DTMをやっているとギターの音作りに悩むことが多いです。ギターソフト音源を買った人や生のギターでも、「どうやればかっこいい音になるのか」を試行錯誤しています。今日はとりあえず「ド定番のドライブサウンドを作る方法について」ストンプボックスの名機と呼ばれたチューブスクリーマーのVST プラグインでドライブサウンドを作り比較してみたいと思います。
フリーのものから有償のものまで色々とありますので、好みのサウンドかどうかしっかりとチェックしてみてください。
チューブスクリーマーの歴史
アイバニーズ(通の人はイバニーズと呼ぶ人もいるとか)は日本の星野楽器が母体となって作られたブランドです。アイバニーズは1950年頃に立ち上げられました。しかしアイバニーズは輸出ブランドだったため日本より先に世界で評価されることになります。70年代に入り逆輸入という形で日本での販売がスタートします。エフェクター(ストンプボックス)を作り始めたのは1974年。しかし、ギター同様、日本ではあまり店頭に並ぶこともありませんでした。その時代に作られたのがTS808 Tubescreamer Proです。当然このストンプボックスもアメリカで火がつきディストーションやファズとは違うウォームなサウンドからドライブサウンドまでを扱えるエフェクターとして高く評価されます。
そして1981年にTS808の後継機種として発売されたのがTS9です。初代のTS9とTS808は回路が同じだったという話もありますが、真意はわかりません。TS9は80年代中期に生産が終了しますが、大勢のファンから再発の声があり90年代後半からリイシューモデルが海外で販売され、これまた日本は逆輸入という形で販売がスタートします。
リイシューモデルはTS808と回路が違うため微妙にそのサウンドカラーが異なり、それを良しとするものしないものが別れ808モデファイが生まれるきっかけになります。ちなみにリイシューモデルのサウンドも高く評価されるのでモデファイ自体を邪道とする声もあったりするのでファンは初代のTS808やTS9、そしてリイシューモデルを揃えないと落ち着かないファンも多いという話です。
比較の方法
クランチ系でのチューブスクリーマーは次の設定で統一しアンプはBIAS AMP FX2より「69 Duo Verb V2とBluck Duo」キャビネットを使用します。
- DRIVE 9時
- TONE 5時
- LEVEL 2時
この設定の意図はブルースギタリスト故スティーヴィー・レイ・ヴォーンがよく使っていた組み合わせをイメージしたものです。都市伝説かどうかわかりませんが、「TS9のDRIVEを2 TONEを10」にすればレイヴォーンの音になると言われていました。
ディストーション系では
- DRIVE 5時
- TONE 9時
- LEVEL 1〜2時
アンプ設定はBIAS FX2の「Slyer KingとGreen25)にしています。
mercuriall TSC
高品質なストンプボックスやアンプシミュレーターを作っているデベロッパーmercuriallの808エミュレーションです。
- オーバーサンプリング機能
- モデファイスイッチによるサウンドカラーの切り替え
- リアルなGUI
シンプルなストンポボックスですがフリーとは思えないほどよく出来ています。先日紹介した使えるストンプボックスSS-11Xもmercuriallの製品です。
クランチ系
音の特徴はジャキジャキした感じもありながら甘さもあり非常に使い勝手がよいサウンドのです。
ディストーション系
少し潰れすぎている感じもありますが、オケには馴染みそうなサウンドです。
他にもMetalZoneのエミュレーションやMesa/BoogieのGrid Slammer、ステレオコーラスなどもあります。
Native Instruments GuitarRig 5(SKREAMER)
GuitarRig 6が発売されました。「Guitar Rig 5はもう古い!」という声もよく聞きますが、以前プロの人がこれをライブで使っているの見て「プロは機材を選ばないんだなー」と痛快しました。使いこなせる人にとっての頼もしい相棒になっているGuitar Rig 5です。
クランチ系
TSCと比べるとハイが多少耳につき音が軽い印象を感じます。より歪ませたリフなどでは低音がダブつかないようにしたい場合には向いているかもしれません。
ディストーション系
TCEに比べるとこちらの方がフィルターがかかったようなサウンドに感じます。
IK Multimedia AmpliTube4 (Over Drive)
アンプシミュレーターとしてマイクの種類やキャビネットの種類にスピーカー、そしてストンプボックスの豊富さが魅力なIK Multimedia AmpliTube4です
クランチ系
TSCと音の傾向は似ているように思いますが、IKの方が歪みに深さを感じます。
ディストーション系
より歪がはっきりとした印象ですが、同時に音の芯もなくなっているように感じます。
Waves GTR Stomp2
WavesのStompボックスシミュレーターです。
クランチ系
サウンドの傾向としてはカラッと乾いた印象を受けます。
ディストーション系
かなり深いかかり方になり、このままトラックにいれると確実に埋もれてしまうサウンドになりそうです。
TSE Audio TSE 808 V2
こちらもTSCと同じくフリーのチューブスクリーマーシミュレーションです。TSE Audioは他にもSansampのベースドライバーのシミュレーションなどを開発しています。
クランチ系
一番音の軽さが目立ちます。人によっては物足りない印象を受けるかもしれません。
ディストーション系
潰れ方はwavesと似ているように思います比べるとTSEの方が少しだけ音に明るさがあるように感じます。
BIAS FX2(808OD)
今回紹介する中で一番新しいギターアンプシミュレーターです。BIAS
アンプの数やストンプボックスの数そしてギター自体をシミュレーションするGUITARMATCH機能など最新技術がてんこ盛りです。
クランチ系
ハイの抜けもなく一番シックで落ちついた印象を受けますが、粒立ちや音の深さなどを感じられるサウンドはさすが最新のシミュレーターだと言えます。
ディストーション系
しっかりと潰れています。しかしBIAS FXのアンプとの相性もあるのか音量は下がっているものの音の粒立ちは感じます。
Bx_greenscreamer
クオリティの高いMIXプラグインを販売しているデベロッパーのPlugin Allianceさんが出しているチューブスクリーマーIbanezTS808TubeScreamerのモデリングです。
ジャキジャキ感はいい感じでローも暴れない音の分離も良いので非常に使い勝手がよいサウンドです。
すごいモリモリ感があります。ちょっとローカットしないとこもる原因になるかもしれません。
補足
ギター・マガジン 2019年6月号にはチューブスクリーマーの特集がありました。こういうときにKindle版は便利ですね。
またKindle Unlimitedならば月額980円の固定で読めますし、今なら30日間のお試し期間もあるので、サクッと読んでしまって解除するのもありかもしれません。
まとめ
聴き比べして思ったのは、個人的にはTSCのサウンドがかなり好みであることがわかりました。フリーでここまでやっているのは本当に凄いことだと思います。ただ、一番シックで暴れる感じがないBIAS FX2のサウンドは一番使用範囲が広いようにも思います。
どれが良い悪いというよりは用途によっての使い分けがかっこいいギターサウンドを作る秘訣です。大切なのはその音色を選んだ意図が明確に楽曲に反映されているかどうかです。クオリティの高いピアノ音源であっても雰囲気があっていなければ意味はありません。聴き比べしたものには物足りないものがあったかもしれませんが、そのサウンドをどう扱うかクリエイティブな思考の見せ所といえます。
今回の設定はあくまでオーバードライブサウンドですがDRIVEの設定をもとあげて歪のつよいアンプシミュレーターと併用すればごきげんなディストーションサウンドにもなります。
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