オーディオプロダクションの世界では、正確なサウンドモニタリングを達成することは多くの専門家が直面する課題です。従来のスタジオモニターはしばしば、音の全範囲をクリアかつ深みを持って提供する点で不足しており、プロデューサーやサウンドエンジニアはより良い解決策を常に探しています。
さらに、部屋の音響がサウンド品質に大きな影響を与えるため、この問題はより複雑になります。プロダクションプロセス中に聞いているものが最終的なリスナーに届けられるものであると確信できる方法は何でしょうか?
ここで登場するのがFluid Audio Image2です。このスタジオモニターはFluid Audioのフラッグシップモデルで、上記の問題を解決するために設計されました。高い過渡応答性を持つAMTツィーターを搭載し、歪みのない明瞭な高域、速度感のある中音域も同様に印象的で、クリアで詳細なサウンドを提供してくれます。しかし、Image2が他と一線を画するのは、独自のVi-Bracerテクノロジーを用いて2基のウーファーを安定化する点です。
また、各スタジオルームが独自の音響特性を持つことを認識し、Image2ではSonarworks SoundID Referenceと連携したルーム補正が可能で、特定のスタジオ環境にモニターを最適化できます。これにより、部屋の音響を整え常にフラットな特性で再生することができます。
他にも、低ノイズ、低歪みを実現する新開発のClass Dクアッドアンプ、デジタル入力、Cubemixモニターエミュレーションなど、良い音を突き詰めるための機能が搭載されています。
Fluid Audio Image2は単なるスタジオモニターではありません。それは、正確なサウンドモニタリングの課題に対する包括的な解決策です最先端のテクノロジーとユーザー中心の機能を組み合わせて、精度が高く多機能なモニタリング体験を提供します。Image2を使えば、単に音を作るだけでなく、音をより良くすることができます。
- 28Hzまで再生可能な8インチのウーファーを2つ搭載
- AMTツイーターによる歪の少ない高域
- Sonarworks SoundID Referenceのデータをimage2にインポート可能
- デジタル入力装備
- 価格が高額
Fluid Audio Image2 概要
メーカー | Fluid Audio |
製品名 | Image2 |
特徴 | MTツィーター: 高い過渡応答性とクリアなサウンドを実現。 Vi-Bracerテクノロジー: 独自のウーファースタビライザーを採用し、低域の安定性と精度を確保 二基のウーファー: ミッドレンジと低域を強化し、よりバランスの取れたサウンドを提供 Sonarworks SoundID Reference連携: ルーム補正機能でスタジオ環境に最適化されたサウンドを実現。 多機能設計: モニタリング環境の構築に便利な追加機能が多数搭載されています。 |
マニュアル | 多言語マニュアル |
価格 | 712,800円(2台ペア)。 |
備考 | W242×H350×D363mm/12.8kg |
項目 | 仕様 |
---|---|
SPL | 116dB |
周波数応答 | +/- 4.6dB 28Hz-20kHz ; +/- 2.0dB 80Hz~20kHz |
クロスオーバー | 低音/中音: 115Hz, 高音: 2800Hz |
ドライバーの寸法 | 2 x 8インチ低音 + 1 x 5インチミッドレンジ + ⌀ 1.1インチ x 1.7インチ AMTツイーター |
2 x ⌀ 203 mm 低音 + ⌀ 130 mm ミッドレンジ + ⌀ 28 x 43 mm AMTツイーター | |
AMTツイーター展開サイズ | 4.5インチ x 1.1インチ / 114 x 28 mm (総放射面積) |
アンプの電源 | 2 * 225 W 低音域 (クラス D), 150 W 中音域 (クラス D), 75 W 高音域 (クラス D) |
信号処理 | ADコンバーター: 24ビット, 内部サンプルレート: 192kHz |
接続 | 1×XLRアナログ入力, 1×TRSバランス入力, 1 x XLR AES/EBU 入力, 1×SPDIF出力/入力, 1 x USB接続(キャリブレーションアップロード) |
