「シンセパッドとシンセストリングスってどう違うの?」と言われてすぐに答えられる人は少ないです。なぜなら同じ用途で使われるケースが多いからです。
ですが、実はしっかりとした違いがあり、その違いをわかって使うことで楽曲に彩りやミックス時の音抜けにもつながってきます。今日はその2つの違いと使い方について説明しています。
シンセパッドとは
シンセパッドとは音の隙間を埋めることを目的とした音色です。音の特徴としては以下の通りです。
- アタックが遅い
- フィルターも閉じ気味(LPF)
- 空間を大きく感じるエフェクト処理(リバーブ、ディレイ、コーラス)
しかし、これは一昔前(今でもこのような音色をパッドとしては認識します)の設定で、最近では派手でアタックの速い音でも「パッド」として使われます。
音がうまればパッドなの??
基本白玉で演奏することで「音がうまる」=パッド的という解釈が可能です。そうなるとピアノやギターも白玉で演奏すれば「パッド」ということになります、ましてオルガンなどのような持続音はまさにパッドではないか?という話になります。ではシンセパッドによる白玉と粗以外の楽器での白玉の違いは何でしょうか?
シンセサイザーには発音時間をコントロールできるエンベロープADSRという機能があります。この機能によって音を自由にコントロールできるのがシンセパッドの特徴です。
つまりどういう意図で音を埋めたいのか?というのがシンセパッドを使うときのポイントになります。
シンセパッドボイシングについて
隙間を埋めるという使い方であれば、クローズドボイシング、広がりを求めるのであればオープンボイシングが最適です。
しかし、まず考えたいのは、パッドの音色がどういったものかです。例えば、中低域に音が集まっているような音色ではクローズボイシングにした場合、より肉厚的になります。それが曲の意図として問題ないのであればよいですが、クローズボイシングで肉厚的にしたくないのであれば、中域よりの音ではなく高音域よりの音にするのが望ましいです。
オープンボイシングにするとボイシングにするとすっきりとした音になりますが、1つ1つの音が離れることでコード感が弱くなる場合があります。
前半、クローズボイシング、後半、オープンボイシング
中低域よりのパッド
高域よりのパッド
シンセパッドのデメリット
↓はゲートシーケンスとアルペジオとパッド系サウンドを混ぜたマルチレイヤーパッドです。
こういうリズミカルな音色を使ったらそれだけ世界観が完成します。しかし、「音を埋める」というパッドの役割からみて、曲の中でその音色占める面積が大きくなります。そのため他の楽器が入る隙間がなくなる可能性があります。なれていない人が複雑なレイヤーパッドサウンドを使うと曲がごちゃごちゃになるリスクが発生します。
これは他のレイヤーサウンドを使うときにもいえますが、レイヤーしたことでどういう効果があるのか?他の楽器とのバランスを意識するのが大切です。
シンセパッドが収録されているソフト音源
シンセパッドというのは総称的な呼び名でもあり、奏法的な呼び名とも言えます。俗に音を伸ばしたままにする「白玉」というのもパッド的と言えます。またピアノやギターなどの楽器を逆再生したもので白玉音の隙間を作らないことを目的とするならば、それもやはりパッド的な使い方になります。
Serum やSylenth1にArturiaのビンテージコレクション系、Falcon、エンベロープの調整が可能であればどのシンセでもパッドは作れます。
あえて唯一無二のパッドを作れるソフトシンセをあげるとするならば、Omnisphere2です。Omnisphere2は生系の楽器とシンセサウンドによるハイブリッドなパッド音を得意とするソフトシンセです。とくに生系の楽器がノイズ的であったりいろいろな要素を含めたものなので、有機的なパッドサウンドにもなります。
シンセストリングス
生のストリングスをアナログシンセで再現しようとしたものがシンセストリングスです。アナログシンセでは生のストリングスを再現するのは不可能であり、作られた音もお世辞にもリアルとは言えません。ですが、リアルでない音色だからといって使いみちがないではなく、隠し味に使うことで、音の天井を上げるような開放的な雰囲気を作れたり、レイヤーによってゴージャスな雰囲気のストリングスサウンドを作れます。
シンセパッドという目的で作られたシンセサイザーはありませんが、シンセストリングスはストリングスの模倣を目的としたsolinaという実機が存在しています。
シンセストリングスボイシングについて
ボイシングはクローズでも使えますが、そのストリングスの再現を試みているので主にオープンボイシングで使うことでよりらしさを追求できます。
シンセパッドと同じボイシングで聴き比べてみましょう。
こちらの方が高域がザラザラとしています。このザラザラ感がストリングスの模倣で目指した部分でもあります。
シンセストリングスは生のストリングスセクションの補佐的な役目で使うと、音がゴージャズに聴こえるようになります。またサンプリング音源のストリングスが生々しすぎるときにもシンセストリングスを使うことで、良い意味でチープな質感に変化させ、楽曲に馴染みを良くする効果が機体できます。
以下の音源はLogicProXのストリングスとシンセストリングスをレイヤーしたものです。
1回目はストリングスだけ、2回目はシンセストリングスのレイヤー、 3回目はオープンボイシングのレイヤーです。
またリズム的な伴奏にも合わせることが可能ですが、音源によってはアタックとリリースが合わないものもあるので、音価によって微調整が必要になります。
シンセストリングスが収録されているソフト音源
UVIのString Machines 2はシンセストリングスを集めたサンプリングソフト音源です
一方Arturia solinaはアナログモデリングによって作られたストリングス音源です。質感的な違いはそれほど大きくないので、好みにあった方を使うので問題ありません。
solina自体がVCOシンセなので、近年のDAWに付属しているソフトシンセでも十分に再現することは可能です。基本はHPFで作るそれらしくなります。こちらもパッド的な使い方をすることになりますが、フレーズに合わせユニゾンすることでPCMシンセのストリングスなどにゴージャスな雰囲気を作ることが可能になります。
まとめ
シンセパッドとシンセストリングスの違いは以下の通りです。
- 白玉をメインで考える演奏で使う音色はストリングスも含めてパッドになる(ギター、ピアノ、)特に埋めるというだけならばオルガンは最強のパッドサウンドとも言える
- エンベロープによって音の埋まり方を調整できるのがシンセパッドの強み
- シンセストリングスはストリングスを再現しようとしたsolinaという実機があるが、シンセパッドにはそのような機体はない。
- シンセストリングスはそのまま使うにはリアルではないので、生のストリングスセクションやPCMストリングスの補佐的に使うのが良い。
- シンセストリングスはストリングスを再現しようとしたsolinaという実機がある。そのまま使うにはリアルではないので、生のストリングスセクションやPCMストリングスの補佐的に使うのが良い。
- 音が薄いので高音域でうっすらと鳴らすことで音抜け感を演出して開放的な曲にしやすい
それぞれの用途を理解して上手く使い分けると音色の存在感が際立ちますよ。