DTMをしていると「バッファサイズはいくつに設定すればいいの?」と迷うことがあります。
バッファサイズは、DTMにおけるレイテンシー(遅延)やCPU負荷に関係する重要な設定です。
基本的には、録音やソフト音源のリアルタイム演奏では小さく、ミックスなどCPU負荷が高くなる作業では大きくします。
ただし「DTMなら256サンプルが最適」といった絶対的な正解があるわけではありません。CPU性能やオーディオインターフェース、DAW、使用するプラグイン、プロジェクトの規模によって最適な値は変わります。
この記事では、DTMにおけるバッファサイズの意味から、おすすめの設定方法、大きくした場合と小さくした場合の違い、音質やレイテンシーへの影響まで詳しく解説します。
DTMのおすすめバッファサイズ【用途別早見表】
DTMのバッファサイズは、作業内容に合わせて変更するのがおすすめです。
目安は次の通りです。
| DTMの作業 | 設定の目安 | 問題がある場合 |
|---|---|---|
| MIDIキーボードのリアルタイム演奏 | 32〜128 | 音切れするなら大きくする |
| ボーカル・ギター録音 | 64〜128 | CPU負荷が高ければ128〜256へ |
| 打ち込み・通常作業 | 128〜256 | 負荷に応じて調整 |
| ミックス | 256〜512 | 重ければ512〜1024へ |
| 高負荷なミックス・マスタリング | 512〜1024 | 安定性を優先 |
重要なのは、この数字を「正解」と考えないことです。
リアルタイム演奏や録音では、まず低いバッファサイズを試し、音切れやCPUオーバーロードが発生する場合に64→128→256というように段階的に大きくしていくと設定しやすくなります。
一方、ミックスやマスタリングではリアルタイム演奏ほど低いレイテンシーを必要としないため、512〜1024サンプルまで大きくしてCPU負荷を抑える方法が有効です。
最適なバッファサイズとは「一番小さい値」ではなく、必要なレイテンシーを確保しながら安定して動作する値です。
PC性能で最適なバッファサイズは変わる【Intel MacとM4 Maxで比較】
バッファサイズの最適値は、パソコンの性能によっても大きく変わります。
この記事を最初に執筆した頃は、Intel CPUを搭載したMac mini 2018を使用していました。当時はLogic Proでソフト音源やプラグインを使用すると64〜128サンプルではCPU負荷が高くなりやすく、256サンプル程度がリアルタイム性と安定性を両立しやすい設定だと感じていました。
現在はMac Studio M4 Maxを使用していますが、64サンプルでもIntel Mac mini時代より快適に動作する場面が増えています。
ただし、これは「M4 Maxなら64サンプルが最適」という意味ではありません。
使用するソフト音源やプラグイン、オーディオインターフェース、サンプルレート、プロジェクト規模によってCPU負荷は変わります。
私の環境でIntel MacからM4 Maxへ移行して感じたのは、PC性能が向上すると、以前より小さいバッファサイズを実用できる可能性が高くなるということです。
そのため、新しいMacや高性能なPCへ買い替えた場合は、以前と同じ設定を使い続けるのではなく、一度64〜128サンプル程度まで下げて安定して動作するか試してみることをおすすめします。
バッファサイズとは?DTM初心者向けに仕組みを解説
バッファサイズとは、パソコンがオーディオデータをリアルタイム処理するときに、一度に扱うデータ量を決める設定です。
DTMでは一般的に32、64、128、256、512、1024などのサンプル数で設定します。
バッファサイズを理解するときに重要なのが、CPU負荷とレイテンシーの関係です。

| バッファサイズ | CPU負荷 | レイテンシー | 向いている作業 |
|---|---|---|---|
| 小さい | 高くなりやすい | 小さい | 録音・リアルタイム演奏 |
| 大きい | 低くなりやすい | 大きい | ミックス・マスタリング |
バッファサイズを小さくすると、パソコンは短い間隔でオーディオデータを処理する必要があります。
そのためCPUへの要求は高くなりますが、操作してから音が出るまでのレイテンシーを小さくできます。
反対にバッファサイズを大きくすると、CPUはオーディオ処理に使える時間的な余裕が増えます。
そのため多くのソフト音源やエフェクトを使用した場合でも音切れが起こりにくくなりますが、その分レイテンシーは大きくなります。
つまり、
バッファサイズを小さくする → 低レイテンシー・CPU負荷は高くなりやすい
バッファサイズを大きくする → 高レイテンシー・CPU負荷は低くなりやすい
と覚えておくと理解しやすいでしょう。
バッファサイズを大きくするとどうなる?
