DTMでトラックはいっぱいあった方がいいけれど、どれくらいがいいのかわからない!。トラックが少ないから増やし方を知りたいという人は多いです。プロの曲ではDAWに何百というトラックを使って作曲しているを見ると憧れますよね。
DTMのトラック数いっぱいにしてやったぞ!
多いだけじゃ駄目!
しっかりとコントロールできるようにならないと!
私も過去に「多いのは正義!」と思ってポップスで無駄に200トラックくらい使ったことがありましたが…無駄に終わりました。
結論から言えば無駄に多いトラックの曲よりしっかりとトラックをコントロールできている12トラック程度の曲の方がクオリティが高いです。
ではクオリティの高いトラックコントロールをするためには何が必要なのか?
この記事ではDTM(作曲)で使用するトラックの割合や、なぜそんなにトラックが必要なのか?ということについてお話したいと思います。
DTMトラックとは
DAWで扱えるエフェクトやソフト音源も含んだすべてのチャンネルをトラックと呼びます。この場合上記の画像の1つのチャンネルがいくつ並んでいるかによってトラック数が決まります。
録音媒体に録音されている音楽信号の数のことをトラック数といいます。例えば、一般的に聴く音楽はLとRの2つのチャンネルから成り立つのでトラック数は「2」になります。
またモノラルの場合は信号は1しかないので「1トラック」になります。
映画などでは5.1ch(前方正面、左右、背面左右、ウーファー)の6つの信号を独立して再生するのでこの場合6トラックの音楽信号を独立して扱っていることになります。
DAWによってはステレオはステレオトラックとしてまとめられているので1トラックのように見えるかもしれませんが、ここでは厳密な意味でのトラック数としてカウントし解説します。
まとめるとトラックとチャンネルは同義語であり、複数のトラックのことをマルチトラック、マルチチャンネル、といいます。音響的には「5.1チャンネルサラウンド」という言い方がわりと一般的になっています。
ちなみにDTMのトラックは各DAWによって異なります。
オーディオ トラック | インストトラック (ソフト音源) | MIDI トラック | |
Logic Pro | 最大1,000 | 最大1,000 | 最大1,000 |
Cubase(Pro) | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
Pro tools(Studio) | 512 | 512 | 1,024 |
Ableton Live(Standard) | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
Studio One | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
FL Studio | 500 | 500 | 500 |
Digital Performer | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
プロ御用達のProtoolsで512という数字なので、それ以外の無制限というのはあまり意味がないような気もしています。
楽器の組み合わせによるトラック数
ドラムのトラック数
ポップスの録音においては、マルチトラックによる制作はわりと基本的な方法です。ここではマイク1本で収録されたトラックが1トラックとなるのでドラムのような複数のマイクで収録する場合複数のトラックが必要になります。
この場合ドラムだけで12トラックが必要になります。
DAWの付属音源ではこれらをステレオでまとめられているものが多いですが、こだわる人はそれらをすべてバラバラのトラックにします。これを「ドラムトラック分け」といいます。こうすることでパーツ単体の音の作り込みとバランスが容易になり、クオリティアップにつながります。
Logic Proの場合はリージョンをクリックして変換からノートピッチで分割するとかんたんにトラックわけができるよ
DTMで使うドラム音源もこのようにパーツ毎のマイクをトラックとして見立てることができるので、ドラムサウンドにこだわる人はドラムだけで12トラックほど使うことも珍しくはありません。
