作曲がうまくなるには楽曲分析が大切です。「分析?なんだかめんどくさそうな感じがする」と思う人がいるかもしれませんが、大丈夫です。分析といっても特別な理論などは必要ありません。
DTM初心者に限らず音楽を知らない小学生でもできるほど簡単な方法ですが、その効果は絶大です。なぜならAm7を理解するのに3年もかかった私がその方法を続けたおかげでプロの作曲家になれたからです。
この記事を読むことで音楽に対しての分析眼を養うことができます。その結果作曲の引き出しを増やし、今まで作ることができなかったような作曲にトライできるようになります。
楽曲分析とは?その目的について
楽曲分析(アナリーゼ)とは、音楽作品を構成する要素を詳細に調べ、その作品がどのように機能しているかを理解するプロセスです。
この分析を通じて、作曲技法、形式、和声、リズム、テクスチャー、旋律など、音楽のさまざまな側面が明らかになります。具体的には以下のようなステップで行われます。
1. 形式と構造の分析
- 楽曲の全体的な構造を理解します。これには、楽曲がどのような部分(例:A-B-A形式、ソナタ形式、ラプソディーなど)から構成されているか、各部分の関係性や機能を調べます。
- 楽節の構造を分析し、繰り返しや変奏、展開部分を特定します。
2. 和声と調性の分析
- 和声進行を調べ、主要な和音、転調、和音の機能(トニック、ドミナントなど)を特定します。
- 調性を分析し、楽曲がどの調で書かれているか、転調がある場合はその過程を追います。
3. 旋律の分析
- 旋律の動きを調べ、旋律線の特徴、使用されている音階、旋律の発展や変化を分析します。
- モティーフやテーマの使用を特定し、それらが楽曲全体でどのように扱われているかを分析します。
4. リズムとテンポの分析
- リズムパターンやテンポの変化を調べ、それらが楽曲の構造や表現にどのように貢献しているかを分析します。
- 拍子やリズムの複雑さを評価します。
5. テクスチャーの分析
- テクスチャー(単旋律、ホモフォニー、ポリフォニー、ヘテロフォニー)を特定し、楽曲の異なる部分でどのように変化しているかを分析します。
- 声部の配置や対位法の使用を調べます。
6. 楽器編成とオーケストレーションの分析
- 使用されている楽器や声部を特定し、それらが楽曲のテクスチャーや色彩にどのように貢献しているかを分析します。
- オーケストレーションの技法を分析し、特定の楽器がどのように使われているかを調べます。
楽曲分析は、音楽をより深く理解し、自身の音楽制作や演奏に役立てるための重要な手段です。分析を通じて得られた知見は、音楽の創作や解釈に直接応用することができます。
これらはアカデミックな意味での楽曲分析になりますが、JPOPであろうと本質的な部分は同じです。
では、楽曲分析をすることでどんなメリットがあるのかを次で解説していきます。
楽曲分析のメリット
作曲初心者が楽曲分析をするメリットは多岐にわたります。楽曲分析は、音楽の理解を深め、自身の作曲技術を向上させるための重要な手段です。以下にその主なメリットを挙げます。
理論の理解
楽曲分析を通じて、和声学、旋律、リズム、形式などの音楽理論の実際の適用を学びます。これにより、音楽理論の抽象的な概念が具体的な音楽作品の中でどのように機能しているかを理解することができます。
創造性の向上
さまざまな作曲家や楽曲の分析を通じて、異なる作曲技法やアイデアに触れることができます。これらの知識は、自身の作曲に新たなアイデアをもたらし、創造性を刺激します。
批判的聴取能力の向上
分析を行うことで、楽曲をより深く、批判的に聴く能力が養われます。音楽の構造や、特定の音楽的選択が楽曲にどのような影響を与えているかを理解することができるようになります。
自己表現の豊かさ
様々な楽曲を分析することで、音楽的表現の幅が広がります。異なるジャンルやスタイルから影響を受け、自身の音楽的アイデンティティを形成するのに役立ちます。
問題解決スキルの向上
分析を通じて、楽曲が直面している構造的、調和的、旋律的な問題を特定し、それらをどのように解決しているかを学びます。これは、自身の作曲プロセスにおいて直面する問題を解決するためのアプローチを提供します。
インスピレーションの源
他の作曲家の作品を分析することは、新たなインスピレーションを得る素晴らしい方法です。特定の楽曲や作曲家からインスピレーションを得て、それを自身の作品に取り入れることができます。
