音楽制作でのトランジェント制御と音質向上を追求するKiive Audio Distinct Proが登場しました。このプラグインは、精緻なトランジェント処理と高品質なコンプレッションで、プロフェッショナルなサウンドを実現します。
CPU負荷も抑えられているので快適に使えます!
精密なパラメータ調整やリアルタイムビジュアライゼーション、多彩な圧縮モードを駆使して、音質を損なうことなくダイナミクスをコントロール。初心者からプロまで、音楽制作に新たな可能性をもたらすDistinct Proの実力を体験してみてください。
Kiive Audio Distinct Pro! サウンドレビュー
Distinct Pro!の音質は気合一発ぶち込んだれや!と言わんばかりの豪傑、熱血、熱盛サウンドです。もちろん繊細なセッティングでナチュラルなアコースティックなサウンドをコーディネートすることも可能ですが、個人的にはガッツリとしたギターサウンドに使うのがオススメです。
以下のサウンドはドラムとギターの状態でギターだけにDistinct Pro!を使ってみました。
Distinct Pro!を使うとギターアンプにゲインをMAXにした状態にもう一歩追加でゲインをつけてもらったような印象になります。
また、サチュレーションユニットに搭載されているMFのかかり方が個性的でかなりガッツリとブーストカットが可能です。音に厚みをつけるとなるとLFをすぐに操作しがちですが、MFをうまく適用すれば少ないトラックでも音に厚みを出すことが可能です。
以下のサウンドではMFを一小節毎に0-10+10 0という形で切り替えています。
では、サチュレーションといえばドラムに使いたい!という人も多いと思います。実際バスエフェクトとしてサチュレーションは効果のあるエフェクトプラグインです。
肉厚なドラムがさらに肉厚になったのがわかると思います。
なお、このドラムには同社リリースしたNFuseも使用しています。
同じメーカーだけあって音の相性はよく、2つで1つとまではいいませんが、お互い素晴らしい仕事をしてくれるプラグインです。
Distinct Pro!を使えば、もう一歩厚みが欲しい!もう一歩迫力が欲しい!他のサチュレーションプラグインではなく1つのプラグインの中でイメージするサチュレーションおよびダイナミクスを作り上げたい!という人に最適なサチュレーションプラグインだと言えます。
機能性および操作性
私がDistinct Pro!を気に入っている機能の1つがメーターセクションです。メーターセクションのOUTPUTにはODD、EVEN、DIGIT。こ3つの異なるサチュレーションタイプが用意されており、それらを選択することで異なるサチュレーションタイプを楽曲に取り込むことが可能です。
ODD: 奇数倍音導入することでよりアグレッシブなサウンドを生み出すODDタイプのサチュレーション。フェンダーのバスマンアンプやマーシャルアンプなど、クラシックなロックギターアンプの特徴的なサウンドに似ています。これらのアンプは、そのパンチのあるドライブと強烈なプレゼンスで知られており、ギターのエッジを際立たせます。
EVEN: 偶数倍音スムーズでメロディアスなサウンドを実現するEVENタイプのサチュレーションは、真空管を使ったオーディオ機器やテープマシンのサチュレーションに近いです。例えば、テレフンケンやスタダーのテープマシンは、暖かく滑らかなサウンドで知られており、音楽に豊かなハーモニックコンテンツと深みを加えることができます。
DIGIT: ソフトクリッピングアルゴリズムを用いてデジタルクリッピングに似た効果を生み出すDIGITタイプは、デジタルオーディオワークステーション(DAW)やデジタルエフェクトプロセッサ内蔵のサチュレーションエフェクトに似ています。これらのデジタルデバイスは、音のピークを緩やかに丸めることで、ハードなクリッピングの代わりによりマイルドな歪みを提供することが可能です。
これらの例えは、各サチュレーションタイプが生み出す効果を現実の機材のサウンドに基づいて理解するのに役立ちます。ただし、実際の機材とデジタルサチュレーションは、物理的な特性や操作感において異なる点も多いため、これらの比較はあくまで参考程度に留めておくことが重要です。
この3つを任意に選択できるということは、真空管/TAPE、トランジスタタイプ、デジタルクリッピングを自由に切り替えられので、歪みの好みが違ったときにすぐに他のサチュレーションをサウンドを試せます。それは創作において時短効果も上げられるので私はこの機能が気にっています。
ドライブ機能の詳細について
次に気に入っているのがドライブセクション。3バンドのフィルターとサチュレーション、そしてディストーションで構成されています。
周波数帯域 | 中心周波数 | 調整範囲 | 効果 |
---|---|---|---|
HF (高周波) | 6350 Hz | -10 〜 +10 | ミックス中での明るさと存在感 |
MF (中周波数) | 550 Hz | -10 〜 +10 | サウンドの知覚される暖かさとボディに影響 |
LF (低周波数) | 140 Hz | -10 〜 +10 | ローエンドのパンチとふくよかさを軽減または強化 |
なかなか絶妙な周波数設定です。LFはもう少し下でもよかった気がしますが、もっちりとした感じはこのあたりの方が感じやすいので使い方次第の気がしています。
