DTMでのギターサウンド制作に関するこの記事では、アンプシミュレーターの適切な使用法を通じて、一般的に避けたいとされる「痛い」「ダサい」「細い」サウンドを克服し、プロフェッショナルレベルの音質を実現する方法を解説しています。
ピックアップの選択、トーンコントロールの微調整、そしてキャビネットIRシミュレーターとキャビネットシミュレーターの理解を深めることで、読者は自分のトラックを格段に向上させることができます。
アンプシミュレーターとは?
古今東西の名機と言われたものから、おもちゃのようなものまで、本物のギターアンプをコンピューター上で再現したもの、それがアンプシミュレーターです。
シミュレーターをシュミレーターと言ってしまう人がいますが、シュミレーターというと「シムシティがシュミシティ」ということになってしまうので注意しましょう。
DTMにおいてギターの音作りの8割はアンプシミュレーターで決まると言っても過言ではありません。なので
「アンプシミュレーターを正しく使える=満足の行くギターサウンドを手に入られる」といえます。
アンプシミュレーターは大きく分けて2種類!
アンプシミュレーターは、DTMでギターサウンドをリアルに再現するために欠かせないツールです。これらは主に二つのタイプに分類されます
タイプ | メリット | デメリット |
---|---|---|
キャビネットIRシミュレーター | ・本物のキャビネットの空気感に近いサウンドを再現できる | ・IRの品質によってサウンドクオリティが左右される |
キャビネットシミュレーター | ・細かいマイクセッティングが可能 | ・IRに比べて実際のキャビネットのリアリティに欠ける |
ではもう少し詳しく解説していきます。
キャビネットIRシミュレーター
キャビネットIRシミュレーターは、実際のギターキャビネットが生み出す音をサンプリングして作成されたものです。
このタイプのシミュレーターの最大のメリットは、本物のキャビネットが持つ空気感や響きを非常にリアルに再現できる点にあります。
しかし、デメリットとしては、使用されるIR(インパルス応答)の品質によって最終的なサウンドクオリティが大きく左右されることが挙げられます。
キャビネットシミュレーター
一方、キャビネットシミュレーターは、IRを使用せずにソフトウェア上でキャビネットのサウンドを模倣します。
この方法のメリットは、マイクの位置や種類など、細かいセッティングを自由に調整できる点です。
しかし、IRシミュレーターに比べて、実際のキャビネットの空気感やリアリティを完全には再現できないというデメリットがあります。
例えば、リアルなキャビネットの響きを求める場合はIRシミュレーターが適していますが、より柔軟なサウンド調整を望む場合はキャビネットシミュレーターが有効です。
また、多くの現代のアンプシミュレーターは、これら二つの機能を組み合わせたハイブリッドタイプも提供しており、ユーザーはより幅広い選択肢から理想のサウンドを追求できます。
アンプシミュを120%使い切るため方法
アンプシミュレーターを使用する際、サウンドのクオリティを最大限に引き出すためには、パラメーターの調整だけでなく、使用するギターの音色が非常に重要です。
この音色は、ギターに搭載されているピックアップによって大きく左右されます。ピックアップはギターの振動を電気信号に変換する部品であり、ギターの音色を形成する上で中心的な役割を果たします。
ピックアップの種類とその特徴
ピックアップには主に「シングルコイル」と「ハムバッカー」の2種類があり、それぞれが異なる音色の傾向を持っています。
シングルコイル | ハムバッカー | |
音色 | シャープで軽い音 | 太くて甘く重い音 |
プレイ | カッティング向き | メタルリフ 向き |
ノイズ | 多い | 少ない |
音量 | 小さい | 大きい |
シングルコイルピックアップ
- 音色: シャープでクリアな高音が特徴的で、軽やかな音質を持っています。
- 適しているプレイスタイル: クリーンなサウンドやカッティング、ジャズやブルース、ポップスなどの細かいニュアンスを表現したい場合に適しています。
- ノイズ: シングルコイルはノイズが多い傾向にあります。
- 音量: 出力が比較的小さめです。
ハムバッカー
- 音色: 太くて甘く、重厚な低音が特徴的です。サウンドに厚みがあり、温かみを感じさせます。
- 適しているプレイスタイル: ヘビーメタルやハードロックなど、力強いリフやソロを演奏する際に適しています。また、歪みを多用するジャンルにも向いています。
- ノイズ: ハムバッカーは2つのコイルを逆位相に配置することでノイズを相殺し、シングルコイルに比べてノイズが少ないです。
