
最高のAD/DAコンバーターからインスピレーションを受けたThree-Body Technologyの「Green AD」ってプラグインってどんな音か気になる?



音の変化はかなり繊細で、初心者には分かりづらいけれど、パラメーター次第では音のアタック感や密度も変化させられるよ



なんだか難しそうだね



使い方次第だけれどミックスに“なんとなくまとまりが出た”とか“耳あたりが落ち着いた”と感じるような変化をくれるツールにもなるかな?
微細な変化が得られるGreen ADは確実に使用するユーザーを選ぶプラグインですが、その僅かな効果はプロの料理人が秘密にしたい隠し味的なポジションです。ネットで調べても使用ユーザーの声もなく、謎に包まれたプラグインを触ってそのサウンドの変化や使い方、気になったことについて解説していきます。
メリット | デメリット |
---|---|
音楽的な質感の付加 2種類のADプロファイル 実用的なUI機能 | AD/DAの再現としては抽象的 音の変化が控えめ ノイズをオフにできない リアルAD/DAとの混同の恐れ |
Green ADとは


2024年5月にリリースされたGreen ADは、Three-Body Technologyが独自に開発したDeep Vintage™ Technology技術で開発したプラグインで、「ADコンバーター」の名を冠しながらも、実際にはアナログ-デジタル変換に伴う音響的なキャラクターを再現・誇張した音楽的プロセッサーです。
本来のAD変換では極めて透明で忠実な変換が求められますが、Green ADはそのプロセスで生じ得る微細なニュアンス例えば、音の微小な丸みや帯域バランスの変化を“質感”として意図的に取り入れデジタルだけで処理された音にありがちな冷たさや硬さを和らげ、より音楽的で耳なじみの良い仕上がりが得られます。
Deep Vintage™ Technologyはヴィンテージハードウェアの動作をコンポーネントレベルで解析し、再構成するモデリングアーキテクチャです。単なるサチュレーターやカラーボックスとは異なり、実機の回路構造・電気的特性・非線形挙動を複雑なアルゴリズムで動的に再現している点が特徴です。
Green ADの主な特徴とUI
以下に、Three-Body Technology「Green AD」の主な特徴とUI要素を表形式で整理しました
機能カテゴリ | 内容 |
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プロファイル切替 | Low / High の2種のADコンバーターモデルを切替可能(ゲイン量は不変) |
Drive | プロファイルのキャラクターに応じたサウンド変化の調整、質感・密度感を加える |
Link Mode | 左右チャンネルのパラメータをリンク操作可能 |
ノイズシミュレーション | 固有ノイズを自動で含む(オフにはできないが、ノイズレベルは非常に低いため問題なし) |
Undo / Redo | 操作の取り消しとやり直しが可能 |
A/B比較 | 設定を2つ保存して切り替えながら比較可能 |
チャンネルモニター | L / R / M / S のソロ視聴が可能 |
入出力レベルメーター | 入力・出力のレベルをリアルタイム表示 |
モノラルモード | ステレオ → モノへの切り替えが可能 |
LR / MS 処理 | 通常のステレオとMid/Side処理の切り替えに対応 |
位相反転 | チャンネル単位での位相反転が可能 |
GUIリサイズ | ユーザーインターフェースのサイズ調整が可能 |
レイテンシ | 約0.6ms(44.1kHz、26サンプル)リアルタイム対応 |
機能的にはプロファイルという部分がキャラクターの変更になるためGreen ADは実質2種類のAD/DAコンバーターエミュレーションプラグインとなります。
Green AD レビュー
- 音楽的な質感の付加
- 2種類のADプロファイル
- 実用的なUI機能
- AD/DAの再現としては抽象的
- 音の変化が控えめ
- ノイズをオフにできない
- リアルAD/DAとの混同の恐れ
サチュレーション的な使い方がポイント
このプラグインはAD/DAの再現を目指したプラグインですが、その変化で納得できるのは実機のAD/DAの音を理解しているプロのミキシングエンジニアであり、DTMerレベルでは音の変化に気づけたとしても、その変化の意図に気がつくのは厳しいと思われます。
それほどGreen ADの変化は微細です。
その微細な変化に意味を見出すのもよいですが、パラメーターを動かした際に発生するサチュレーションの度合いをメインにした使い方を見ていきたいと思います。
サチュレーションと言っても真空管的なものとは違うので、俗に言う暖かみ的な文脈の音を求めるのであれば、Green ADより有効的なものがたくさんあるのでそちらを使ったほうが目的にあった音になります。
では実際どのような音なのかいくつか実例をあげてみたいと思います。
まずこちらは何も通していないドラムのループ、次にGeen ADを通したドラムの音
違いわかりますか?
大事なのはこの微細な変化が自分にとって必要であるかです。
では次にKorg mr-2000SというDSDレコーダーのAD/DAを通した音がこちら


