「MODO DRUM」と「BFD3」どっちが良いか迷っている人は多いです。両者はサンプルベースのドラム音源とモデリングベース音源ということでまったく性質が違うドラム音源です。その違いをわかりやすく8つにまとめました。
MODO DRUMとBFD3の機能比較
大きな違いは音色のコントロールとシンバル類のサンプルの多さだね。特にハイハットなどは大量のサンプルを使うからその分容量も大きくなるよ
初めてのドラム音源として選ぶならどちらが使いやすい?
BFD3とMODO DRUMで言えば、どちらにも使いやすい部分と使いにくい部分があります。またMOD DRUMはドラマーでないとわからないような専門的なパラメーターがあるので、ポテンシャルをフルに発揮しようと思うと、初めてのドラム音源には少しハードルが上がるかもしれません。
ですが、これはBFD3にもアンビエンスにどれだけパーツを送るか等のエンジニアの視点が求められます。
ここだけを聞くとハードルが高い音源のように感じますが、あくまで「プロが使ってもこだわり抜ける」というレベルの音源であって気に入った音色を使うのにはBFD3は初心者の人でも十分楽しめます。
ただMODO DRUMの場合は書き出したあとのステレオ/モノラルの変換だけが少しネックかもしれません。
容量について
MODO DRUM 11.5GB BFD3 55GB
BFD3はベロシティレイヤーが最大で100を超えるものがあります。それらを1つずサンプリングしています。またOHやROOMの響きもすべて細かくサンプリングしているので、ドラムのパーツだけではなくその部屋なりの響きも含めて非常にリアルなドラム音源です。
しかし、アンビエンス類が豊富過ぎて逆に扱いに困る人も多いです。
MODO DRUMはサンプリングは金物類だけです。11.5GBの容量はほぼ金物類の容量といえます。BFD3のアンビエンスほどではありませんが、OHとROOMがありそこでアンビエンス感を作れます。
ただMODO DRUMのOHにはシンバル類が入りません。これはOHとしてはちょっとどうなのか?と思う仕様です(今後のアップデートでどうなるのかもわかりません)
ちなみにシンバルにはOHやROOMへの送りはしていません。それでもかなりアンビエンスを感じます。個人的な選び方ですが、アンビエンスの入っていないシンバルを好むならば以下の2つは使いやすいシンバルです。
BFD3のシンバルは容量の多さから言ってとにかく多くの奏法そして音色の豊富さすべてが良くできています。しかし多すぎるために「似たような音色の使い分け」が難しい人もいると思います。
起動の速さについて
MODODRUMはモデリングのためにCPU負荷がかかります。そのため起動時や音色切り替えがスムーズではありません。
立ち上げ時の時間差はMODODRUMが8秒程度、BFD3が5秒程度です。
ですが、BFD3の場合音源の読み込みストレージがHDDの場合はこれの倍以上かかります。そうなるとMODODRUMと変わらないか、それ以上に遅い可能性もあります。
CPU負荷について
- パソコン Macmini2018
- CPU Corei7(i7-8700B)6コア HT使用時12コア 3.2GHz/ターボブースト(TB)使用時4.6GHz
- メモリ 32GB
- システム OS10.14.6 Mojave
- Audio/IF Motu896HD
- バッファー 256
- DAW LogicProX10.4.8
こちらの環境でMODO DRUMは40%ほど
BFD3は23%程度といったところです。
音作りについて
これに関しては現在出ているドラム音源で最強の音作り性能を誇るのがMODODRUMの強みです。
材質、大きさ、チューニング、スティックの変更、キックビーターの切り替えなど、とにかく、完全オーダーメイドのキック、スネア、タムを作り上げることが可能です。
ゼロから作る感じはすごい!。スナッピーの張り具合とかも調整できるけど、ドラムの構造に詳しくない人はちょっとややっこしい感じもする。でも全部使えなくても使いたいところだけでも効果がわかりやすいから使っているうちに覚えていけそう
MODO DRUMキックのエディット画面
モデリングの強みはサンプルとは違いその特性をゼロから作り上げることです。チューニングに関していえば、サンプルのピッチを下げたのか、キックのチューニングを変更したのかでは音色における影響は全然変わってきます。
MODOD RUMスネアのエディット画面
まさにゼロから作り上げるという言葉がふさわしいパラメーターですが、
スネアのLとRの打点面をランダムに設定できるのはさすが物理音源です。そして地味にすごいのがスティックを選べるということ、多くのDTMerが「だから何?」と思うかもしれませんが、スティックの材質によっては大きく音色は異なります。
ティンパニ奏者などは叩く場所と速度によってピッチが大幅に変更されるといいます。ティンパニ奏者は,正常の場所を 柔らかいバチで静かに打つと,ふつうより 1 オクターブ低い音がはっきりでるといっている。
引用:日本音響学会誌 75 巻 2 号膜鳴楽器の発音メカニズムの 解明と応用
このようなスティックの違いによるリアリティの再現を目指したのがMODO DRUMのすごいところです。
MODO DRUMタムエディットの画面
