IK Multimedia Pianoverseは最先端のサンプリング技術で作られたピアノ音源を一つにまとめたバンドルセットです。
1音1音を丁寧に専用のロボットで演奏することで音のばらつきがない正確無比なピアノサウンドを実現しました。
また、Pianoverse専用のエンジンを使用することで、現実的にはありえないリバーブサウンドや、ピアノボディ等の質感を調整が可能になり、ただの高級ピアノ音源ではなくクリエイティブなピアノ音源でもあります。
そのため、CPU負荷は少し高く、他のソフトシンセと併用する場合はフリーズ等(オーディオ化)をする必要があるシーンも出てくでしょう。
ですが、その苦労をしてもPianoverseを使う価値はあると思います。自分の曲の中でピアノ音源を使っている人、そのクオリティに満足できない人は満足できる可能性が高いです。
Pianoverse MAX サウンドレビュー
Pianoverse MAXには、次の7つのピアノモデルが収録されており、それぞれ異なった音色を楽しめます。
製品名 | ベースとなるピアノ |
---|---|
Pianoverse – Concert Grand YF3 | 9’ Yamaha® CFIII concert grand piano |
Pianoverse – Royal Upright Y5 | Yamaha® U5 upright piano |
Pianoverse – NY Grand S274 | 9′ Steinway & Sons New York D-274 concert grand piano |
Pianoverse – Black Diamond B280 | 9′ Bösendorfer 280 Vienna Concert grand piano |
Pianoverse – Gran Concerto 278 | 9.5′ Fazioli F278 concert grand piano |
Pianoverse – Hamburg Grand S274 | 9′ Steinway & Sons Hamburg D-274 concert grand piano |
Pianoverse – Liberty Upright | Koch & Korselt Upright piano |
それでは実際に様々なフレーズをそれぞれのピアノで聴き比べてみます。
まずすべてのモデルに共通しているのはピアノのボディの鳴りが美しく高級感を感じられることです。このような高級感のある音は楽曲の魅力をより引き立たせてくれます。
ちなみに私はよくPianoteq8というピアノ音源を使用します。こちらはサンプリングではなくモデリングという方法で作られているピアノ音源です。
Pianoverseはベロシティレイヤー(強弱によって変化する)が無限なので、音の変化はとても滑らかなのが魅力です。しかし、サンプリング特有の空気感等が弱いためか、どことなくデジタル的な印象を受けます。
これらの良し悪しは使用するシーンによって変わりますが、Pianoverseの空気感や音の密度感を知ってしまうとPianoteqの無機質感を再認識してしまいます。
機能性および操作性
ここでは個人に気になった機能を3つ紹介します。
クリエイティブな響きまで作れるリバーブサウンドを多数収録
Pianoverse では専用のエンジンを搭載したことで、細かな音色から現実的にはありえない残響(リバーブ)感を楽しむことができます。
クリエイティブな方向性で使う分には面白い効果もありますが、基本的にはホールやスタジオ系のリバーブが使いやすい印章です。
リバーブたっぷりのゴージャスな響きもピアノ音源の楽しみですが、楽曲の中ではよりクローズな音色を求められることも多いです。Pianoverseではクローズマイクとリバーブ成分をミックスできるので、より自分が欲しい質感に微調整できるのは大きなメリットです。
ピアノ演奏者のためにベロシティカーブを調整可能
ある程度演奏できる人からするとPianoverseの音色クオリティの高さは納得の行くレベルだとすぐに気付けます。しかし、そのためには、ある程度グレードの高いMIDI鍵盤が求められます。
しかし、そのような鍵盤を持っていない人はどうするのか?多少タッチ感による違和感はあるかもしれませんが、その鍵盤にあったベロシティカーブを作成できます。その結果、Pianoverseの音色変化をより自然な形で楽しめます。
音色切り替えが上手くいかない
これは私の環境だけの可能性もありますが、タブ表示されている名前をクリックしても音色がうまく切り替わってくれないバグ的な挙動があります。
バージョンアップで改善してくれることを願うしかできませんが、音質が良い音源だけにこのような挙動があるのが少し残念です。
ピアノの音色ロード時間について
CPU負荷について
CPU負荷は高いです。
立ち上げているだけでCPUに負荷がかかります。計測設定環境は下記に詳細がありますが、基本私はバッファを256に設定しますが、256ではすぐにCPU負荷が天井に届き音割れが発生する可能性が高くなります。
CPU負荷逃がしは有効ですが、それでも平均30%高いときで50%を超えてきます。
ソフトシンセとの併用や重たいエフェクトプラグインを使っている場合はわりとすぐにCPUがオーバーロードしてしまうので、使い方には工夫が必要だと思われます。
CPU負荷計測環境
パソコン Macmini2018
CPU Intel Corei7(i7-8700B)6コア
HT使用時12コア 3.2GHz/ターボブースト(TB)使用時4.6GHz
メモリ 32GB
システム OS12.6.1 Monterey
Audio/IF Focusrite RED 8PRE
バッファー 256
DAW LogicPro10.7.7
48kHz/24bit
再生ストレージ SSD
音源が刺さっていないトラックを選択することでシングルCPUの負荷がマルチコアに分散されることを「CPU負荷逃し」と私が勝手に命名しています。
CPU負荷を効率化させより多くのプラグインを動作させる方法について詳しく知りたい方は以下の記事が参考になります。
まとめ
- クリエイティブな響きまで作れるリバーブサウンドを多数収録
- ピアノ演奏者のためにベロシティカーブを調整可能
- ピアノのボディの鳴りが美しく高級感を感じられる
- 音色選びにバグ的な挙動がある
- CPU負荷が高い
メーカー | IK Multimedia |
システム | Mac® (64ビット) 最小要件: Intel® Core™ 2 Duo (Intel Core i5 推奨)、 8 GB の RAM (32 GB 推奨)、macOS 10.13 以降。 Apple の M1 プロセッサ上でネイティブに実行されます。 Windows® (64 ビット) 最小要件: Intel® Core™ 2 Duo または AMD Athlon™ 64 X2 (Intel Core i5 を推奨)、 8 GB の RAM (32 GB を推奨)、Windows® 7 以降。 ASIO 互換のサウンド カードが必要です。 |
認証方式 | シリアル |
認証数 | 5 |
マニュアル | 英語 |
価格 | $329.99 |
備考 | ピアノ タイトルごとに 30 GB のハード ディスク容量。 OpenGL 2 互換のグラフィック アダプターが必要です。 公式サイトではPianoverse サブスクも可能です。 |
IK Multimedia Pianoverse MAX使ってみて思ったのはやはり音の高級感は素晴らしいです。しかし、Pianoteq8と比較したときに強弱による音色の切り替わり感はモデリングの音源の方が自然だと感じました。
モデリングとサンプル音源を同族として語るのはあまり意味はないので、純粋に音色の好みで言えば、IK Multimedia Pianoverse MAXだと思います。
機能面では紹介を省略しましたが、リバーブ以外にもサチュレーターやディレイ、モジュレーション系のエフェクトも充実しているので、さらにアグレッシブな音作りも可能です。
あと、CPU負荷が低ければさらにポイントの高いピアノ音源になった気がしますが、このあたりは最新のCPU環境でまた変わってくる気がしています。
ハイグレードでポップスからクラシックまでとにかく「ピアノの音色のグレードを良くしたい!」という人は使ってみる価値が高いピアノ音源です。