ソロでギターのカッティングを弾いている時は「いい感じだなー」と思ってもオケにいれると埋もれてしまうことってありますよね。そういうときの対処方法は2つ、音の重ねすぎの確認と演奏による音量のムラ、そして音色選びの意図です。この記事ではそれらについてサウンド付きで説明し音にどういう役割をしていくかについて説明しています。
ギターカッティングがオケに埋もれてしまう埋もれてしまう場合
ギターカッティングを単体で聴くといい感じでもオケと混ぜると埋もれてしまうのは「DTMミックスのあるある」です。埋もれてしまう原因の多くはこの2つになり、「常に埋もれているのか」「たまに埋もれてしまうのか」を冷静に判断します。
- 音の重ねすすぎ
- 演奏の音量のムラ
- 音色選びの意図(エフェクターの有無)
音の重ねすすぎ
音の重ねすぎに関しては、アレンジレベルの話になります。そもそもカッティングを聴かせたいアレンジなのかどうか?という視点で考えるのが大切です。カッティングの目的はリズムを押し出したいということにあると思います。
それを邪魔する他の楽器のフレーズや、コード、ベースの動きにも注目してギターカッティングの優先順位をまずは明確にします。
演奏の音量のムラ
生ギターの場合はとにかく音量のムラが抜けの問題です。聴こえるときと聴こえないときがあるというのは楽曲に安定感がなくなり気持ちよく聴くことができなくなります。この場合はコンプを使って音量差をなくすことがポイントになります。
さてここで気になるのが「ギターのカッティングに適切なコンプの設定」ですよね。これはどんな音色を使っているのかによっても変わります。なのでまずはキックの音量を設定します。ここがブレると何をやってもミックスが定まりません。
一般的にキックは-10dBくらいのピークが普通と言われています。もちろんここが-8dBであったり-12dBであっても多少の誤差は問題ありません。あくまで音の中心(基準)を作るイメージです。
そのキックよりギターは低くバランスを取ることが望ましいですが、ここで演奏のムラがあれば当然聴こえたり聴こえなくな場合があります。それを防ぐために安定したギターサウンドが必要になります。
コンプのイメージは音量の大きい部分を抑えるイメージです。平坦すぎるサウンドのはよくありませんが、基本音量にばらつきがないのが望ましいです。
例えばこんな感じのカッティングを作ったとしましょう。ギターはVariaxでモデリング機能はオフにしているのでハムバッカーのサウンドにBiasFX2のプリセットBritish Loveで歪みを軽くしています。
これをオケの中に何も処理をせずに入れるとこんな感じです。カッティングのパンは左に振っています。
抜けてこないというか元気がないというか、あまりカッティングとして役割を担えていないような感じになっています。
そこでコンプをかけてみます。設定は以下の通りです。
- スレッショルド=-22dB〜-16dBくらい
- アタック=8.6ms
- レシオ=3.0:1
- リリース=74.0ms
- リダクション=4〜6dB
- ゲイン=5.0dB
他のパートの音量は特に触っていません、アタックを潰し気味にして全体の音量を上げる上記のコンプでここまでカッティングが前にでてきます。
ただ気をつけたいのは単音カッティングの場合は、コンプの設定によっては音が大きくなりすぎる場合があります。その場合は、リバーブを使って気持ち奥においやることでバランスがとれることがありますが、使い方に注意しないとより奥に行ってしまうだけの可能性もあります。
バッキングに関して作曲家高梨さんのはリバーブは絶対使わないということです。
後リバーブ😆
— 高梨康治 YasuharuTakanashi (@nassy_takanashi) March 7, 2020
僕はバッキングギターは常にノンリバーブですよヽ(=´▽`=)ノ
ナイル・ロジャースはカッティングに関して力を入れすぎないことを重視しています。力を入れすぎるtと抜けが悪くなるからです。
音色選びの意図
音色がカッティングに向いているかは重要です。フロントとリアではリアの方が抜けがよくなります。もちろん「いやフロントでのカッティングサウンドが好きなんだー!」という人はそのフロントのサウンドを活かしたアレンジ(他の音色のチョイスやフレーズ)を意識する必要があります。
フロントのサウンドを使う時は音が中低音に集まる傾向があるので、他の楽器のボイシングを中低音から散らすイメージで配置するのがポイントになります。
ちなみにさきほどの曲のギターカッティングのピックアップポジションをリアにすると次のようになります。
この曲のイメージはディスコロックのようなイメージで作りました。ここでカッティングのサウンドをフロントにするかリアにするかはそのポジションのサウンドが持っている意味合いと作曲家のイメージがあります。よりディスコとしてのカッティングのイメージを強くしたかったのと、右のギターがパワーコードで白玉を演奏しているので、より「ディスコらしさ」の強調をしたい理由でネックのサウンドを採用しています。
さらに欲をいえばハムバッカーサウンドよりシングルコイルサウンドのほうがより多くの人が共通認識している「ディスコギターカッティングサウンド」になります。
このように音色1つの意図を突き詰めることでより最適な音色を導き出すことができます
より最適なピックアップポジションと音色
カッティングはストラトでやるのがよい。特にハーフトーンがよいという話を聞いたことがあると思います。これについて作曲家の中土さんよりこのようなコメントをいただけました。
確かにカッティングの名手ナイル・ロジャースもハーフトーンです。あの頃は今よりもノイズに悩まされた時代でもあるのでひょっとしたらハーフトーンを重宝された理由の1つかな?と思ったりもしています。
ピックアップによるノイズの変化について
ではここでピックアップポジションの違いでどれくらいノイズがのるかを確認してみたいと思います。
フロント→フロントハーフ→センターセンターハーフ→リアという順番です。注目すべきなのはフロントハーフとリアハーフのときに聴こえるノイズです。
明らかにハーフトーンはフロント、センター、リア、に比べるノイズの量が違うのがわかると思います。「うーんイマイチわからないなー」という人はこちらのサンプルを聞いてみてください。
こちらはギターを鳴らしていない状態でピックアップを切り替えたときにどれくらいのノイズがかわるかというものです。
ピックアップの切り替えは上記と同じくフロント→フロントハーフ→センターセンターハーフ→リア
明らかにハーフポジションではノイズが減っているのが見てわかります。なぜノイズが減るのか知りたい人は「ハーフトーン ノイズ 減る理由」と検索すればいろんな記事が出てくると思います。
一言で言うならば中土さんもおっしゃっている位相の関係でノイズが消される、いわゆるヘッドホンのノイズキャンセリングみたいな状態になっていると思ってください。
DAWでギターを録音する多くの人はおそらくギター→ケーブル→エフェクト有無→オーディオインターフェイスという流れだと思いますが、ここにアンプやらが入ってくると当然ノイズの量は相対的に増えてきますので、少しでもノイズを軽減できるハーフトーンは埋もれないカッティングサウンドとして有用といえます。
アンプの設定について
カッティングの場合はできるだけクリーントーンなので歪みすぎて音が埋もれることは基本的にありませんが、どのようなアンプを使うのかによっては当然音の抜けが変わってきます。
またプリセットの名前だけを選んで音を決めてしまうとイマイチ合わないこともよくあります。そういうときはその音色の聞き所をチェックして適切なパラメーターを変更するようにしましょう。
まとめ
カッティングやリフが抜けないときにチェックしたいのは
- 音の重ねすすぎ
- 演奏の音量のムラ
- 音色のチェック
これらの要素と作曲の意図が大切になります。やみくもにプラグインやコンプの設定という前に、まず音色レベルやバランスレベルでの見直しをしたうえで、コンプなどの設定に注目することをおすすめします。