BFD3のドラムエディット画面
BFD3は基本サンプルベースです。エディットするよりは「選ぶ」というのがBFD3の魅力です。エディットとしてはリリースの変更、チューニング、あとはアンビエンスに送る量を細かくコントロールすることで音色に大きく影響します。
ファイル(サンプル)の保存場所について
MODO DRUMはインストール時にMODO DRUM音源をどこに保存するか聴いてきます。もちろんこれ自体はBFD3も同じですが、インストール後のファイルの移動はBFD3の場合ファイル同士の紐付きが複雑なので移動には多少の手間がかかります。MODO DRUMのば愛はシンプルにフォルダを変更したらおしまいです。
MODO DRUMのファイル移動(選択)について
MAPPINGからSound Content Folderから選ぶだけ完了です。
BFD3のファイル移動(選択)について
メニュー画面TOOLからSetup Content locationを選択します。追加音源などはここに一斉に表示されますが、多くなるとかなりややっこしい画面になります。
オーソライズ方法と台数
MODO DRUMはAuthorization Mangerからシリアルナンバーを入力すると完了です。
MODO DRUMに限らずIK Multimediaの製品はアクティベート。 アクティベートは10回まで可能です。
BFD3は3回までですが、それ以降は自分でBFD3の開発元であるFX Pansionに連絡しないといけません。英語が苦手な人はこちらのサイトを参考にするといいですよ。
BFDの唯一の弱点と言っていいかもしれないくらい。再インストールでドラムの音色が読み込めなかったりするのが本当につらい。アクティベートも回数制限あったり…次回のBFD4ではこのあたりも大幅に改善されてスマートなアクティベート方式になってほしい
エフェクトについて
DAWで音作りをする人にとってはドラム音源に内蔵されているエフェクトはあまりつかわないかもしれません。ですが、派手に作るのではなく「そういうスネア」といった割り切りである程度内蔵のエフェクトを使うのは有りだと思います。
MODO DRUMは19種類のエフェクト
BFD3は36種類とBFD3の方が数として上ですが、クオリティに関してはMODO DRUMは新しいだけあって使いやすく応用がきく音質だと言えます。とくに1176をモデリングしたコンプなどは1176ではないのですが、リリースの戻りが驚くほど速く、その戻りを生かした音作りが可能と思えるほどよい音です。
基本的にはDAWで好みのエフェクトをかけるのが音作りのセオリーだけど、内蔵エフェクトで良いエフェクトがあったらそれ使っちゃうのは有り
マルチアウトについて
ドラムは基本アンビエンス(OHやROOM)などはステレオで録音します。特殊な効果を狙ってモノラル録音する場合もあり、BFD3にはモノラル録音されたものが合計6チャンネルあります。
またキックや、スネアは、トップとボトムなどにマイクを立てて録音しても基本はモノラル扱いです。BFD3はオーソドックスなドラム録音環境で収録されていてそれらをマルチアウトで出力できます。AUの場合とVSTによって出力の仕方がことなりますが、基本、キック、スネア、ハイハット、タム、シンバル、などのアンビエンス以外のパートをすべてモノラルで出力できます。
Logicの出力選択画面より
しかしMODO DRUMにはモノラルアウトという概念がなく、マルチアウトはすべてステレオチャンネルで出力されます。
MODO DRUM出力選択画面より
これはドラム音源を扱う人にとってあまりよい出力とは言えません。なぜならば書き出しをした場合、必要に応じてステレオ音源をモノラルにしなければいけないからです。一人でミキシングするのであればまだ良いかもしれませんが、外部委託する場合、ドラムがすべてステレオ音源であるのは、エンジニアからすると「モノラルにして…」といいたくなります。
なぜこの仕様なのか、今後のアップデートで改善されるのかわかりませんが、改善されることを祈るばかりです。
初めて見たときなんでこの仕様なの???って思った。マルチアウトでキックやスネアをステレオ出力させることになんの意味があるんだーここが改善されればMODO DRUMはかなり使いたい人出てくると思う
拡張音源について
BFD3の良さはその拡張音源にあります。ジャンルに分かれて販売しているドラム音源のクオリティはどれも素晴らしく、使いやすいものばかりです。しかし一つ一つの拡張音源は高いので買うことに躊躇してしまう場合があります。
しかしMODO DRUMの場合はパラメーターがすべてなので、データによる拡張音源が販売されるのかもしれませんし、またはアップデートによって増える可能性もあります。
またプログラムベースで音がよくなるので進化するたびにさらに高音質になる可能性もあります。
サンプル MODO DRUM
サンプル BFD3
リアルさで言えばBFD3です。ただ、録音時のマイクの立て方であったり使うマイクであったりして好みの音でないものに関してはそこからどうしようもないのがサンプルドラムの長所でもあり短所でもあります。
MODO DRUMにはまだモデリング感がありますが、使い込んでいるとそれほど気にならなくなってきます。
MODO DRUMを使ってリアルなドラムを打ち込むためには?
