今回老舗プラグインメーカーpsp audio wareが出してきたチャンネル・ストリッププラグインを気にしている人は多いです。そこで、各モジュールごとに個人的な感想と簡単なサウンドデモ用意したので気になる人は参考にしてみてください。
PSP InfiniStripとは?

テープシミュレーターの元祖であり未だに根強いファンをもつVintage Warmer(現在バージョンは2)を作った会社psp audio wareの最新チャンネル・ストリッププラグイン。それがInfiniStripです。InfiniStripはマイクプリ、フィルター、ゲート コンプ イコライザー、リミッター コントロール、スペシャルの8種類のモジュールから成り立つプラグインで、それぞれのモジュールもまた違ったものが用意されていて、全部合わせると22種類のモジュールがあることになります。それらを任意に選びつなぎ直すことが可能です。
GUIではAPI500シリーズを再現しているのか、それぞれのモジュールを交換するときはモジュールの着脱を再現しています。

では、次にかくモジュールの詳細について見ていきたいと思います。
プリアンプ

- Gain [NEW] – pure gain with automated gain adjustment.
- Pre 60s [NEW] – as Gain plus valve type of preamp emulation.
- Pre 70s [NEW] – as Gain plus discreet preamp with a transformer.
- Pre 80s [NEW] – as Gain plus discreet transformer less preamp.
- ADC 90s [NEW] – as Gain plus 12 bit nonlinear analog to digital converter.
Pre 70sのマイクプリはゲインによる音の盛り上がり方とDriveのかかり方は多くの人が好む定番のサウンドになっています。「俗に言う音が太くなるプラグイン」的なサウンドです。それに比べるとPre 80sはソリッドで音に速さがある印象の音質です。
個人的に面白いと思ったのはPre 90sはマイクプリというより最近流行りになっているADコンバーターエミュレーションを搭載していることです。このADコンバーターはかなり私のツボで、フルブーストさせたときの音がKORGのDSM-1をおもせてくれる実にハードウェアチックな音色です。しかし、シミュレート元が何かはわかりません。
マニュアルによるとPre 90sに最適なサウンドはドラムサウンドであると書いています。

ちなみに勝手な想像ですが、各マイクプリのシミュレート元は次の4つではないかと考えれます。
- Pre 60sはREDDプリアンプ
- Pre 70sはNeve1073プリアンプ
- Pre 80sはFocusriteのForte(Lundahl L1538)
- ADC 90sは不明
Automated Gain Adjustmentについて
すべてのプリアンプに搭載されているAutomated Gain Adjustment(略AGA)はAUTOボタンによって自動ゲイン調整(AGA)モードを有効にします。 AGAモードがアクティブな場合、REFERENCEノブで設定された基準レベルを、ゲインを適用するタイミングのしきい値として使用します。信号レベルが基準レベルを超えている場合、ゲインは自動的に減少します。
マイクプリサウンドデモ
どのプリもゲインの幅は±30dBでドライブの幅も同じく±30dBになっています。そのためかなりの音作りの幅があり潰れ方に特徴があります。またPre 90sに関しては、一番左にしている状態で12bitのコンバータが作動し、右に回しきったときのトランスによる潰れ方はかなりそれらしい感じです。
pre 60sは真空管タイプと言われています。ドライブをかけない状態ではかなりクリアな真空管サウンドを堪能できます。
フィルター

- Basic Filters [NEW] – low and high pass filters with three slopes options per filter.
- Pro Filters [NEW] – Basic Filters plus middle filter with five filters types to choose from.
- S.C.Filters [NEW] – as Pro Filters but dedicated for the side chain processing.
基本的にカットする方向でのフィルターですがPro Filterではレゾナンスによる発振が可能です。その発振を使えば808のようなリリースの長いキックを作ることもできますし、リリースをなくしてタイトな超低域(20Hz)を含んだキックを作ることも可能です。
フィルターサウンドデモ
フィルターのキレはそれほどではありませんが、良い意味でざらついたフィルターの質感が得られます。
ゲート、エキスパンダー、ダッカー

- Expander [NEW] – expander with built in side chain filters and optional external side chain input.
- Gate [NEW] – gate with side chain filters and optional external side chain input.
- Ducker [NEW] – ducker with side chain filters and optional external side chain input.
個人的にはゲートのかかり方が非常にナチュラルでドラム等でかぶってくる音に対して自然に抑えてくれるので重宝します。この辺りは生のドラムサウンドの被りを調整するのにはかなり便利だと思います。
ゲートサウンドデモ
ゲートに関しては以前こちらの記事でも触れていますので、ゲートとエキスパンダーの違いはかかり方のゆるさにあります。エキスパンダーの方が自然に切れるのでシンバルの切れ目を不自然にしたくない場合はエキスパンダーの方がよいかもしれません。
コンプレッサー

- Opto Pressor [NEW] – optical compressor with optional external side chain input.
- FET Pressor [REDESIGNED] – redesigned for channel processing version of the PSP FETpressor with optional external side chain input.
- VCA Pressor [NEW] – VCA compressor designed for channel processing with optional external side chain input.
さすがPSPクオリティというべきところでしょうか。どのコンプも非常にかかり方がよく、個性もあって気持ちのよいコンプサウンドを提供してくれます。とくにVCAコンプなどはもっちりとした質感と音量の微妙なコントロールによる音色がくせになります。
コンプサウンドデモ
オプトコンプやVCAコンプの自然なサウンドがとても気持ちよくガッツリかけてしまいたくなります。FETに関してはややおとなしい感じもしますが、使い勝手もよく、音が暴れることがない優等生的なサウンドに感じます。
イコライザー

