編曲依頼の相場と考え方(なぜ人によって金額が違うのか?)

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趣味でDTMをやっている人でも「自分の作った音楽売れる」というのは嬉しいですし、そこを目標にしている人は多いです。しかし「一体いくらで売れるのか?」という具体的な数値にはわからない人が多いです。

今回はとある作曲家さんのツイートで「作曲アレンジ15,000円で来たことに丁寧にお断りした」という話について「作曲アレンジ料金」について考えてみたいと思います。

UG
  • 元ゲーム音楽屋(NintendoDSなど)
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  • DTM記事執筆500以上
  • ショートアニメ、CM、企業PV音楽を制作
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編曲依頼料金15,000円は安いの?高いの?

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私は10年くらい前にゲーム会社のサウンドクリエイターをしていて、独立後フリーランスになり今は講師業やBGM制作などを生業としています。

ずばりこの15,000円のアレンジ料金、ゲーム会社時代で考えれば高いです。なぜなら会社勤めしていたとき1日18時間労働で1曲の制作単価が8000円くらい?だったからです。

時給換算する気もなくなる安さです。もちろん企業に勤めていたわけですから社会保障などの手当があり、個人事業主でしなければいけない制作以外の雑務を会社が補ってくれているわけですから8,000円という金額を純粋な「作業料」として考えるのは早計な部分もあります。

ですが、ゲーム会社時代のわたしなら飛びついていたと思いますw(あの頃はやばかった…)

しかしJPOPシーンであれば、考えられないくらい安いと思います。

JPOPでの編曲は案件によって20万〜100万近くらいと言われていますが、私が経験したときはこのカテゴリに入るような金額ではなかったですが、まぁ話半分くらいで覚えておくのがよい程度の話です。

編曲のプロセス

アレンジとは基本メロディに対してドラムやピアノ、ギター、などを足していくプロセスをいいます。アマチュアにとっては作業内容だけを見て「編曲」と解釈しますが、

  • クライアントとの打ち合わせ(自分のスケジュールの調整)
  • 方向性の確認
  • 修正の有無
  • 資料制作
  • etc

雑務的な行程も含めてすべてがアレンジの仕事です。「作って終わりじゃないの?」と思うかもしれませんが終わりではないのです。ここまでするのがプロの仕事なのです。

ではここから具体的に見ていきたいと思います。

クライアントとの打ち合わせ

DM等でやり取りする場合から直接あって話場合も含めて打ち合わせ方法はそれぞれです。

ここで編曲アレンジ料金のやり取りを決めることになります。

たまにプロ・アマも含めて「えっ?お金取るんですか?使ってあげるって言ってるんですよ?プロじゃないですよね?」みたいなやり取りをTwitterで見かけますが、こういう無駄な時間も含めて打ち合わせです。

打ち合わせの内容は色々とありますが、最低でもこの3つは確認しておきたいところです。

  • 編曲依頼料金
  • リテイク回数
  • 生楽器の使用の有無
  • 期日

方向性の確認

無事に依頼料金との折り合いもつき双方が納得のいく契約内容になった場合、そこから編曲が始まります。

シンセメロで編曲を渡す人もいますが、クライアントにわかりやすい内容を提示するためにも仮歌込にする人もいます。

ここでリテイクが発生すれば、やり直しになりますが、音楽に詳しくないクライアントからすれば「イメージが違う」としか言えない場合があります。なので、いくつかパターンを渡して「この中からどうですか?」という提示の仕方にするとスムーズに進みます。

特に修正の有無についてとても重要です。音楽という形のないものに対してイメージだけでその人が望むものを具体化するわけです。音量の大きさや音色一つにしてもイメージと合わない可能性もあります。

資料作成

歌詞や、そのほかの資料など必要なものも用意します。

ここまでしていればあまり大きなトラブルもなく進められるとはおもいますが 、これを何日間でやるのか?ということを考えながら行わないといけませんし、契約内容内でのトラブルであれば迅速に対応する必要があります。

