80’sレトロな質感の音楽は聞く人に心地のよい時間を提供してくれます。しかし、レトロな質感と言ってもその音質をゼロから作り出すのは難しいです。
そこで使ってみてほしいのがBaby Audio Super VHSというテープエミュレータープラグインです。
Baby Audio Super VHSは、80年代のVHSサウンドを再現します。その音質は世界中のLo-Fiサウンドを愛するヒップホップメーカーや多くのアーティストによって評価されています。
あなたがBaby Audio Super VHSを使用すれば80’sのバイブスがユーザーに伝えらられるようになります。
レトロな質感はそれこそ機材の状態やテープの状態など様々な経験劣化、つまりちょっとした歴史によって生まれるものですが、Baby Audio Super VHは時間をかけずに最高なレトロ感を作り出せます。
Baby Audio Super VHS サウンドレビュー
Baby AudioのSuper VHSは、80年代の懐かしい音を手軽に楽しめる魔法のようなツールです。音楽や映像作品に、あの昔のVHSテープの雰囲気をたった6つのボタンを操作するだけで再現します。
個別のトラックに使うのもいいですし、ミックスに使えばよりらしい雰囲気が出ます。
今回のデモは次の2mixに使用します。
上記の設定で得られるサウンドは次のようになります。
Driftを上げればよりヨレヨレなサウンドになります。上記のパラメーターではそこまでレトロ感ではないように思います。
続いてSuper VHSの真骨頂ともいうべきMagicボタンを押した結果が次になります。
コーラスの名機であるJuno-6のコーラスを元にレトロ感を追求したのがMagicです。Magicによるコーラスと味付け程度だったDriftがよりFOCUSされ良い意味でかなりモヤモヤしてくれます。
ノイズは音程感があるので使用に注意が必要
STATICのパラメーターでノイズ成分を加えることができます。しかし、このノイズは音程感があるノイズなので曲によっては邪魔になる可能性があるので注意が必要です
この手のノイズはあまり歓迎されないのですが、ハマればよりレトロ感が出てきます。
このノイズ量はパラメーターでいうところの半分くらいです。MAXにしてしまう意味はあまりないでしょう。
機能性および操作性
Super VHSはSTATIC、HEAT、SHAPE、MAGIC、DRIFT、WASHの6つを組み合わせVHSサウンドを再現します。
言葉の意味と効果については次のようになります。
概要 | 効果 | |
STATIC | 静的ノイズシンセサイザー | ノイズ負荷 ピンクノイズオシレーター |
HEAT | アナログテープサウンドエミュレーター | サチュレーション 「民生用」テープ マシンの歪み |
SHAPE | サンプルレートリデューサー | サンプルレートコンバーター 8 ビット ノイズを付加 |
MAGIC | ダークコーラスFX | コーラス Juno スタイルのコーラス |
DRIFT | テープの揺れを | LFO テープの保存状態による音質を再現 |
WASH | 「バッドホール」 | リバーブ Lo-fi感あふれるリバーブ |
さらに直接パラメーターは操作できませんが、内部機能としてEQ、ビットクラッシャー、リミッター。なども搭載されています。
機能面で注目したいのはドリフトです。ドリフトはアナログ機器に見られるピッチ変動を再現するエフェクトでこれにより、音源に微妙なピッチの揺らぎが生じ、ノスタルジックなムードが演出されます。
このドリフトはメーカーによって微妙に異なるさじ加減がありここが気に入るかどうかがLo-Fiサウンドプラグインの決めてとも言えます。
Super VHSはDry/Wetの微調整が可能なパラレルミックス仕様になっています。原音に対してリバーブやモジュレーション効果を微調整できるのは音作りの面において非常に便利です。
プリセットはない
Super VHSは状況に応じて自ら作り上げるというのがコンセプトなので基本プリセットはありません。ただLogic Proの場合はプリセットを作り保存することができます。
方法は次の通りです。
好きな名前をつけても大丈夫ですが、基本は英語の方が良いと思います。
CPU負荷について
マスターに1つだけSuper VHSを使用した場合の結果です。
個人的に思っていたより負荷がある印象です。
続いてCPU負荷逃しをするとマルチコアが効きますので使用する際はCPU負荷逃しをするのがおすすめです。
CPU負荷計測環境
