Syntronik 2 MAX v2は34種類のアナログ&デジタルシンセをサンプリングした音源です。その容量は200GB以上であり、音質も容量もモンスター級の音源です。
先にお伝えしたいのは、私はIK Multimedia 製品が好きで同社のT-Racksはバージョン1から使い続けています。
その私から見てSyntronik 2 MAX v2は音質的には素晴らしいと感じた反面、ダウンローダーの不具合にインストールには膨大な時間がかかってしまい、とても手放しでおすすめできる製品ではないと感じました。
そのことを踏まえたうえでSyntronik 2 MAX v2をおすすめする人は次の2つの条件になります。
- ストレージに余裕があり、最新の音質で再現された往年のアナログ&デジタルシンセを使ってみたい
- ダウンローダーによる不具合に感情的にならずに想像以上のインストール時間と向き合える人
2つ目の条件に関しては、あくまで私だけの環境の可能性もありますが、SNS界隈でもインストール不具合に悩まされている人は多いので、少なからずこの条件は多くの人にあてはまるものだと思います。
Syntronik 2 MAX v2 サウンドレビュー
Syntronik 2 MAX v2の音質は一言でいえばすごくソフト的な音。ハードウェアの音を再現ではなく、ソフト上で往年の明記を再現したという印象です。
そのため、クリアでダイナミックレンジが高く、抜けてくるサウンドです。
かんたんにデモを作ってみました。リズム(ドラムとタンバリン以外)は全部Syntronik 2 MAX v2であり、合計20トラック使用しています。
気になっていたのはSY99です。この曲ではFMスラップ風のベースが99ですが、FM特有のゴリッとした雰囲気はあったので使いやすかったです。
ただ、全体的に音量が大きく、デフォルトで使用するとミキサーのピークがついてしまうので、かなりガッツリと下げて使用するのが良いでしょう。
また、Syntronik 2 MAX v2の音源は素のオシレーターを使ってゼロから音を作るというのが目的ではなく、Syntronik 2 MAX v2を制作したサウンド・エンジニアの音色を楽しむものという位置づけであると感じました。
もちろん、オシレーターだけの音もないわけではありませんが、数としては少ないので、サウンドデザインよりプリセットありきで楽しみたい人向けの音源です。
機能性および操作性
ここではSyntronik 2 MAX v2の機能等について気になった部分を解説します。
アナログシンセ等の挙動を再現するDRIFT機能
Syntronik 2 MAX v2はサンプリング音源ですが、独自のDRIFT機能を使うことであなろぐシンセ特有の音のゆらぎ(同じサンプル音源でも発音されるたびにフェイズ、ピッチなどが異なる)を再現します。
Sampletank4の拡張音源として利用可能
Syntronik 2 MAX v2の音源をSampletank4に読み込むことで拡張音源として使用することが可能です。
Sampletank4の音色とレイヤーして使いたいという場合にはとても便利だと思いますが、個人的にはSyntronik 2 MAX v2ではシンセに合わせたGUIが用意されており、そちらを使う方がテンションが上がるので私はSyntronik 2 MAX v2を使うことが多いです。
容量が大きすぎる
Syntronik 2 MAX v2には34種類のシンセ、5,000種類以上のプリセットを収録しています。そのためストレージに210GBの空き容量が必要になります。
そのため、ストレージの容量が小さいユーザーは外部ストレージを用意する必要があります。
ただ、これは後述するUVIとの比較でもそうですが、往年の名機と呼ばれたものをソフトシンセ化する場合、とにかく容量が肥大化する傾向にあります。実機では数メガバイト程度であった音色を数ギガバイトのメモリを使ってサンプリングすることの意味は、実機に慣れ親しんだ立場からすると、そのやり方に多少の疑問を感じてしまいます。
ダウンローダー(IK Product Manger)の不具合と改善方法について
Syntronik 2 MAX v2をインストールする方法は、一般的にはIK Product Mangerを使用します。
これは他のIK Multimediaの製品のインストールやオーサライズ、さらにアップデート等も可能なアプリになっています。
Syntronik 2 MAX v2のサウンドをインストールすると以下の表の22のレガシーシンセのサウンドを一括でダウンロード可能です。
22 Legacy Synths | |||
---|---|---|---|
99 | Blau | Bully | DCO-X |
Galaxy | Harpy 260 | J-60 | J-8 |
M-Poly | Memory-V | Minimod | Modulum |
Noir | OXa | Polymorph | Pro-V |
SAM | SH-V | String Box | T-03 |
V-80 | VCF3 |
ただ、Syntronik 2 MAX v2によって追加された。12の音源については個別ダウンロードが必要になります。
12 New Synths | |||
---|---|---|---|
CATO | GS-V | KW8000 | Megawave |
M-12 | Obie One | OSC-V | Pro-VS |
Sorcerer | Syner-V | Synth-X | Triptych |
さて、これらを普通に機能すれば「多少使い勝手が良くない程度のダウンローダー」で終わるのですが、IK Product Mangerに限っては「かなり使い勝手が悪いダウンローダー」となりました。
ここからは私がSyntronik 2をインストールするために行った過程について解説していきます。
Syntronik 2のサウンドコンテンツをインストールすると途中で止まる
一般的な方法としてまず、Syntronik 2のサウンドコンテンツによって一括ダウンロードを試みました。しかし99%まで進みますが、そこで止まってしまいました。
もちろん止まるだけで復活できるならば問題はありませんが、数時間かけても止まったままで私は最長で4日間待ちました。
「いや、5日目から動くのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、そうなのです。それがSyntronik 2 MAX v2をおすすめできる条件になります。
しかし、普通の人なら待てても一晩ではないでしょうか?
