
奥行きのあるミックスをしたくてリバーブを使っているけれどうまくいかないよ



そういう場合はsmart:reverb 2が便利だよ!6つのトラックを1つのリバーブ上で前後の奥行き感をかんたんに操作できる



便利すぎん??難しいんじゃない?



他のリバーブにあるようなパラメーターは極力少ないからすぐに使えるし効果を感じられるよ!
メリット | デメリット |
---|---|
ミックスの透明性と奥行きの調整が可能 分かりやすく直感的なGUI 自動アシスト的なAIで最適なリバーブサウンドを提供 | リバーブサウンドの個性が弱い AI解析後に何が変化したか表示されない |
smart:reverb 2とは
smart:reverb 2は、オーストリアのsonibleが2025年6月17日にリリースしたAI搭載リバーブ・プラグインです。音源ごとの特性を自動解析し、最適な残響空間をリアルタイムに生成。ボーカル・ドラム・シンセなどに自然な広がりと深みを与え、従来のIRリバーブでは困難だった距離感や奥行きを直感的な操作を実現します。購入者やプロ・初心者問わず、混合における空間設計を劇的に効率化できます。
項目 | 内容 |
---|---|
購入後の対応 | ライセンスキーがメールで送付。迷惑メールフォルダも確認。 |
認証方法 | マシンベース or iLok(USBのみ、Cloud非対応) |
ライセンス数 | 1ライセンスで2台まで登録可能 |
iLok使用時 | iLokに挿すだけでOK(初代は非対応) |
試用版 | 数日間の制限なしデモが可能。試用中は常にオンライン必須 |
オフライン使用 | 初回認証以降はオフライン可(試用時は不可) |
smart:reverb 2 レビュー
- ミックスの透明性と奥行きの調整が可能
- 分かりやすく直感的なGUI
- 自動アシスト的なAIで最適なリバーブサウンドを提供
- リバーブサウンドの個性が弱い
- AI解析後に何が変化したか表示されない
AI学習によるリバーブについて
smart:reverb 2はAIを搭載しているリバーブプラグインです。ただ、AIと言ってもチャットGPTのようなサーバー的でなものではなく、「ローカルで完結する軽量な機械学習モデルやルールベースのアルゴリズム」という見方を私はしています。この辺りはizotopeのOzoneやNeoverbも類似のテクノロジーだと考えられます。


マニュアルには学習プロセスは次のような効果があると記載されています。
学習プロセスはパラメータを設定したり、リバーブスタイルを選択したりするものではなく、リバーブエンジンをソース素材に適応させるだけです。ソース適応スライダーを使用して、学習した情報がリバーブにどれだけ影響するかを制御できます。ソース適応の値が高いほど、ソースに合わせたリバーブのカスタマイズが顕著になり、グループ内でのアライメントとアンマスキング効果が強まります。
- 「この音源はボーカルっぽいから、こういうプリセット群を提示しよう」
- 「アタックが強くて高域が多い → 柔らかいディケイカーブを選択」
このような特徴マッチング+パラメータ生成を行っているのがsmart:reverb 2のAI機能です。
奥行きの調整がかんたん


smart:reverb 2を使って思ったのは音の奥行き(距離感)を視覚的かつ直感的に操作できる機能性の良さです。
画像中央のFrontとBackにて奥行き感を調整します。これは単体でも可能ですし後述するトラックのグループ化をすることで画像のように任意のトラックを同時に表示可能です。
従来のリバーブではリバーブタイムやプリディレイなどを個別に調整して距離感を作り込む必要があったsmart:reverb 2では「距離」スライダーと“距離グリッド”によって、まるでステージ上の音像をマウス操作で手軽に動かすかのように奥行きが決められるのがsmart:reverb 2の最大の魅力です。
奥行きを変えることで音の明瞭度やステレオ感、残響のサイズも連動して変化し、リアルな空間の中で自然なリバーブ処理は他のリバーブプラグインでは得られない効果といえます。
ではタンバリン、コンガ+クラベス、ティンバレスとドラムのループを使って比較してみます。
まずはドライの状態
次にsmart:reverb 2を適応した状態
これが最適な結果というわけではありませんが、距離感のイメージはつかめると思います。
次に、IK MultimediaのThe Farm Stone Roomに通した状態
IK MultimediaのThe Farm Stone RoomはAUXチャンネルを作ってそこに送り込む量を調整している状態です。
どちらがよいというわけではないのですが、AUXへの送り込み量の調整だけでは得られない自然なリバーブ感と奥行き感はsmart:reverb 2の方が使いやすい印象です。
複数のトラックのグループ化が可能