パソコン Macmini2018
CPU Intel Corei7(i7-8700B)6コア
HT使用時12コア 3.2GHz/ターボブースト(TB)使用時4.6GHz
メモリ 32GB
システム OS12.6.1 Monterey
Audio/IF Focusrite RED 8PRE
バッファー 256
DAW LogicPro10.7.7
48kHz/24bit
再生ストレージ SSD
海外サイトでは「Super VHSが不安定である」といった指摘も見られます。例えば、Gearslutzのフォーラムには、Super VHSを使用しているユーザーから「稀にフリーズすることがある」という書き込みがあります。また、MusicRadarの記事には「一部のユーザーは、Super VHSがDAWをクラッシュさせることがあると報告している」とあります。
ただすべての環境が同じではないことから、特定の環境による不具合の可能性が高いと感じています。
VHSエミュレーターとテープエミュレーターの違い
VHSエミュレーターとテープエミュレーターは、どちらもアナログ時代の録音メディアの特性を再現することを目的としたオーディオエフェクトですが、それぞれ異なるメディアの特性に焦点を当てています。以下に、それぞれの違いを説明します。
VHSエミュレーター
VHSエミュレーターは、1980年代に一般的だったビデオテープ(VHSテープ)の特性を再現することを目的としています。VHSテープは、映像と音声の両方を記録することができるメディアでしたが、テープの保存状態や経年劣化により音質が劣化し独特のピッチの揺れやノイズ/ヒスノイズが含まれていました。
これらの特性をデジタル環境で再現し、80年代のノスタルジックなサウンドを作り出すことができます。
VHSエミュレーターは、シンセウェーブやヴェイパーウェーブなど、80年代の音楽や映像文化を意識したジャンルでの使用が特に効果的です。
VHSは後にHIFIサウンドでの録音が可能になり、そのスペックはCDとほぼ同じため、VHSのローファイサウンドはHIFIモードのビデオ録音ができるまえのものになります
テープエミュレーター
テープエミュレーターは、オーディオテープ(リール・トゥ・リールやカセットテープなど)の特性を再現することを目的としています。
オーディオテープは、音楽録音や放送用途で広く使われていたメディアで、アナログ機器特有の温かみやサチュレーションが特徴です。テープエミュレーターは、テープの速度揺らぎや、周波数特性、ハーモニックディストーションなど、オーディオテープに固有の特性をデジタル環境で再現し、ビンテージ感のあるサウンドを作り出すことができます。
テープエミュレーター | VHSテープエミュレーター | |
効果 | 音質向上(Hi-Fi的アプローチ) | 音質加工(Lo-Fi的アプローチ) |
使用方法 | アナログの音の温かみを与えるが 原音を崩さない | アナログ的な音の温かみとコーラス的なピッチの揺れ 原音を大きく変えてしまう |
使用ジャンル | ロック、ジャズ、ソウル、 基本選ばない | シンセウェイブなど80’s系の特色が出るジャンル |
これらの違いから分かるように、VHSエミュレーターとテープエミュレーターは、それぞれ異なるアナログメディアの特性を再現することを目的としています。
テープエミュレーターと呼ばれるプラグインでは、テープだけではなくテープデッキ自体の再現にも力を入れています。これはテープデッキ自体が音楽的な響きを持っていたためです。
VHSもデッキによって音質が違うのはテープデッキと同じですが、音楽再生および音楽録音という意味合いではあまり大きな影響力を持ち合わせてません。(90年代にはADATと呼ばれるVHSテープデッキによる高音質なデジタル録音方法がプロのレコーディング業界で一般化しましたがそれを今プラグインとして再現する意味はあまりないのかもしれません)
そのため、Lo-Fi化したVHSテープサウンドの方が音質面として個性的でなおかつ近年のLo-Fiブームにありプラグイン化しているのでしょう
Baby Audio Super VHS以外の類似プラグイン
VHSテープミュレーションプラグインという名目でリリースされているのはBaby Audio Super VHSだけですが、いくつかのプラグインにはVHSサウンドをエミュレーションしたプリセットが入っています。
XLN Audio – RC-20 Retro Colorとの違い
