音楽制作において、本格的な「プロのような音」を追求するためには、VSTプラグイン選びが非常に重要です。その中で、テープエミュレーションプラグインは、アナログの暖かみと特有のサチュレーションをデジタルな環境で再現するための大切なツールです。
テープエミュレーションプラグインは「アナログテープの特性」をデジタルな環境で再現するため、自然なサチュレーションや、厚みのあるサウンドを作り出すことができます。
プロのサウンドは多くのプラグインエフェクトによって作られていますが、その一端を担うのがテープエミュレーションプラグインです。つまりプロっぽい音の片鱗を感じることができるプラグインといえます。
テープエミュレーションプラグインも多くて選ぶの大変
今回も使っている中からおすすめを選んでみたよ!
今回も実際に私が仕事で使っている中から「音質、機能性、操作性、安定性、価格」などからバランスの取れたテープエミュレーションプラグインを6つ選んでみました。
今回もネット界隈での「おすすめテープエミュレーションプラグイン」とは少し違う経路のラインナップになっているので、「こういうのもあるのか!」という感じで楽しんでもらえたら嬉しいです。
最終的には好みで選ぶのがありですが、選んだ理由も読んでもらえると今後の選択の参考になります!
テープエミュレーションプラグインについて
テープエミュレーションプラグインは、レコーディングスタジオで使用されるアナログテープ機器をシミュレートする音楽制作用プラグインです。ここではテープエミュレーションの基礎的な知識やその種類について解説します。
テープエミュレーションプラグインの基礎知識
テープエミュレーションプラグインは、アナログテープレコーダーの特性を再現する音楽制作/ミックス・マスタリング用のプラグインです。
このプラグインは、DAW(Digital Audio Workstation)上で動作し、音声信号にアナログ的な特性を付加することで、デジタル録音では得られない自然で温かみのある音を作り出せます。
テープエミュレーションプラグインには、テープの速度や駆動音、ノイズなど、アナログテープの特性を再現する機能が備わっています。また、各プラグインによって異なるテープデッキやテープ自体のエミュレーションやサウンドカラーがあり、それらを組み合わせることで、自分だけのオリジナルサウンドを作り上げることができます。
テープエミュレーションプラグインの共通機能
テープエミュレーションプラグインそれぞれの共通的な特徴として、サチュレーション、モジュレーション、ノイズ、があり具体的には次のような意味合いになります。
効果 | 一般的な捉え方(解釈) | |
サチュレーション | アナログ的な歪み | 音の太さ |
モジュレーション | 音程の揺れ作る | レトロ感 |
ノイズ | テープに含まれるノイズ成分を再現 | テープの保存状態 |
コンプ | テープコンプレッションの再現 | 音の馴染み感 |
これら以外にはフィルターやイコライザー的なアプローチを施されていたり、出力段階にリミッターがあるものもありますが、基本的にテープエミュレーションプラグインはこれらの機能で成り立っているといえます。
また、テープエミュレーションプラグインの中には複数のテープを変更できるものや、特定のテープ(VHSテープ)サウンドにを特化したプラグインもあり、音質のバリエーションは多岐に渡ります。
テープエミュレーションプラグインは必要なのか?
結論から言えばなくても作編曲もミックス/マスタリングも可能です。しかし、テープエミュレーションプラグインを使うことでアナログ特有の飽和感/サチュレーション(ざっくり言うと僅かな音の歪み)によってサウンドの一体感(グルー感)が得られます。
その結果、テープエミュレーションプラグインを使ったミックスはユーザーにとってとても心地よいサウンドとなる傾向になります。
ただ、テープエミュレーションの効果はオーバードライブ等と比べると非常に歪みの変化が小さいため、必要以上に大きくするとダイナミクスや奥行き感がなくなり、良い結果が得られない可能性が高いです。
テープエミュレーションプラグインは絶妙な塩加減って感じ?
まさにそのとおり!
