音楽は私たちの日常に色を加え、感情を豊かにします。その音楽を最も深く味わうために、ヘッドホン選びは非常に重要です。
しかし、「モニターヘッドホン」と「普通のヘッドホン」の違いについては、多くの人が疑問を持っています。
普通のヘッドホンでDTMをしてもいいのかな?
2つの違いを理解できればわかってくるよ!
この記事では、音楽を愛するすべての人に向けて、これら二つのヘッドホンの違いをわかりやすく解説します。音楽制作の現場で求められる精密さから、日常でのリラックスした音楽体験まで、あなたの生活に最適なヘッドホンを見つける手助けをします。
音楽の世界をより深く、より豊かにするための一歩を、この記事とともに踏み出しましょう。
ヘッドホンの種類について
ヘッドホンと一口に言っても種類があり、それらをまとめると次のようになります。
種類 | 説明 |
---|---|
オーバーイヤーヘッドホン (サーカムオーラル) | 耳を完全に覆う大きなカップ、優れた音質とノイズ遮断能力、プロフェッショナル使用に適している |
オンイヤーヘッドホン (スープラオーラル) | 耳の上に置かれる小さめのカップ、軽量でコンパクト、音漏れが多いが携帯性に優れる |
インイヤーヘッドホン (イヤホン) | 耳の中に挿入するタイプ、コンパクトで携帯性が高い、アクティブな用途に適している |
イヤーパッド (イヤーバッド) | 耳の穴に挿入しない、耳の外に置くタイプ、快適で長時間使用に適しているが、ノイズ遮断能力は低い |
ノイズキャンセリングヘッドホン | 外部ノイズを電子的に減少させる技術を使用、騒がしい環境での使用に適している |
ワイヤレス(Bluetooth)ヘッドホン | ケーブルなしでデバイスに接続、携帯性と利便性に優れるが、バッテリー寿命に制限あり |
DTMをしている人や少し詳しい人は「密閉型(クローズタイプ)や開放型(オープンタイプ)は?」と思うかもしれません。それらはオーバーイヤーヘッドホンというタイプの中でのカテゴリになります。
オーバーイヤーヘッドホン | 説明 |
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開放型(オープンバック)ヘッドホン | 耳を覆うカップの後ろが開いている設計、自然で拡がりのある音響を提供、サウンドステージが広い |
密閉型(クローズドバック)ヘッドホン | 耳を覆うカップが完全に密閉されている設計、外部ノイズを効果的に遮断、集中して音楽を聴くのに適している |
開放型は密閉型と比べ音がもれるためレコーディング用途では使えませんが、開放感のある音質はミックスダウンやマスタリング作業で使われることもあります。
これらの中で一般的にモニターヘッドホンとして使われるのはオーバーイヤーヘッドホン(サーカムオーラル)タイプのものになります。一部のユーザーではイヤホン等を使う場合もありますが、共通認識的な意味合いでははオーバーイヤーヘッドホン(サーカムオーラル)タイプになります。
モニターヘッドホンと普通のヘッドホンの違い
モニターヘッドホンと普通のヘッドホンこれらの違いについて解説していきます。
モニターヘッドホンとは?
モニターヘッドホンは、音の正確な再現を目的として設計されています。これらは主に音楽制作やプロフェッショナルなオーディオ作業に使用され、音の細かなニュアンスやバランスを正確にキャッチする能力が求められます。
フラットな周波数応答: 音色を変えずに、録音された音を忠実に再現します。
高い解像度: 細部までクリアに聞こえるように設計されています。
閉鎖型デザイン: 外部のノイズを遮断し、音の細部を損なわずに聞くことができます。
耐久性:断線しない破損しない
普通のヘッドホンとは?