バッファサイズを大きくするとCPU処理に余裕が生まれ、音切れやクリックノイズが発生しにくくなります。
その一方でレイテンシーは大きくなります。
たとえばバッファサイズを128から512、1024サンプルへ大きくすると、CPUが1回のオーディオ処理を完了するまでに使える時間が長くなります。
そのため、多くのソフト音源やエフェクトを使用するミックスでは、バッファサイズを大きくすることでDAWを安定させやすくなります。
一方で、MIDIキーボードでソフト音源をリアルタイム演奏したり、ギターをアンプシミュレーター経由でモニターしたりする場合は、レイテンシーが演奏しにくさにつながります。
| 項目 | バッファサイズを大きくした場合 |
|---|---|
| CPU負荷 | 低くなりやすい |
| 音切れ・ノイズ | 発生しにくくなる |
| レイテンシー | 大きくなる |
| プラグイン使用数 | 増やしやすい |
| リアルタイム演奏 | 遅延を感じやすい |
| 向いている作業 | ミックス・マスタリング |
ミックスでCPU負荷が高くなったり音切れが発生したりする場合は、まずバッファサイズを一段階大きくしてみましょう。
バッファサイズを小さくするとどうなる?
バッファサイズを小さくするとレイテンシーが減り、MIDIキーボードの演奏やボーカル・ギター録音をリアルタイムに近い感覚で行いやすくなります。
その一方でCPUへの要求は高くなり、設定値を小さくしすぎると音切れやクリックノイズが発生することがあります。
たとえばバッファサイズを256から128、64サンプルへ小さくすると、オーディオデータをより短い間隔で処理しなければいけません。
そのためレイテンシーは小さくなりますが、CPUが処理を完了するまでの時間的な余裕も少なくなります。
| 項目 | バッファサイズを小さくした場合 |
|---|---|
| CPU負荷 | 高くなりやすい |
| 音切れ・ノイズ | 発生しやすくなる |
| レイテンシー | 小さくなる |
| リアルタイム演奏 | しやすくなる |
| 録音時のモニター | 遅延を感じにくい |
| 向いている作業 | 録音・リアルタイム演奏 |
重要なのは、必要以上にバッファサイズを小さくしないことです。
たとえば64サンプルと128サンプルのどちらでも演奏時の遅延が気にならないのであれば、より安定する方を選べば問題ありません。
最小値を目指すのではなく、自分が遅延を感じない範囲で安定して動作する値を探すことがポイントです。
バッファサイズとレイテンシーの関係

レイテンシーとは、入力した信号が処理されて音として出力されるまでに発生する遅延のことです。
DTMではバッファサイズを大きくするとレイテンシーが増え、小さくするとレイテンシーが減ります。
1バッファ分の時間は、次の式で求められます。
バッファサイズ ÷ サンプルレート × 1000 = 時間(ms)
たとえば44.1kHzでバッファサイズを256サンプルに設定した場合、
256 ÷ 44,100 × 1000 ≒ 5.8ms
です。
| バッファサイズ | 44.1kHz | 48kHz | 96kHz |
|---|---|---|---|
| 32 | 約0.73ms | 約0.67ms | 約0.33ms |
| 64 | 約1.45ms | 約1.33ms | 約0.67ms |
| 128 | 約2.90ms | 約2.67ms | 約1.33ms |
| 256 | 約5.80ms | 約5.33ms | 約2.67ms |
| 512 | 約11.61ms | 約10.67ms | 約5.33ms |
| 1024 | 約23.22ms | 約21.33ms | 約10.67ms |
ただし、この数値が実際に感じるレイテンシーそのものになるわけではありません。
実際のDTM環境では、入力・出力バッファに加えて、オーディオインターフェース、ドライバ、AD/DA変換、使用しているプラグインなどによる遅延も加わります。
特にボーカルやギターをDAW経由でモニターする場合は、入力から出力までを含めたラウンドトリップレイテンシー(RTL)が重要です。
そのため数値だけで判断せず、実際に演奏・録音して違和感がないかを基準にバッファサイズを決めることが大切です。
バッファサイズで音質は変わる?