テープエミュレーションプラグインおすすめ6選
ここでは超個人的な好みでテープエミュレーションプラグインおすすめ5つを選んでみました。
定番人気度合い | プラグイン名 | メーカー |
4.5 | A800 Tape Recorder | | UAD Audio Plugins |
4 | Reelight PRO | Tone Empire |
3 | Reels | AudioThing |
3 | CASSETTE | wavesfactory |
3 | Super VHS | BABY AUDIO |
3 | TAPE | softube |
A800 Tape Recorder
ハイクオリティなプラグインエフェクトをDSPユニットで動作させることで確固たる地位を築いたUADのテープエミュレーションの一つがStuder A800 Tape Recorderです。
とにかく、アナログテープの高音質感を徹底的に再現したテープエミュレーションプラグインです。低域のモッチリ感や高域のほどよい質感などはクセになるサウンドです。
最近試使用し始めたばかりですが、多くのプロの高い評価が頷けます。ただ、価格面ではブランドバリューもあってコストパフォーマンスが決してよい製品ではありませんが本気のテープエミュレーションを求めているのならば決して高いものでもないと言えます。
Reelight PRO
音質 | 4.5 |
機能性 | 4 |
操作性 | 4.5 |
安定性(CPU負荷) | 3.5 |
価格 | 4 |
総合評価 | 4.1 |
個人的に将来IK Multimediaのようなデベロッパーになると思っているTone Empireが作ったテープエミュレーションプラグインそれがReelight PROです。Reelight PROは6種類のテープタイプをサウンドをはじめ、フィルターやCOMP、BIASなどの機能でテープサウンドを作り込みます。
テープエミュレーションを使うとその多くは「低域がふくよかになった」といったサウンドになりがちです。しかしReelight PROはそこまで低音のプッシュ感がなく、全体の音の解像度を保ちながらテープ特有のサチュレーションを得られます。
その解像度感は手元にある他のテープエミュレーションプラグインでは得られない雰囲気があり、私は好んでReelight PROを使用しています。
Reels
音質 | 4 |
機能性(オリジナル性) | 4 |
操作性(使いやすさ) | 3.5 |
安定性(CPU負荷) | 4 |
価格 | 4 |
総合評価 | 3.9 |
AudioThing REELSは究極のレトロLo-Fiサウンドを作り出せるプラグインです。そのサウンドは荒く、雑味が多く、これぞ本当のレトロLo-Fiサウンドといえます。
その他にもテープディレイやモジュレーション効果、テープストップサウンド(速度調整可)などの機能もあります。
他のメーカーのレトロLo-Fiサウンドプラグインを試してもしっくりこない人におすすめです。
CASSETTE
音質 | 4 |
機能性(オリジナル性) | 4 |
操作性(使いやすさ) | 3.5 |
安定性(CPU負荷) | 4 |
価格 | 3.5 |
総合評価 | 3.8 |
wavesfactory Cassetteはオープンリールではなくカセットテープとデッキをエミュレートしています。Lo-FiでもなければHi-Fiでもなく、その中間に位置するこのプラグインは3つのテープデッキと4つのカセットタイプをエミュレーションしています。
とにかくカセットリアルタイム世代には懐かしいサウンドで。その音質にはがむしゃらだったあの頃の自分にタイムスリップさせてくれそうな雰囲気すらあります。
とにかく、テープ特有のザラつき、サチュレーション感、などアナログテープとはまた違う音質が得られるため使い分けは十分可能です。
Super VHS
音質 | 3.5 |
機能性(オリジナル性) | 3.5 |
操作性(使いやすさ) | 3.5 |
安定性(CPU負荷) | 2.5 |
価格 | 4 |
総合評価 | 3.4 |
BABY AUDIO Super VHSはビデオカセットの企画であるVHSテープのサウンドをエミュレートしています。
機能としてはサチュレーション、リバーブ、ダークコーラス、LFO、ノイズオシレーター、ビットクラッシャーをうまくまとめたプラグインですが、得られるサウンドのレトロ感はアナログテープでもなく、カセットテープでもない、少しHi-Fiよりな空気感をもったレLo-Fiサウンドであり海外のヒップホップクリエイターに人気があります。
トラックにふわっとした雰囲気を与えたい場合はこれで解決することが多いでしょう。
TAPE
クオリティの高いプラグインをリリースしているSoftubeのテープエミュレーションプラグインTAPEはシンプル操作性に美しいGUIが特徴です。UADのような高級感にせまりながらUADより価格が抑えられているので、品質が確保されたテープエミュレーションプラグインを求めている場合はTAPEがおすすめです。
テープエミュレーションプラグインの選び方のコツ
テープエミュレーションプラグインの選び方のコツは目的、価格、操作性、を基準に選びます。
エフェクティブに使うか、音質調整につかうか?
テープエミュレーションの目的は2つあり、一つは音にアナログ的な質感を与えるもの、もう一つはエフェクティブな効果です。テープサウンドは使い方によってモジュレーションエフェクト的なサウンドにもなります。
アナログ的な質感 | サチュレーションやテープコンプ |
テープエフェクト | テープ再生時やテープストップ時のサウンドを再現 |
つまりミックス時におけるトラックの存在感を調整したい(飽和感やサチュレーション、テープコンプ)という場合とテープエフェクトを求める場合では使い方が異なります。
テープエミュレーションプラグインによっては質感調整しかできないものもあるので、もしテープストップ的なエフェクト効果が欲しい場合は、その機能が搭載されているかどうかを調べる必要があります。
価格面における音質差
テープエミュレーションプラグインは価格帯が広いプラグインです。安いものであれば数千円、高いものになると一つ数万円となるものもあります。
価格帯の違いは機能性やブランドによっても異なります。
「高いものは良いものである」という考え方は間違いではありませんが、それが必ずしも自分にあったものになるかはまた別の話です。
なので、その音質が自分にあったものかをしっかりと見極める必要があります。方法としては、使用者によるレビュー記事や動画を参考にしたり、またメーカーによっては体験版をリリースしている場合もあるのでそれを参考にしてみるのが良いです。
セールで安くなってるから買う!