一方で、普通のヘッドホンは日常的な音楽鑑賞や携帯オーディオプレーヤー、スマートフォンなどでの使用を目的としています。これらは快適さやデザイン、手軽さを重視して設計されており、以下の特徴があります
強調された低音: ポップやロック音楽のリスニングに適しています。
ポータブルデザイン: 持ち運びが簡単で、日常使用に便利です。
オープン型またはセミオープン型: 自然な音響と環境音の聞こえやすさを提供します。
モニターヘッドホンに対して普通のヘッドホン(リスニングヘッドホンやオーディオ・ヘッドホンと呼ばれることもあります)は音楽鑑賞を楽しむことを前提に作られているため、低域や高域がプッシュされたいわゆるドンシャリな音でチューニングされている場合があります。
これをDTMで使用すると、低域や高域がすでにイコライザーでブーストされている状態になり、中立的な音楽再生を前提とした音楽制作ができなくなります。
かんたんにまとめると
音楽を楽しむことを目的とした音にチューニングされているのが普通のヘッドホン
録音された音が本来持っている質感や細かいニュアンスを正確に捉え、原音に忠実に再現することで、音楽制作者が正確なミキシングやマスタリングを行えるのがモニターヘッドホン
モニターヘッドホンの特徴と利点
ここではモニターヘッドホンの特徴についてさらにフォーカスしていきます。モニターヘッドホンの特徴は主に次の5つがあります。
特徴 | 利点 |
---|---|
フラットな周波数応答 | 録音された音を忠実に再現し、バランスの取れたミックスを実現。 |
高い解像度 | 音の細部や微妙なニュアンスを明瞭に捉える。 |
閉鎖型デザイン | 外部のノイズを遮断し、集中して作業できる環境を提供。 |
耐久性と快適性 | 長時間の使用にも耐える構造と快適なフィット感。 |
正確なステレオイメージング | 音の位置や動きを正確に捉え、立体的な音響体験を提供。 |
この中でモニターヘッドホンの特徴として一般的に注目されやすいのがフラットな周波数応答と高い解像度です。
モニターヘッドホンのフラットな周波数応答とは
再生周波数特性とは、イコライザーのようなものだと考えてください。本来は何もしなければフラットな状態ですが、特定の帯域だけをブーストすることでその周波数が強調されます。これがヘッドホンの中で行われると音楽再生の基準が変わってしまいます。
モニターヘッドホンにフラットな特性が求められる理由は、音楽制作やオーディオミキシングの過程で最も正確で中立的な音質を提供する必要があるためです。この特性が重要な理由をいくつか挙げます:
正確な音の再現: フラットな周波数応答を持つモニターヘッドホンは、録音された音をできる限り忠実に再現します。これにより、音楽制作者やエンジニアは、音源の真の音質を把握し、適切な調整が可能になります。
バランスの良いミックス: 音楽制作時には、様々な楽器や音声のバランスを取ることが必要です。フラットな応答を持つヘッドホンを使用することで、どの周波数帯域も過剰に強調されたり、逆に抑えられたりすることなく、バランスの良いミックスを行うことができます。
ユニバーサルな基準: モニターヘッドホンのフラットな特性は、様々なリスニング環境や再生システムにおいても一貫性のあるサウンドを提供します。これにより、制作された音楽が異なるオーディオシステムで再生された際にも、意図した通りの音質で聞こえることが期待できます。
細部の明瞭さ: フラットな応答は、音楽の細かなディテールを明確に聞き取ることを可能にします。これは、特に複雑な音楽作品や高度なオーディオ編集作業において重要です。
総じて、モニターヘッドホンのフラットな特性は、音楽制作やオーディオミキシングにおいて、正確でバランスの取れた音を提供するために不可欠です。これにより、最終的なオーディオプロダクトが任意の再生環境で意図した通りに聞こえるようになります。
モニターヘッドホンの解像度とは?
モニターヘッドホンの「解像度」とは、音の細かいディテールや微妙なニュアンスをどれだけ明確に再現できるかという能力を指します。DTM初心者にもわかりやすく説明するために、この概念をいくつかの点で分解してみましょう。
細部の聞き取りやすさ: 高解像度のヘッドホンでは、音楽の中の小さな要素、例えば弦の軽い触れる音や歌声の微妙な息遣いなど、細かい部分がはっきりと聞こえます。これは音楽制作時に非常に重要で、特に複雑な音楽や細かいエフェクトを使う場合には欠かせません。
音の分離: 解像度の高いヘッドホンでは、異なる楽器や音声が混ざり合わず、それぞれが独立して聞こえます。これにより、ミキシングやマスタリング時に各音源のバランスを適切に調整しやすくなります。
ダイナミックレンジ: 解像度が高いヘッドホンは、非常に静かな音から非常に大きな音まで、幅広い音量レベルの音を正確に再現します。このため、音楽のダイナミクス(強弱の変化)がより明瞭に感じられます。