結論からいうと、DAWが正常にオーディオ処理できている状態であれば、バッファサイズを変更しただけで本来の音質が良くなったり悪くなったりするわけではありません。
たとえばバッファサイズを128から1024サンプルに変更したからといって、音の解像度が高くなったり低音が太くなったりするわけではありません。
バッファサイズが直接影響するのは、主にCPUがオーディオ処理に使える時間とレイテンシーです。
ただし、バッファサイズを小さくしすぎてCPUの処理が間に合わなくなると、クリックノイズや音切れ(ドロップアウト)が発生することがあります。
クリックノイズや音切れ(ドロップアウト)についてはこちらの記事が参考になります。

これは「バッファサイズによって音質が劣化した」というより、正常なオーディオ処理ができていない状態です。
反対にバッファサイズを大きくして音切れが解消された場合も、バッファサイズによって音質が向上したのではなく、正常に再生できる状態へ戻ったと考える方が適切です。
つまり、
バッファサイズを大きくする=高音質
ではなく、
適切なバッファサイズにする=安定したオーディオ処理を維持しやすくなる
ということです。
サンプルレートとバッファサイズの関係
同じバッファサイズでも、使用するサンプルレートによって1バッファ分の時間は変わります。
たとえば256サンプルの場合は次の通りです。
| サンプルレート | 256サンプル分の時間 |
|---|---|
| 44.1kHz | 約5.8ms |
| 48kHz | 約5.3ms |
| 96kHz | 約2.7ms |
同じ256サンプルであれば、サンプルレートが高いほど1バッファ分の時間は短くなります。
ただし、サンプルレートを高くすればCPU負荷まで軽くなるわけではありません。
44.1kHzから96kHzへ変更すると1秒間に処理するサンプル数が増えるため、CPUやプラグインに要求される処理量も一般的に増加します。
そのため、
高いサンプルレート+小さいバッファサイズ
は低レイテンシーを実現しやすい反面、CPUにとって負荷の高い設定になります。
サンプルレートをレイテンシーだけで決めるのではなく、制作環境や用途に合わせて選び、そのうえで安定して動作するバッファサイズを設定しましょう。
ASIOのおすすめバッファサイズは?
ASIOを使用する場合も、おすすめのバッファサイズは作業内容によって変わります。
目安としては、録音やリアルタイム演奏では64〜128サンプル、打ち込みでは128〜256サンプル、ミックスでは256〜1024サンプル程度から調整するとよいでしょう。
| 作業 | ASIOバッファサイズの目安 |
|---|---|
| MIDIリアルタイム演奏 | 32〜128 |
| ボーカル・ギター録音 | 64〜128 |
| 打ち込み | 128〜256 |
| ミックス | 256〜512 |
| 高負荷なミックス | 512〜1024 |
ASIO(Audio Stream Input/Output)はSteinbergが開発したオーディオドライバ規格で、WindowsのDTM環境で広く使用されています。
ただし、ASIOだから特定のバッファサイズが正解になるわけではありません。
最適な値はCPU性能、オーディオインターフェース、ASIOドライバ、DAW、使用するソフト音源やエフェクトなどによって変わります。
64サンプルで音切れが発生する場合は128、256と大きくし、128サンプルで安定していて演奏時のレイテンシーも気にならなければ、それ以上小さくする必要はありません。
MacではASIOではなくCore Audioが標準的に使用されていますが、バッファサイズについての基本的な考え方は同じです。
Cubase・Logic Proでバッファサイズを変更する方法
バッファサイズの変更方法は使用するDAWやオーディオドライバによって異なります。
Cubaseでバッファサイズを変更する方法

Cubaseでは、使用しているASIOドライバの設定画面からバッファサイズを変更します。
オーディオシステムの設定から使用中のASIOドライバを選択し、コントロールパネルを開いてバッファサイズを変更します。
Cubaseでも、
録音・リアルタイム演奏 → 小さく
ミックス → 大きく
という基本的な考え方は同じです。
Cubaseの適正なバッファサイズは固定値ではなく、使用しているCPU、オーディオインターフェース、ASIOドライバ、プロジェクトの負荷によって変わります。
Logic Proでバッファサイズを変更する方法

Logic Proでは「I/Oバッファサイズ」から変更できます。
Logic Pro → 設定 → オーディオ → デバイス → I/Oバッファサイズ
から設定します。
録音やソフト音源のリアルタイム演奏では小さい値を使い、システムオーバーロードや音切れが発生する場合は一段階ずつ大きくします。
ミックスでプラグインが増えてCPU負荷が高くなった場合は、512〜1024サンプルへ変更することで安定することがあります。
また、レイテンシーを発生させるプラグインを多く使用しているプロジェクトで録音する場合は、Logic Proの「低レイテンシモード」も有効です。
バッファサイズを小さくしてもDAWを快適に動かす方法
バッファサイズを小さくするとレイテンシーを抑えられますが、その分CPUへの要求は高くなります。