セール時に安くなっているから買っておこう!という気持ちは否定しませんが、やはり購入前にしっかりとした情報収集はおすすめです!!
テープエミュレーションプラグインの使い方
DAWにテープエミュレーションプラグインを導入する方法
DAWにテープエミュレーションプラグインを導入する方法 は他のプラグイン同様インストーラーを使ってインストールします。複雑な手順は特にありませんが、アクティベーションの方法がメーカーによって異なります。
多くのメーカーはシリアル(購入時に表示された英数字の羅列の文字)認証方式を採用しており、インストール後、DAWでプラグインを起動するとシリアル番号の入力が求められます。そのため、購入サイトに表示されたシリアル番号をコピーして貼り付けるだけで認証が完了します。
また、iLokアカウント認証が必要な場合は、iLokアカウントを作成する必要があります。昔は物理的なUSBキーと呼ばれるものが必要でしたが、現在ではクラウド認証(ネット上での認証)が可能になったため、物理キーは必要ありません。
テープエミュレーションプラグインを使い方のコツ
テープエミュレーションプラグインの効果はテープコンプレッションの再現、サチュレーションの度合い。テープ特有の音の揺れなどになり、どの効果を一番使いたいのかによって使用方法が変わります。
楽曲全体にテープの温かみを加えたい | マスターアウト |
テープコンプのGlue感でトラックをまとめたい | グループアウト |
特定のトラックにテープコンプ及びサチュレーションを加えたい | 任意のトラック |
特定のトラックにレトロな雰囲気を与えたい | 任意のトラック |
例えば、楽曲全体にテープ特有の温かみ的な成分が欲しい場合はマスターアウトに使うのがよいでしょう。ただマスターアウトにテープ特有のゆらぎを加える目的でテープエミュレーションを使う場合は音量差でマスターコンプがうまく作動できない場合があるのでその処理には注意が必要です。
テープエミュレーションプラグイン関するFAQ
- テープエミュレーションプラグインとは何ですか?
-
テープエミュレーションプラグインは、デジタルオーディオワークステーション(DAW)やオーディオエフェクトの一部として使用されるソフトウェアツールで、アナログテープレコーダーの特性やサウンドを再現します。
- テープエミュレーションプラグインを使用するとどのような効果が得られますか?
-
テープエミュレーションプラグインは、音声や楽器の録音に暖かみや厚み、サチュレーション、ダイナミクスの変化を追加することができます。これにより、アナログ的なサウンドやビンテージ
感を再現することができます。
- テープエミュレーションプラグインはどのように使用しますか?
-
テープエミュレーションプラグインは、通常、DAW上でエフェクトとして使用されます。オーディオトラックやミキシングバスにプラグインを追加し、適切な設定を調整することで、希望するテープサウンドを作り出すことができます。
- テープエミュレーションプラグインの設定にはどのようなパラメータがありますか?
-
パラメータはプラグインによって異なる場合がありますが、一般的なパラメータには、テープの種類(エミュレートするテープのモデル)、ノイズレベル、サチュレーションの量、ヘッドボビンの位置、ワウフラッターなどがあります。
- テープエミュレーションプラグインはどのようなジャンルの音楽制作に適していますか?
-
テープエミュレーションプラグインはジャンルを選びませんが、トラック数が少ないジャンル(バラード、R&B,ヒップホップ、ロックなどはよりその効果がわかりやすいです。
まとめ
定番人気度合い | プラグイン名 | メーカー |
4.5 | A800 Tape Recorder | | UAD Audio Plugins |
4 | Reelight PRO | Tone Empire |
3 | Reels | AudioThing |
3 | CASSETTE | wavesfactory |
3 | Super VHS | BABY AUDIO |
3 | TAPE | softube |
テープエミュレーションプラグインを選ぶときに大切にしたいのは、再現性も重要ですが、やはり好みの音質になるかどうかです。そしてエフェクティブ(汚し系)で選ぶか、音圧的アプローチ(サチュレーション)になるでしょう。
この系のプラグインは「使える使えない」の論点で語るよりは楽しむべきものだと思っています。なので、みなさんもどれが一番自分のモチベーション向上につながるか?という視点から選んでみるのがおすすめです。
そしていくつか試していくうちに、適材適所の使い方や「これなしでは自分のミックスは成り立たない」というものに出会えるようになります。