寸法 | 高さ14.25インチ×幅9.5インチ×奥行き13.75インチ / 高さ351×幅241×奥行き363mm |
重さ | 27.8 ポンド / 12.6 kg |
Fluid Audio Image2は非常に高性能なスタジオモニターとして開発されました。最新のDSP(デジタル信号処理)とClass-Dアンプを使用して、非常に正確なイメージング、平坦な周波数応答、そして非常に低い歪みで素晴らしい低音拡張を提供します。
またユーザーはSonarworks SoundID Referenceによってキャリブレーションされた情報をスピーカー自体にインポートできるなどユーザーのルームアコースティックにも柔軟に対応します。
このモニターは2つのモードを持っており、フットスイッチの押し下げでcubemixモードに切り替えることができます。このモードでは、エンジニアは低音と中音域のレベルを調整できます。
新開発のAMTツイーターは、詳細な応答、広いヘッドルーム、低い歪みを提供します。また、最新の225W Class-Dアンプによって各低音ドライバーが個別に駆動されます。
ダンボールを開封すると、付属品である、マニュアル、電源ケーブル、滑り防止マットなどが顔を見せます。
しっかりとはまった発泡スチロールを取り出すと、Fluid Audio Image2が高級そうな布袋にくるまれていますが、正直にいいます。袋のせいでちょっとすべって出しにくい印象でした
左右にはFluid Audio Image2の大きな特徴である。8インチペーパーコーンが2発ずつ搭載されているので、合計4発のウーファーによってよどみなく、芯のある低域を再生可能にしてくれます。
背面には入力管理のための端子が設置されています。
2つを並べてみたところ、詳しくは後述しますが、ツイーターがミッドコーンの下にあるというのがポイントです。
このおかげでユーザーによってスピーカーのセッティングによる音質の向上が見込めます。
手持ちの他のスピーカーと比較してみました。
ADAM AUDIO A7Xのウーファーが7インチ、iloud Micro Monitorがウーファー3インチ、Fluid Audio Image2はミッドコーンは5インチですが、両サイドに搭載されているウーファーが8インチなので少し大きいです。
ではここから詳しいレビューをしていきたいと思います。
Fluid Audio Image2 レビュー
音質
4.1
ここでの高域、中域、低域はヤマハのページにある。以下の内容を参考にしています。
便宜的な区分ですが、一般的に20Hz~600Hzの低い帯域を「低音域」と呼びます。楽器で言えば、ベースやバスドラムなどが受け持つパートです。その中でも20Hz~100Hz付近の低い帯域を「重低音」と呼びます。800Hz~2kHzの帯域は「中音域」と呼びます。日常生活において人間が最も認識しやすい帯域です。そして4kHz~20kHzを「高音域」と呼びます。
引用元:01. 音の仕組み より
また、それぞれの特性は部屋の鳴り響き(ルームアコースティック)によって異なるので、あくまで私の環境であるということを踏まえてお読みいただければと思います。
高域
Fluid Audio Image2の高域は歪みのないAMTツイーターを搭載しています。
Fluid Audio Image2の高域は指向性が強く、正確な位置にいないと高周波が失われやすい印象がありますが、セッティング決まると、ギラッとした高域ではなく、品位あふれるシルキーなサウンドです。
低価格帯のスピーカーでは音を良くするために高域が強調されているものがありますが、Fluid Audio Image2にはそれがなく、非常にナチュラルと言えるでしょう。ただ、それ故に高域に特徴があるスピーカーを使ってきた人にはどこか物足りないような印象を受ける可能性もあるかもしれませんが、聞き疲れしない高域サウンドは長時間のミックスや作編曲時でも耳への負担が少ないといえます。
また本気の最大の特徴の一つである。ツイーターの位置がミッドコーンより下配置しているため、音質的には同軸的な印象を受けました。
Fluid Audio Image2対応できる周波数の上限は20kHzになります。近年はこれより遥かに上の周波数特性を持っているものもありますが、とくに20kHzまでだからと言って高域が特段劣っているという印象はありませんでした。
