DTMでの音作りとミックスにおいて、コンプレッサーとトランジェントシェイパーの理解と適用は極めて重要です。
この記事では、トランジェントシェイパーの処理が音のアタック部分、つまり音色の輪郭を明確にする方法を解説しています。
適切なコンプレッサーの選択とトランジェントシェイパーの使用は、ドラムのパンチやギターの明瞭さを高め、トラック全体のクオリティを向上させます。この記事を読むことで、コンプとトランジェントの目的、操作方法、そして音楽制作におけるそれらの効果的な使い分けを理解し、より洗練されたサウンドマスタリングへの道を開くことができます。
トランジェントシェイパーとは?
「音のアタック」という意味合いで使われていますが、コンプのアタックではありません。というのも例えば、パーカッションのアタック音は目立ちますが、ストリングスで優しく弾いた音に対して「アタック音がある」とはいいません。
コンプやシンセにもアタックという概念がありますが、それは時間的な音の変化を指すものであってトランジェントの「アタック」は音の立ち上がり瞬間そのものを示します。それ故に「トランジェントシェイパーとは音の輪郭」と言った言われ方をします。
ギターやベースのピッキングの音
スネアドラムを叩いたときのアタック音
ピアノを弾いたときの打鍵音
一般的には「強く弾いたときのアタック音」の解釈が多いですが、何でもアタック音=トランジェントにしてしまうと、音色の演奏のダイナミクスの意味がなくなってしまうように思います。
コンプとトランジェントシェイパーの使い分け(目的)
トランジェントシェイパーは、収録時のマイク位置調整に似た効果を後から加えられるツールとして捉えることができます。一方、コンプレッサーは音の時間的変化全体に作用します。
その0.1秒付近の拡大です。
余談ですが1秒って一瞬のように思いますがDTMの世界では1秒以下をいかにコントロールするかの世界になります。
音楽の世界ではその0.1秒は余裕で体感できる世界です。これをトランジェントプラグインで処理すると次のようになります。使っているのはLogicのEnveloperというプラグインです。
0.1秒付近のトランジェントをわかりやすく変化させるために100msの音量だけをカットする設定にしました。
見比べてみるとトランジェント以外にはほとんど影響がありません。
コンプでこれをしようとするとスレッショルド、アタック、レシオ、リリースのパラメータが関わりあってくるので
トランジェントシェイパーのようにはいきません。
ちなみにコンプで潰しすぎたトランジェントシェイパーであるアタック感は本来ならもう戻りませんが、
トランジェントシェイパープラグイン(Enbeloper)をを使うことである程度は戻せたりもします。
これはEnveloperを3段掛けにして単にリリースだけ調整しただけですが、多少元のトランジェントに近づけます。やろうと思えば、オートメーションで自力でボリューム調整をかけばこれと似たようなことはできますがかなりの手間です。
しかしコンプの荒々しさを残しつつも、トランジェントを強調したことでかなり太いキックの音に仕上がりました。こういう音の作り方もありかもしれませんね。
このように楽器特有のアタックのみを処理したいのであればコンプよりトランジェントの方がより効果的と言えます。
トランジェントシェイパープラグインの紹介
Studio Oneを除くほとんどのDAWにトランジェントプラグインは付属しています。
それ以外で
Oxford TransMod
個人的にはsoft tube Transient Shaperは効果がわかりやすいので、トランジェント初心者の人でも馴染みやすいと思います。
まとめ
トランジェントはざっくり言ってしまうと単なる音の輪郭部分に特化したボリューム調整とも言えます、楽器特有であるアタック(トランジェント)を変更することでコンプらしさを出さずにクリーンな音圧調整をすることもできます。
コンプとトランジェントどちらが良いかはその使用目的にもよりますが、トランジェントはあくまで「音色の輪郭調整」が目的使うことがよいでしょう。