編曲料金の決め方

では、編曲料金はどうやって決まるのか?について解説していきます。

編曲料金の相場はあってないようなもの

仕事を受け持ったらそこには責任が生じますし、その作品が世にでることで自分の評価も決まります。下手なものを出して価値が下がるようなことがあれば次から仕事の依頼も減ってしまう可能性があります。プロは常にその緊張の中で音楽を作っています。

さて、今回の15,000円のアレンジ料金については「誰が」「誰に」という視点で考えるとシンプルになります。

遠藤ナオキさんの場合はご家族もいて、いままでの音楽制作費にかけてきたお金や時間から考えればとても受けられる仕事ではないと判断したのでしょう。これはプロとしてなんらおかしい話ではありません。

しかし、これが作曲をはじめて数年、まだギャラらしいギャラももらったことがない人であれば嬉しい金額かもしれません。また、相手の求めていることを1時間でできると思えば時給15,000円のわけですから悪い仕事ではないでしょう。つまり人によってお金に対する価値観(意味合い)は違うということです。

遠藤さんにメッセージ送った(この会社Aとします)A社はおそらく駆け出しのようです。少しでも制作費を安くしたいのかもしれません。この考え方自体もビジネスにおいて間違ったものではありません。「売上を作る」ための純粋な考え方です。

しかし、ビジネスにおいて大切なのはWin-Winになる関係です。「自社の利益のことしか考えない」会社と誰も仕事をしたいとは思いません。百戦錬磨の駆け抜けてきたプロからすると、そんなところで仕事をすることで得られるメリットはないからです。

安い編曲料金でも受ける場合について

ではお金以外で何にメリットを見出しているかと言われると「生きる意味」です。

それをする意味で私はどうなるのか?アーティストと言う人たちは信念の塊です。その信念を武器に今の仕事を生業にしているのです。つまり今を全力で生きているからこそ、今の自分に価値を見出せるのです。その自分の価値をより高められるアップデートできるのであればお金は二の次にできます。

大失敗と思えるようなことでも意味さえ見いだせれば失敗ですらなくなります。貴重な経験です。

人から見れば「アホやなー」と思うことでもそれに意味を見いだせるのがある意味「芸」という世界で生き残るためのセンスともいえます。

仕事を依頼するときに何故「情熱と相手へのリスペクト」が必要なのか。それは相手の生き方を尊重しているかどうかという姿勢を「情熱と相手へのリスペクト」でおしはかることができるからです。

A社のメッセージには私が見ても「相手へのリスペクトと自社の情熱」は感じられません。ですがA社も大きくなる野望をもって仕事を始めていると思うので、「情熱と相手へのリスペクト」について学ぶことでいいように変わっていけるのでは?と思っています。

もちろんそんなことをしない商売をしている人もいるでしょう。ですが、同じするならどちらが良いか?と言われたら多くの人はより良い対人関係を結べる仕事相手を選びたいと思っている人が多いです。

あえて、このメッセージに対して個人的な意見を言うならば遠藤ナオキさんがバルスを唱える必要はないと思います。ですが、遠藤さんの「音楽シーンがより良いものになってほしい」という気持ちが溢れてしまった結果のバルスだと解釈しています。

過去に15,000円で作った音源クオリティに関して「こんな金額でよくやったよ、ホントに…」的なコメントしていますが、その人がそのアレンジをどういう立場でどのくらいの時間でやったかはわかりません。

例えばその人が仲介になって若い人に仕事を振った可能性もあります。または「自分だったら1時間もあればできる」と思ってやったのかもしれません。当事者でない私達はこの可能性を考えることで、物事の違う側面を見ることができます。

私達はどんなに自分は冷静で客観的でだと思っていてもその時々の感情で自分が見たいようにしか見ません。正しい正しくないというよりは「自分にとってそれが好きか嫌いか」という判断が絶対という意見でみると大事な本質を見落としてしまう可能性があります。

編曲料金は安く見積もられがち??