結局のところ、アプリを終了してやり直しするしかないと考えるわけですが、終了しようとすると「ダウンロード中だけどいいのか?」みたいな警告メッセージがでて、それでも終了するを選択しても何も起きません。つまり終了することができなくなりました。
結局、強制終了して再度立ち上げると、Syntronik 2がインストールする22のシンセについては一応インストール完了している表示はされるのですが、99%で止まった状態が果たして本当にインストールできているか疑問ですし、それを一つずつ調べていく作業をすべき立場ではないと思っています。
音源を使っていて落ちてしまうことがあると「インストールが上手く行ってないのでは?」という無駄な思考に悩まされます。
Syntronik 2を使わずに個別ダウンロードを実行した場合
今度はSyntronik 2を使わずに、個別でダウンロードしていきました。
しかし、今度は特定の音源で躓いたのかそこからダウンロードは進みませんでした。ちなみにこのプロセスはもう一月近く行っており、ダウンロードが止まってしまう音源はある程度バラけているので、IK Multimediaのサーバーが問題なのかもしれません。
解決方法
最終的にはダウンロードは上手くいきました。その方法はダウンロードが停止したら強制終了して、ダウンロードパス(音源をどこにダウンロードするのか)を毎回変更することで、最終的にはすべてダウンロードできました。
しかし、本当にこのような形でしかダウンロードができないのは残念です。
UVIとの比較について
Syntronik 2 MAX v2と似たようなサンプリング&アナログ音源をソフトシンセ化しているものとしてUVIのUVI Vintage Vault 4があります。
では、UVIとSyntronik 2 MAX v2を比較して、その違いを確認してみます。
項目 | UVI Vintage Vault 4 | IK Multimedia Syntronik 2 MAX V2 |
---|---|---|
搭載楽器数 | 36以上のインストゥルメント | 33のシンセモジュール |
プリセット数 | 10,000以上のプリセット | 5,500以上のプリセット |
価格 | $599 (通常価格) | $399.99(通常価格) |
収録内容 | 250以上のヴィンテージシンセサウンドバンク | 55のヴィンテージシンセサウンドバンク |
エンジン | UVIのFalconおよびUVI Workstation | IK MultimediaのSampleTankエンジン |
主な特長 | 高解像度サンプリング、リアルタイムなサウンドシェーピング | Waveシンセ、ドリフト技術、モデル化されたフィルターとエフェクト |
互換性 | macOS 10.14以降、Windows 8以降 | macOS 10.10以降、Windows 7以降 |
ストレージ必要量 | 281GB | 240GB |
付属ソフト | UVI Workstation、Falcon | SampleTank 4 |
その他の特長 | レイヤー構成のカスタマイズ、スクリプトベースのサウンド | アナログモデリング、複数のフィルタタイプ |
搭載している楽器数は割と似ていますが、プリセットに関してはUVIの方が多く。音色の豊富さが伺えます。ただ、多ければよいのか?という問題ではないので、あくまで数字上の違い程度に捉えておくと良いでしょう。
肝心の音質ですが、これも好みによるところが多いのですが、個人的にはUVIの方が押しが強く、なんとなく実機的な質感を強く感じます。一方、Syntronik 2 MAX V2は近年のソフトウェア的な音でとてもクリアでレンジが広い印象です。
どちらが良いか?というよりは用途によって使い分けるというアプローチが正しいように思います、
CPU負荷について
デモソングでは20のSyntronik 2 MAX v2 を使用しましたが、CPU負荷は思っていたより低いです。
ただ、Syntronik 2 MAX v2 のトラックを選択するとシングルCPUに負荷が高くなるので、CPU負荷逃がしをすることがおすすめです。
音源が刺さっていないトラックを選択することでシングルCPUの負荷がマルチコアに分散されることを「CPU負荷逃し」と私が勝手に命名しています。
