「シンセサイザーを始めたい!でも難しそう」「自分に使えるかどうか不安」「かっこいい音ってどうやって作るの?」
などなどシンセを始めるのに不安な気持ちを持っている人は多いです。ボタンやツマミがたくさんあって何をどうすればいいかわからないというイメージがそうさせているのと、ピンきりな値段が二の足を踏ませているのかもしれません。
買ったはいいけど使いこなせなくて無駄になってしまうことを危惧されている人もいるかもしれません。でも大丈夫です。シンセサイザーは簡単です。
どんなに複雑そうなシンセに見えても最終的なプロセスはまったく同じなのです。そこを理解できるとシンセサイザーの理解が深まりほとんどのシンセサイザーを取り扱えます。
シンセサイザーとは
電子工学的手法により楽音等を合成することをシンセサイザーと呼びます。
つまり後述するシンセサイザーとエレピの違いは
「発音方式は同じだが、加工できるかできないか?」という点にあるといえます。
この加工の範囲は
音の3大要素
- 音の高さ
- 音の大きさ
- 音の明るさ
を加工できればそれはシンセサイジングできていると言えます。
シンセの音源方式はたった5つ!
メーカーによってたくさんのシンセサイザーが発売されていますが、
大まかに分けて種類をわけると次の4つの音源方式にまとめられます。
- アナログシンセ(倍音減算方式)
- デジタルサンプリング(生音録音再生方式)
- FMシンセ(倍音減算方式)
- ウェーブテーブル(波形連続変換方式)
- フィジカルモデリング(物理演算方式)
アナログシンセ(倍音減算方式)
オシレーターから発信する音をフィルターを使って音色自体をこもらせたり、明るくしたりすることで音作ります。すべてのシンセサイザーの基礎的な位置づけでもあるので、この音源方式にいて理解を深めることができるとある程度のシンセサイザーの音作りの仕組みを理解しやすくなります。
最近ではこれらの往年の名機をデジタル上で再現するVA(バーチャルアナログモデリング)という技術を使って再現している音源もあります。
メリット
音の作り方がシンプルでわかりやすいため仕組みを理解しやすい
オシレーター特有の音のゆらぎが温かいサウンドを作り出す
デメリット
オシレーターが以上の音は基本でない(倍音を加工できるエフェクトがあれば多少は増やせる)
他のシンセと比べると音作りの幅は狭い
JPOPなどで聞かれるキラキラしたベル系の音は得意ではない
個人的な見解
ハードシンセのサウンドはパソコンでかなりのレベルまで再現できるようになっています。曲作りで使う場合アナログシンセはプリセットと呼ばれる音色を保存しておくメモリがありません。だから毎回最後に作った設定から始めないといけないのが多少ネックに感じる人もいるでしょう。
なので、どうしてもハードの質感を求めず「それなりの雰囲気」でも問題ないのであればソフトシンセでVA音源を使うのが良いとは思います。ただ、ポップス産業を築き上げてきたアナログシンセ
一度本物を触ることができれば、より音色への造詣は深いものになると思います。アナログシンセのオシレーターは基本どのアナログシンセも同じです。SINE波 SAW波 SQUARE波 PLUSE波 NOISE波形しかしこれらも機種によって微妙にその波形が異なります。このあたりが実機の面白いところでもあります。
ソフトシンセではありますが、モデリングシンセの波形を比較した記事があるので
よければ参考にしてもらえればと思います。
ソフトシンセ
アナログMoog Prophet5、ODYSSEY JUPITER Juno
VA(バーチャルアナログ)NodeLead VIRUS JP-8000 MS2000
Arturiaシリーズのモデリング音源
Sylenth1
Flaconの音源方式の一部
ハードシンセ
Moog Prophet5、ODYSSEY JUPITER Juno往年の音源
デジタルサンプリング(生音録音再生方式)
ピアノやギターベースにドラムなど生楽器を取り込まれて発音できるシンセサイザーのことです。どれだけリアルな楽器を録音できるかはシンセサイザーに搭載されているメモリによって違ってきます。搭載メモリが多いと、高いクオリティ(bitとサンプルレート)と長い時間を録音することができます。
広義な意味でいうとデジタルピアノデジタルサンプリング式と言えますが、シンセサイザーの定義は「音を加工できる」という点にあるのでデジタルピアノなどは厳密な意味でシンセサイザーとは言えません。
個人的な見解
ハードシンセの場合はメモリの上限がある程度決められています。パソコンの場合はそのメモリ量を自分で管理できるので音色のクオリティはソフト音源の方が上の部分もあります。
