ArturiaからOB-XaをモデリングしたOB-Xa Vがリリースされました。OB-Xaといえばヴァン・ヘイレンのJumpで使われたシンセブラスで有名になりました。ということで今日はシンセレビューではなく シンセブラスを使った名曲を募集したいと思います。
シンセブラスってどんな音?
シンセブラスとはもともと、アナログシンセのオシレーターであるSaw波形を使って作られた音色です。基本的には明るく倍音を多く含んだ音なので、バンドの中でも音抜けがよく、80年代にはシンセブラスとギターによるサウンドを耳にすることができました。
有名なところではヴァン・ヘイレンのJUMPですね
シンセブラスの使い方
同じ音であっても「それってシンセブラスなの?」という疑問を持っている人も多いと思います。ではどこからがシンセブラスでどこからがシンセブラスではないのか?というところを考えてみたいと思います。
まずシンセブラスという音色名からもわかるように基本的には「生のブラス」のシミュレーションであるのが前提とみるべきでしょう。
出音のアクの強さがシンセブラスの醍醐味!
ブラスサウンドの特徴は色々とありますが、その中でもいかにも「これぞシンセブラス」といえる特徴は出音のアクの強さの再現です。そもそもアナログシンセのオシレーターで「生」を再現することは不可能です。そのために多少大げさなくらいにその要素を強調する方が聞く人に「らしさ」を伝えることができます。
漫画でいうところの現実世界にはありえないパースであったり、カット割りであったりでしょう。つまり音の作り込みに「演出」をかけることでよりわかりやすくするということです。
それが出音のアクの強さです。
出音のアクの強さはピッチの揺らすことでそれらしさが出てきます。以下の記事ではピッチを揺らした時の質感が良い意味でわざとらしいソフト音源を紹介していますが、他のソフトシンセでもピッチをLFOでいじれるならば再現は可能です。
ウォームでパッド的なシンセブラスも美味しい
シンセパッドという言葉や音色を聴いたことがある人は多いかもしれませんが、使われかたは「間を埋める」です。つまりシンセブラスという音色である必要はなく「シンセストリングス」であってもよいわけです。あえて言うならば白玉としての機能がきちんと役割を果たしているかどうかが重要です。全音符であるのにすぐに減衰してしまうような音色はパッドとしての用途ではなくなります。
しかし、間を埋めるという言葉を周波数帯域で考えると高域ではなく中域を示していることが多いです。なぜならば、メロディを目立たせるための存在としての役割がパッドに求められているからです。
アナログシンセによるシンセストリングスなどは中域が少ないためにウォームなパッドという印象にはなりにくい傾向になります。
ではあえてシンセブラスをパッド的に扱う場合はどうすればよいのか?これは時代によってかわりますが、フィルターによって倍音を削ったシンセブラスを使うことが多いです。
イメージとしてはホルンのような丸い音色です。また、アタックを遅くすることより柔らかい音色にできます。
これらを踏まえながら中域を埋めることがシンセブラスをパッド的に使うという感覚になります。
最近ではSuperSawのような派手な波形をパッド的に使う場合もあります。
リズム的な役割
シンセブラスの特徴は生のブラス同様にリズムのキレに特徴があります。より派手にリズムを刻むことで派手でゴージャスな印象を曲に与えることができます。この場合は派手で明るいSAW波形を使うのが一般的ですが、曲によってはウォームで丸いシンセブラスでリズムを作ることもあります。
では、お待ちかねシンセブラスソングのランキング結果にいきたいと思います。
同一曲がないために募集されたすべての曲を表示してみたいと思います。
あなたがオススメするシンセブラスを使われている曲名(曲名/アーティスト名)
What is love? / Howard Jones
What is love? / Howard Jones(1983年)
ウォームなシンセブラスからキレのあるシンセブラスまで聞かせくれています。
このときに使われていたのは殆どがDX7のプリセットという話。しかし、それでも音色のポテンシャルを引き出した素晴らしい曲です。
シンセ今と昔 : 80年代後半〜現代、デジタル・モデリング〜アナログの復活
fripside, LEVEL5-Judgelight(2010年)
fripSideのLEVEL5-judgelight-はTVアニメ『とある科学の超電磁砲』新OPテーマです。フィルターを少し閉じてピッチにLFOでアクを付けたブラスサウンドが特徴的です。