そもそもモデリング元がこの機種でないため同じ結果になることはないのですが、なんとなく実機の音ってこういう感じなんですよーって雰囲気です。
わからなくてもいいのです!分かる人だけわかればよいのです!
重複しますが、この絶妙な違いに価値を見いだせるかどうかはミックスエンジニアのスキルと経験の深さによると思います。
さて、このままではよくわからないプラグインで終わってしまいそうなので、Geen ADには2種類のADプロファイルが用意されており、音質的なバリエーションを得られるのか1つの魅力でもあります。ではパラメーターを動かしてわかりやすい変化を与えてみます。
プロファイルはHighでDRIVEはMAXにしたものがこちらになります。


次にプロファイルLowでDRIVEをMAXにしたもの


両者の違いはわかりやすいですね。ただ、音質的変化で言えばAD/DAというよりはトランスエミュレーションで作ったような音質にも感じます。
この変化であれば、ドラムやスネア、パーカッシブなトランジェントのバリエーションとして使用できるシーンもあるかもしれませんが、やはりAD/DAかと言われると疑問が残ります(単に私が知らない気がついていない独特の変化があるのかもしれません)
またソフトアナログシンセをAD/DAさせて質感を変化させることでハードシンセのDA的なニュアンスを与えるという使い方もできなくはなさそうです。
モデリング元が名機されていない状態でのYoutubeの動画をどう捉えるか?
ネガティブなことはあまり書きたくはないのですが、公式のYoutubeではハードウェアとの差がほとんどない(わからない)レベルの動画アップされております。
公式の説明では「世界トップクラスのAD/DAコンバーター」にインスパイアされたとされています。このような表現から、Prism SoundのADA-8XRやLavry EngineeringのGoldシリーズなどの高品質なAD/DAコンバーターが想定されている可能性あありますが、想像の域をでない話です。
これを見る限り確かにその差はほとんどないように感じます。しかし、ここで懸念なのはモデリング元になったAD/DAが名機されていないこと、つまり、この動画に信憑性を求めることはできないという点が私にとってモヤモヤしています。
まとめ
メリット | デメリット |
---|---|
音楽的な質感の付加 2種類のADプロファイル 実用的なUI機能 | AD/DAの再現としては抽象的 音の変化が控えめ ノイズをオフにできない リアルAD/DAとの混同の恐れ |
CPU負荷計測環境
パソコン Macmini2018
CPU Intel Corei7(i7-8700B)6コア
HT使用時12コア 3.2GHz/ターボブースト(TB)使用時4.6GHz
メモリ 32GB
システム OS12.6.1 Monterey
Audio/IF Focusrite RED 8PRE
バッファー 256
DAW LogicPro10.7.7
48kHz/24bit
再生ストレージ SSD
正直に言うと、Green ADはDTM初心者や中級者には効果を感じ取りにくく、使いこなすのが難しいプラグインです。そもそもAD/DA変換の音の違いを意識せずにミックスしている場合、その効果を容易に確認するのは難しいでしょう。
しかし、Green ADがもたらすのは、デジタル処理だけでは得られない音のわずかな周波数バランスの変化や倍音構造の調整です。これが特定の楽曲やトラックにうまくフィットすると、ミックスの音像がよりクリアで存在感のあるものになります。
そのため、プロフェッショナルな環境では、デジタル特有の硬さや無機質さを軽減しつつ、自然な音のつながりや細かなニュアンスを加えるための効果的なツールとして活用されています。適切に使うことで、ミックスの細部の解像度や音の広がりを改善し、全体のバランスを整えることが可能です。
使いこなせば、Green ADはデジタルの中にアナログ的な味わいを巧みに足し、ミックス全体の質感をワンランク上げるツールとなるでしょう。
Green ADは、本来のAD/DA変換に存在しない音の変化を意図的に取り入れています。これは単なる技術的再現にとどまらず、ユーザーに明確な音の変化を感じてもらうための工夫でもあります。こうした特徴があるからこそ、Green ADは多くのクリエイターにとって「違いがわかる」音作りのツールとして選ばれているのです。
ビジネス的な視点から見れば、製品として成立させるためにはユーザーに明確な価値を提供する必要があります。その点で、Green ADは音楽制作に新たな表現の可能性を加える役割を果たしていると言えます。
つまり、Green ADの独自の音響変化は、単なる模倣ではなく、実際の制作現場で役立つ個性として設計されているのです。これにより、デジタル音源の微細な質感を補い、ユーザーが自身のミックスに新しい色合いを加えられる重要なツールとなっています。
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