しかし、ハード音源の場合は純粋にメモリだけが音色のクオリティとも言い切れず鍵盤との相性や、音の出力口であるDAコンバーターの質などとも深く関わり合ってつくられているので、そのあたりが「ハードシンセは楽器である」と言えるように思います。そしてハードシンセのスイッチさえいれれば、すぐに音を出せて音作りができるそのスピード感はハードシンセの方が上だと思います。
メリット
現実に存在する楽器をサンプリングして使うことで
3000万のピアノからアフリカの民族楽器まで扱うことができる
デメリット
音色のクオリティは搭載メモリによって決定する
最近のシンセサイザーはマルチ音源方式になっているものも多くデジタルサンプリング方式と他のエンジン(音源方式)とのハイブリッド形式のものが多いです。
ソフトシンセ
Sampletank
HALion
Kontaktシリーズ
Kontaktに関してこちらの記事が参考になります。
KOMPLETE 12購入はULTIMATEがオススメ!その理由とは
Falconの音源方式一部
DAW付属の音源
ハードシンセ
M1シリーズ
D50〜
SYシリーズ
JV,XV、INTEGRA-7
ハイブリッド音源方式になるシンセ
FMシンセ(倍音減算方式)
アナログシンセのようにオシレーターを使って音を出すまでは同じですが。そのオシレーターをものすごく早く震わせることで音の倍音を作ることができるシンセサイザー方式です。
アナログシンセとの一番の違いはフィルターで音を削る(倍音を削る)のに対してFMシンセは倍音を足していくという考えです。とにかく難解で素人がその発音方式を理解するのは幼稚園児が大学の勉強をするレベルとまで言われたものです。
実際このFMシンセを理解し尽くした人はプロの中でもほんの一握りと言われています。しかし。そこから出てくる音は現実世界にはない良い意味で硬質で冷たく唯一無二の存在感のある音が出せます。
個人的な見解
とにかく複雑で金属的な音が得意ですが、アナログシンセ顔負けのウォームなパッドやストリングスも作れます。音作りは他の音源と比べると難解な部分もありますが、FM8ではかなり音の流れを把握しやすい構造になっているのでおすすめです。
ソフトウェアの音作りの便利さはハードでは得られないものですが、往年の名機と呼ばれた「楽器」としての存在はDX7にもあってやはりこれでしか出ない音というのも存在しています。
音作りは困難を極めますが、ネット上の情報をかき集めながら今だからこそDX7触ってみるのもありかもしれません。
メリット
倍音を操ることでベル系などの金属的な音を作れる
デメリット
発音原理が複雑過ぎて理解が困難
ソフトシンセ
FM8
Falconの音源方式一部
Flow Motion
Dexed
など
ハードシンセ
DXシリーズ
K5000S(W)
FS1R
MONTAGE
KRONOS
など
ウェーブテーブル(波形連続変換方式)
ウェーブシーケンスとも呼ばれています。
ここ近年でもっとも旬なシンセサイザーといえます。
短い波形(シンセの一周期分)を好きなように並べてそれを
パラパラ漫画のようにめくっていくことで音が変化していくシンセサイザーです。
音の変化を時間軸でコントロールすることができるので
現実的ではないですが、ピアノからベースそしてギターからボーカルといった
音色変化が可能になります。
最近ではEDMのワブルベース系を作るのに向いているとされ
多くのEDMアーティストによって使われています。
個人的な見解
本来ウェーブテーブルはシンセの一周期分をランダムに並べ替えることができるものですが近年のウェーブテーブルはある程度それが固まった(ボックス化)された状態のものを示しています。
ワブル系の時間軸による音色変化が売りですが、デジタル的なパッドも中々の魅力でレイヤーサウンドとして使っても独特の存在感がでます。
メリット
音色変化の時間をコントロールできることで
なめらかに波形が変化していく
デメリット
搭載されている波形を理解していないと音の変化の予想がつきにくい
ソフトシンセ
Serum
Massive
ハードシンセ
The wave及び多くのWaldorf製品
フィジカルモデリング(物理演算方式)
現実にはない楽器をコンピューター上で作り上げてしまうシンセ方式です。長さ5mのトランペットやフルートをバイオリンの弓で発音させるとどうなるか?などです。ただそのような楽器が「音楽的に使えるか?」という点においてはNoとしかいえません。最近ではソフトシンセとして