CPU負荷を効率化させより多くのプラグインを動作させる方法について詳しく知りたい方は以下の記事が参考になります。
また、SampleTank4とSyntronik 2 MAX v2の拡張音源を使用した場合のCPU負荷ですが、ほとんど同じなので、そのあたりのCPU負荷についてはあまり悩まくて良いと思われます。
CPU負荷計測環境
パソコン Macmini2018
CPU Intel Corei7(i7-8700B)6コア
HT使用時12コア 3.2GHz/ターボブースト(TB)使用時4.6GHz
メモリ 32GB
システム OS12.6.1 Monterey
Audio/IF Focusrite RED 8PRE
バッファー 256
DAW LogicPro10.7.7
48kHz/24bit
再生ストレージ SSD
まとめ
メーカー | IK Multimedia |
システム | Mac® (64ビット) 最小: Intel® Core™ 2 Duo (Intel Core i5 推奨)、 4 GB の RAM (8 GB 推奨)、macOS 10.10 以降。 Windows® (64 ビット) 最小: Intel® Core™ 2 Duo または AMD Athlon™ 64 X2 (Intel Core i5 を推奨)、 4 GB の RAM (8 GB を推奨)、Windows® 7 以降。 ASIO 互換のサウンド カードが必要です。 OpenGL 2 互換のグラフィック アダプターが必要です。 サポートされているプラグイン形式 (64 ビット): VST 2、VST 3、AAX。 |
認証方式 | シリアル |
認証数 | 5 |
マニュアル | 英語 |
価格 | $219.99 |
備考 | Syntronik 2 CS 用の 10 GB のハードディスク容量 Syntronik 2 SE 用の 20 GB のハードディスク容量 Syntronik 2 用の 100 GB のハードディスク容量 Syntronik 2 MAX v2 用の 240 GB のハードディスク容量 サポートプラグイン形式 (64 ビット): Audio Units、VST 2、VST 3、AAX。 |
Syntronik 2 MAX v2は近年のジャンルにもフィットしそうなクリアな音質です。ストレージは240GB近く圧迫するのでストレージに余裕がないと少し厳しいでしょう。それぞれの音色も1GBを超えるような音色もありますが、CPU負荷に関してはそこまで高くないので、搭載しているメモリを考慮しながら使えば、ストレスなく使える音源ではあります。
ただ、ダウンローダーに関しては、あまり完成度が高くなく、インストール等に苦労しているユーザーも多いので、メーカーとしては素早い改善を求めるばかりです。
音作りよりはプリセットありきで使いたい!UVIよりもう少しクリアな質感がほしい!という人にはSyntronik 2 MAX v2はおすすめです。
価格$219.99です。単体で購入するよりもTotal Studio 4 MAXを購入すれば同じ価格で以下のセットが購入できるので断然Total Studio 4 MAXの方がお得です。
製品名 | 定価 (USD) | セール価格 (USD)(税込み) |
---|---|---|
AmpliTube 5 MAX v2 | $329.99 | $109.99 |
T-RackS 5 MAX v2 | $329.99 | No sale |
SampleTank 4 MAX v2 | $329.99 | $54.99 |
Syntronik 2 MAX v2 | $219.99 | No sale |
ARC 3.5 | 記載なし | No sale |
Hammond B-3X | $110.59 | No sale |
Lurssen Mastering Console | $110.59 | No sale |
Miroslav Philharmonik 2 | $221.20 | No sale |
MixBox | $109.99 | No sale |
MODO BASS 2 | $219.99 | $54.99 |
MODO DRUM 1.5 | $299.99 | $49.99 |
SampleTron 2 | 記載なし | No sale |
TONEX MAX | $329.99 | $109.99 |