eargasm explosionを使うと音がよくなったという人は多いですが使い方には注意が必要です。なぜなら過度に調整された音質を聞き続けることにメリットを感じないからです。
この記事ではなぜeargasm explosionをおすすめしないのかについてプロの作曲家の立場から解説します。
eargasm explosionっていうイコライザー設定どうなの?
音楽の感じ方は人それぞれだけど使うときはちょっと注意したいね
eargasm explosionやPerfectは過度に調整された音なのでその派手さに喜びを感じる人は多いのですが、長時間聴き続けると音響外傷の恐れもあります。音響外傷や耳に優しいイコライザー設定については以下のリンクの記事が参考になりまが、ここではプロの作曲家の立場からeargasm explosionをおすすめしない理由を2つお話したいと思います。
イヤガズムエクスプロージョンとは?
2016年まではPerfectという設定が流行っていましたが、それに変わる設定としてイヤガズムエクスプロージョンが誕生しました。イヤガズムという言葉は日本では馴染みがありませんが、海外では割と使われている言葉で意味は次のような意味になります。
耳のオーガズム。特に音楽を聴いたときに耳が受ける快感を指す
それに爆発であるeargasm explosionをくっつけて出来た造語です。近年ではこれらが広く普及し多くの人が使うようになりました。
Perfectとeargasm explosionとの違い
eargasm explosionができる前はPerfectと呼ばれる設定が流行していました。両者の違いは主に4kHzのブースト量がEargasm Explosionは9dB、Perfectは4dBになっています。
eargasm explosionのメリット
決しておすすめする立場の記事ではありませんが、「良い音」と感じるのは人それぞれです。実際eargasm explosionを使って思ったメリットを書きます。
メリット①音が派手になる
かなり過度な調整によって作られているので音がド派手になり、一種の高揚感を感じることができます。itunesプレイヤーそれほど音が良くないプレイヤーなのでその効果はより大きく感じるかもしれません
メリット②ジャンルを選ばない
Perfectとeargasm explosionは特定のジャンルに絞ったものではないので、ロック、ポップス、EDM系など、多くのジャンルに喝を入れて音を前面に押し出してきます。itunesのイコライザープリセットでは色々なジャンルのモノがありますが、これらを試した後では地味に感じます。
eargasm explosionのデメリット
デメリット①音割れがおきる
最近の曲は音の迫力を出すために「これ以上あげれば音割れする限界ギリギリ」で作られています。曲によっては「音割れしているものもあります」「プロの環境でも音割れしている?」って思うかもしれませんが、「大きい音は正義だ!」という思考の結果、限界を超えてしまっているものもたまに見受けられます。
その音割れは気づくものもあればあまりデータ上の数値でしかわからないものまであります。しかし、スマホや小型のスピーカーなどではもともと再生能力が低いため、音圧が高い曲を再生すると音割れがとくに目立つものもあります。
その状態の曲にPerfectとeargasm explosionを使うと決して再生に適した音ではなくなり、音割れが起きてしまう可能性があります。
音割れの回避方法はプリアンプで6dB下げることがおすすめと言われています。しかし。そうなると無理なEargasm Explosionを設定する必要がないというのが私の考えです。
デメリット②派手な音に耳が慣れてしまう
大きく派手な音は最初の間は良いのですが、だんだんと慣れてしまいます。そうすると音に対して鈍感になってしまい音楽に耳を傾けるということがだんだんなくなります(大きな音で聴いていれば自動的に耳に入ってくるので…)
そしてなれてくることで「もっともっと」と刺激を求めてしまいます。その結果より大きな音で音楽を聞き続けるようになり音響外傷を患う可能性もあります。
音響外傷のリスクについて
音響外傷はヘッドホンやスピーカーで大きな音を聞き続けることで難聴になる症状のことです。
(2) ヘ ッ ドホ ン を 主 とす る強 大 音 との 関 係 で は, 高 音 障 害 型 感 音 性 難 聴, 特 にC5dip型 に
引用元:ヘ ッ ドホ ン使用 と聴器障害一 中 ・高 校 生 に お け る 耳科 疫 学 的検 討 一
強大 音 の既 往 の あ る例 が 多か った。
ヤフーニュースでも取り上げられています。
安全でない聴き方とは一言でいえば 大音量で長時間聴き続けることです。
1日何時間も大音量で訊いていると音響外傷のリスクが発生しますが、これはヘッドホンに限ったことではありません。
イコライザーで過度にブーストさせた周波数は通常の何倍もの音量に達します。
もちろんプリアンプやボリュームで音を下げればよいという話もありますが、イコライザー設定を楽しみたい人はあまりそのような方法はしません。
ヘッドホンで定番イコライザー設定と言われている「イヤガズムエクスプロージョンとパーフェクト」を長時間使い続けるとどれほど耳を酷使することになるかを考えている人はあまりいません。
上記のことから大切な耳を音響外傷から守るためにも必要以上のイコライザー調整はあまり推奨できるものではありません。
他にも音響外傷予備軍は世界レベルで11億人にも登るという話もあります。
WHO(世界保健機関)は2015年2月に世界では3億6000万人が日常生活に支障が出る聴力障害を抱えており2050年までに12~35 歳のおよそ50%にあたる11億人がヘッドホンで大きな音を聞き続けることによって起こる音響性難聴((ヘッドホン難聴(イヤホン難聴))のリスクにさらされていると警鐘を鳴らしました。また同警鐘では同様に約40%が娯楽施設で危険レベルの音響にさらされているともしています。
もしすでに下記の状態を感じているのであればできるだけ早く耳鼻科等へ受信することをオススメします。
大きな音を聞いた直後、強い耳鳴りがして聞こえが悪くなる
耳の痛みを伴うこともある
耳が詰まった感じがするだけのこともある
低音だけ、高音だけなど、ある音域だけ聞こえない場合もある
若い人にも多い難聴3 音響外傷(ヘッドホン難聴)
どちらにしても自分の耳をいたわる音楽再生環境をしっかりと作るべきだと思います。
また過度なイコライザー設定により音割れのリスクもあります。どちらにしても「ただ気持ちよいから」という理由だけで使うのはオススメしにくいですね。
多種多様な音楽あるようにイコライザー設定もジャンルに合わせた設定があります。イヤガズム等は万能のイコライザー設定ではないということを心に留めておくのをオススメします。
さて「万能のイコライザー設定なるものはない」とお話しましたが、実は一つだけあります。それはみなさんの耳です。
みなさんの耳は聴きたい音(帯域レベル)はすぐに反応し、聴きたくない音は無視できる。ある意味で高性能なイコライザーでもあります。
これらは専門用語でカクテルパーティー効果と呼ばれ、人が大勢いる中で自分の名前が呼ばれたら反応できるというものです。人の耳は瞬時に聴きたい音(周波数)だけをピックアップできるすごい万能イコライザーといえます。
その万能のイコライザーを使えなくなってしまうのが過度なイコライザー設定です。その究極の万能のイコライザーである耳を簡単にレベルアップできるように作り上げたのが次で紹介するイコライザー設定になります。
まとめ
一言でいえばeargasm explosionはイコライザーのエナジードリンクです。瞬間的にはパワーがありますが多用すると上記のような弊害もあります。
それでもeargasm explosionこれじゃきゃ音楽が聴けない!という音質中毒になっている人が大勢いるようです。できれば過度な調整せずに静かに音楽に耳を傾けて、アーティストの息遣いに心ときめいてほしいと願うばかりです。
というか個人的には音圧市場主義と同じでこのようなイコライザー設定はもう時代遅れ!っていう認識になってくれることを祈るばかりです。