作曲初心者にとって、楽曲分析は単に音楽理論を学ぶこと以上の意味を持ちます。それは、音楽をより深く理解し、自身の音楽的能力を向上させるための実践的なプロセスです。
これらのメリットは感覚では理解できている人は多いと思います。しかし、いざ分析をしようにも「何をどう分析すればよいかわからない」「分析するためには音楽理論が必要なのではないの?」と思うかもしれませんね。
もちろん、それらがあればより鋭く深い分析ができることは間違いないですが、DTMで作曲する初心者はそのような高度な分析をする必要はありません。
重要なのは「今よりよい曲を作るための方法」という視点で分析すること、そのために必要なことを次章で紹介します。
分析に必要な3つの視点
よしメロディだな!AもBもサビも2Aも全部分析だ!!と意気込む人もいると思いますが、分析癖がない人にとってはメロディだけに焦点を絞ったとしても十分ではありません。なぜならば、人の頭は「慣れていないことをすると通常の倍のエネルギーを使うと言われています」
つまり、慣れていないメロディの分析を一気にやってしまうと、脳はすぐに疲れて「もやめたー」となってしまいます。一気に出来るならばまだいいのですが、おそらく途中で諦めます。そして「やはり難しい」と思ってしまいます。
なので、まずはサビからです。さらに対象を絞ります。
分析したい曲の譜面があればそれを見ながらであってもOKです。もしない場合は、耳コピができればメロディを拾うのもOKです。「ん?さっき耳コピしなくてもいいって言わなかった?」と言いました。
そういう場合は、ココナラや能力のある人に頼むのがポイントです。耳コピは訓練すればある程度は身につくので頑張る価値はありますが、大事なのは耳コピ力をつけたいのか、それとも分析をしたいのかです。
このプロセス自体も分析です。なので目的が明確であれば最適な手段を選ぶことでより速く確実に結果を得られます。
作曲をしたいのであれば、別に耳コピは必須ではありません。プロの知り合いに耳コピができない人はたくさんいます。
- 音を拾う能力=作曲能力が高いわけではなく
- 音楽分析の能力=作曲能力が高い人なのです。
では分析するうえでどういう視点をもてばいいのかそれは「長い短い」「高い低い」「硬い柔らかい」の3点です。
分析ポイント①メロディの長さ
ではサビだけの分析に戻ります。このとき、まず考えるべきポイントは音の長さです。つまり譜割とテンポです。
同じ譜割であってもテンポによっては速く感じたり遅く感じたりもします。テンポは絶対的な時間の支配者です。その中でどういう譜割なのかを考えます。譜割が音楽にどういう影響を与えているかを考えます。
例えば、メロディが大きい(長い)場合はどんなイメージになるかです。おそらく、世界観が大きい印象の曲になっているものと思われます。バラードなどメロディが大きい理由はロングトーンによるビブラードなどでの表現力がつけやすいためとも言えます。
逆に譜割が細かい(短い)場合は、どうでしょう?大きい譜割と比べてそれより小さくなればなるほど、どういう印象があるのかです。一例に過ぎませんが、ふわりが細かくなれば勢いが出てきます。全音符のギターより8分音符で刻まれるギターには勢いがあります。これはテンポが強調されたことで「高揚感」が出るためです。これはすぐに次の展開が出てくるので意識がずっとその音に集中するためです。
どのくらいのテンポでメロディの譜割はどれくらいのか?これだけを意識しながら好きな曲のサビだけを聴くと今まで聞き流していた多くの曲からすごい情報量が得られます。
分析ポイント②メロディの高さ
基本サビではメロディが一番高い音が出てきます。サビは一番聞かせたいところです。一番高い音を魅力的に使えれば、それだけ聞き手の感情を揺さぶることができます。高い音には人を高揚させ低い音には落ち着かせる(安心感)効果があります。
これは先程の譜割とテンポの話にも通じるところがあります。
つまりテンポが遅く長い音で低い音だと安心感があるテンポが速く短く高い音だと高揚感があるもちろんこれをさらに分割することで逆の要素や中間的な要素も出てくると思います。
どちらにしてもサビの中で「どこが一番高い音のなのか」どこが一番低い音なのかを意識することでそのサビの聞かせたいポイントが見えてきます。そしてその前後、「高い音や低い音の前後1小節はどんな感じなのか」という視点をもてば、その音の向かう方向の意味が見えてきます。