Distinct Pro!はデフォルトでチェインの順番がサチュレーション→ダイナミクスになっているため、ブーストするとその分ダイナミクスの調整がシビアになります。なので、用途によってチェインの順番を変更するのがオススメです。
変更方法はModeのDrive>Dynをクリックして、Dyn>DriveにするだけでOKです。
トランジェントシェイパーを搭載したダイナミクスセクション
Distinct Pro!にはトランジェントとコンプレッサーが搭載されたダイナミクスセクションでアタック感やリリース等を細かく調整可能です。
このダイナミクスセクションは他のコンプ等にはない機能があります。それがフィードバック圧縮とフィードフォワード圧縮です。
フィードバック圧縮は、自然でアナログ感のあるサウンドを好むエンジニアに向け、フィードフォワード圧縮は、精密なコントロールと明確な圧縮効果を求める場合に適しています。
どちらもミックスのダイナミクス管理とサウンドのキャラクター形成に欠かせず、エンジニアはプロジェクトの目的に合わせて適切な方式を選びます。
詳しいことについては以下の記事のフィードバック-圧縮とフィードフォワード圧縮についての項目で詳しく解説しています。
NFuseでも同じことを取り上げていますが、AtoB(逆もしかり)機能はぜひ早急につけて欲しい機能です。
比較するときには同じ設定から少し変更したい場合はAの設定をBにそのままコピーできればよいのですが、残念ながらこのコピー機能は今回も実装されませんでした。
NFuse同様にバージョンアップデートを検討されていることを祈るばかりです。
SHIFT+クリックで数値入力が便利!
Kiive Audio製品すべてに共通するポイントですが、SHIFT+クリックで数値管理できるパラメーターを数値入力が可能です。このあたりは耳で判断、数値入力はそこまで気にならないという人には不要かもしれませんが、パラメーターの可視化することでどの程度の音色変化が起こるのかを理解できるので便利です。
セクション毎にパラレル処理が可能
Distinct Pro!はドライブセクションとダイナミクスセクションの2つから成り立つサチュレーションプラグインですが、これら2つのパラメーターを独自にパラレル処理が可能ですしリンクすることも可能です。
複合処理ができるエフェクトプラグインは多くありますが、このようにセクションを独立してパラレル処理できるのは珍しいような気がしています。
ドライブは10%程度にして、ダイナミクスを90%といった処理ができる操作性は他にはない大きなメリットです。
CPU負荷について
U負荷はオーバーサンプリングの設定によって異なりますが、基本使用において負荷はそこまで高くありません。
CPU負荷詳細
マルチコアの分散の効いているのでそこまで負荷高い印象はありませんが、オーバーサンプリングのレベルによって負荷は大きく異なってくるので注意が必要です。
画像は左上ば2倍、右上が4倍、左下が8倍、右下が16倍になります。
48kHz環境で16倍で使うということは、768kHzで処理しているということですから、確かに負荷が高いのは納得できます。個人的には2倍または4倍でも十分だと思っています。
またオーバーサンプリング使用時にはレイテンシーも発生します。
オーバーサンプリング率 | 遅延(サンプル単位) |
---|---|
2x | 31 |
4x | 38 |
8x | 41 |
16x | 42 |
この表は、オーバーサンプリングを行った場合のレイテンシ(遅延)をサンプル単位で示しています。オーバーサンプリング率が高くなるほど、遅延はわずかに増加しますが、それでも比較的低遅延を維持していることがわかります。
オーバーサンプリングやユーザーフレンドリーなインターフェースも特徴。オーディオの暖かさや深みを加えたり、特定のトラックに独自のキャラクターを持たせる際に有効です。
まとめ
メーカー | Kiive Audio |
システム | マックOS OS X 10.7以降(macOS 10.14以降を推奨) プロセッサー: 1 GHz Intel Dual Core 以上 画面解像度:1024×768以上 フォーマット: VST、AU、AAX 64ビットDAWのみサポート ウィンドウズ Windows 7以降 プロセッサー: 1 GHz Intel デュアルコアプロセッサーまたは AMD 同等品 画面解像度:1024×768以上 フォーマット: VST、AAX 64ビットDAWのみサポート |
認証方式 | シリアル認証 |
認証数 | 記載なし |
マニュアル | 英語 |
価格 | $109.99 |
- サチュレーションの種類が選択可能
- オーバーサンプリング搭載
- パラレル処理が可能
- AtoB機能がない
Kiive Audioの製品はいつも良い意味で私の期待を裏切ってくれます。NFuseのときはSSLのFusionだけではなくNEVENoMTBも選択可能にしました。
Distinct Pro!で言えば、ドライブ機能とダイナミクス機能を独立してパラレル処理が可能な点、コンプはフィードバック圧縮とフィードフォワード圧縮を搭載しています。
細かいAtoBなどのコピー機能がないのは残念ですが、それ以外は文句はまったくありません。素晴らしいプラグインだと言えます。