DAWを選ぶときのポイントは色々ありますが、わかりやすい選び方のポイントは「軽いDAW」であるかどうかです。軽いDAWであればCPUに負荷をかけずにキビキビと動くのでフリーズしにくい(DAWが落ちにくい)多くのソフトシンセが立ち上がる メリットがあります。
今日は5つのDAWを比較してDAWの軽さについてチェックしてみたいと思います。
[memo title=”関連記事”]
[/memo]
環境と比較DAWについて
検証環境は
- Macpro2009
- CPU3.46GhzX2 6コアX2
- (仮想24コア)メモリ
- 64GB
- システムOS10.12.6 Sierra
- オーディオインターフェイスmotu896HD FW接続
CPU負荷について
DAWにとってCPUはとても重要です。数値が高いほど次のメリットが得られます。
- たくさんの音源やエフェクトを立ち上げられる
- DAWの反応速度がよくなる(レインボーカーソルなどの待ち時間をなくしたい)
CPUが速いと上記の二点が改善される傾向にあります。CPUに関してはこちらの記事が参考になります。
[card2 id=”3534″ target=”_blank”]
デメリットは逆の話になり
- 音源やエフェクトをあまり立ち上げられない
- DAWの反応が遅くなる(フリーズしているのかもわからない)
- 強制終了の原因になる
CPUのパワーをもっていかれるのは主に次の3つです。
- バーチャル音源(VAソフトシンセ)
- サンプリング・リバーブ(IRリバーブ)
- 複雑な処理をしているマルチ音源
VAソフトシンセはコンピューター上でアナログシンセの挙動を再現するソフトです。高い再現度のアナログシンセをソフトシンセで作ろうとすると高負荷になります。
サンプリングリバーブは本物の響き自体を収録しそれをプラグイン上で再現するもので、もともと負荷が高いリバーブですがIRリバーブはより負荷が高くなります。
マルチ音源に関してはCPU負荷よりメモリの方に意識がむきそうですが、大量のマルチティンバーで組まれた音源は複雑なプログラムを制御することになり、結果がメモリもCPUの負荷のたかいものになる音源があります。
今回はwavesのVA音源(バーチャルアナログ)Elementを使ってのテストです。なぜこの音源なのかというと数ある音色のなかで「CPUKiller」という音色あるのですが、たった一つの音色でCPUのパワーを10〜20%から持っていくからです。
この音源を各DAWでいくつ立ち上がるのかをテストすることDAWの処理能力を測るのが今回のテストの狙いです。

比較DAWは次の5つ
- Cubase Artist9.5
- Logic 10.4.1
- StudioOne3.5
- Protools11.3.1
- digital performer9.5
内容は
- 48khz32bitFloat(ロジックは24bit)
- バッファ1024
- 3和音の全音符を2小節を4回繰り返す

Cubase Artist9.5

基本音源だけを立ち上げるのであれば特にどのDAWも数に問題はありません。とりあえず検証環境として10個立ち上げています。最近はどのDAWも使っていないときはCPUリソースを解放する傾向にあるので再生していないときはCPUメーターは静かなものです。
結果は音切れを含めてギリギリ再生できるのは8トラックまで9トラックでは一応再生はできますが、まともに再生はできません。7トラックであれば一応問題なく再生できます。
Logic 10.4.1

相変わらずCPUのマルチ処理が下手ですw結果は6トラックでエラーが発生してブツブツとぎれまくりです。問題のない再生トラック数は5といったところです。
追記
LOIGC104.2にアップデートすることでかなりCPUの分散処理が改善されています。
[card2 id=”4565″ target=”_blank”]
StudioOne3.5