smart:reverb 2は空間内での「距離感」と「奥行き」を視覚的かつ直感的にコントロールできるのが特徴ですが。中でも革新的なのが、最大6つのトラックをグループ化し、全体の空間バランスを調整できる機能です。
たとえば、ボーカル・コーラス等の複数のトラックにsmart:reverb 2を挿し、同じグループに設定するだけで、それぞれの距離や広がりをひとつのグリッド上で俯瞰しながら操作できます。
これにより、従来なら個別に微調整が必要だった各トラックのリバーブを、空間的な整合性を保ったまま統合的に演出することが可能になりました。
6つしかない?と思う人もいるかもしれませんが、1つの画面で管理できる数としては6トラックくらいが妥当だと感じます。もし数十トラックをsmart:reverb 2で管理したいのであれば、6つずつのグループを組むという考え方で使う方が良いように感じました。
AIによるコンボリューションタイプの4つのリバーブタイプを搭載
smart:reverb 2には4つのリバーブタイプが搭載されています。
リバーブタイプ | 特徴 | 適した用途 |
---|---|---|
Room(ルーム) | 小〜中規模の室内空間を再現。初期反射が速く自然。軽やかな奥行き。 | ボーカル、アコースティック楽器、自然な空間演出 |
Hall(ホール) | 深く豊かな残響。広く包み込むようなホール感。没入感が強い。 | オーケストラ、映画音楽、大規模なサウンド設計 |
Plate(プレート) | 金属板特有のクリアで中域に密度ある響き。明瞭感を保ちつつ厚みを加える。 | スネア、ボーカル、エレキギターなど |
Spring(スプリング) | バネ由来の跳ねるようなレトロな響き。バウンス感あり。 | サーフロック系のギター、ビンテージ感あるドラム |
それぞれの音質を実際比較してみます。
ドラムトラックにしようした実際のサウンドを比較してみます。
まずはデフォルトの状態




ホール


ルーム


スプリング


プレート
このリバーブのサウンドについては「個性が少ない」などのネガティブな意見を持っている人もいます。私自身もオーソドックスではあるものリバーブサウンドの質みたいなところに感動を覚えるほどのサウンドではありませんでした。
開発関係者がコンボリューションタイプであると名言しているのに対して、そこまでIRらしい印象はもちませんでした。
The reverb is technically a convolution reverb, but the impulse responses are generated on-the-fly based on the parameter settings and the learned information. This gives us the flexibility of a parametric reverb with the “natural” quality of convolution reverbs without unnatural periodic artifacts etc.
(このリバーブは技術的にはコンボリューションリバーブですが、インパルス応答はパラメータ設定と学習情報に基づいてオンザフライで生成されます。これにより、パラメトリックリバーブの柔軟性と、コンボリューションリバーブの「自然な」質感を両立させながら、不自然な周期的なアーティファクトなどを抑制できます。)
引用元:gearspace.com
解釈としてsmart:reverb 2 は IR(インパルス応答)ベースの処理を用いているが、従来の「サンプル収録型IR」ではなくAIがユーザーの素材やパラメータ設定に応じてリアルタイムにIR(のような内部構造)を合成生成している、
ざっくり説明すると
「AIが音に合うリバーブ空間を”一から設計”して、それを瞬時にコンボリューション処理に変換する」
というのが、smart:reverb 2 の方式です。つまりこれは、アルゴリズムリバーブの自由さと、IRのリアルさを融合した、第3のアプローチ方法のような気がします。
音質面についてはAIであろうがなかろうが好みの部分が大きいと思います。私としてもそこまで個性を感じるリバーブサウンドではないという印象ですが、グループ化と奥行きの調整による機能がそれらの些細なネガティブな要素を吹き飛ばしてくれるほど使いやすく、イメージ通りの結果を提供してくれる方が私にとっては大きなメリットでした。
解析によるリバーブの質感の違いについて
smart:reverb 2は解析によって最適なリバーブサウンドを提供してくれますが、解析には音色に適したプリセットを選びますが、プリセットに該当する項目がない場合は、Universalという項目を選ぶことになります。




