曲を華やかに彩るストリングス、そのストリングスにはPizzicato(ピチカート)という奏法がありますが、知らずに使うと演奏できないフレーズを作ってしまいうことがあります。
「DTMなんだから自由にやらせてよー」
という声もあるでしょう。
実際そのとおりです。DTMは自由でなければいけません。しかし、自由だから何をやってもいいのではなく、自由にするためにもちょっとした知識を知るか知らないかで。その自由が高度な表現としての自由なのか、ただの無知なのか?によって曲の説得力は変わります。
せっかく自由に曲をつくるのであれば、知った上でやるほうがクールじゃないですか?
「でも、そのピチカートの打ち込みのちょっとした知識って何?」ってなると思います、この記事で解説するポイントは次の2点です。
ピチカートの譜割りとテンポ
ピチカートの音色の使い方
ガチガチに解説するわけではないので、あくまで「そういう見方もできるってことね」くらいの参考程度にお読みいただければ嬉しいです。
でも、この僅かな話でも知っているかどうかで曲作りは変わってきますよ。
ストリングスPizzicato(ピチカート)とは
バイオリンの弦を指で弾いて音を出す奏法のことをPizzicato(ピチカート)といいます。ピチカートはイタリア語で、楽譜上では「Pizz」書かれます。発音的に「ピッツィカート」呼ばれることもあるみたいですが、ピチカートが一般的です。
ちなみに弓を使って演奏する場合はArcoといいます。楽譜的にPizzの後にArcoと書かれていな限りはずっとピチカートになります。
ピチカートで有名な曲は色々とありますが、ラヴェル:弦楽四重奏曲より第2楽章はピチカートがメインで演奏されているのでわかりやすいと思います。
一時期流行ったEnyaのOrinoco Flowはエンヤのコーラスと、Pizzicatoだけで作られている曲です。
しかし、このピチカートは生楽器ではなくROLAND D50のプリセット44版と言われています。ただ、そのまま使っているのはなく、オクターブレイヤーしているようにも感じます。
またDAW付属のソフトにもだいたいピチカートの音は入っているので「有料の音源を買わないと…」というほどのものではありません。(D50のPizzicatoは特別です)
ストリングスPizzicato(ピチカート)の音色の特徴
ピチカートはバイオリンやビオラ、その他のストリングスを単体で鳴らした場合と、複数のバイオリン等でなった場合とで音色が異なります。
その理由は、発音するタイミングが異なるため、よくも悪くも音がバラけてしまいます。
サンプルデモ
前半2小節ではバイオリンソロによるピチカート、後半は70人編成のストリングスのピチカートです。
ストリングスPizzicato(ピチカート)のメリット
ピチカートは強弱によって硬い音とから丸い音まで出せますが、短い音色のためその短さを生かした演出で使われることが多いです。
ヴィバルティの四季では雨が落ちる音をピチカートで表現しています。
また、一昔前のアニソンですが、榊原ゆいさんのにゃんだふるのイントロにもPizzicatoが多用されています。
短かいながらもかわいい音なので、アニメサントラ等やかわいい演出系でもよく使われる音色です。
また、マリンバやシロフォン(木琴)グロッケン(鉄琴)とレイヤーして使うことも多いです。
短く来れる音をEDM界隈ではPluck音と呼ばれたりしますが、実際にピチカートもつまんで弾くわけですからPluck音と定義しても問題はありません(あくまで定義的な話ですが…)
ストリングスPizzicato(ピチカート)の打ち込み注意点
弦を指ではじくため弓を使った演奏よりも遅くなってしまいます。
そのため超高速なピチカートの打ち込みは演奏者が対応しきれいない場合があります。ではどのくらいまでの速さなら人が演奏できるのかこれについて、調べていると知恵袋で次のような記述を見かけました。
ゴジラの曲を作った伊良部昭さんの「管弦楽法」によるとBPM104の16分音符が限界ということらしいです。
この件についてツイートしたところRe-n(リン)@michihiro_nさんが次のようなことを教えてくださいました。
バイオリンのピチカートの速さの限界となると
— Re-n(リン) (@michihiro_n) November 16, 2021
演奏できるって意味では32分音符の間違いじゃないかな?…と…(・ω|壁
打ち込むとなると音源の性能に依存するんじゃないかな?と
ちなみにベースの師匠、普段の演奏仕事じゃ隠してるのですけども実はウッドベースでものすごい速弾き出来ちゃいます…
32分音符????ドラムンベースか何かですか?ってかそんなに速く弦を弾くことなんて可能なんだろうか?と思いましたが次の動画を見て納得です。
従来のピチカートとではない奏法ですが、この弾き方であれば、32分音符も可能です。つまりDTMで打ち込むときにはこの例を持ち正せば、「BPM104 16分音符」という縛りは必要なくなるという見方もできます。
ただこの譜割りを何十人編成のストリングスでやろうものならよほどの正確性が無い限り、ごちゃごちゃとしてももになるだけと思われます。
さらに芋濯 猿太郎@imoaraisarutaroさんから補足説明をいただきました。
実際のその本の中身です。ベストアンサーも32分音符も正解です! pic.twitter.com/WXyWzlw0kk
— 芋濯 猿太郎 (@imoaraisarutaro) November 16, 2021
時代とともに奏法も考え方も当然変わってくるわけなので、必ずしもピチカートは「BPM104 16分音符」という考え方は必要ありません。
そもそも、クラシックを再現及び人の手で演奏されることを前提としていない場合はこれらを厳密に守る必要はありません。ドラムの打ち込みでハイハットとスネアが同時になってもハイハットとクラッシュシンバルが同時になっても「聴いて問題なければオールオッケー」なわけです。
しかしピチカートを従来の鳴らし方をするような曲を作る場合、やはり知っておくに越したことはないでしょう。
ストリングスPizzicato(ピチカート)の打ち込み注意点
DAW付属の音源やマルチ音源に入っているピチカートの音色はおそらくバイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスが一緒に演奏したものです。
ポップスなどで使う場合はとくに気にする必要はありませんが、オーケストラや人数感をしっかりとコントロールしたい場合にドミソという3音をそのピチカートで鳴らすと実はよろしくないことが置きます。
それは例えばバイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスの4人でピチカートをなした場合、当然4つの音がなることになります。それがC3のドの音なわけです。しかし、これにミの音がたされるとと、4+4、になり、ソまで足すと、4+4+4=12の音がなることになります。
4人しか奏者はいないのに、12音がなるというのはおかしなことです。なのでもし人数感を合わせるのであれば、バイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスをトラックを分けてそれぞれ1音ずつ発音させると現実の人数感の響きに近くなります。
まとめ
今までピチカートは自分がバイオリンを持って動く指の速度の1.5倍くらいまでならバイオリニストに演奏をお願いするとなっても大丈夫だろうという気持ちで打ち込んできましたが、新しいピチカート奏法を見たことで少し価値観が変わりました。
Yugo(Yugoの不思議な国♪)@YugoWonderlandさんもおっしゃっていますが、譜面を書く人に限らず、生楽器は触った方がいいですね。
実際やってみると、速いのが続くと結構右手しんどいので、譜面書く人はやっぱり一度本物触ってみるべきだと思います_(:3 」∠)_
— Yugo(Yugoの不思議な国♪) (@YugoWonderland) November 16, 2021
ピチカートの奏法とテンポをしっかりと理解し、一歩踏み込んだ知識を身に着けてDTM打ち込みに役立ててください。