複数のビートを重ね合わせる
最近は通常のドラムパターンに複数のパターンを重ねてグルーヴを作っていくことが多いですが、そこに意味がなければただ単に余計な音が増えただけになってしまいます。リズムの音が増えることで「なんかかっこよく感じる」と思った人は多いと思います。それはリズムの音色が複雑になればなるほどビートが派手になるこれも色彩感によることの演出がかっこいいという印象につながっています。
よくある話でその曲のビートは8ビートで良いのに「隠し味」として16ビートのリズムを入れる当然ノリが細かくなることによるメリットは生まれますが、そのノリがその曲に必要なのかどうかをジャッジできる耳とセンスがないと無駄なトラックを増やすだけになってしまう可能性は高いです。
「隙間があれば音を入れる」これは思っている以上に高等テクニックです。「空いているから入れる」のではなく「そこが空いているのには意味がある」という意識を持ち合わせた方が楽曲のクオリティは高くなります。
ギターのトラック数
ギターを2本使えば、当然それだけでトラックスは2つ使うことになります。同じフレーズを弾くことで音に厚みと広がりを与える「ダブリング」という技術の他に最近では4回重ねる方法もありこれだと4トラック使用します。
また、Aメロではクリーン、Bメロではクランチ系のカッティング、サビでは派手に歪んだディストーションなど展開毎に音色を切り替える場合はそれぞれ、別のトラックに録音していくので、ギターだけで10トラック以上必要とするケースもあります。
ベースのトラック数
ベースの場合1オクターブ下にサブベースという形で音を補強するトラックを入れることも多いですし、スラップやフィンガーなどでトラックを分ける人もいるので、トラック数的には1~4トラックぐらい使うこともあります。
ピアノ及びシンセのトラック数
ピアノはLとRのステレオで言えば2トラックですが、最近ではマイクの本数だけトラックを分けるピアノ音源もあります。私が使用するPianoteqは最大で6ステレオ出力が可能なので、トラック数で言えば6トラックにもなります。
シンセパートに関しては、レイヤー(音を重ねて音を作る方法)の数だけトラックが必要になります。また楽器パートだけではなく、アニソン等の場合は効果音的な音色が使われるケースもあるので、それらのパートをすべて個別のトラックにしていくとかなりのトラック数になります。
通常はxpand!21トラックに4つの音が入っているのでこれならトラックは一つしか使わないですみます。しかし、音量のコントロールやその個別をより細かくコントロールエディットするためにこれらを別々にDAWに立ち上げることでトラック数が増えていきます。
具体的なトラック数はプロジェクトによって変わってきますが、プロのシンセやピアノ類のトラックで30くらい使う人もいます。
ボーカルのトラック数
メインのボーカルだけで考えると1トラックになりますが、これもパート毎に録音を分けることがあり、その場合A,B,サビ、それぞれに1トラック。そこにダブリングを入れるとその数だけ増えることになります。
とくにサビではダブリングは何回も行われるケースもあり、サビのメインメロとダブリングに10トラックそこに、ハモリトラックが入ってきた場合、ボーカルトラックのサビだけで20トラックくらい使うケースもよくあります。
DTMで作曲する場合、最大で何千というトラックを扱うことが可能になります。このような複数のトラックをDTMでは「マルチトラック」という言葉を使います。
また映画やドラマなどで「サウンドトラック」と呼ばれるのは、映像トラックとは別に音声信号のみが記録されたトラックのことをいいます。
エフェクトのトラック数
最近ではリバーブトラックをインストラック(ボーカルやギタートラック)に直接挿して使うケースが増えていますが、リバーブやバスにまとめたトラックなどでもトラック数は変わってきます。
オーケストラのトラック数について
オーケストラの楽器編成を使って曲を作る場合は個別の楽器を使いたいだけトラック数が増える形になります。歌もので使われるようなチェンバーストリングスタイプであれば次の楽器の数が一般的です。
- ヴァイオリン1st
- ヴァイオリン2nd
- ビオラ
- チェロ
