マイクで録音した音声がこもる理由とその解消方法について、音質を向上させるための具体的なイコライザーセッティングを知りたくありませんか?
イコライザーの設定は、音をクリアにするための鍵となります。この記事では、音のこもりを防ぎ、声を聞きやすくするための効果的な方法を紹介します。高音域をブーストするだけでなく、中音域を適切にカットすることがポイントです。
なぜなら、中低音域に音が集まりすぎると、全体的に音がこもってしまいます。ここでは、配信や録音に最適な具体的な周波数帯域の調整方法についても詳しく解説します。音響学的な根拠に基づいた方法で、クリアな音質を実現しましょう。続きはこちらで確認してください。
イコライザー 声をはっきりと聞きやすくするEQセッティング
ここでは配信等を目的とした場合でイコライザーでかんたんに声を聞きやすくする方法を解説します。
まず試して欲しいのがこの声に特化したイコライザーセッティングです。
周波数帯域 | 調整 | 目的 |
---|---|---|
80 Hz以下 | カット | 不要な低周波ノイズの除去 |
80 Hz – 250 Hz | 控えめにブースト | 声のボディや温かみの強調 |
250 Hz – 1 kHz | カット/控えめにブースト | 声の明瞭さの調整 |
1 kHz – 4 kHz | ブースト | 声の明瞭さとプレゼンスの強調 |
4 kHz以上 | ブースト | 声の輝きと空気感の追加 |
80Hz以下は空調のブーンという低い音などを取り除くことを目的としています。
80Hz〜250Hzのブーストは声だけの場合ならば有効に機能するかもしれませんが、他の素材が入っている場合は上記で説明したようにそちらをカットする方が聞きやすい音声になることが多いです。
なぜ1kHz〜4kHzがブーストなのか?
A. J. Wellsによる「Speech Communication: Human and Machine」によれば、声の知覚において2 kHzから4 kHzの範囲が非常に重要であり、この範囲の周波数成分は声の理解度に強く関連しています
(電話の音も1kHz付近が強調されるようになっています)
これらの設定は声だけではなく歌ってみた配信などのボーカルにも応用できるテクニックなので覚えておくと役に立つどころか、耳の肥えたユーザーからも納得の行く音声だと認識してもらえます。
配信等で気をつけたいイコライザーセッティング
配信作業ではBGMや効果音を使用しているケースもあります。そのイコライザーの98Hz付近と270Hzの2つの周波数を3〜5dB程度カットします。この理由は、男性と女性の普通の喋り声の周波数から参考にしています。
性別 | 基本周波数範囲 |
---|---|
男性 | 約85 Hz ~ 180 Hz |
女性 | 約165 Hz ~ 255 Hz |
これは他の素材に声の周波数帯域を譲ってあげるという考え方から成り立っています。
また注意しておきたいのはこもった音を処理する方法としてイコライザーで高音域をブーストするのはよく使われる方法ですが、これには注意が必要です。なぜならば、ブーストした帯域は音量が上がっていることなので、音割れの原因に繋がるケースがあります。
なので、高音域をあげるのではなく、中音域を下げるという考え方にします。
インスタントな方法ですが、イコライザーで500Hz以下を3dB〜5dBくらいカットしてください
実はこれだけでも音のこもりはある程度解消できます。
音のこもりの要因は様々ですが、一般的には中低音域に音が集まりすぎている状態を適切に処理できていないのが原因です。
高音域をイコライザーでブーストすると、こもりの原因の中低音より高音域が耳につくため「音が抜けた」ように感じるわけです。
音がこもらない音声録音方法
とりあえずイコライザーで簡単に認識する方法というテーマですが、実は一番大切なのは録音方法です。ここがおろそかだと録音した音が強烈にこもっていることになり、そうなるとイコライザーでの修正は困難を極めます。
そこで音がこもらないための音声録音方法を紹介します。
適切なマイク配置と距離
マイクを音源に対して適切な距離と角度で配置します。一般的には、声を録音する場合、マイクから口までの距離は約15〜30センチメートルが推奨されます。
マイクが音源に対して近すぎると、「プロキシミティ効果」と呼ばれる現象が発生し、低周波数が強調されて音がこもる原因となります。適切な距離を保つことで、この効果を軽減し、クリアな録音が可能になります
音響処理とルームアコースティックの改善
録音環境の音響処理を行い、反射音をコントロールします。プロの間では吸音材やディフューザーを適所に配置し、反響やエコーを抑えます。
しかし、一般の人ではそこまでお金をかけられるケースは稀かもしれません。そこで使えるのがぬいぐるみ等やTシャーツなどを録音の近くにおくことで少しは部屋の不要な反響音を抑えられる場合があります。
反射音やエコーが多い環境では、音が壁や天井に反射し、マイクに届くまでに多重反射を繰り返すため、録音された音がこもって聞こえます。吸音材やディフューザーを用いて反射を抑えることで、直接音の割合が増え、よりクリアな録音が可能になります
これは言い換えるとスピーカーセッティングにも使える話であるので、以下の記事が参考になります。
適切なマイクの選択