Universalはについては公式から具体的な説明があるわけではありませんが、ジャンルや素材を問わず汎用的に使える設定と考えられ、プリセットに比べてやや中庸でバランス重視の調整が行われていると推測されます。
では、実際にUniversalとDrumsのDrum setで比較してみます。


Drum set
Universal
Universalの方が中域よりというか少しこもった印象を受ける音質になります。どちらが使いやすいかというよりはどちらが自分のイメージにそった音なのか?という視点で使うのが大切です。
CPU負荷について
smart:reverb 2のCPU負荷はそれほど高いわけではありませんが、問題なるのはその使用方法です。グループ化(最大6つ)を行うとすると6つのsmart:reverb 2を立ち上げることになります。


そこまで高いCPU負荷ではないので、6つ程度であってもそこまでCPUを占拠することはありません。ただ、ボーカル、ドラム、ギター、など次々に見境なく使用するとCPU使用率が高くなりDAWの再生がもたつく可能性は高いです。
トラブルシューティング
海外のフォーラムでファイアウォールを有効にするとすぐに動作しなくなるという投稿があります。これに対して公式は次のように回答しています。
smart :reverb 2はプラグイン間通信にローカルネットワークソケットを使用。これにより、グループモード使用時に、複数のプラグインインスタンスがセッション内のトラックやバス間でデータを交換できます。
場合によっては、この通信がシステムファイアウォールによってブロックまたは制限されることがあります。特に、ソフトウェアコンポーネント間のローカル接続が疑わしいと判断された場合に顕著です。これにより、インスタンス間の同期やグループデータの共有が適切に行われなくなる可能性があります。
ただし、リスクは一切ありません。データはインターネットに送信されず、「ホームフォン」されることはありません。すべての通信はローカルシステム内でのみ行われ、smart:reverb 2は個人データやオーディオデータを外部に送信することはない。
2(またはDAW) のローカル通信を許可してみてください。残念ながら、DAWはIPCに関しては容易ではありません。そのため、ローカルネットワークソケットを使用するなどの回避策を検討する必要があります。
高度な技術所以に思いもよらない不具合が発生しているのには驚きですが、とりあえず不具合が発生した場合ファイアウォールの調整が有効なようです。
まとめ
メリット | デメリット |
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ミックスの透明性と奥行きの調整が可能 分かりやすく直感的なGUI 自動アシスト的なAIで最適なリバーブサウンドを提供 | リバーブサウンドの個性が弱い |
CPU負荷計測環境
パソコン Macmini2018
CPU Intel Corei7(i7-8700B)6コア
HT使用時12コア 3.2GHz/ターボブースト(TB)使用時4.6GHz
メモリ 32GB
システム OS12.6.1 Monterey
Audio/IF Focusrite RED 8PRE
バッファー 256
DAW LogicPro10.7.7
48kHz/24bit
再生ストレージ SSD
smart:reverb 2 を使ってみて思ったのは、今まで求めていたリバーブによる奥行きの調整がとてもかんたんでわかりやすく、初心者であってもすぐに使えるよというのが大きなメリットです。
smart:reverb 2 は、Auxセンドで使う従来のリバーブとは設計思想が異なり、グループ化によってその性能をフルに発揮できるリバーブであり、インサートで使う前提です。従来のようなPre-delayやEarly Reflection、Diffusion、EQといった細かいパラメータは存在せず、距離感や奥行きの調整はすべて「Front / Back」などの軸で直感的に操作できます。
これにより、複雑な設定なしに、楽器や声を前に出したり後ろに引いたりするような空間演出が可能。しかも、従来のリバーブにありがちなアタックの劣化や不自然な残響のアーティファクトが非常に少ないのも大きな特徴です。
リバーブを深くかけると奥行きが生まれる(そう感じてしまう)という認識を持っている人が多いのですがsmart:reverb 2 を使用するとその認識を改める必要があります。