RX1200は、1980年代に登場したE-mu SP-1200の特有の「汚れた」12ビットのサウンドを現代のDAWで再現しながらもソフトウェアならでの操作性の良さを得られます。これにより、あなたのビートに太さと存在感のある音色を取り入れることが可能になります。
CPU負荷は少多少ありますが、そこまで気にする必要はありません。
RX1200の魅力はそれだけではありません。このサンプラーは、使いやすさを最優先にデザインされています。その直感的なサンプルエディタにより、あなたの音楽制作に無限の可能性をもたらします。初めてサンプラーを使う方でも、このエディタを使って独自のプリセットを作成し、自分だけのビートを作り出すことができます。
INPHONIK RX1200 サウンドレビュー
INPHONIK RX1200はE-muのSP1200を音質を再現するために作られたプラグインであるため、その音質の再現性に関してはかなりクオリティが高く、クオリティの高いローファイサウンドを再現したいと願う人ならば間違いなく持っておくべきレベルの音質といえます。
試しにいくつかのプリセットを適当に並べて作ったのが次のデモです。
ちょっとニヤっとするものから、ダーキーなものまで、あります。とにかく1つ1つの音が良い意味でレトロ過ぎないということ、この手のものは必要以上に音を汚すことに美徳を感じているものもありますが、INPHONIK RX120は解像度が低いなりに最大限高音質化するすることを美徳しているような気がします。
プリセットのクオリティも素晴らしいですが、RX1200は、SP-1200の所有者が使用する33 RPMのレコードを45 RPMでサンプリングし、サンプルのオリジナルのスピードを回復するためにSP-1200でサンプルをチューニングダウンする方法を徹底的に再現しています。
このピッチ変更による音質の劣化具合が1200 lofiサウンドと呼ばれるものです。RX1200はロービットによる質感の再現とピッチチェンジしたときの質感を上手く再現しています。
さらにGain(ゲイン)パラメーターはオリジナルのマシンのアンプゲインステージをエミュレートしているらしく、上げるだけで独特の太さが出てきます。
海外では「RC-20でも同じことができる」などの意見もあります。創意工夫は重要ですが、今目の前の音に感動できたならそれはそれで問題ないと思いますし、RX1200にはその感動があります。
前回リリースされたInphonik RX950というAD/DAコンバーの質感もよかったですがRX1200はさらにその上をいくサウンドです。
機能性および操作性
INPHONIK RX1200はサンプラーなので、オーディオファイルを取り込んで使用します。RX1200は次の11のファイルフォーマットを読み込めます。
WAV | Microsoft WAV |
AIFF | Apple AIFF |
FLAC | Free Lossless Audio Codec |
MP3 | MPEG-1 Audio Layer III |
OGG | Ogg Vorbis |
M4A | AAC and Apple Lossless |
AU | Sun Microsystems AU |
SND | Apple SND |
W6 | Sony Wave64 Audio Format |
WV | WavPack Hybrid Lossless Compression |
PCM | Raw audio (little endian) |
これらをRX1200のパッドにドラッグアンドドロップで読み込ませることができるの次々と任意のサンプルを変更及び割り当てられます。
パッドの割当はMIDIキーボードの次のようにアサインされています。
実際使ってみると、Logic Proに付属しているループもウインドウからRX1200のパッドの上にかんたんにアサインできるのはかなり便利です。
Lo-Fiサウンド生成のための機能が素晴らしい
SP1200のサウンドの代名詞は、レコードのの回転数を落としたものを録音し、再びそれをSP1200上で戻すことで得られる音質にあります。このサウンドこそまさに「キングオブLo-Fiサウンド」であり、トラックメーカーが求めているサウンドの質はここにあると言えます。
INPHONIK RX1200の素晴らしいのはそれらの速度感による劣化を再現できるパラメーターが装備されていることです。
SPEED | TUNE | FINETUNE |
X1/2 | ||
33RPM | -5 | -40 |
45RPM | -6 | -60 |
X1.5 | -7 | 0 |
X2 | ||
78RPM |
90 年代のベストセラー レコードを作り上げたヒップホップ プロデューサーが愛してやまない音質の劣化はこれらのパラメーターでかんたんに再現が可能になります。
最初から用意されている900以上のサウンドと50のプリセット
INPHONIK RX1200のFactory Collection には、最初から50のプリセットが用意されています。そのため自分でサンプリングする必要なく、クオリティの高いローファイサウンドを楽しめます。
種類 | プリセット数 |
キック | 122 |
スネア | 139 |
ハイハット | 169 |
タム | 47 |