録音する音源や環境に適したマイクを選択します。一般的に、コンデンサーマイクは高感度で広い周波数特性を持つため、クリアな音を録音するのに適していますが感度が広いためノイズを含めた他の音も録音してしまいます。
音声配信だけに限れば、スマホのマイクでも距離感さえ注意すれば問題なく録音はできますが、歌ってみたなどの配信用途に使うには細かい歌のニュアンスまでは録音できないため、やはり音楽に特化したコンデンサーマイクを使用するのがオススメです。
環境音を考える
例えば、エアコンな中低音のノイズを多く出しているので、エアコンの音と声を同時に録音してしまうとこもりの原因につながります。
レコーディングに高いクオリティを求める人はボーカルブースなどを購入するケースもありますが、これも決して安いわけではありません。
そんなときに使いたいのが、ボーカル以外のノイズを削除するプラグインです。
このプラグインを使えば通常の生活環境音はほぼ抑えられます。ただ、音質が若干変化してしまうので、歌ってみて系で使うのは悩みどころかもしれません。
録音機材/環境が正常に動いているかチェック
マイク録音でこもる場合にチェックするのも大切です。これはこもる原因よりマイクが不調であれば、そのあとは何をやっても解決できる可能性がなくなるからです。
明らかにこもっている場合はマイクやオーディオインターフェイスの不調が考えられます。ここが原因の場合どうやっても音のこもりは解消されません。
こもらないためには前提として正常な録音機材と録音環境をが重要です。
ケーブルの断線の見直し
オーディオインターフェイスのゲインのチェック
コンデンサーマイクの状態と距離をチェック
エフェクトプラグインの使いすぎ
アレンジの問題
ケーブルは断線すると、そもそも音がでないので、マイクケーブルが「音のこもりの原因」にはなりにくいですが、音の道筋をチェックすることで原因を絞っていけるの忘れないようにしたいところです。
こもる原因ではありませんが、入力と再生の要はオーディオインターフェイスです。例えば入力ゲインが低すぎるとオーディオインターフェイスの能力が発揮できないので、適切なゲインに設定する必要があります。
ゲインの設定として一例ですが、サビで一番大きくなったときにヘッドルーム(ミキサーのピークがつくまでのスペース)が3dBくらい確保されていればそこまで問題にはなりません。
例えばコンデンサーマイクを使ったボーカルレコーディング時にはポップガードを使用します。このポップガードは種類によって若干音質が変化します。しかし、大切なのはマイクと適切な距離です。マイクは距離によってまったくと言っていいほど音質が変わります。
「基本的には近づくと低音が増える」
これを念頭において距離を考える必要があります。ポップガードとマイクの距離については以下の記事が参考になります。
コンプレッサープラグインの設定を見直す
コンプレッサーは音を圧縮するプラグインですが、設定によっては、音がこもる原因にもなります。
ボーカルを良くしようとコンプやイコライザー、リバーブを多様することがあります。しかし、あくまでそれらはより良くするためのもので「悪いを良いものにする」というわけではありません。
コンプの使い方はに関しては星の数ほどあります。ですが、まず基本的な使い方として「スレッショルドで3dB程度の圧縮を意識する」これが音がこもらない基本的な方法です。
つまり深くかけすぎない、音像を潰しすぎないということを目的とした数値が-3dBの圧縮というわけです。
これさえ守ればコンプのプリセットを使っても音が破綻するようなことをさけることができます。
「音が抜けない」この問題はDTMの永遠の課題と言えます。音が抜ければ楽器の輪郭がはっきりして聞きやすくわかりやすい音楽になります。しかし、その対策はEQでなんとかする。コンプでなんとかするという話からアレンジレベルでなんとかするまで多岐に渡ります。
しかしそれよりも前に、もっと簡単に「こもりを解消」することができます。それは音色を見直し省ける音を省くということです。
「音色を見直すってどういうこと?」ちょっと難しそうなイメージがあるかもしれませんが、大丈夫です。理屈を知ってしまえば「なんだそんなことか?」と思えるレベルのことです。これを理解するコツは「その音色がどんな周波数帯域を持っているか」ということを考えることです。これを理解できればEQの使い方も今までと別次元で扱えるようになります。
知っておきたいイコライザー6dBブーストの意味
イコライザーでブーストカットの単位はdBを使います。このデシベルですが、数値以上の意味があることを理解しておく必要があります。音量の世界では6dBブーストすると音量が2倍になります。
音 声 研 究 に お け る ピ ッ トフ ォー ル-デ シベ ル 表1 音圧の倍率(何 倍になったか)とSPL(dB) の増加値 との関係(概 算値)より
明確で効果的な意図もないままイコライザーで6dBブーストすれば、音のかぶりはさらに大きくなります。こもる原因としてこの部分も知っておくほうがよいでしょう。
まとめ
音がこもっている!と感じたときは高音域のブーストよりもとにかく中低音域の改善です!これだけでおとのこもりの6割は解消されます。
また、それ以前にマイクのセッティングや部屋の響きなどを考慮することで、お金をかけなくても良い音で録音しできます。その結果配信を聴いてくれている人から良い反応がもらえるようになるでしょう。