IK Multimedia ARC Studio を使えばどんなことができる?
自分の部屋の音響特性を分析してスピーカーの音を最適化できるよ。その結果ミックスのクオリティも上がる!
凄い!でも難しそう
それが使い方も簡単だし説明書とにらめっこする必要もない!
メリット | デメリット |
---|---|
説明書に頼らない使いやすいソフトウェア レイテンシーが少ない 多用途でコスパが良い | 音響環境を自動補正しハードウェアに保存完全な補正には限界がある 専用マイクが必要 若干熱くなる |
IK Multimedia ARC Studio
仕様 | |
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サンプリング・レート | 96 kHz |
オーディオ変換解像度 | 24ビット |
内部処理解像度 | 32ビット・フロート |
周波数特性 | 2 Hz 〜 45.0 kHz (-2.0 dB) |
ダイナミック・レンジ | 120 dB(A) |
THD (20 〜 20 kHz) | 0.00035% |
THD+N (1 kHz @ -1 dBFS) | -107 dB |
チャンネル・クロストーク | -122.5 dB |
最大位相偏差 | +7° (20 Hz)、+16° (22 kHz) |
入力インピーダンス | 20 kΩ(バランス) |
出力インピーダンス | 50 Ω(バランス) |
最大出力レベル | +17 dBu |
レイテンシー | |
ナチュラルフェーズ・モード | 1.4 ms |
リニアフェーズ・モード | 42 ms |
電源 | |
電源供給 | 付属の電源アダプタ |
寸法と重量 | |
寸法 | 144×45×120 mm(W×H×D) |
重量 | 465 g |
内容品 | |
同梱品 | DSP プロセッサーユニット、ARC 測定マイク、マイク・クランプ、ARC 4ソフトウェア(ダウンロード提供)、USB-C to USB-A ケーブル(1.5 m)、電源アダプタ |
スペックではなくレビューを読みたい方はこちらから読めます。
イタリア・モデナに本社を置く高品質な音源やオーディオソフトを開発するメーカーIK Multimediaから2024年2月23日に発売したIK Multimedia ARC Studioは、音響補正を目的としたツールです。
IK Multimedia ARC Studioを使えば、スピーカーのセッティングが自由になり、好きな場所に配置できます。また、高価なルームアコースティックグッズに頼らなくても音響環境を整えられるため、コストパフォーマンスが高いのも大きな魅力です。
部屋の音響情報を解析するソフトウェアARCを使用し、その結果をADDAハードウェアに保存することでモニタースピーカーの音質を改善します。
説明書について
IK Multimedia ARC Studioには説明書らしい説明書はありませんが、箱の一面が説明書的な役割を果たしています。
より詳しい説明書はIK Multimediaの公式サイトよりPDFファイルで公開されています。マニュアルのはじめの方は英語で書かれていますが、後半部に日本語でも書かれているので、英語が苦手な人でも安心して読むことができます。
ARC Studio Documentation and Manuals
接続
接続方法はかんたんです。コンピューターとの接続はUSB-Cし、オーディオインターフェイスのアウトプットをIK Multimedia ARC Studioのインプットに接続し、IK Multimedia ARC Studioのアウトプットをモニタースピーカーに接続するだけです。
注意というほどではありませんが、IK Multimedia ARC Studioはオーディオインターフェイスではないので、システム環境のオーディオ装置等には何も表示されません。
レイテンシー
IK Multimedia ARC には2つのレフェーズモードがあり、それぞれでレイテンシーの違いが発生します。
レイテンシー | |
ナチュラルフェーズ・モード | 1.4 ms |
リニアフェーズ・モード | 42 ms |
それぞれの用途は次のようになります。
ナチュラルフェーズ・モードでは演奏やリアルタイムモニタリングが必要なシーンで使用
リニアフェーズ・モードはミックスやマスタリングで、正確な音質調整を行いたい場合に使用
このフェーズモードはARC Studio(外部ハードウェア)上で切り替えるものではなく、ARCソフトウェアで切り替えます。
42msのレイテンシーはオーディオインターフェイスにもよりますが、バッファサイズ1024で生じるレイテンシーより大きい(画像は21.9ms)です。とてもリアルタイムで演奏できるものではありません。
IK Multimedia ARC Studio レビュー
- 音響環境を自動補正しハードウェアに保存
- 使いやすいソフトウェア
- 多用途でコスパが良い
- 完全な補正には限界がある
- 専用マイクが必要
それではIK Multimedia ARC Studioをレビューしていきます。