XLN Audio RC-20 Retro Colorもレトロサウンドを追い求めるというコンセプトなのでXLN Audio RC-20 Retro ColorとBaby Audio Super VHSは似た傾向の製品といえます。XLN Audio RC-20 Retro ColorにVHSのサウンドをエミュレートしたプリセットがあります。
しかし、パラメーターの多さなどはBaby Audio Super VHSよりXLN Audio RC-20 Retro Colorの方が多いのでより細かい音作りが可能です。
XLN Audio RC-20 のVHSプリセット
XLN Audio RC-20 Retro ColorにはMAGICのようなコーラスがないのでBaby Audio Super VHSと同じような音色にはならないので、似たような音色にするには別途コーラスプラグインが必要になります。
同じ傾向のプリセットでいうとArturiaのChorus Juno6を使ってみると似たような傾向になります。
ただ、音質的にはBaby Audio Super VHSの方がクリアで聞きやすいサウンドです。
TAIPとの違いについて
Baby Audio にはTAIPと呼ばれるテープエミュレータープラグインがあります。こちらはテープエミュレーションのカテゴリになります。
Baby Audio TAIPはBaby Audio Super VHSと一部類似した機能(ピッチの揺れやLo-FIサウンドアプローチのパラメーター)がありますが、一番の違いはAI アルゴリズムによる解析方法を採用したことでテープサウンドのエミュレーションの精度が高くなっています。
Baby Audio Super VHSとは基本的なサウンドは異なるのでサチュレーションによるテープサウンドエミュレーションを求めるならばTAIPを使ってみるのが良いかもしれません。
Baby Audio Super VHSに関するFAQ
- テープエミュレーターとVHSエミュレーターの違いは
-
VHSエミュレーターは、レトロなLo-Fi感を作り上げるのに対してテープエミュレーターはアナログ機器特有の温かみやサチュレーションが特徴です(ただしテープエミュレーターにはVHSと同じでLo-Fi感をメインにしているものもあります)
- Baby Audio Super VHSの類似品は?
-
XLN Audio – RC-20 Retro ColorにVHSというプリセットがありますが、XLN Audio – RC-20 Retro Colorの方が劣化感が大きく、80’Sのクールな雰囲気とは言えない音質です。
- Baby Audio Super VHSはマスターにも使える?
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モジュレーション効果(音のゆらぎ)があるので、プラグインスロットのどこに挿すかが重要になります。モジュレーション系は基本、プラグインの後方になりますが、レベル管理が難しく音割れも出やすいので、プロジェクトにあった音量調整をしながらベストな場所で使うのがおすすめです。
まとめ
メーカー | Baby Audio |
製品名 | Super VHS |
特徴 | 具体的に4つ(短文)改行で最大8 |
システム | マック Mac OS X 10.7以降 (64ビットのみ) Intel または M1 Apple Silicon プロセッサー (ネイティブ互換性) フォーマット: AU、VST、VST3、AAX 互換性のある DAWS: Ableton Live、Pro Tools、Logic Pro、FL Studio、Cubase、Nuendo、Reaper、Reason、およびその他の市販の主要 DAW ソフトウェア ウィンドウズ Windows 7以降 (32/64ビット) フォーマット: VST、VST3、AAX 互換性のある DAWS: Ableton Live、Pro Tools、FL Studio、Cubase、Nuendo、Reaper、Reason、およびその他の市販の主要 DAW ソフトウェア |
認証方式 | シリアル認証 |
認証数 | 3 |
マニュアル | 英語のみ |
価格 | 49ドル(メーカー価格) |
前から一度は使ってみたBaby Audio Super VHSですが、絶妙なレトロ具合がくせになるサウンドです。
機能性や操作性もかんたんなのでとりあえず「レトロ感がほしい!」というトラックやミックスに使ってみるのがいいでしょう。ただ、使いすぎると飽きられてしまう傾向もあるので、使い所を見極めたいです。