Kiive AudioのNFuseは、伝説のSSLとNeveの魅力をデジタルの世界に持ち込んだプラグインです。
この記事では、その音質の温かみとクリアさ、多機能性、そして直感的な操作性を徹底レビューします。プロフェッショナルなミックスに欠かせない、この革新的なツールがどのようにしてあなたの音楽制作を変えるのか、その秘密を解き明かしていきましょう。
Kiive Audio NFuse 概要
メーカー | Kiive Audio |
製品名 | NFuse |
特徴 | 交換可能なモジュール 二つのフレーバーの提供 マスタリンググレードEQ 多様な圧縮オプション 高度なステレオコントロール 16倍まで設定できるオーバーサンプリング |
システム | システム要求 マックOS OS X 10.7以降 (macOS 10.14以降を推奨) プロセッサー: 1 GHz Intel Dual Core 以上 画面解像度:1024×768以上 フォーマット: VST、AU、AAX 64ビットDAWのみサポート ウィンドウズ Windows 7以降 プロセッサー: 1 GHz Intel デュアルコアプロセッサーまたは AMD 同等プロセッサー 画面解像度:1024×768以上 フォーマット: VST、AAX 64ビットDAWのみサポート |
認証方式 | シリアル認証 |
認証数 | 記載なし |
マニュアル | 英語 |
価格 | $219.99→$109.99 |
NfuseはKiive Audioによって開発されたミックスバスプラグインです。
このプラグインは、特にミックスの最終段階で使用されることを意図しており、音楽制作におけるミックスバス処理に革新的なアプローチを提供します。
Nfuseは、NeveとSSLの両方のコンソールからインスピレーションを得た2つの異なる音響特性を持つセクションを搭載しています。
これにより、ユーザーはワンクリックで音色を切り替えることができ、柔らかく暖かいサウンドから、よりフォーカスされたクリニカルなサウンドまで、幅広い音響表現を実現できます。
Nfuseには、サチュレーション、コンプレッション、EQなどの処理が含まれており、これらはすべてミックスバスに特化して設計されています。
ユーザーはこれらのエフェクトを組み合わせることで、トラック全体に統一感を持たせたり、特定の楽器グループを際立たせたりすることができます。また、ミッド/サイド処理やA/B比較などの機能も備えており、細かい音響調整が可能です。
Kiive Audio NFuse レビュー
シーンによって使い分けられる異なる音質
Kiive Audio NFuseはSSLのサウンドとNeveのサウンドの2つを堪能できます。(プラグイン内ではNとFという表記によってNeveとFusionを識別します、これ以降NとFという単語で解説を進めます。)
Fはフラットでありながらアグレッシブなバスコンプサウンドが特徴的、Nはウォームでふくよかでありながら、クリアなオプトコンプサウンドが特徴。どちらもシーンによって使い分けが楽しめる音質です。
デフォルトの状態で立ち上げ、すべてをNモジュール、Fモジュールに統一すると以下のような違いがでます。
Fの方は全体的にゲインが下がる状態がデフォルトになっているので、ぱっと聴いた印象Nの方が音が良い!と思ってしまいがちですが、質感を正しく追い求めたいのであればゲインマッチが必要になります。
INPUTの調整によって音色が異なります。ではインプット12dBに設定、それぞれのモジュールをOFFにしてゲインをあわせたのが次の画像になります。
ピンクがNで赤がF
Nの方がFと比較して倍音が出ているのがわかります。
これらを実際の音声にする次のようになります。
聴く人によっ微妙な違いですが、この微妙な違いはプロにとって絶妙な違いであり、この質感を切り替えられるというのは音に拘る人がニンマリしてしまう違いでもあります。
さて、NFuseはNとFという異なる2つの音質を使い分けられるのがメリットですが、それ以上に大きなメリットがあります。それは、各モジュールをNとFに使い分けられる点です。
例えばINPUTとサチュレーションはN、イコライザーとコンプとステレオイメージャーはFといったような実機では考えられないことができます。
これはプラグインならでのことで遊び心でありながらその有効性は大きく、音作りにおいて大きなアドバンテージになります。
FとNの良いところをミックスした最強のバスエフェクトを作り上げられるのは触っていてワクワクが止まらなくなります。
すべてのユニットのクオリティは申し分なく、Nのコンプは光学式コンプレッサーとしてとくに優秀でAVALON DESIGN VT-737SPのコンプを彷彿とさせる音質であり、FのVCAコンプ、Nのオプトコンプは他のメーカーなら単体売りをしていてもおかしくないレベルです、
以下のサウンドはサチュレーションとコンプを組み合わせた例です。
Nのクリアさと重みについては他ではあまり得ることができない質感だと私は感じていますが、みなさんはいかがでしょうか?ちなみにまだより重くしていくことも可能です!