ただ、少し気になるのは、Fluid Audio Image2はデジタル入力が可能なモニタースピーカーでその場合最大192kHzまで対応しています。デジタル入力で192kHzまで取り込んでも再生できる範囲は20kHzとなるとデジタル入力による高サンプリングレートの取り込みはどのように働くのかに疑問が残ります。
中域
フラットな印象でした、全面のコーンは5インチの中域用でありサイドに低域ようのコーンが2発内蔵されているためか、中域は聞きやすく、ほどよいバランス感がありました。
低域
review_stars 4.5/5
Fluid Audio Image2は8インチの3way仕様で28Hzまで再生できるため低域再生に関してはかなり余裕があります。また低域用のコーンがサイドに設置されているためかわかりませんが、ADAM AUDIO A7Xよりルームアコースティックの定在波140Hzが3dB程度下がりました。そのため、低域が随分見えやすくなった印象があります。
私はADAM AUDIO A7XにPresonusのT10ウーファーをセットにして使っていますが、Fluid Audio Image2ではウーファーをセットで使うと低域が干渉しあってしまうのか、ウーファーを使うメリットがありませんでした。それほどFluid Audio Image2の豊かな低域再生を可能にしています。
ただ、3wayスピーカーを使ったのが初めてというこもありますが、セッティングがかなりシビアで、少し動かしただけでも聞こえ方が大きく異なるため、Fluid Audio Image2のポテンシャルを最大限に発揮するためにはベストなセッティングをする必要があります。ただそのためにかける時間は決して無駄にはならないとだけ断言できます。
機能性
4
ペダルによる切り替えCUBEMIXの切り替えが便利
Fluid Audio Image2は3wayスピーカー仕様による完全プロフェッショナル用のモニタースピーカーです。低域から高域までフラットな特性が特徴ですが、エンジニアはラージタイプのスピーカーからスモールタイプのスピーカーまで使い分けてリスナーに最適なミックス環境を構築します。
Fluid Audio Image2ではスモールスピーカーの周波数特性を再現したCUBEMIXがあり、このモードはフットスイッチによってON/OFF(通常モードとCUBEMIXモード)を切り替えられます・
音質面では確かにスモールスピーカーのような特性のある音質になりますが、それがスモールスピーカーのかわりになるかと言われれば個人的にはならないと感じました。その理由は、私はIKMultimediaのIcloud Micro Monitorを所持ているため、そちらで確認するからです。
また、Fluid Audio Image2を購入するユーザー層がスモールモニターを所持していないというのはレアなケースだと感じています。
ですが、もしスモールスピーカーを所持していない、または、一つのスピーカーで瞬時にスモールタイプのスピーカーの特性をざっくりとでも聞き分けたい!という人には良い機能になると思います。
Sonarworks SoundID Referenceと連携
Fluid Audio Image2はSonarworks SoundID Referenceで計測した結果をFluid Audio Image2にアップロードできます。最近のモニタースピーカーはDSP処理によって計測ソフトの結果を取り込めるタイプのが増えてきましたが、Fluid Audio Image2それが可能です。
計測ソフトの結果をスピーカー本体に保存できるというのは大きなメリットです。例えば、毎回計測ソフトを立ち上げなくてもよいというのが一番のメリットです。
また、計測ソフトはDAWやOSによっては相性問題等でOSのオーディオ環境が不安定になるケースもあったりします。しかしスピーカーに保存さえしてまえば、それらのソフトを立ち上げなくてもよいので安定した制作環境を構築できるようになります。
入力端子が豊富
Fluid Audio Image2はTRS/XLRに対応したインプット端子、Digital 入力はAES/EBU S/PDIFに対応してます。また、電力消費を軽減してくれるスタンバイモード、(数秒間無音だとスリープモードになる)チャンネルのLR設定や、低域、中域、高域の細かなゲイン設定などが背面パネルで行えます。インプットはステップゲインなので、左右のスピーカーとのゲイン設定がやりやすいのは良いと思います。