一例で言うと、一番高い音のあとは必ず音が下がります。なぜならば、ボーカルがもっとも出せう高い音ですから、それ以上は出ません。そして最高の盛り上がったあとはその盛り上がりに余韻を残すかのように音が下がっていくことで感動を味わえる。こういう捉え方ができます。
ボカロなどでずっと高音域が続く曲もあるので、この考え方はボカロ系には当てはまらないケースもあります。しかし、逆を言えば「ボカロらしさとはそういう一面の要素がある」という視点を持つことができます。
ここでの重要なポイントは特定の音程「ド」とか「レ」ということを意識しなくてもOKです。もちろん正確であればよいのですが、サビのなかで一番高いと思ったところ、低いと思ったところで問題ありません。なぜならばここでは絶対の正しさではなく「今自分がそのポイントに意識が向いているかどうか」の方が重要です。この分析は「分析に苦手意識を持っている人が分析癖をつける」ためです。
分析ポイント③音の柔らかさ
これはサビではメロディの音はどんな印象なのか?を考えます。一言で言えば「音色」です。歌ものの場合はボーカルのもっている声の性質にもよりますが、AとBと比べると声は大きく固くなる傾向があります。硬いという表現より「ハリが出てくる」という印象もいいでしょう。高いくハリがある音は抜けもよくなります。
なぜ、サビで音が高いのかは音域と同時にハリのある声が出すためとも言えます。ここまでの分析のポイントは「固有の音程を考えなくてよい」ということです。何が「ド」なのか「レ」なのか考えなくてもこれだけの分析が可能なのです。
ここまで来るとかなりクオリティの高い分析ができているのと同じです。
さて、ここまではサビに特化した話でしたがもう少しだけ視野を広げてみましょう。
追加分析ポイント①楽曲の速度について
まずいちばんシンプルなアプローチは楽曲の速度(テンポ)を理解することです。
楽曲のテンポを知ることでバラードなのかミディアムポップなのか、などテンポ情報によって決められた楽曲の要素がわかってきます。
また、楽曲のテンポは時代性を強く反映しているという点も理解するとよいでしょう。
例えば1990年代でアイドルがテンポ160の曲を歌うことはありませんでしたが、今ではテンポ190の曲も珍しくありません。
コンペのあるある話ですが、コンペの参考曲で意識するのはテンポなのは有名な話です。私も何度も通らなかったコンペをテンポ守ったけで通るようになりました。
それほどテンポは人に与える影響が大きいのです。
追加分析ポイント②メジャーかマイナーか
メジャーコードを使えば曲は明るくなり、マイナーコードを使えば曲がくらなくなる。シンプルでわかりやすい話ですが、これを感覚ではなく正しく頭で理解できているかによって色々と見えてきます。
例えばエヴェンゲリオンの残酷な天使のテーゼはAメロはメジャー、サビはマイナーという構造になっています。
端的に説明すると「Aメロは優しさサビは力強さ」と言えるのではないでしょうか?そしてメジャーとマイナーを分けることで楽曲の中でわかりやすい対比になりダイナミックな印象があります。
コード進行を理解しているのであれば、より詳しい分析も可能ですが、まずは「明るい」「暗い」の意識で
追加分析ポイント③メロディの音程と譜割り
音程と譜割りなんて言葉を聞くと難しいように思うかもしれませんが、かんたんに言うと音の長さと高さです
ざっくりというとAメロやBメロと比較してサビは音程は高いです。なぜならばそこが一番の山場になるからです。
つまり音が高いとそれだけ緊張感が生まれます。サビの音程が高いのはそこに緊張感があってほしいからですね。
つまり先程のサビのメロディに対して他のパートはどのようなメロディの高さと音の長さになっているかを知ることができれば、よりサビらしさを強調できるようになります。
楽曲分析で得られるもの
楽曲分析をすると楽曲の構造が見えるようになっています。楽曲の構造が見えることで作りたい曲の「らしさ」がわかるようになるので楽曲の構造の理解はとても重要です。
「らしさ」の数は作曲のための引き出しさの数の多さとも言えます。
プロが一日に何曲も書いたりできるのはこの構造を理解しているからです。アマチュアが構造の理解の重要性を意識してもいきなりプロと同じ曲がかけるわけではありません。しかし、より密度の高い分析をするためのアプローチ方法を理解しているかいないかで今後の成長速度はまったく違うものになります。
分析が終わればそれらを一つずつ書き出すことで楽曲の構造がより具体的にわかってきます。
作曲の引き出しとは?