シンバル | 32 |
パーカッション | 120 |
FX | 50 |
ベース | 32 |
キーボード系 | 41 |
スライス | 151 |
その他 | 33 |
合計 | 936 |
また今後数か月以内に、テーマ別に分類された一連の新しい無料コレクションが定期的に追加されるのも大きな魅力です。
マルチアウトに対応
RX1200はメインステレオ+8ステレオアウトの合計9ステレオマルチアウトに対応しています。
最近の流行りなのかLogic Proだけの仕様かはわかりませんが、マルチアウトはモノラルでもよい気がするのですがすべてステレオになります。
RX1200はバンクAに付き8パッドがあります。そのパッドに好きなオーディオファイルをアサイン&ロードするわけで、それが全部で4つ(A〜D)あるので合計で32のファイルを操作できます。
そうなると、マルチアウトの9は少ないように見えるかもしれませんが、キックやスネアだけをグループ(同じステレオアウトに設定)化するのが一般的な使い方になるので、すべてマルチアウトさせる必要はありません。
オンボードシーケンサーは搭載されていない
インターフェイス画面に音質、操作性も限りなく実機に近いINPHONIK RX1200ですが、INPHONIK RX1200にはオンボードシーケンサーがないため、SP-1200のように自己完結型のビートメイキングツールとしては使えません。
オンボードシーケンサーから得られるビートの揺れもまたSP1200らしさでもあったので、この辺りで少し残念と思うユーザーもいるかもしれませんが、そこまで求めないユーザーにはとくに問題にならないでしょう。
S1200のワークフローを進化させたGUI
INPHONIK RX1200は音質だけではなく操作性もSP1200の再現を図りながら、プラグインならではの機能も多数搭載され、現代的なアプローチが可能です。
ユニークだと思ったのは各パッドの最大発音数がmonoから8音まで選択できます。このおかげで1つのパッドの中の1音を使ってコード演奏することも可能です。
またユニークなプリセットとしてテンプレートコレクションというものがあります。
ファクトリーコレクションを選んだ後にテンプレートコレクションを選ぶと音が消えてしまうので、一瞬バグかな?と思う人もいるかもしれません(私は最初バグだと思いました)しかし、このテンプレートコレクションというのは
パッド1つ1つの設定を保存したものです。たとば、All Pad Half speedを選択するとすべてのトラックのパッドが半分の速度で再生するという意味ですが、これは自分のオリジナルのオーディオファイルを取り込んだときに使うものであって、ファクトリープリセットに適用されるものではありません。
個人的にはテンプレートプリセットがファクトリープリセットに使用できても面白いようにも思いますが、これらはあくまでオリジナル音色制作時に使用するものと考えるものです。
VSTエフェクトではない
多くの人が勘違いしそうですが、INPHONIK RX1200はサンプラープラグインであって、エフェクトプラグインではありません。
つまり、通すだけで音がSP1200になる!みたいな使い方はできません。
自分が気に入った音をRX1200に読み込ませることで実機のSP1200の質感を再現できることがRX1200のメリットです。
雰囲気としてはRobotic Bean Portatronのような立ち位置のプラグインです。
プリセットの選択が少し手間
RX1200のプリセット選択方法はDiskと書かれた下にあるウィンドウをクリックするかLoadボタンをクリックすることでプリセットブラウザーが開きます。
次のプリセットを選びたいという場合、多くのシンセやエフェクトには矢印ボタンみたいなのが搭載されていて、それらをクリックするだけ素早くプリセットを選択できますが、RX1200の場合、そのような1つ送りのボタン等がないため、毎回プリセットブラウザを開いて選択する必要があります。
少し手間に感じてしまうためバージョンアップで改善されることを祈ります。
CPU負荷について
INPHONIK RX1200のCPU負荷です。左がシングルにかかるCPU負荷で、右側がCPU負荷逃しによってマルチコアに分散されたCPU負荷です。
ドラムマシン音源等は元々再生するファイルが短いため、メモリやCPUにそこまで負荷がかかるわけではありません。
CPU負荷計測環境
パソコン Macmini2018
CPU Intel Corei7(i7-8700B)6コア
HT使用時12コア 3.2GHz/ターボブースト(TB)使用時4.6GHz
メモリ 32GB
システム OS12.6.1 Monterey
Audio/IF Focusrite RED 8PRE
バッファー 256
DAW LogicPro10.7.7
48kHz/24bit
再生ストレージ SSD
RX 1200 関連動画
個人的にすごいと思ったのは次の動画で、SP1200とRX 1200のピッチシフト(音程変化)時の音質を比較している内容ですが、かなり音が似ています。ここまでくれば実機との差がわからない人も出てくるレベルです。
INPHONIK RX1200 に関するFAQ
- INPHONIK RX1200 AUV3フォーマットでリリースされる可能性はありますか?