8トラックで音が途切れますが再生はできないこともないレベル。7トラックだとCPUは70〜80%くらいになり少し余裕があります。
Protools11.3.1

ちょっと意外な結果だったのがProtoolsでした。11トラックは再生できませんが、なんと10トラックで音切れ再生ストップがたまにでるレベル。9トラックは余裕でした。CPUの分散もかなり頑張っている感じ、PT12はさらにCPUリソースの解放がうまくいくという話なのでもっと再生できるかもしれません。
digital performer9.5

DAWの中で最もCPUリソースの解放がうまいと言われているDP9は11トラックで音切れ再生10トラックは再生メーターがレッドゾーンになりますが、まったく問題なく再生できました。ただ気になるのが11トラック再生のときもそうですが、CPUメーターはまったくふれず再生メーターが真っ赤になって止まるということマニュアルによると
プロセッシング
プロセッシングセクションでは、Digital Performer が使用しているコンピュータ の CPU 状況を表示します。このメー ターの表示が限界に近付いた場合には、 リアルタイムエフェクトの使用を減らし ましょう。
再生
再生セクションでは、再生バッファーの 状況を表示します。再生メーターが限界 に近づいている場合には、スタジオ設定 ダイアログボックスでプライムミリセカンドを大きくします。
ということなので、値をいくつか適当にいじってみましたが特に再生トラックには影響はありませんでした。ただmacpro2009の足回りは最新のものと比べるとかなり遅いのでひょっとしたら新しいマシンではもう少しこの再生のところで再生トラックが変わってくるかもしれません。しかしDPのプリジェンモードはすごいですね
加筆 2018/06/21
Grand Central Dispatchとはマルチスレッドプログラミングを実現するための技術ということ調べてみたらOS10.6から導入された技術みたいですね。DAWのプログラムをGCDが処理できれば、よりマルチコアの恩恵を受けられるというものらしいです。
さいごに
DAW比較!CPU占有率で一番軽いDAWはどれ?いかがでしたでしょうか?順位としては
- DP9.5(10トラック)
- PT11.3.1(9トラック)
- StudioOne3.5(7トラック)
- Cubase Artist9.5(7トラック)
- Logicpro10.4.1(5トラック)
といった結果になりました。
正直検証環境が最新ではないので、どこまで参考になるか疑問な部分もありますが、目安にはなると思います。今回はサンプルメモリでなくCPU使用率にこだわったので使用環境によっては結果が変わってくるかもしれません。今後のDAWを選ぶ参考にしてもらえたら嬉しいです。
MacMini2018で計測した記事はこちらになるので新しい環境でのCPU負荷が気になる方は参考にしてください。
[card2 id=”10580″ target=”_blank”]
コメント
コメント一覧 (2件)
非常に有用な検証記事をありがとうございます。
元々DPのPre-Genには目を見張るものを感じておりましたが、客観テストで優秀だという結果を示して頂いたことで、その感覚に自信を持つことができました。
なお、自分の場合、プロセッシングと再生のバランスを、どちらもレッドゾーンにならないように(どちらかと言えば再生が多めで)、バッファーサイズで調整しています。
勿論、バッファーは小さい方がレイテンシー的には良いのですが、DPの特性かMOTU828mk3の性能か、バッファーサイズに対してレイテンシーが非常に少ないようで、大きめに取っても実用面で支障が少ないように感じています。
質実剛健なDP。ここ数日、ブログやツイートなどでポツポツと話題になっているようなので、この調子でユーザーを増やしたり情報が流れるようになれば良いなと思っております。
Ramzaさん>
こちらにも熱いコメントありがとうございます。
Pre−Genモードは本当にすごいですね。
一番驚いたのは老舗のDPがその部分で最新のDAWより優れているということ
DPの開発者の熱量が伝わってきます。
バッファに関しては私もまだ検証しきれていない部分もありますが、
今回の検証内容ではやはりCPUをバカ食いしてしまうため
1024での検証しかできませんでした。
しかしDPのバッファは他のDAWよりかなり優秀な処理をしているように思います。
このままこの部分をさらに高めていってほしいと切望してますw