- ChannelQ [NEW] – general purpose equalizer.
- PreQursor [REDESIGNED] – redesigned for channel processing version of the PSP preQursor.
- RetroQ [REDESIGNED & UPGRADED] – redesigned and upgraded for channel processing version of the PSP RetroQ.
ChannleQは以外はすでにPSPから発売されているEQですが、すべてのEQは28kHzでブーストカットできるのですが、非常にわかりやすく高域が変化してくれるます。とにかくブーストしたときの嫌味のなさは使い勝手がよいので病みつきになる可能性があるので注意したいところです。
イコライザーサンプルデモ
超高域と超低域あたりをメインに変化させてみましたが、アナログ的な雰囲気が感じる音楽的なイコライザーです。カットよりも音作りに使用したい感じがあります。
リミッター

- VCA Lim [EXISTING] – in strip implementation of the PSP TwinL.
- Opto Lim [EXISTING] – in strip implementation of the PSP TwinL.
どちらもよく色が付きますが、どれも音楽的で、しっかりとリミッティングしてくれます。設定によってGlue効果も見込めるので、バスに安心して使えるリミッターです。
リミッターサンプルデモ
コンプとは違うパツン感がアグレッシブな音になってくれます。リミッターですが、アタックとリリースもあるので、音の調整も可能です。
コントロール

- Master Control [NEW] – fader, width, balance and meter.
単なるボリュームゆえ特に紹介することはありません。
スペシャル

- De-hummer [NEW] – hum noise reduction algorithm.
- De-esser [NEW] – unique deesser algorithm.
ボーカルのみならず、ドラムの高域処理にも役立つディエッサーですが、500Hz〜16kHzまで周波数を調整できるので、1バンドのダイナミックイコライザーとして使うことも可能です。
スペシャルサンプルデモ
無味無臭なディエッサーというよりかなり色がつく感じです。音もコンプ感があるので好みの分かれるところですが、独特のコンプは補正というよりは積極的な音作りにむいているように思います。
全体的な音の傾向
すべてのモジュールを組み込んで作られたプリセットは179ほどあります(そのうちのいくつかイニシャライズプリセットになっています)何故イニシャライズプリセットが複数もあるのかというと、キーボード用やギター用などに組まれたモジュールをベースに音作りをするためです。
これは
とにかくナチュラルな質感です。それゆえにwavesなどのシグネイチャーシリーズと比べるとかなり地味に感じるかもしれません。素材の良さを最大限に引き出したい。不自然な音にしたくない場合などはかなり使えるプラグインだと思います。
質感としてはPlugin Alliance等と比べると音の密度はそれほどあるように思いませんが、「PSPサウンド」と形容される独特の質感が今風にブラッシュアップされた印象を持ちます。です。ハイクオリティで音の粒まではっきりと分かる!」というサウンドを求める人には向かないですが、程よいアナログ感を求めている人にはハマる音質です。
注目点
PSP InfiniStripがPSPにおけるモジュールプラグインの足がかりとなるかどうかはかなり気になるところです。実際いくつかのモジュールはすでに販売しているプラグインが元になっています。PSPのプラグインの資産の有効活用としてもモジュール形式での販売があればPSP InfiniStripはさらに注目されるプラグインになりそうな気がします。
CPU負荷
- パソコン :Macmini2018
- CPU :Corei7(i7-8700B)6コア HT使用時12コア 3.2GHz/ターボブースト(TB)使用時4.6GHz
- メモリ :32GB
- システム :OS10.14.6 Mojave
- Audio/IF :Motu896HD
- バッファー :256
- DAW :LogicProX10.4.8
上記の環境ですべてのプラグインを使用した場合でも負荷の分散もある程度できているのでそれほど重たいプラグインではありません。


値段
- 4月14日まで$ 129(2020年4月9日現在 14,049円)
- 5月10日まで$ 149(2020年4月9日現在 16,226円)
- 5月11日から通常価格で$ 199になります。(2020年4月9日現在 21,671円)
最大で7,000円近い差があります。この価格をやすいと見るかはこのプラグインにどのような目的を見出すかによって決まると思います。しかし、純粋なコストパフォーマンスとして見ても既存のこれらのプラグインを3つ含み、最低50$相当のプラグインとして考えても、通常価格199$でもかなり安く、それら4月9日まで129$というのPSPプラグインのなかではかなり安い方だと思います。
- FET Pressor $99
- RetroQ$69
- PreQursor2 $69
14日間のトライアルデモあるので、気になる人はガンガンと使ってみることをオススメします。
まとめ
さすが老舗プラグインメーカーのチャンネル・ストリップだと思いました。音に維持とプライドを見た気がします。ちなみにADコンバータープラグインマエストロの私としてはPre 90sだけのために欲しくなったプラグインです。
しかし、このチャンネル・ストリップの今後はやはり拡張機能になるような気がしてなりません。そうなった場合旧ユーザーのアップデート等のサポート内容が問われることになりそうです。
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