作曲をするための引き出し…なんか出来る人のイメージがありますよね。では具体的に引き出しとは何でしょうか?いろいろな考え方はあると思いますが、大まかにわけると次の3点になります
- ジャンルの認知
- 手法のストック
- ラフスケッチ(フレーズ)を含む作曲してきた数
ジャンルの認知とは「聴いてきた音楽」です。よく「たくさんの音楽を聴け」なんて言われたりしますが、たくさんのジャンルを聴くことでそれが「それが何か」というのがわかるようになります。多くの音楽を聴くことで「ジャンルという情報の違い」を認識することが目的です。
手法のストックとは、ジャンルの特徴を具体化できる文字通りの作曲方法です。クラシカルなボイシング(和声) ロックなサウンド、ボサノバなリズム、EDMの構成、などこれらが手法となります。これらは耳コピや理論書などによって学びます。
最後にそれらを合わせて出来上がった曲の数によって引き出しは構成される。というのが大体の認識でしょう。これらを「聴いてもらう人を喜ばせるための」という言葉を前につけることで、自分に何を求められ、そのための引き出しをどう増やせばいいのか?を考えるきっかけにしている人は多いです。
さて、多くの人は「引き出しの多さ」の大切さに目をむけますが「引き出しの中身」については言及していません。それを今から説明していきます。
作曲の引き出しの増やし方について大切なこと
作曲において引き出しの多さ=作れる数の多さになることは間違いありません。しかし、大切なのは「その中身」です。この中身について多く語られない理由のは「引き出しを作ったことで中身も入っている」と勘違いしているからです。
引き出しを作った時点では中身は入っていません。では中身とは何でしょうか?手法やジャンルでしょうか?違います。それは引き出しのラベリングです。
ひきだしの中身はそれらをどう捉えているか?という視点、つまり「自分の言葉」です。引き出しの中にどれほど自分の言葉を入れることができるかというのがクリエイティブな視点といえます。
クリエイティブとは「何かすごいものを作り上げた(創造)」というアウトプットの文脈で語れることが多いのですが、インプットの時点でも創造のためのクリエイティブインプットがが大切です。
例えば「聴く」という行為はインプットです。ですがどうインプットするのかは人それぞれです。
これは数日前の記事でもお話しましたが「聞く」と「聴く」の違いです。多くの人は引き出しの数を増やすときに「聴いているようで聴いていない」状態です。「そんなことはないちゃんと聴いている!」思っている人はいるでしょう。おそらく「聴いているのかもしれません」ではどんな状態で聴いていますか?
多くの人がこの時「分析ベース」で聴いてるのでしょう。もちろんそれは目的あってのことなので間違いではありません。ではそれ以外にときに音楽の聴き方はもっと自然な聴き方になっていると思います。(仕事柄そういう聴き方をしてしまう人はいるでしょうが)
引き出しを増やす上で、大切なのは、分析ベースの聴き方と同時に感情ベースの聴き方をできるようになることです。
具体的に言うと音楽を聴いて涙してしまうという「心に受け入れる」という視点です。例えば青春時代に聴いたラブソングの感情はそのときでしか感じられません。何十年もたった今聞き直せば、その時の感情は思い出せるかもしれませんが、その時の温度感で心に受け入れることはできません。なぜならそのときにしか受け入れられなかったからです。
これは見方を変えれば「感情に働きかける音楽の捉え方」しているといえます。
引き出しの中身の本質
青春時代という多感な時期とは言い換えれば無限の可能性の中で自分の引き出しにラベリングをせずに、受け取った感情を片っ端から詰め込んでいる時期でもあります。なぜなら「理論より感情が先走る」からです。
音楽は聴くタイミングで姿を変えます。このタイミングとはその時の感情で聴いているということです。。楽しいときに楽しい音楽を聞きたいのはそういうことです。感情はその人の価値観を形成します。
感情は年月と経験によって形を変えます。それによって聴く音楽自体も変わってくることがあります。若い頃に楽しめなかった演歌の味がわかり始めるのもそういうことかもしれません(もちろん若い頃から演歌の楽しみ方を知っている人もいるかもしれませんが)好きだったジャンルが変わってしまう経験をしている人もいると思います。
つまり音楽は「その時々の自分の価値観で聴き受け入れる」ということだと言えます。
では改めて「作曲のため」の聴き方でこれらを考えてみます。この場合の聴き方は当然「作るための技術習得」が目的になります。しかし、手法を学ぶために聴くというスタンスの場合、多くの人が行き着く際は同じ場所に可能性が高いです。
なぜならばジャンルや作曲手法はすでに決まっています。ですが同じジャンルでも少しずつ違うものになるのは何故か?それが「自分の言葉」であるかどうかの違いです。「自分がどう思ったのか?」という主観です。