NFuseはバス・トラック処理に特化したエフェクトプラグインですが、もちろん単体トラックに使っても問題はありません。
チェインを変更可能
GUI(操作画面)自体の変更はありませんが、チェイン(エフェクトの効果の順番)を変更可能なため、幅広い設定を試みることが可能です。
SSLのFusionプラグインはそれぞれのユニットを切り分けてリリースしているため、VSTプラグインスロット上で自由にチェイン変更ができるのが大きなメリットです。
NFuseではサチュレーション、ダイナミクス、イコライザーの順番を調整できるため、こちらの方が一つのプラグイン内で完結できるため便利だと私は感じます。
HF Compが追加された
SSL Fusionの注目される機能としてHFコンプがありました。
HF Compressorは、高周波数帯域に特化したコンプレッサーです。この機能は、特に高周波数のダイナミクスを細かく制御することを目的としています。
一般的なコンプレッサーが全帯域にわたる音量の変動を平滑化するのに対し、HF Compressorは高周波数帯域のみに焦点を当て、エアリーさやシャープネスをコントロールします。
NFuseはSSLのFusionをエミュレートしているのにも限らず搭載されているコンプはバスコンプという設定に海外のフォーラムではその理由に疑問視する声が上がっていました。
しかし、Kiive Audioの開発陣はその声にいち早く対応し、バージョン1.1.1よりHFコンプを無償アップデートで追加搭載しました。
通常のバスコンプは右下のC1というボタンで切り替えが可能です。
また、さらにハーモニックコントロールとトランスボタンも追加する可能性を示唆しているのも注目です。
このようなユーザーの声に耳を傾け追加実装するKiive Audio の開発陣には頭が下がります。
プリセットの選択ウィンドウが改善
今までのKiive-Audioのプリセットの選択方法には若干難ありのイメージがありました
詳しくは以下の操作性のページで解説していますが、プリセットを選ぶまでに4回クリックをしないとたどり着けないという問題です。
しかし、この問題もNFuseでは解決しており操作性もよくなっております。
ABコピー機能は見送られた
これも私を含め海外のフォーラムで搭載して欲しいという機能でした。
Kiive-Audioには設定の一つ前に戻る/進むというUNDO/REDO機能が搭載されていることで抜群の操作性が得られました。それと同じように設定の違いを比較できるA/B機能もあります。
比較するときには同じ設定から少し変更したい場合もあります。そのような場合にはAの設定をBにそのままコピーできればよいのですが、残念ながらこのコピー機能は今回も実装されませんでした。
ただ、開発陣はこの声にも耳を持ってくれているので、バージョンアップデートで搭載される可能性もあります。
オーバーサンプリング時のCPU負荷の割合について
Kiive Audio NFuse自体はCPU負荷はそれほど高くないプラグイン・エフェクトといえます。
しかし、オーバーサンプリング使用時にはCPU負荷が大きくなるため注意が必要になります。
下記の画像は左からオーバーサンプリング無し、X2、X4、X8、X16のCPU負荷です。
ではCPU負荷を高くしてまで「オーバーサンプリングを使った方が良いのか?」という疑問が出てくるかもしれません。
オーバーサンプリングはエイリアシングノイズを防ぐために用いられることが多いのですが、音質の違いを認識できるスキル及びその必要性を見いだせていない(特に困らない)ので使用はしていません。
オーバーサンプリングにおけるエイリアシングの関係性を理解し実感したいとは思い日々勉強していますが、私の目的は作曲をすることであって、音響知識を高めるために使える時間は現状限られているため、私はオーバーサンプリングは基本OFFにして使うことが多いです。
またこれはユーザー環境によって異なる可能性もありますが、私の環境ではコンプ切り替え時にうまくゲインリダクションメーターが反応しないという場合がありました。
この場合パラメーターをいじっていると改善したので、軽度のバグ程度ではないかと考えています。
CPU負荷計測環境
パソコン Macmini2018
CPU Corei7(i7-8700B)6コア
HT使用時12コア 3.2GHz/ターボブースト(TB)使用時4.6GHz
メモリ 32GB
システム OS12.6.1 Monterey
Audio/IF Focusrite RED 8PRE
バッファー 256
DAW LogicPro10.7.7
48kHz/24bit
再生ストレージ SSD
通常 | セール | |
価格 | $219.99 | $109.99 |
NFuseを購入しても良い2つ理由
NFuseの定価は$219.99、それが現在セールで$109.99です。Kiive-Audioのプラグインはどれも高価格帯です。その価格に価値を見いだせたユーザーが購入すればよいだけの話なので、無理して購入する必要はありません。ただ、セールの$109.99は機能面からみても魅力的であると感じます。
その理由は2つ、1つはNeveのMBTをエミュレーションしたプラグインが手に入るということ、もう1つはSSLのFusionは本家からそれぞれ単体でリリースされているものより安くFusionが手に入るということです。
1つ目のNEVEのMBTはRupert Neve DesignsMBT : Master Bus Transformerは実機であれば¥583,000という非常に高価なハードプロセッサーです。
もちろん、このハードプロセッサーをNFuseが完璧に再現できているわけではありませんが、音の方向性等について海外では高く評価されています。