周波数応答: 高解像度ヘッドホンは、低音から高音までの広い周波数範囲をカバーし、それぞれの音域をクリアに再現します。これにより、全体的なサウンドがバランス良く、自然に聞こえます。
解像度の高いヘッドホンは、音楽制作において細かな音の調整やバランスを正確に行うために非常に役立ちます。特にDTMでは、音楽の各要素を正確に理解し、コントロールすることが重要なので、解像度の高いヘッドホンが推奨されます。
普通のヘッドホンの特徴と利点
普通のヘッドホンの特徴はモニターヘッドホンと違い、音楽を聴くことで得られる高揚感の部分をどれだけリスナーが味わえるかどうかがポイントになります。
特徴 | 利点 |
---|---|
強調された低音 | ポップやロック音楽などのリスニングに適しており、ダイナミックな音響体験を提供。 |
ポータブルデザイン | 持ち運びが簡単で、外出時に便利。 |
オープン型/セミオープン型デザイン | 自然な音響と環境音の聞こえやすさを提供し、快適なリスニング体験を実現。 |
多様なデザインとカラーオプション | 個人の好みやスタイルに合わせて選べる多彩なデザイン。 |
手頃な価格 | 広範囲の予算に合わせた選択肢が豊富。 |
普通のヘッドホンは、日常的な音楽鑑賞や移動中のリスニングに適しており、その快適さ、使いやすさ、手頃な価格が主な利点です。様々なデザインや価格帯の中から、自分のライフスタイルや好みに合ったものを選ぶことができます。普通のヘッドホンはそれなりに気分が良い感じの音になるので、作曲過程では使うのは反対しな
音質の違い:モニターヘッドホンと普通のヘッドホン
両者の音質の違いを比較し、どのような聴き方に適しているかを説明します。
特徴 | モニターヘッドホン | 普通のヘッドホン |
---|---|---|
音質の特性 | フラットで中立的 | 強調された低音または高音 |
音の解像度 | 高い(細部までクリアに再現) | 中程度(一般的なリスニング向け) |
音響のバランス | 正確でバランスが取れている | 音楽ジャンルによって異なる |
周波数応答 | 広範囲(低音から高音まで均等に再現) | 特定の周波数帯域での強調 |
使用目的 | 音楽制作、ミキシング、マスタリング | 日常的な音楽鑑賞、移動中のリスニング |
この比較から、モニターヘッドホンは音楽制作やプロフェッショナルなオーディオ作業に適していることがわかります。これらのヘッドホンはフラットで中立的な音質を持ち、音の細部まで高い解像度で再現します。
これにより、音響のバランスを正確に評価し、より質の高いオーディオ作品を作成することが可能です。
一方で、普通のヘッドホンは日常的な音楽鑑賞や移動中のリスニングに最適です。これらのヘッドホンはしばしば低音や高音を強調し、特定の音楽ジャンルに合わせた音質を提供します。これにより、音楽をより楽しくリスニングすることができますが、音楽制作やミキシングには最適ではないかもしれません。
モニターヘッドホンを普段使いするケース
近年ではモニターヘッドホンを普段使いするケースも増えてきました。DTMをやっているからすと「そのヘッドホンなんで普段使いしているの?」と思うこともあるかもしれません。そこでモニターヘッドホンを普段使いするケースについて考えてみました。
モニターヘッドホンを普段使いする理由には、以下のような点が考えられます:
広範囲かつフラットな周波数応答: モニターヘッドホンは、5Hzから40,000Hzの広い範囲をカバーし、低音から高音までの各周波数を同じ音量で正確に再現します。これにより、音楽をより自然でバランスの取れた形で楽しむことができます。
よりロバストで快適なデザイン: スタジオ環境での使用を想定しているため、モニターヘッドホンは耐久性が高く、長時間の使用にも適した快適なデザインをしています。ソフトなイヤーカップが特徴で、長時間装着しても疲れにくいとされています。
中立的な音質: モニターヘッドホンは、音楽の正確な再現を目的としているため、低音や高音を人為的に強調することはありません。そのため、音楽の細かなディテールやニュアンスをより明確に感じることができます。このような特性は、特にアコースティックな演奏やクラシック音楽、声や楽器の細かな表現を重視するリスナーに適しています。
パワー要件: 高品質なモニターヘッドホンは、一般的なヘッドホンよりも多くのパワーを必要とすることがあります。再生デバイスが十分なパワーを提供できない場合、音質が低下する可能性があります。このため、使い方によっては、ヘッドホンアンプの使用が必要になることもあります。
コスト効率とプライバシー: モニターヘッドホンは、高品質な音響体験を提供しつつ、フルサイズのスタジオモニターよりも安価です。また、音楽を楽しむ際に他人の迷惑にならないため、プライバシーを保ちながら音楽制作やリスニングが可能です。