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もともと音楽制作には一般的ではない特別なスキル(技術、知識)+時間などが必要でそこに価値がありました。人間付き合いの仕方もサラリーマン的な世界の付き合いとは異なります。そしてもともと作曲は誰でもできるものでなかったため、それらを含めてそこに「希少価値」がありました。

例えば作曲について学ぼうと思うと音大に言って有名な先生に弟子入りして師匠の鞄持ちをして少しずつ仕事をもらっていくという方法がありました。

音大の4年間の学費の総額はいくら

学費の高い音楽大学の学費|桐朋学園大学
金額
入学 600,000円
運営維持費 300,000円
授業料 1,360,000円
施設設備費 340,000円

引用 保険ROOM学資保険より

他にも個人レッスンなどの諸雑費が年間60万くらいと言われているので、4年で4,100,000円くらいです。確かにこれの元をとるためにはそれなりの依頼料が必要でしょう。

ここにパソコンや音楽ソフトに楽器を合わせると5,000,000円以上になる可能性もあります。音大出身者でなければこの金額にはならないかもしれませんが、バンドマンであれば楽器代、ライブ代、スタジオ代、などいくらでもお金は必要です。

細かいことを言い出すと金額はどんどん大きくなるので一旦このあたりでおいておきます。お金以上に時間の投資も大きいでしょうし。

このような特別な技術は高いお金と時間をかけて身につけるものという考えから「価値」の重要性が見いだされていましたが、音楽制作に対して「高額なお金を支払う対象ではない可能性」が高くなってきています。

音楽制作に必要な情報の希少性がなくなりつつある

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情報共有の時代

ネットによって情報が価値を持ちました。それは情報があればそれをスキル化することで再現性が得られるからです。そしてそれらを共有(シェア)することでwin-winの関係を作り始めてます。Twitterの使われ方もそれと基本的には同じです(見たくもないようなものもありますが…)

情報共有の時代になった今、情報の価値はどんどんと高くなりました。これらをビジネスにしたのが「情報ビジネス」です。情報ビジネスと言ってもネットだけに限定する必要はなく、たとえばDTMの場合、この情報ビジネスは「教則本」というコンテンツにあたります。そのコンテンツをネットというツールを使って販売するのも情報ビジネスのひとつです。

私が作曲を始めた高校生のころは教則本はほとんどありませんでしたが、今では何百という教則本があり、今まで普通のバンドマンや趣味で作曲をしていた人が知ることができなかったスキルが記載されています。

また、教則本だけではなく第一線で活躍しているプロミュージシャンやプロの作曲家による動画解説サイトや私みたいなDTMブログも大量に出てきたことで、音楽制作の情報ビジネスはレッドオーシャン化している状態です。

20年以上前の音楽制作でこれだけの情報を手に入れようとするならばやはり第一線の音楽制作の現場しかなかったでしょう。何より情報がない時代に音楽できた人も限られていました。そしてそれを教える伝える人もいなかったために希少性が保たれました。

しかし、ネットでの情報やスクールによる音楽制作(音楽活動)のハードルが下げられたことで、「私もやってみよう」という人が増え、それにともなって情報が溢れかえったこともあり、徐々にその情報の希少性は弱くなりました。

あこがれだった作曲も蓋をあけてみればクリエイティブでもなんでもなくオペレーション作業だっという事実に気づいてショックを受ける人もいます。そしてその真意を教則本や動画サイトでどんどん発信してそれが受け入れられる時代になった今、情報の希少性という価値はなくなり逆に「同じ情報であってもその人がそれをどう捉えているか?」という価値に注目が集まっています。(SNSなどで尖った発言が注目されるのもそれです)

テクノロジーの進歩

昔はプロとアマチュアには圧倒的なクオリティの差がありました。それは使っているツールの違いです。ですが、何百万もしたようなソフトが1/10で売られていたり、高価なマイクプリアンプもテクノロジーの進歩で安くてもクオリティの高いものはたくさん出てきています。

その使い方についても詳しい動画サイトがあれば、もはやプロとアマにツールとしての違いはありません。あるのは経験から培われたセンスによる解釈です。

マスタリングという言葉もちょっと前までは「音圧あげでしょ?L3指しとけば?」くらいの価値観だったのが「マスタリングで音圧あげしか考えないやつ駄目だね」という意見も広がっています。数年でマスタリング対する価値観も大きく変わっています。それほどテクノロジーの進歩と情報共有によってユーザーの価値観は大きく速くアップデートし続けられています。

