Lo-fiなHip-Hopサウンドがほしければまず手に入れたいプラグインそれがビットクラッシャーです。ビットクラッシャーとは音の解像度を下げローファイサウンドにしてくれるプラグインでその音は「暖かく、太く、スモーキー」な音と形容されることが多いです。
そのビットクラッシャーとして有名なハードサンプラーがKORGのDM-1と呼ばれれているもので「通すだけで太くなる」と評判で今でもプロやマニアの間では「名機」として語り継がれ使われ続けています。
そこで今日はそのDSM-1のサウンドとはどんなものなのか?プラグインのビットクラッシャーでも同じようなサウンドにはなるのか?といった比較をしてみたいと思います。
KORG DSM-1
ヤフオクで手に入れたらボタンがやたらカラフルになってましたwKORG DSM-1が出てきたのは1987年今から31年前になります。値段は348,000円DSM-1の搭載メモリは1MBでした。
KORGのDSM-1のスペックは
- 16音ポリフォニック 16VCF
- 12bit 16khz〜48khz
- 最大で64秒ということですが、(ここは確認できていません)
- 16khz 16秒
- 24khz 11秒
- 32khz 8秒
- 48khz 5.5 秒
DSM−1以外にもサンプラーはたくさんありましたが、通すだけで音が太くなるというエフェクティブな使い方ができたのはDSM-1とASR-10Rというサンプラーだけと言われています。(ASR10R)は汚し系とはまた違うものなのでここではDSM-1だけに注目します。
DSM-1の音質を聞ける曲
ビットクラッシャーは一言でいえば「歪み」を作るプラグインです。そのため音色の表現は「荒々しいサウンド」となりますが、それと同時に「暖かい音」を作れるプラグインでもあります。具体的な音の作り方は下記で書いてあるので参考にしてもらえばと思います。2つの相反する要素を持ったサウンドを1つのプラグインで調整する便利な音質変化プラグインそれがビットクラッシャーとも言えます。
私の記憶では1995年の坂本龍一のアルバム SMOOCHY の一曲目「美貌の青空」のリズムをTOWA TEIが持っていたDSM-1に通したものと言われています。
Krush VST(プラグイン)ビットクラッシャー
技術的には難しいことをしていないのでかなりの数のビットクラッシャーが存在していますが、そのなかでフリーでありながら高音質なビットクラッシャーKrushとDSM-1を比較してみたいと思います。DSM-1はモノラル使用なのですべてモノラルファイルにしてあります。まずは何もかかっていないドラムのループです。
次がプラグインKrushで汚したもの
そしてDSM-1を通したもの
さすがDSM-1いかにも実機!という感じの音質です。これが好きな人はいくらプラグインで似たような音を使っても「何か違う!」となってしまうんです。今回はわかりやすいようにかなりオーバー気味にDSM-1に突っ込んでいます。なので音色によってはもっとわかりくい音質の変化した感じないこともあります。
プラグインのビットクラッシャーに慣れてしまうとハードの音は「あんまり変わらない」という印象を受けた人も多いかもしれません。そもそも12bitという音は音質を劣化させるかさせないかギリギリの解像度だったりもします。それ以下だとチップチューン系のような音になります。
DSM-1は通しただけでも太くなるという使い方はできますが、きちんとサンプリングすればVCFを使うことが可能になるので、拘る人はサンプリングして使っている人が多いです。
しかしながらKrushの音もかなりいい線言っていると個人的には思います。正直実機よほどのこだわりがないかぎりをつなぎサンプラーに流し込みまたパソコンに録音するという手間を考えてればプラグインで済ませてしまいたくなるかもしれませんね。
ビットクラッシャーの経緯
昔のサンプラーは今より技術的に劣っていました。以下に紹介するDSMなどは12Bitという解像度で音を取り込んでいました。ちなみにEmu1というサンプラーなどは8bitです。Bit数がおちれば落ちるほど音は歪んでいきます。なぜ昔の機材は解像度が低いのかは技術的な側面もありますが、当時のメモリが2MBでも何十万もするような時代です。その容量に音を取り込むためには解像度を落とす必要がありました。その解像度を落とすプロセスの部分を再現しているのがビットクラッシャーです。
ビットクラッシャーを使う時は、ビットレートとFilterの使い方が重要になります。ただ解像度を落とすだけでは音が痛いだけのサウンドになるので、それをFilterで補う形です。「暖かい音 太い音 スモーキーな音」というのは少し音が曇った状態を連想させると思いませんか?このあたりを調整するのがFilterです。
高音をFilterで削ることで認識できる音の情報量が低音へと変わってきます。つまり言い換えれば高音域という情報は「冷たい音、軽い音、クリアな音」という印象になります。 これは音作りをするうえでかなり重要でありながら多くのプロミュージシャンでさえ「感覚で処理している」ところです。音色の言語化はDTMをするうえで強い武器になるので、みなさんも音から受ける影響をできるだけ言語化しましょう。そうするとどんなプラグインを使っても思いのままのサウンドを操れます。
Krushで音作るときに重要なのは以下の6点です。
- drive 音の歪み
- Crush ビットレート深度の決定
- dwsp サンプルレート深度の決定
- Filter
- freq 20Hz〜20kHzまでのローパス&ハイパスフィルター
- rez レゾナンス
modulationに関しては特殊な使い方になるのでここでは言及しません。
歪みで倍音の量を調整しながら、Crushでビットレートを決めますが、他のビットクラッシャーと違うのは具体的なビット数値を決めるのではなくどれだけリダクションさせるか?というのがユニークな点です。一種のコンプみたいな発想ですね。
MAXで振り切るとおそらく1bit〜4bitあたりの低ビットになります。そこまで行くと使いももにならないので、10%程度でとどめておくと荒々しさと太さを兼ね備えた12bit程度のサウンドになります。
追加記事
RX950も比較してほしいという話があったのでこちらも載せておきます。
RX950はビットクラッシャーというよりはAD/DAエミュレータという立ち位置です。しかし実機は12bit機なので一応ビットクラッシャーの用途もイケるかな?と思いました。音の印象としてはDSM-1もKrushもビットクラッシャー特有の歪で頭の部分が結構潰れています。しかし、RX950はインプットマックスにしても全然潰れずに非常にキレイなトランジェントを保ったまま音が太くなっています。
しかしRX950はビットクラッシャーの用途で使えるかというと少し方向が違うかもしれません。でもRX950いい音です!
まとめ
なかなかこういう実機とプラグインを比べるということは少ないので参考になる人には参考になったと思いたいです。
しかし久々にDSM-1鳴らしてみましたが、やはり実機の音はいいですね独特の質感がたまりませんw