これらの特徴により、モニターヘッドホンは音楽制作やオーディオミキシングだけでなく、日常の音楽鑑賞にも適していると言えます。ただし、その使用は個人の好みや要件により異なるため、音質や快適性に重点を置くか、携帯性やファッション性を重視するかによって選択が異なるでしょう。
個人的な意見ですが、モニターヘッドホンの音は決して音楽ではありません。そのため普通のヘッドホンと聴き比べると音の面白みがありませんが、ユーザーによっては聞きやすいと判断できる材料になる可能性もあります。
DTMモニターヘッドホンの選び方について
モニターヘッドホンの知識が増えてきても最後に頼るのは自分の耳になります。しかし、音の善し悪しの基準はある程度の経験から判断するしかありません。そこで選ぶ時には下記の内容を参考にするのが良いでしょう。
ブランドとレビュー: 信頼できるブランドの製品や、オーディオ専門家やユーザーによるレビューを参照することは、解像度の良いヘッドホンを選ぶ際の良い出発点になります。評価の高い製品は一般的に優れた解像度を持つ傾向があります。
自分の耳で聴く: 実際にヘッドホンを試聴してみることが最も確実です。店頭で試聴するか、友人から借りる、または返品ポリシーがあるオンラインショップで購入してみるなどの方法があります。音楽の細かなディテールや様々な楽器の音がクリアに聞こえるかどうかを確認します。
音楽のジャンル: 解像度をチェックする際には、様々なジャンルの音楽を聴いてみましょう。特に、多くの楽器が使われているクラシック音楽やジャズ、アコースティック音楽は、ヘッドホンの解像度を試すのに適しています。
価格帯: 一般的に高価なヘッドホンはより高い解像度を持つことが多いですが、必ずしも価格が高ければ高いほど良いわけではありません。予算内で最良の選択をすることが重要です。
仕様の確認: ヘッドホンの仕様を確認して、周波数応答範囲が広く、歪みが少ないモデルを選ぶことも一つの方法です。ただし、仕様だけで全てを判断するのは難しいので、これを補助的な情報として活用します。
これらの基準に基づいて選ぶことで、初心者でも解像度の高いヘッドホンを見つけることができます。それでも最終的には、自分の耳で聴いて、自分の好みに合ったヘッドホンを選ぶことが最も重要です。
上記の内容と一緒に下記の内容を踏まえるのがベストな選択基準が以下のようになります。
選択基準 | 説明 |
---|---|
周波数応答 | 20Hzから20kHzの広範囲をカバーし、全音域を再現する能力。 |
インピーダンス | 32オーム以下の低インピーダンスで、様々なデバイスで容易に駆動。 |
感度 | 90dB以上の高感度で、歪みなしに十分な音量を提供。 |
快適さ | 長時間の使用に耐える快適なイヤーカップとヘッドバンド。 |
耐久性 | 金属製のハウジングや強化ケーブルなど、日常の使用に耐える構造。 |
ただ、これらの項目はだいたいのモニターヘッドホンでクリアしていますが、ヘッドホンインピーダンスについてメーカーや機種によって異なります。
32オーム以下が絶対というわけではありません。あくまでそのあたりであれば様々なデバイスで使用できるという話になります。
ちなみによく使われているモニターヘッドホンのインピーダンスは以下の通りになります。
DT770PRO 32Ω | ATH-M50x | MDR-CD900ST | |
---|---|---|---|
インピーダンス | 32Ω | 38Ω | 63Ω |
モニターヘッドホンの定番として長く親しまれているMDR-CD900STでも63オームですから、よほど高く無い限りはそこまで気にしなくてもよいです。
まとめ
基本的に普通のヘッドホンでDTMをするのはあまりオススメはできません。その理由として中立的な音楽再生を前提とした音楽制作ができなくなるというのが一番わかり易い理由です。
普通のヘッドホンはすでに音が脚色されている(ドンシャリ傾向)ためその情報を普通だと思って、イコライザー処理を行うと当然、あなた好みのサウンドになってしまい、他の環境で聴いたときには好ましくない結果になる可能性が高いです。もちろん、頭の中でフラットな補正ができるのであれば、普通のヘッドホンをモニターヘッドホンとして使うことも可能ですが、それらはプロのエンジニアの中でも難しい技術です。
ただしモニターヘッドホンはフラットな音声故にどうしても出音は退屈になものになります。なので、創作は普通のヘッドホン、ミックスはモニターヘッドホンという形での使い分けはオススメです。
今、普通のヘッドホンを持っている人であっても、できるならばモニターヘッドホンを1つは持っておくことで、聴いてくれる人に心地よい音楽体験をできるようになります。