それらを考慮しながら実際使ってみるとその音質の特徴はNeveらしさで自分が求めているバス・トラックのサウンドを作り出してくれています。
もう一つの理由は本家から出ているFusionプラグインより安く手に入るということ、
本家SSLからは、「SSL Fusion Vintage Drive」「SSL Fusion HF Compressor」「SSL Fusion Violet EQ」「SSL Fusion Stereo Image」「SSL Fusion Transformer」が単体でそれぞれリリースされており、それらをすべて使用するとハードプロッサーのFusionと同じになります。
ハードプロセッサーであるFusionはMTBと比較すると少し安いですが、それでも高価で誰でも手が出るものではありません。
しかしプラグインはハードプロセッサーと比較すると安価とはいえ、SSL Fusionシリーズのプラグインは1つあたり$218.90とプラグイン・エフェクトの中では高価な部類に入ります。それらをすべて集めるとなると$1094.5必要になります、
現在84%OFFのセール中で1つの価格は$32.99すが、それでもすべて揃えるためには$164.95になります。この価格から考えると、NFuseは$109.99(セール価格)でSSL FusionだけではなくNeveサウンドまで楽しめるわけですし、NFuseにはSSLのパスコンプまで搭載しているわけなので、お買い得感があります。
PluginBoutiqueで購入すると月替りプラグインが無料でもらえます。無料と行っても100ドル相当に売っているプラグインがもらえるのでかなりお得です。
4月の無料特典は
Audiified U78 Saturator または Excite Audio VISION 4X Lit
注意点
- Rent To Own プランは、無料トランザクション ギフトの対象外
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PluginBoutiqueでの具体的な購入方法はこちらの記事が参考になります!
NFuseプラグインプラグインは誰におすすめ?
NFuseプラグインは、その独特な特性と機能性により、特定のユーザーグループに特に適していますが、一方で全てのユーザーにとって最適な選択とは限りません。以下に、NFuseプラグインを推奨する人とそうでない人について解説します。
NFuseプラグインをオススメする人:
- アナログサウンドを求めるプロデューサーとエンジニア: SSLとNeveの両方の特性をデジタル環境で再現したいと考えている人には最適です。特に、温かみのあるサウンドやクリアでパンチのあるダイナミクスをデジタル録音に加えたい人には、NFuseが大きな価値を提供します。
- 幅広いジャンルに対応したいミキシングエンジニア: NFuseは、ロック、ポップ、ジャズ、クラシックなど、さまざまなジャンルの音楽に対して柔軟に対応できるため、多様なプロジェクトを手がけるエンジニアに適しています。
- 音色とテクスチャーにこだわるサウンドクリエイター: 独自の音色やテクスチャーを追求するクリエイターにとって、Nfuseの提供する繊細な音質調整機能は、クリエイティブな作業を強力にサポートします。
NFuseプラグインをオススメしない人:
- 初心者や予算に限りがあるユーザー: NFuseは多機能でプロフェッショナル向けのプラグインであるため、初心者には操作が複雑に感じられるかもしれません。また、予算の限られたユーザーにとっては、コストパフォーマンスの観点から最適な選択とは言えない場合があります。
- 特定の機能のみを求めるユーザー: NFuseは複数の機能を一つのプラグインに集約していますが、特定の機能(例えばEQのみやコンプレッサーのみ)を求めている場合、より専門的なプラグインの方が適している可能性があります。
- 完全なデジタルサウンドを好むユーザー: アナログサウンドの温かみや特性を好まない、または完全にクリアでモダンなデジタルサウンドを求めるユーザーにとって、NFuseは必ずしも最適な選択ではありません。
NFuseプラグインは、その独特な特性と幅広い機能性により、特定のニーズを持つユーザーに大きな価値を提供しますが、全てのユーザーにとって万能なソリューションというわけではありません。
まとめ
NFuseがリリースされたとき一粒で二度美味しいなんてそんなうまい話はないだろう、と思っていましたが実際使ってみたところ、二度美味しいどころか、三度以上美味しいプラグインであることがわかりました。
SSLのFusioについてはSSLからリリースされているFusionプラグインの方が良いというユーザーもいるでしょうし、Nに関しては全く違うという人もいます。
ですが、私個人として、これらの音色が素早く、自分の作りたいバス・トラックのかんたんになりました、とくにNのサチュレーションとコンプの組み合わせには感動し、すでにこの2つだけでも十分に元はとれた印象があります。
また、ユーザーの声に耳を傾け必要とされている機能を無償アップデートで追加していく姿勢もすばらしいと思います。
今後のアップデートではSSL Fusion Transformerが追加されることも検討しているのでこちらも楽しみですし、FusionのハードプロセッサーはコンプがLMCコンプに切り替えが可能なのも魅力です。もちろんKiive Audioの開発陣もそれは理解しているので、それもアップデートえ導入される可能性もあります。
初心者には素早く最高の音色を提供し、中級者から上級者にはNFuseの奥深さを見せつけてくれる。なかなか挑戦的なエフェクトプラグインです。バス・トラックに温かさと重みを兼ね備えたい!という人にはオススメです。