると、決めてはADATと同時録音数です。
今なら期間限定で、DSPエフェクトがすべてついてくる超太っ腹なセール中です。
これ全部ついてくるの?
価格にするとZEN Q Synergy Core本体より高いプラグインが全部ついてくるのはすごい話です。
DAWで使用する場合は、afx2dawというオプションを購入する必要があります。またDSPエフェクトはあくまでハードウェアと同じ考え方なので、書き出す場合はオンラインバウンス(書き出しに実時間かかる)で行います。