64〜128サンプルなどの低いバッファサイズで録音や演奏をしたい場合は、DAW側の負荷を減らすことで安定させやすくなります。
使用していないプラグインを減らす
ソフト音源やエフェクトを大量に使用するとCPU負荷が高くなります。
特にオーバーサンプリング、リニアフェイズEQ、先読み処理を行うエフェクトなどを多数使用している場合は、録音中だけ不要なプラグインを無効にするのも有効です。
トラックをフリーズする
ソフト音源やエフェクトを多く使用しているトラックは、DAWのフリーズ機能を使うことでリアルタイム処理の負荷を軽減できます。
すでに音作りが終わっているトラックをフリーズしておけば、録音やリアルタイム演奏するトラックへCPUリソースを回しやすくなります。
バッファサイズを小さくしたままソフトシンセやプラグインの使用数を確保したい場合は、トラックのフリーズに加えて「CPU負荷逃し」を活用する方法もあります。
CPU負荷逃しは、DAWのCPU処理を特定のコアに集中させにくくするための方法です。バッファサイズを大きくせずにCPU負荷を軽減したい場合は、こちらの記事で詳しく解説しています。
関連記事:DTMのCPU負荷を分散する方法(CPU負荷逃し)
Logic Proでは低レイテンシモードを使う
Logic Proではプラグインそのものが大きなレイテンシーを発生させることがあります。
この場合、I/Oバッファサイズだけを小さくしても演奏時の遅延が十分に小さくならないことがあります。
そのような場合は「低レイテンシモード」を使用することで、レイテンシーを発生させるプラグインの影響を抑えながら録音できます。
作業内容に合わせてバッファサイズを変更する
DTMでは制作中ずっと同じバッファサイズを使用する必要はありません。
たとえば、
録音・演奏 → 64〜128
打ち込み → 128〜256
ミックス → 256〜512
負荷が高いミックス → 512〜1024
というように変更できます。
現在の私のM4 Max環境では64サンプルでも快適に作業できるケースが多いため、必要がなければ以前のIntel Mac mini時代のように256サンプルまで上げることはありません。
反対に、負荷の高いプロジェクトで64サンプルを維持することにもメリットはありません。
低レイテンシーが必要なときだけ小さくし、必要がなくなればCPU負荷に合わせて大きくする。
これがバッファサイズの実用的な使い方です。
FAQ|DTMのバッファサイズでよくある質問
- Q. DTMのバッファサイズはいくつがおすすめですか?
-
録音やリアルタイム演奏では64〜128サンプル、打ち込みでは128〜256サンプル、ミックスでは256〜512サンプル程度が目安です。高負荷なミックスでは512〜1024サンプルまで大きくすることもあります。ただし、最適値はPC性能や使用するプラグインによって変わります。
- Q. バッファサイズを大きくするとどうなりますか?
-
CPU処理に余裕が生まれ、音切れやクリックノイズが発生しにくくなります。その一方でレイテンシーは大きくなるため、リアルタイム演奏やDAW経由のモニタリングでは遅延を感じやすくなります。
- Q. バッファサイズは小さいほどよいですか?
-
小さいほどよいわけではありません。バッファサイズを小さくするとレイテンシーを抑えられますが、CPUへの要求は高くなります。演奏時の遅延を感じない範囲で、安定して動作する値を選ぶのがおすすめです。
- Q. バッファサイズを変更すると音質は変わりますか?
-
DAWが正常に処理できている状態であれば、バッファサイズを変更しただけで本来の音質が変わるわけではありません。ただし、小さくしすぎて処理が間に合わなくなると、音切れやクリックノイズが発生することがあります。
まとめ|DTMのバッファサイズは用途とPC性能に合わせて変更する
DTMのバッファサイズは、小さくするとレイテンシーを抑えられる一方でCPUへの要求が高くなり、大きくするとCPU処理に余裕が生まれる一方でレイテンシーが増えます。
目安としては、
| 作業 | バッファサイズの目安 |
|---|---|
| MIDIリアルタイム演奏 | 32〜128 |
| ボーカル・ギター録音 | 64〜128 |
| 打ち込み・通常作業 | 128〜256 |
| ミックス | 256〜512 |
| 高負荷なミックス | 512〜1024 |
となります。
ただし、この数字はあくまで目安です。
私自身、Intel Mac mini 2018を使用していた頃とMac Studio M4 Maxを使用している現在では、快適に使えるバッファサイズが大きく変わりました。
M4 Maxでは64サンプルでも快適に動作する場面が増えているため、現在の高性能なMacやPCでは従来より小さいバッファサイズを試してみる価値があります。
一方で、バッファサイズを小さくすること自体が目的ではありません。
演奏時の遅延が気にならなければ無理に小さくする必要はなく、CPU負荷や音切れが気になる場合は大きくします。
また、バッファサイズを変更しただけで本来の音質が良くなったり悪くなったりするわけではありません。
「一番小さい値」ではなく、現在の制作環境と作業内容に合わせて安定して動作する値を選ぶことが、DTMにおける最適なバッファサイズ設定です。