- 音量: 出力が高く、音量が大きいです。
ピックアップはギターの「声」を決定づける要素であり、演奏する音楽ジャンルや求めるサウンドによって適切なタイプを選ぶことが重要です。
例えば、明瞭なクリーンサウンドを求める場合はシングルコイルが、濃厚で歪んだサウンドを好む場合はハムバッカーが適しています。アンプシミュレーターを使用する際も、これらの特性を理解し、ギターのピックアップに合わせてサウンドを調整することで、より理想に近い音色を実現することができます。
ポップスのクリーンカッティングの場合はハムよりシングルの方があっています。もちろんハムでカッティングをしてはいけないという話ではないですが、ハムだと重くなりすぎて曲に合わないこともあります。
逆に歪ませたい場合はハムの方が圧倒的にキレイに歪みます。なぜならば、ハムバッカーはシングルコイルピックアップに比べ出力が高いのが理由です。出力が高いと歪を作ろうとするインプットの量が増えることになるので出力が高い方が歪に強い”歪ませやす”いというのが理由です
アンプシミュで間違える音作り①「歪ませすぎ」
ラウドでヘビーな歪みサウンドを求めるためにドライブをフルテンで使いたくなる気持ちはわかりますが、
歪みをフルテンで使ってはいけません。フルテン使うということはいわばコンプレッサーでめちゃめちゃ潰している状態に近いためピッキングのニュアンスを出すことはできなくなります。
ピッキングのニュアンスを残す理由
このギターサウンドでも重要なのはピッキングのニュアンスです。ピッキングの音というのは基本高音域の成分が多く含まれている音なので、ギターサウンドのぬけの部分に相当します。
ギタリストがピックに拘るのも自分の力加減によって音が変わるのを理解しているため少しでもピッキングする力が適切に弦に伝わるようにすることでギターのポテンシャルを上げることができます。たかがピックですがされどピックなのです。
高音域を多く含んだ音をもう少し分かりやすく説明すると、ドラムでいうところの「バチ!」というビーターが当たる音をきちんとなさないとKICKのサウンドとして感じにくいのと同じです。
ラウドなギターサウンドはコンパクトエフェクターを介しながら強く弾いたときに強く歪むそれ以外はきちんとピッキングのニュアンスを出せるようになっていなければいけません。
歪ませ過ぎた音は一言で言えば「「音に芯がなくなり抜けの悪い音」になります。ベースやドラムに負けてしまうのは、音の芯がなくなっているからです。
ピッキングニュアンスを残すメタル系アンプサウンドの作り方
もしピックニュアンスを残したいけど歪のギターも両方欲しい場合は、ギタートラックを2トラックにして1つを歪み用もう一つをクリーンサウンドにしてそれらをBUSトラックでまとめて音作りをすればピッキングニュアンスを潰さないギタートラックを作ることができるのでアタック感を保持したいときは最適です。
パラレルコンプならぬパラレルアンプ的な音作りの方法です。
以下の2つを理解したのちであればアンプシミュレーターでの音作りは決して大きく間違ったことにはなりません。
- ギターの持っている音の性質(ピックアップ、トーンコントロール)
- ピッキングによる音色のコントロール
アンプシミュで間違える音作り②「名前で選んでしまう」
「70’s Rock Amp」「Metal Sound」アンプシミュにはこのようにわかりやすい名前が並んでいます。実は多くのDTM初心者はこのプリセットをそのまま使ってしまうことがあります。プリセットはあくまで目安でしかありません。そこから音を追い込んでいくのが基本的な使い方です。
そして先程もあった「パッと聴いてかっこいい歪の音」は注意が必要です。その歪サウンドがそのまま曲の中で聴こえることはまずありません。なので、その音を使いたい場合はその音を生かしたアレンジをする必要があります。
超重要!ギターでの音作りをおろそかにしない
ギターにはトーンコントロールというイコライザーの一種がついています。DTM的に言うとローパスフィルター的なものです。
これとボリュームを使って音作るのもギターサウンドにとってはとても重要な話です。「あとで、編集すればいいやん?」という話ですが、ギターで1番最初に通る回路はこのトーンコントロールです。ギターのポテンシャルが出る場所とも言えるので「あとでいいや」ではなくこの部分でイメージの音の基礎を作れるようになることが大切です。
具体的には
クリーンサウンドの場合トーンコントロール
トーン全開にすることでくっきりとした音質になります。当然この状態でアンプをつなげると多少耳に痛いサウンドになる可能性があります。わずかに倍音を削ることで耳に痛いわけでもなく、そして抜けがある甘く太い音になります。