-
現在はありませんが、メーカーで検討しているとのことです。
- INPHONIK RX1200 Reasonバージョンとの違いは?
-
RX1200 の Rack Extension バージョンは、各パッドの Tune、Decay、Mix 値を制御/自動化するための完全な CV 入力を提供します。これにより、プレーヤーを使用して RX1200 を完全に自動化し、実験することが可能になります。例: Reason の標準 RPG-8 を使用して、1 つのパッドからメロディーを演奏します。
INPHONIK RX1200 ユーザーレビュー
海外サイト及び、動画サイトで上がっているユーザーの声をまとめてみました。
bought the bundle and like the sound. There are only some things I miss in RX1200. It would be nice to be able to use it as an effect and recording directly to a pad would also be welcome. Another thing: I sometimes use the keyboard from my Mac to play on. Pressing the “S” key doesn’t trigger the note but brings up the save screen.
引用元:RX1200 demosongs
バンドルを買って、そのサウンドが気に入っています。ただいくつか欲しい機能があります。まず、RX1200をエフェクトとして使えるようにしてほしいです。また、直接パッドに録音できる機能も歓迎です。それから、Macのキーボードを使用して演奏することもありますが、「S」キーを押すと音が鳴らない代わりに保存画面が表示されてしまいます。
バグに関してはメーカーはすぐに対処するとの内容を発表しています。
実際多くのユーザーが求めいているのがエフェクトプラグイン化です。しかし、私もエフェクトプラグイン化には賛成です!
そのほかにも
「EMAXのエミュレーションを作ってください!」
「素晴らしいエミュレーションで、批判している人は1200を使ったことがないか、30ドルではなく4000ドル使ったことに腹を立てているだけです(笑)
「RX1200は本物のオールドスクールな雰囲気と低音を完璧に再現しており、これまでのさまざまなFXプラグインでは実現できなかったものです。素晴らしい」
「業界の人々の中には、自分たちのステータスを使って、高価な機材を所有しなければプロにはなれないとアスピリングプロデューサーに信じさせようとする人々がいる」と私は言いました。
どちらが優れているかは個人の好みや制作スタイル
など活発な議論が繰り広げられています。
まとめ
メーカー | Inphonik |
製品名 | RX1200 |
システム | 64ビット Windows 用 VST 2、VST 3、AAX プラグイン (Vista 以降) macOS 用 VST 2、VST 3、AU、AAX プラグイン (Intel および Apple Silicon、10.9 以降) Linux 用 VST 理由によるラック拡張 (Windows および macOS の 10.1 以降) RX1200のインターフェースを正しく表示するには、1024×768以上のモニターが必要 |
認証方式 | アクティベーションなし |
認証数 | 制限なし |
マニュアル | 英語版のみ |
価格 | 31.9ドル Reasonバージョン29ドル |
使ってみて思ったの本当に音が良いです。状態のよいSP1200とはこういうものなのだろうと思わせてくれます。しかしそれでいて野太く存在感のある音を提供してくれます。
大手デベロッパーがこのタイプのプラグインをリリースしたら確実に100ドルオーバーの製品です。それが31ドルなわけですからコストパフォーマンスは優れています。
最初から用意されているファクトリープリセットの音色もオイシイところを狙ってきていて、適当に遊んでいるだけで創作意欲がバシバシと刺激されます。
機能面でいっても、マルチアウトや、オリジナルのフィルターから新しいタイプ、ピッチを下げたときのざらつき感など、どの機能も申し分はありません。ただ個人的には操作性においてプリセットを1つ送りする機能がないのは少し残念な気がしています。
とは、前回のRX950の音質に満足していた人は今回のINPHONIK RX1200も十分に楽しめるはずです。
荒々しく、野太く芯があり存在感がある。これ以上の音は31ドルで見つけるのは不可能だと思っています。
SP1200のサウンドを求め、なおかつソフトウェアとしての使い勝手の良さも兼ね備えたINPHONIK RX1200めちゃめちゃオススメです。