U78 Saturatorは、使いやすさと高度なサウンドデザインオプションを兼ね備えたプラグインで、様々なトラックにキャラクターと存在感を加えるのに適していサチュレーター系プラグインです。
例えば、つぎのような問題があるならばU78 Saturatorは役に立ちます。
- チューブサウンドを楽曲のトラックに導入してアナログのキャラクターサウンドにしたい
- ベースやドラムに程よいドライブ感を与えて貧相な楽曲にエネルギーを加えたい!
CPU負荷も低いのでがっつりと多くのトラックに使うのもアリです!
温かく豊かなサウンドとスムーズなコンプレッションが特長で、EF804SとEF86の真空管が独特のサウンドを生み出します。この精神は、U78 Saturatorなどのプラグインにも引き継がれています。
Audified U78 Saturator サウンドレビュー
U78 Saturator はデフォルトプリセットを通すだけでも音圧が得られる俗に言う「通しただけでテンションが上がる音」になります。なので、トラックにエネルギーが欲しい!もっと熱いトラックにしたい!というときに使うと効果的です。
では、他のTELEFUNKEN系プラグインとはどのような音質差があるのか?ArutriaのPre V76、そしてTone empire TF-72aを使って比較検証をしてみたいと思います。
音の印象としては、音の画角(全体の広がり間)みたいなものはU78 Saturator で、余韻の甘さなどはTF-72a、音の押出し間はPre V76tと言った印象を受けました。
次にスラップベースにU78 Saturator を通した結果です。
Calibの数値を上げることでベースなどのスラップではピークを抑えながらアグレッシブなサウンド処理を施せます。
サチュレーションの音質もそこまで癖が強い訳ではないので、ナチュラルな歪み成分としても使えるのでトラックメイクからミックス用途まで使える幅広いサチュレーションサウンドを手にすることができます。
機能性および操作性
U78 Saturatorでは主にサチュレーションの量を決めるCalibration(パラメーター名Calib)とGainパラメーターの二種類でサチュレーションの質感と量感を調性できます。そのため、求めいている歪みのイメージを突き詰めやすいのがメリットだと言えます。
またGainはOutputノブのバランスはAuto機能を使うことで連動させられるので、ゲイン幅の調性がやりやすいです。
U78 Saturatorではパラレル設定のバランスが音作りにおいて重要な意味を持ちます。
MIXと書かれたノブがパラレル設定に関するノブで100にするとU78 Saturator の回路を通った音、0にすると原音のみとなります。このMIXは左隣のGainとのバランス調性するものになり、例えば、Gainがゼロの場合Mixを100にしても音は出なくなります。
Gainをゼロにした場合でもMixを100以下にすれば音は出力されます。しかし、この場合Gainを通っていないため、フィルターやToneパラメーターおよびU78 Saturator のサチュレーションをコントロールできるCalibパラメーターもバイパスされます。
これらのことから、MixとGainパラメーターのバランスがU78 Saturator の音作りにおいて最も重要になると言えます。
U78 Saturator では挿した段階(デフォルトプリセット、U78 Saturator)で3.2dB程度ゲインが上がります。(サイン波形65Hzで計測)
これは同じTELEFUNKEN系のプラグインをリリースしているArturiaのV76、Tone empireのTF-72aと比較してもかなり大きなゲイン差です。
バイパス時 | デフォルトプリセット立ち上げ時 | ||
Arturia Pre V76 | -12.0dB | -12.2dB | -0.2dB |
Tone empire TF-72a | -12.0dB | -11.0dB | +1.0dB |
U78 Saturator | -12.0dB | -8.4dB | +3.8dB |
GAINを100%にすると、さらに5.6dB増加します。このため、音量管理に注意が必要です。音量の上昇が心理的に好影響を与えることもありますが、ミックスツールとしてはゲイン差がない方が調整しやすいです。U78 Saturatorには62種類の楽器別プリセットがあり、新しいプリセットも簡単に作成・保存できます。
また、セーブウィンドウの下にはデリート項目があります。これは新規に作ったプリセットのみを消去できるので不要なプリセットは簡単に削除できます。
シンプルなGUIで初心者でもかんたんに扱える
扱い方に何困るほど複雑な機能はないので、初心者でもかんたんに扱えます。スパナマークをクリックすることでオーバーサンプリングのON/OFFが行なえます。
またユニークなのはSet Calibration As Default機能です。これはCalibの値だけを固定して、今後開くU78 Saturator に反映させられる機能です。Calibの値はサチュレーションの効果として重要な値なので、それを任意で固定させられるbのは地味ながら便利な機能と感じます。
そのほかGUIのリサイズ機能や、各パラメーターの数値入力(Calibパラメーターだけ数値に入力不可)、英語版ではありますがプラグイン内からPDFマニュアルを呼び出せる機能や、アップデートの確認など操作性の良さは申し分ないといえます。
CPU負荷について
U78 SaturatorのCPU負荷はオーバーサンプリングのON/OFFによってCPU負荷は異なります
CPU負荷計測環境
パソコン Macmini2018
CPU Intel Corei7(i7-8700B)6コア
HT使用時12コア 3.2GHz/ターボブースト(TB)使用時4.6GHz
メモリ 32GB
システム OS12.6.1 Monterey
Audio/IF Focusrite RED 8PRE
バッファー 256
DAW LogicPro10.7.7
48kHz/24bit
再生ストレージ SSD
まとめ
メーカー | Audified |
製品名 | U78 Saturator |
システム | マック macOS 10.11 – macOS 12 Monterey (Intel / M1 Apple Silicon 対応) (64 ビットのみ) AAX、AU、VST3 ウィンドウズ Windows 7 – Windows 11 (32 / 64 ビット) AAX、VST3 |
認証方式 | シリアル認証 |
マニュアル | プラグイン内に搭載、英語版のみ |
価格 | 75.90ドル→53.90ドル |
- 真空管的な密度の高い音質を得られる
- わかりやすい操作性
- 低CPU負荷
- 使用環境によっては安定性が怪しい場合がある
音質面においては非常に密度が高く、サチュレーションの幅が広いため思っている以上に音作りが可能です、ArutriaのPre V76やTone empireのTone empire TF-72aと比較しても音の傾向が異なるため、それら2つを持っていたとしてもU78 Saturatorは十分に活用できるように感じました。
機能面においては、CalibのサチュレーションとGain機能は使い勝手もよく、それらを組み合わせることで無数の音作りができるのが魅力です。またフィルター系とくにToneの音色変化はユーザーのセンスを刺激してくる変化度合いなので、真剣向き合えば向き合うほど好みの音色を提供してくれます。
操作性に関しても特に問題は感じませんでした。パラメーターのほとんどはテンキーによる数値入力が可能ですし、プリセットの選び方や新規のプリセットの作り方なども悩まずに行えます。
安定性に関しては、私のだけの環境かもしれませんが、正直なところ安定しているとは言い難い部分が多くあり、音色がよいだけに残念です。
特定はできませんでしたが、不安定の度合いはソフトシンセを使っているときによく起こった印象です。
価格面では、他の二種類と比較してもそこまで大きな差は感じません。
総括として、音の密度と熱さを求めるならば、比較したプラグインの中では一番なので、その用途で使うのであれば頼もしい存在になってくれるように思いました。