総合音源ではこれらをひとまとめにした「ストリングス」という音色になっていることがありますが、これらの編成にはそれぞれ演奏者の人数が決まっているため、マルチ音源の中にあるストリングスを普通にドミソと抑えてしまうと、チェンバー的な音色数を超えてしまうことになります。
そのため、楽器毎にトラックをわける必要があるので最低でも8トラック(ステレオ4トラック)にする必要があります。
編成が多いオーケストラになると、すべての楽器に1トラック使ったとした場合40~60トラック、アーティキュレーション(奏法)によって分ける人もます。そうなると120~160トラックほど使う場合もあります。
オーケストレーション打ち込みのコツは奏法も大事ですが、音の重ね方(レイヤー)が特に重要です。オーケストラは音が美しく響くための理論によって成り立っているので、そのあたりについて無視はできません。
レイヤーに関しては以下の記事が参考になります。
ここまでで説明したトラック数をまとめると
ドラム | 12~16トラック |
ギター | 2~10トラック |
ベース | 1~4トラック |
ピアノ/シンセ | 10~30トラック |
ストリングス | 8トラック |
ボーカル | 3~20トラック |
オーケストラ | (40~160トラック) |
合計 | 36トラック~124トラック(オーケストラを除く) |
あとはこれらをバスチャンネルにまとめていくことで、トラック管理と質感のコントロールがやりやすくなります。
dtm プロはトラックのクオリティを最大限高めるために、このようにトラックを細分化し最適なバランスやエフェクト処理をしています。しかし、トラックは多ければそれなりにデメリットも出てきます。
次ではそのデメリットについて解説します。
トラック数が多いことのデメリット
チューニング
各楽器のチューニングがあっていないと音がにごり楽曲のクオリティが下がります。レイヤーサウンドをするときの最大の注意はチューニングです。音に厚みをだせるデチューン効果もありますが、意味もなく大量に重ねると音の存在感がわかりにくくなり、音抜け悪くなったりするので注意が必要です。
レイヤーサウンドをするときの注意はレイヤーするもとの音を変化させてはいけないといこです。それをやってしまうとレイヤーではないです。
ミックスの手間が増える
トラック数が増えるわけですから当然ミックスの手間も増えます。また使用するプラグインもふえるのでCPU負荷が大きくなります。
曲をかっこよくするのが目的なのに曲のミックスで失敗しては本末転倒といえます。
「プロの作曲家はトラックは何百トラックもつかうらしい」こんな言葉聞いたことありませんか?プロ=多くトラックを使う=だから曲が良いアマチュア=使うトラックが少ない=だから曲が良くない実際トラックの多さが楽曲のクオリティに比例していると考えている人も多いです。
しかし、ここには落とし穴があります。トラックが多くなればそれだけコントロールする必要があるそれはスキルによって「管理しきれない」トラックが増えてしまうということです。DTM初心者は情報に流されやすいです。
いろんな情報をもってスキルの向上とクオリティアップを目指しますが、トラックの数の多さだけを見て「数こそ正義だ!」みたいな理由でトラックを多くするとどうなるでしょう?
管理しきれない大量のトラック意味がよくわからないトラックなどがひしめき合うことになります。そのような楽曲をDTM初心者は上手くコントロールできるでしょうか?
だったら大量のトラックは忘れてしっかりとコントロールできる範囲のパートを作り込んだほうがよい楽曲になります。
トラック数の増やし方という検索が意味するところ
トラックが多いということはそれだけ楽曲の色彩感が出ます。逆に言えば少ないトラックは「色彩感にかける」という捉え方ができます。しかし、楽曲の良さ=色彩感とするならば過去に多くのトラックを使っていなかった時代の曲は「良くない」という解釈が容易になってしまいますが、そんなことはありません。
当然、その時代に求められているサウンドの傾向性を理解したうえでのトラックコントロールが前提となりますが、「数の多さ」が良いとされてしまう理由はあくまでその時代の流行りです。ピアノの弾き語りであっても良い曲は良いです。
DTM初心者は12トラックを目指そう!