ドライブサウンドの場合のトーンコントロール
トーンを軽く絞ることで粘着質な音になります。高域が削れることで低音が盛り上がるのでベースサウンドとの兼ね合いも必要になります。
メタル系のギタリストはトーンコントロールを嫌う傾向もありますが、ギターの出音を決定する要素でもあるので、ここでの音作りはアンプサウンドに大きな影響を与えます。
アンプシミュを使ったかっこいいギターサウンドの作り方
本物のギターアンプを使いたいけどアンプシミュのサウンドも使いたい場合は、パラレルボックスを使うことで可能になります。
これを使うことで、信号を2つにわけることができます。チャンネルAはギターアンプ、チャンネルBはオーディオインターフェイスにという具合で録音時にはクリーンサウンドとアンプで作った音の二種類を録音することが可能になります。
ダブルギター(ツインギター)を効果的に見せるアンプシミュの使い方
一本のギターで同じフレーズを二回弾き、それを左右にふることでギターの壁を作るテクニックの一つですが、アンプシミュではこれを簡単に作ることができたりしますが、轟音の壁をつくるのかそれともステレオワイドにギターを聞かせたいのかでダブルの作り方は意味が変わってきます。
轟音の壁はそれこそ文字通りそこにギター以外は存在しないくらいの壁サウンドを作ることになりますが、ステレオワイドとなると、ダブリングよりリバーブとディレイ、コーラスといった空間処理を目的とした音作りが必要になります。
演奏によるギターでは同じアンプシミュを使ってもステレオ感は問題ありませんが、打ち込みギターの場合は音源によってはステレオ効果は得られない場合があります。そういう場合はアンプシミュを別のものにするのがポイントですが、同じようなアンプを使いたい場合は
片方のギターに少しだけディレイを通して音を遅らせるなどの方法をとることでステレオ感を出せます。
アンプシミュレーターを使う本当の目的を考える
アンプシミュを使う目的は何でしょうか?一番いいのは本物を使うことですよね?でも家でキャビネットを爆音で鳴らせば近所迷惑です。間違いなく苦情です。そのトラブルを防ぐためにも80%の再現度をほこるシミュレーターが役に立つわけです。もっと言えば手軽に簡単に「それらしい音を出せる」というのが目的です。
しかしアンプシミュを使わない方法は本当にないのでしょうか?あります。それは近くのスタジオに言って本物を取ることです。
「いやそれが出来ないからアンプシミュを使っているだよ!」と思うかもしれません。もちろんどうしても外に出られない理由もあるかもしれません。しかし、そうであればSNSで家でアンプを持っている人にデータを渡してリアンプしてもらえれば解決できます。
つまり手間ひまをかける意識の問題の有無がアンプシミュレーターを使う理由になっているのではないでしょうか?「俺はめっちゃ音楽に拘っているぜ!」といいながら「アンプシミュでOK」とは本当のこだわりと言えるのでしょうか?
もちろん毎回本物を使える人は限られるかもしれません。ですが、一度でいいので本当のアンプとキャビネットの音を聴いてみると、自分のアンプシミュの音のどこが「本物と違うのか?」ということが見えてきます。
そうすることアンプシミュでの音作りもよりリアルになっていくはずです。
間違いやすいアンプシミュレーターの使い方とは、本物を音を知るための手間をおしんでシミュレーションサウンドで満足することです。そこからもう一歩上の「こだわり」を見つけに行く。シミュを超えて本物にする(より本物を追い求める)これを学べるのがシミュレーションのよいところです。
DAW付属のアンプシミュレーターはよくない?
市販されているアンプシミュの方がクオリティは上です。しかし、ちょっと設定を追い込んでやれば使えるサウンドになることも多いです。
例えばLogicProXのアンプシミュもキャビネットだけをフリーのIRタイプのものにするだけでも大きく変わります。「DAW付属のアンプシミュ何かいけてないけどどうすればよいのか…」と悩んでいるなら「空気感の再現」を心がけることでサウンドの改善が見込めます。
まとめ
大切なのは用途にあった使い方。ストラトを歪ませるならストラトサウンドを活かしきれる歪みをするのがその楽器のポテンシャルを発揮できます。
もちろん予想もできないアグレッシブな使い方をするのも悪いことではないですが、大切なのは作ったサウンドの意図が聴いてくれるオーディエンスに伝わるかどうかが1番重要なので、「歪みスキー」になりすぎて聴いてくれる人が不快な気持ちにならないサウンドをつくれるようになりましょう。