クリアで高級オーディオインターフェイスに匹敵する音質
音質面においては以下のスペックを保持しており、高級オーディオインターフェイスと遜色ない音質です。
IK Multimedia ARC Studioを使えば、クリアなサウンドを再生でき、その結果ミックスマスタリングのクオリティのレベルアップに繋がります。
サンプリング・レート | 96 kHz |
オーディオ変換解像度 | 24ビット |
内部処理解像度 | 32ビット・フロート |
周波数特性 | 2 Hz 〜 45.0 kHz (-2.0 dB) |
音質に関しては内蔵チップを確認することでより詳細な情報を確認できます。
DAC | AKM AK4493SEQ |
ADC | AKM AK5572EN |
音質の一番の要となるADDAチップは旭化成のものが使われております。それぞれのチップはプロフェッショナルオーディオ機器: レコーディングインターフェースやマスタリング機器ハイエンドコンシューマーオーディオ: ハイレゾ対応のオーディオデバイスで使われているものであるため、十分な音質が保たれいてることがチップから見てもわかります。
補正ソフトウェアARCの使い方
音響補正に使われるのはARCと専用のマイクになります。
ARCソフトウェアはIK MultimediaからProduct Mangerをダウンロードして登録DLを行います。
ソフトを登録するとインストールが可能になります。インストールを完了したらARC 4 Analysisを起動します
使用しているオーディオインターフェイスの情報を入力します。設定が問題ない場合、Microphone Signalの音量が反応します。
自分の作業環境から一番近いものを選択します。
簡易で計測したい場合は7ポイント、正しく計測したい場合は21のポイントでそれぞれ音響シグナルを軽ソックします。
ARC 4 Analysisではマイクスタンドに計測用のマイクを固定することを推奨しています。
計測された情報が表示されます。
緑色が計測前、オレンジが補正後の結果になります。この補正後の音質は今まで自分が聞いていた音質を疑いたくなるようなサウンドに変化しています。
ARC Studioに計測結果を転送する
ARC 4では、補正結果をカスタマイズできるイコライザーが搭載されています。
そして計測および補正したは上部にあるSTOREボタンをクリックすることでARC Studioに転送できます。転送中はUSBケーブルを抜かないように注意してください。
ARCのON/OFFはCORRECTIONをクリックするか、ARC STDUOにの前面に設置されているボタンをクリックします。
類似価格帯製品との比較
音響解析(補正)と聴くと多くの人はsonarworksのSoundID Referenceを思い浮かべるかもしれません。
sonarworksとは解析および補正のコンセプトが異なるため、良し悪しで語るにのは難しいですが、SoundID Referenceは完璧に近いレベルで補正するのに対して、ARC 4は音楽的な気持ちよさを残した補正しています。個人的にはミックスだけではなく音楽を聞く環境も重要しするのであれば、IK Multimedia ARC Studioの方がおすすめです。
価格差はSoundID Referenceは¥44,000程度、IK Multimedia ARC Studioは¥52,800とARC Studioの方が割高なのはハードプロセッサーの価格差です。
中古の価格について
中古の価格はだいたい¥35,000付近ですが、ARC 4ソフトウェアの登録解除がしっかりとなされているかどうか等の確認に注意が必要です。これがないとARC Studioはただのお弁当箱になります。
ただ、最近はECショップ等で新品が¥40,000を切る価格で取引されています。あまり中古を購入するメリットは見いだせません。
まとめ
メリット | デメリット |
---|---|
使いやすいソフトウェア 多用途でコスパが良い | 音響環境を自動補正しハードウェアに保存完全な補正には限界がある 専用マイクが必要 |
IK Multimedia ARC Studioを使ってから10ヶ月近く経ちますが、もうこれなしでは生きていけない体になりました。
以前はsonarworksのSoundID Referenceを使っていたのですが、フラットすぎる特性がどうしても好きになれなかったのですが、IK Multimedia ARC Studioの補正した音は音楽的でとても心地がよく、また今まで聞こえなかった音もよくきこえるようになりました。
厳密に言えば、音響補正は完璧ではないので、超厳しいプロの目から見ればこれらのアイテムを使うことはあまり良しとしないという人もいます。
しかし、一般的な家庭の宅録レベルではプロのような再生環境を作れるわけもなく、そのようなユーザーであっても、プロのような再生環境を手に入れられるわけですから、私はどんどん使ってよい作品を作るべきだと思います。
音響補正し、再生環境を整えることで得られるメリットはVSTプラグインを買い漁るよりはるかに効果的ですよ!