さきほどトラック数は36~124トラックという話をしましたが、なれていない人がそんなトラック数に手を付ける必要はありません。むしろ曲のクオリティが下がります。
さてこれらを踏まえたうえでやっと本題です。DTM初心者は8トラックから作ることをオススメします。なぜならば、少ないトラックで聴かせられる曲というのは各パートの意図がはっきりしている=アレンジ力が高い曲=ミックスもやりやすいつまり「聞いていて飽きない曲」と言えます。
12トラックの内訳は次のようになります。
- ドラム2トラック
- ベース1トラック
- ギター2トラック
- ボーカル3トラック
- その他4トラック
もちろん楽曲によってはもう少し欲しいところかもしれませんが、まずは12トラックで聞かせられる内容を目指します。しっかりと管理仕切った12トラックの曲は管理しきれていない100トラックの曲よりはるかにクオリティは高くなります。
トラックの管理のポイント
音色作りに迷わない
上記でも説明しましたが、レイヤーサウンドでの考えかたです。そのトラックは何のために存在しているのか?音を太くしたいから…厚くしたいからという理由でむやみにレイヤーをしてもその意図が正しく機能するとは限りません。
ベースの低音感が足りないからサブベースを足す前にキックの音色を見直すことで回避できるケースもあります。スネアをレイヤーすることで抜けの悪い音になるケースもあります。などなど、トラックを必要以上に増やすことでおこる問題はときに自分のもっている知識以上になるケースがあります。
そうなると、解決は容易でありません。だからこそ管理できるトラックを少なくすることでそのようなトラブルを回避することができます。
聞きやすい音楽
複雑なフレーズが入り混じったトラックは「最終的に何を聴かせたいのかわからない」ということになります。歌ものであれば「歌」を聴かせたいはずなのに、あんなフレーズやこんなフレーズが飛び交うトラックが多いと、耳が安心して一番聞きたい音を追うことができなくなります。
ミックスがしやすい
トラックがむやみに増えると当然音同士のぶつかりが増えます。これは音色作りにも言えることがですが、ミックスができないと嘆く多くのDTMerは無駄なトラックを使っています。必要最低限のトラックで作れば音のぶつかりや団子状態は回避できます。
12トラックのルールにおまけの縛りを入れる
できるのであれば同時発音数は48を意識します。つまり1トラック4音です。「48なんて無理だよ」と思う人がいるかもしれませんが、発音数の内訳を考えてみるとそれほど複雑な話ではありません。
- ピアノでコードとベース(オクターブ)で弾いたらその時点で最低6音を使います。
- リードギターで2音
- サイドギターでコードを鳴らすことで3音〜6音
- ベースで1音
- ドラムではキックとクラッシュを同時に鳴らせば2音
- ボーカルで1音
- コーラスで1〜2音
- シンセトラックで4音
- とりあえずすべての音を鳴らしきったとして24音です。
あまり現実的な鳴らし方ではないこの方法で24音です。この状態でもあと8音鳴らせます。ここから「省略できる音」などを間引けばさらに4音〜6音くらい省ける可能性があります。この省くという方法は少しばかり理論的な部分の話にもなるのでできなくても問題はありません。
このようなルールを絞ることで目的にそった音色選びが可能になるので審美眼も磨くことができるようになります。
まとめ
DTM初心者はトラック数の多さを気にする必要はありません。トラック数の多さがクオリティとしてつながるには、まずは必要最低限のトラックで曲を作れるようになってからです。そこからは僅かなレイヤーサウンドがクオリティにつながることを認識できるようになります。
まずは8トラックで作ることを意識してそのうえで同時発音数を32で扱えるようになるとさらに意図のあるサウンドになっていきます。
トラックコントロールはプロでも難しい技術です。明確な意図がないとトラックを増やしたところで単なるおでぶちゃんの曲になるだけです。
トラックが増えてもすっきりスマートに!まるで10トラック程度にしか感じ無い!というのがトラックが多い曲での一つの正解です。
トラックの増え方は単純ですやりたいことをやっていたら増えますw
でも
- レイヤーサウンドが目的なのか?
- リズム隊を派手にしたいのか?
増えたことによるデメリットは意識できているか?しっかり判断してトラックコントロールしてきましょう。