おそらくソフトシンセだとは思うのですが、SatさんはAccess Indigo2が好きなのでハイブリッド的な音作りをしている可能性もあります。
jump/van helen
最初にもお伝えしていますが、シンセブラスといえばこれ!ですね。多くを語る必要はとくにない名曲です。
パワーオブラブ ヒューイルイス&ザ・ニュース(1985年)
最近の金曜ロードショーでBACK TO THE FUTREを見て耳にした人も多いかもしれません。
シンセに関してはファンの間では「OberheimのMatrix12かOB-Xa」ではないかと言われています。どちらにしてもOberheimらしいアツいブラスサウンドですね。
Don’t wanna fall in love / Jane Child(1990年)
PVではフェアライトが使用されています。フェアライトによるサンプリングによって作られている可能性が高いです。
肉厚的でありながらもどこかローbitの雰囲気があるシンセブラスが魅力的です。
Africa / TOTO(1982年)
ウォームで密度の濃いシンセブラスサウンドを堪能できます。キレがよいだけがシンセブラスではないのがこの曲の特徴です。
このシンセブラスはYAMAH CS-80によって作られています。
Lucky Star / Madonna(1983年)
ところどころにモジュレーションを効かせたブラスサウンドが特徴的な曲です。シンセの特定はできませんが、個人的にはRolandのJupiter-8のような気もしています。
岸田教団&The明星ロケッツ, 希望の歌(2017年)
若干フィルターを閉じた雰囲気があるSuperSawサウンドです。はでなリズムと音色が特徴的です。おそらくソフトシンセだとは思いますが、この系のブラスサウンドであれば、MassiveやSerumなどのソフトシンセで再現は可能だと思われます。
フォルテシモ/ハウンドドッグ(1985年)
熱くて爽やかなロックサウンド!Jump!的なシンセブラスのリフで始まるハウンドドッグの名曲です。レコーディングで使われているシンセは特定できませんが、
当時のライブ映像からはKorgのPolySixでブラスサウンドを奏でています。
テイク・オン・ミー aha(1985年)
クールでキュートなシンセ・ポップといえばこれですね。この音色をシンセブラスと言っていいのか?と言われると「違うだろ?」と思うかもしれませんが、ここにシンセブラス的な思いを見出した気持ちは理解できます。ライブ映像でも確認できますが、おそらくDX7ですね。いかにもデジタルチェックなサウンドです。
Call me / Go West(1985年)
派手なブラスサウンドにディレイサウンドがくせになる曲です。FM音源とアナログの雰囲気を感じるのでレイヤー的な音作りなのかもしれません。
Only Time Will Tell / Asia(1982年)
なく子も黙るAsiaです。大げさなアレンジが“商業的”と言われてもそれが許されてしまうのがAsiaです。この曲で使われているシンセブラスはおそらくDX7だと思われます。
Controversy / Prince(1981年)
キャッチーなリフが印象的な曲です。ブラスサウンドはOberheimのOB-X 太く、明るいサウンドは80年代のアメリカサウンドの象徴とも言えます。
玉置成実, Reason(2004年)
デジタルサウンド全開のSuperSawブラスサウンドが特徴的です。SuperSaw系の音とアニソンの相性は抜群です。しかしブラス特有の出音の癖などはなくPluck的なサウンドとして使われることが多いですね。コードでシーケンス的なリズムを刻むアレンジが一気に流行りだしたときのような気もしています。
runaway/Bonjovi(1984年)
ブラスというよりはPluck音としての印象が強い曲です。この時代シンセとギターの棲み分け方が個性となっていました。
まとめ
シンセブラスについて多くの人が「こんな曲もあるよ!」「これとか知ってる?」「これってシンセブラス?」みたいな感じでシンセブラスについて語り合うきっかけの1つになれたらと思いました。
個人的にはTMNetworkのSelf ContorlやYMOのBehind The Maskが入ってくるのかと思いましたが、意外に洋楽を多く楽しませてもらいました。シンセブラスサウンドは奥が深く作りごたえもあるシンセサウンドなのでみなさんも自分だけのシンセブラスサウンドを作り上げてみるのはいかがでしょうか?