生楽器のサンプリングとフィジカルモデリングのハイブリッド音源として使われることが多いです。
個人的な見解
YAMAHAが出した物理音源はVL1と音源数を減らしたVL7にモジュールのVL1m
そして同時発音数を16、さらに物理音源を極めたVP1お値段はデジタルシンセでもっとも高額な270万円です。
しかし、その技術も今ではパソコンで簡単に作れてしまうものになっているはずですが、ソフトウェア版が出てこないところを見ると大人の権利の問題が大きく関係していると思います。
ソフト版VP1が出たらどんな音作りができるのか楽しみなんですけどねw
メリット
計算レベルでどこまでも無限の楽器を作り出せる
デメリット
あくまで理論上の話を形にしているという点であって
リアルさのレベルでいえばデジタルサンプリング方式の方がリアルといえる
ソフトシンセ
WIVI
Pianoetqシリーズ
ModoBass
ModoDrum
SWAMシリーズ(バイオリン、ビオラ、チェロ)など
ハードシンセ
VL1
VP1
Prophecy
Z1EX
すべてシンセサイザーに共通するパラメーター
音源方式は異なっても共通すのがADSRという時間変化のパラメーターです。ADSRとは一言でいえば時間の音量変化をコントロールするパラメーターです。どんな音源方式であってもその音がすぐに発音が終わるのか、ずっと続いているのか?音の立ち上がりは早いのかなだらかなのか(遅いのか)などはすべてのシンセに共通する音色変化です。
つまり音量の時間変化こそもっとも音作りの基礎中の基礎と呼べるものです。
どんなシンセであってもADSRはさえ理解できれば重要なシンセパラメーターの一つ「音量の時間変化」はコントロールすることできます。ADSRに関してはこちらに詳しく書いてありますので参考にしてもらえればと思います。
初心者DTMerが理解できるエンベロープ(ADSR)の設定方法
なのでシンセの音作りで難しいと思ったらとにかくADSRを触って楽器の時間的音量減衰を考えながら触ることでその楽器の特性を感じることができます。
実はプロでも大事にするのはADSRです。なぜならば音楽は時間にそって変化する芸術です。音色も同じです。よくプラック系と呼ばれる音がすぐに減衰する音色がありますが、これらも「なぜその時間げ減衰するのか?」の意味がないとクオリティが高いとは言えなくなります。
プロのクオリティとは「意図のコントロール」にあると思ってもらえればわかりやすいのかもしれません。同じ音色でもテンポが違えばADSRで時間にあった音色に変更します。知らない人からみれば「えっ?変わったの?」くらいの調整であってもプロにはその僅かなさじ加減に意図があります。
ただの音量変化でしょ?と甘く見てはいけません。ここに音色の顔があると言っても過言ではないくらいに考えても問題はありません。
おすすめのシンセサイザーは?
すべての音源を網羅しているハイブリッドシンセは魅力です。
鍵盤数によっては値段が安くなる傾向にあります。
しかし、もしDTMで音楽をやるという目的ならば…これらはソフトシンセでも代用できる部分も多いのでパソコンとソフトシンセを購入することも考えた方がコスパの面ではよくなる可能性もあります。
パソコン購入とDAWの選び方については以下の記事が参考になります。
MACで始めるDTM!!初心者が失敗する間違ったDAWの選び方
5つのDAWを比較してわかったCPU使用率が1番軽いDAWはどれ?
DTM初心者が失敗しないMIDIキーボードを選ぶ5つのポイント
まとめ
シンセサイザーとは次の5つからなる音声合成方式をしめすもの
- アナログシンセ(倍音減算方式)
- デジタルサンプリング(生音録音再生方式)
- FMシンセ(倍音減算方式)
- ウェーブテーブル(波形連続変換方式)
- フィジカルモデリング(物理演算方式)
アナログシンセは音色の作る幅が狭いもののその音の存在は
今まで数々のジャンルを作り上げてきたシンセの基礎中の基礎的サウンド
FMシンセやウェーブテーブルは近年流行りのEDM系に強い
デジタルサンプリング方式はオールジャンルに特化する
フィジカルモデリングは現実にありえないサウンドを作ることができる
すべてのシンセサイザーには時間的音量変化(ADSR)という
共通のパラメーターが存在する
ADSRは音色の顔
意図とする時間変化を操ることで楽曲のクオリティは上がる
多くのシンセサイザーもわけてしまえばたった5つです。
どれがいいのかは財布と相談する部分でもありますが、
メリット・デメリットによる音作りをイメージすることで
自分にぴったりのシンセが見つかります。