薄利多売の音楽ビジネス

情報共有とテクノロジーの進歩によって今まで出来なかった人が音楽を作れる時代になったことで、音楽を欲しい人からすればある意味チャンスになりました。

個人や企業が動画コンテンツを作るのが当たり前の時代に不況もあって「1曲に何十万もかけられないけどクオリティの高い音楽がほしい」という人にとって注目されているのが作った音楽を売るストックビジネスがあります。

ストックビジネスで有名なのはオーディオストックです。ここでは一曲2,000円くらいで販売しているわけですが、プロ・アマ問わず一ヶ月で十万近い作品が登録されています。一曲で何十〜何百万も稼いでいる人からみれば信じられない音楽ビジネスですが、お互いの価値がWin-Winで成り立っているわけですから、否定すべきものではありません。

このオーディオストックは当然ある程度のクオリティは求められますが、それでも音楽制作の一般化によって参入してきた人も当然いますし、月にサラリーマンの給料を稼いでいる人もいます。

つまり誰でも音楽を作れてそれが収益になる時代の音楽ビジネスモデル、それがストックビジネスです。

Twitter上での意見

もし作曲で稼ぎたいと思う人はこれらの考え方は参考になります。自分がどのポジションに行くべきなのか?

趣味で小遣いを稼ぐ分にはいいかもしれませんが、自分の価値を最大限に高めてそれを評価してもらえるアンテナを貼り続けるのはクリエイターにとって重要なスキルです。

フリーランスのアレンジの相場

多くの人がしりたい相場ですが、なぜこれを知りたいのか考えるところから始めます。おそらく「相場とは違う金額を言ってしまったら、仕事が受けられない(もらえない)または安くしてしまったら損をする」という意識から「妥当なところが知りたい」というの本音だと思います。

そもそもフリーランスに相場はあってないようなものです。50000円で受ける人もいれば、5000円で受ける人もいます。それはその人のスキルや価値観などによって違います。またクライントの規模によっても当然変わってきます。

今回の遠藤さんの15,000円という話もクライアントとしてはかなり小さいところになるでしょう。

大事なのはあなたが「いくらで受けるか?」というポジションを明確に打ち出し、それが他の人にはない魅力であればクライアントはあなたの提示した金額で仕事を受けます。

「具体的にはいくらなの?」と思うかもしれませんが、あなたが最低限損をしたくないというベースで考えたときにあなたが1曲完成するまでにかかった時間を算出し、それをバイトの時給で考えればとりあえずのあなたの相場観は出せます。

例えば1曲を8時間でアレンジできるならば、時給900円のバイトであれば7200円です。つまりこの金額を下回るのであればバイトをした方が稼げます。そうなると色をつけてバイトより音楽で稼いでる実感として最低でも3倍程度の時給で換算すれば、2700円X8=21,600円くらいがあなたの相場になるでしょう。

それに見合った以上のクオリティであればクライアントから仕事を取れます。

まとめ

作曲アレンジ15,000円は安いの?高いの?という問題について、その金額にどういう価値見いだせるのか?というセンスの方が重要だと思います。安い高いは人それぞれの立場によって違うわけです。プロの相場で見れば安すぎでしょうし、アマチュアから見れば嬉しい人もいます。

価値の問題は本来は主観で語ってよい話なのですが、その多くは客観で無理やり推し量ってしまうことがお多いです。なぜなら「価値=信念」であり、それによって必要以上の人間関係の摩擦を生み出してしまうきっかけになる可能性があるからです。

今回の15,000円アレンジ料金は「そんな金額でやってどうするの?」みたいな見方もできるでしょう。でもそこに自分がどのような意味を見出したのか?それを経験として将来「あの仕事から学べたこと多かったわ。良くも悪くも」といえる日を迎えられるように出来たら幸せだと思います。

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