MODO DRUMに限らずリアルでかっこいいドラムの打ち込みに必要なのは「ベロシティ」「タイミング」「デュレーション」「空気感」この4つになります。通常ドラムの打ち込みでデュレーション(音の長さ)を意識して打ち込む人は少ないです。
なぜならドラムやパーカッションといった打楽器はすぐに音が減衰して消えるからです。しかし、ドラムは奏法によって音の長さをコントロールできます。それがグルーヴに大きな影響を与えます。その長さであるデュレーションは効果なドラム音源になればなるほど細かい調整ができます。
今回紹介したMOOD DRUMはまさにデュレーションを細かく調整できるドラム音源です。
そして多くの人が意識しているベロシティについては、考えずに100 50 80 50と言った数値も意味を理解しないとまったく役に立ちません。これをまずその数値で打ち込んだものがどういう効果をあらわしているかを意識的に耳を傾けないと、そこにリアルさはなく。ベタ打ち(一定の数値で打ち込むこと)より機械的に聞こえてしまいます。
これらの打ち込みの方法についてはこちらの記事でより深く解説しているので気になる人は参考にしてください。
もちろん「タイミング」や「空気感」についても詳しく説明しています。
BFD3の音作りの要とも言えるくらい空気感の再現は素晴らし。でもそれゆえに複雑なアンビエンスの調整ができてしまうので、どこまでコントロールするか迷う人もいると思う。基本はOHと音作りをして空気感の強調はROOMでやるのが良い
MODO DRUMとBFD3の値段差
MODO DRUMは公式では
実勢価格 56,000円(税別)
クロスグレード版実勢価格 43,000円(税別)
という価格ですが、現在18,400円というセールをやっています。
一方BFD3はダウンロード版で22,000円というのが現在一番安い価格のように思います。
これってぶっちゃけ買いなの?って思うよね。実のところMODO DRUMは世間の評判はあまり良くない。でも可能性の詰まったドラム音源であることは間違いなし、そもそもフルカスタマイズできるってのが最大の魅力、個性を追求したいならMODO DRUMは決して悪い音源じゃないと思う
MODO DRUMはBFD3よりすごいの?
MODO DRUMとサンプルドラム音源を比べると「MODO DRUMは〇〇の代わりになる?」という声をよくききますが、そもそも現状の物理音源はサンプル音源の代わりになるシロモノのではありません。やはりマイクを通しての鳴り方や音の密度はサンプルドラム音源の方が瞬間的な音の良さは上です。
ですが、物理音源はそもそも出音のクオリティではなく、サンプルの切り替えを必要としない連続した音の自然さが強みです。ドラムのような1ショットのインパクが強い音源に関しては残念ながらその強みを活かすことはまだ難しいと感じます。しかし、だからといってMODO DRUMが使えないということはありません。
ドラムの打面の位置の僅かな違いによる音色の差などはプレイヤビリティに強いタイプの音源なので、その違いを分かる人にとってはサンプルドラムよりしっくりくる音源です。
打ち込みで使うのもいいですが、電子ドラム系の拡張音源として使うなどがこの音源の本領発揮するところでは?と思います。
まとめ
しっかりとした音でリズム隊がなることで曲のクオリティが大幅に上がります。しっくりこなかった曲でもドラム音源変えただけで見違えるほどです。
どちらが良いのか?ではなくこれらを使ってどんな音楽を作りたいか?という目的から逆算して選ぶと、決めやすいように思いますが、どちらも長所短所はありながら素晴らしいドラム音源です。
ここがポイントになると思います。
最初から出来る人はいません。どちらも難しいからと言って「初心者には無理」と思わずに気になった方を購入するとよいでしょう。
モデリングドラムとして今後MODO DRUMがどのような進化をはかるのか、そろそろ出てきてもよいBFD4がどんな進化を遂げるのか、色々と楽しみはつきません。