引き出しの中身について正直人に見せられるようなものではありません。思考のブラックボックスといえばかっこいいかもしれませんが、実際は整理整頓されているものではありません。創作とカオスが紙一重なのも「自分の言葉」であるためともいえます。
作曲の引き出しについて考えていたり迷っている人は、自分の言葉を引き出しの中にいれる意識をしましょう。
方法はシンプルに「私はこう感じた」でいいのです。
自分の言葉なので他人に通じることを前提とする必要はありません。それが世の中に通用するかしないかは関係ありません。自分の言葉が入った引き出しを作ることがクリエイティブな視点であるということをなんとなくも認識できればいいのです。
そこから大多数に届けるためには自分の言葉を明確に表現する必要とする技術を学べがいいのです。
語解がないように再度をお伝えしますが、音楽を分析するなという話ではありません。楽曲の研究や耳コピによって作曲の引き出しは増えます。ですが引き出しを増やしても中に何に入っているものは何か?その価値とは何か?という話です。
引き出しには好きだけが入るわけではない
好きだったら自然にできるようになるとよく言います。ですが本当に好きになったら見たくないものが見え始めます。もっとピュアに音楽を楽しんでいたときに気づきもしなかったものが見えるようになり、それがクリエイティブな視点を曇らせます。
「もっと楽しめるはずなのに」しかし、経験は喜怒哀楽によって価値を持ちます。楽しいことばかり見て私達は生きているわけではありません。
好きだからこそ好きを突き進めたからこそ好きの中に嫌いが見えます。でもそれは悪いことでしょうか?確かに辛さはあります。ですが、そこまでたどり着いたからこそより音楽の本質にたどり着いた。
そう思うことで引き出しの中に入ってほしくない「好きじゃない何か」が意味を持ちます。
引き出しの数は音楽経験だけでは得られない
「引き出しを増やすためにはいろんな経験をしろ」と言います。これはここまで読んだ人ならもう分かるかもしれませんが、その時々の経験によって作られた価値観が引き出しの中身になるからです。
音楽とだけ対峙し続ける人で引き出しの中身をすごいものにしてしまう人も世の中にはいます。ですが、その出来た人と自分を比べて切磋琢磨するきっかけになれればいいのですが、多くの人は、比較することに疲れて自分の言葉を引き出しにいれるのをやめてしまいます。
楽曲分析に必要な考え方
分析に必要なのは「くらべる」と「疑う」だけです。
ピアノの低い音と高い音の差はどうやってわかると思いますか?それは2つの音を「比べる」(比較)から判断できます。対象が1つしかない場合、それがどういう状態のものかを判断する材料がないので分析ができません。
つまり2つの音の違いを比べる(高いか低いか)ことができるこれが分析のスタートです。
そして、2つの対象を知ったきそれ以上に高い音はないのか、低い音はないのか?とい考え始めることでより深い分析が可能になります。世の中ではこれをメタ認知という言い方をします。
分析をすることで今まで見えなかったことが見えるようになります。真っ暗な道でライトを付けるような感覚です。この「真っ暗な道でライトをつける」という感覚がものすごく重要なのです。ライトをつけたことでそこがどんな道かわかります。
真っ暗でどこかもわからないと思っていたけれど、明かりがあればどんな場所に自分がいるのかがわかります。つまり「見える」ようになります。
分析はこの「見える」ポイントを増やすことに意味があります。一言でいえば「視点」を持つこと、そして視点の幅を広げること。そのためにライトの光量を増やすことが大切です。
つまり分析の正体は光量を増やして何がそこにあるかを見て判断をする。ということです。視点を持つことの大切さはわかったけど、
そもそもの光量となるライトはどっから出てくるの?と思う人はすごく柔軟な視点を持っています。
答えは簡単です。「知りたい」と思う気持ちです。それが分析に必要なライトになります。最初は明かりが弱くほとんど見えません。しかし、視点という電池をいれることでどんどん明るくなっていきます。
音楽分析に理論はいらない。分析に大切なのは「視点」とライト(光量)です。少しは「へーそうなんだ!ちょっとやてみようかな」と思えたらこの記事を書いた価値がありますw
作曲をするのに音楽理論は必要ありません。でも、その曲がなぜ心地よく聞こえるのかを知ることがわかれば自分でもその気持よさが再現できるようになります。結果、作曲家として求められている曲を作るのに必要なスキルが身につきます。そのスキルは音楽を分析しそれをベースに作っていくことで鍛えられます。
分析は100点を目指すものではなく、そのアプローチ自体に意味があります。結果50点であっても問題はありません。50点しかとれない理由があればそれを改善すればいいだけの話なのです。どんなことでも絶対はありません。