操作性
3
それなりに多機能なモニタースピーカーですが、設定も一度決めてしまえばそれほど頻繁に変更するものではありませんので操作性は他のスピーカーとなにか変わることはありません。
ただプラスポイントしてADMA A7XはXLRを差し込んでもロックされるわけではないので、ケーブルが抜けてしまうリスクがゼロではありませんでした。しかし、Fluid Audio Image2はXLRがカチっとロックしてくれるので、このあたりには安心感があります。
安定性
3.5
高級感ある外観と重量
Fluid Audio Image2の重量は12.6kg、ADMA A7Xは9.2kgと3.4kgほどFluid Audio Image2の方が重いです。
スピーカーの重さは音の正義!というわけではありませんが、どっしりとした重たさは安心感がありますね。
これは純粋に3wayスピーカーであり、両サイドのウーファーユニットが8インチであることなどが理由です。
持ち上げてみるとかなりずっしりと重たく感じますが、表面の加工は丁寧で、角も取られているので見た目的に高級感が溢れています。
セッティングしてみるとこんな感じです。
最初にもお伝えしていますが、ツイーターの位置がミッドコーンより下にあるため、音の聞こえ方がADAM AUDIO A7Xと違って面白いです。
私の使っているデスクでは3U分のスピースが確保され、そのうえにスピーカーを置くことになります。
音の聞こえ方として、通常のウーファーコーンが下にくる置き方だとテーブルの跳ね返りが若干あったのに対してFluid Audio Image2の置き方では確かに音の跳ね返り的な部分は少なくなってように感じましたが。スペック的な違いもあるため、セッティングだけで音質の違いを語ることはできませんが、140Hzの定在波が3dB程度減ったのには驚きました。
価格
2
価格は日本円で713,000円(受注後約2ヶ月を見込む)とかなり高額モニタースピーカーです。
これは完全受注生産によるのが大きな理由で、オーダーが入ってから制作に入るため大量生産ができません。また、現在の為替の相場からしてどうしても高額になってしまいます。
しかし、高額のメリットとして、トラブルがない、一つ一つの完成度が高い、などのメリットがあります。
透明感の高い低域を担当する8インチのペーパーコーンが2発、速度感のある中域を担当する5インチのアルミニウムコーン、歪みのない高域を担当するAMTツイーター、そしてAES/EBUにS/PDFI接続が可能なデジタル入力、スモールサイズスピーカーの音質特性を再現するCUBE MIXモード、過大入力を防ぐリミッターに、音響測定ソフトの結果をFluid Audio Image2に保存できるなど、とにかく多機能なプロの厳しい耳を満たすために作られたモニタースピーカーであることから、この価格帯になってしまったのではないかと考えています。
Fluid Audioはどちらかというとコスパがよく音質が良いモニタースピーカーを作っている印象でした。以前紹介した同軸スピーカーやサブウーファーは入門機として最適な価格でありながら音質もすぐれたスピーカーです。
今回のFluid Audio Image2はそれらと比較することに意味がないほど価格帯が離れた製品です。その理由として、リーズナブルな製品だけではなくより音質に特化したトッププロを納得できる製品を作れるというところのアピールなのかと考えたりしています。
まとめ
Fluid Audio Image2、の魅力はやはり8インチのウーファーをサイドに2つずつつけることで得られる超低域の透明感ですね。近年の音楽はとにかくいかに低域をきれいに鳴らすことができるか?これが大きな命題になっているように感じます。
その命題にFluid Audioが全力で答えたというかむしろ挑戦してきたかのように感じました。改めてその超低域は透明感と同時にすごみを感じるほどの音質です。
もちろん、5インチのミッドコーンの音質やAMTツイーターの歪のない音質も素晴らしいかったです。
高額なモニタースピーカーではありますが、その価格に負けない機能と音質を兼ね備えたプロユースのモニタースピーカだと思いました。