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DTM SYNTHWAVE(シンセウェイヴ)の作り方と考え方

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シンセウェイブを作ってみたいと思っているDTMerが増えています。高い音源を必要としなくても手軽に作れるジャンルでもあります。しかし作ってみるとわかるのですが、かなり奥深いジャンルであることがわかります。今日はそのシンセウェイブの奥深さと80’Sのサウンドの方向性が考えながらよりかっこいいシンセウェイブの作り方について解説してみたいと思います。

UG
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シンセウェイブとは

“音楽ライターの四方宏明によれば、シンセウェイヴでは「サウンドだけではなく、コンセプトとヴィジュアルにおいて、80年代カルチャー(映画、ドラマ、アニメ、ゲーム、ファッション、グラフィックなど)へのノスタルジー的引用」がおこなわれるという。

音楽的には、シンセウェイヴは1980年代の映画、ビデオゲーム、カートゥーンなどから強い影響を受けている。このほかには、ジョン・カーペンター、ヴァンゲリス、タンジェリン・ドリームなどからの影響もある。

ミュージシャンのPerturbator(James Kentのソロプロジェクト)によれば、シンセウェイヴは基本的にインストであり、1980年代風の常套句が含まれていることが多い。例えば、電子ドラム、ゲート・リヴァーブ(英語版)、アナログ・シンセサイザーで鳴らしたベースラインやリードなどが、当時の曲を模倣するために使われる。”

引用:シンセウェイヴ – Wikipedia

とあります。

現在進行形で様々な解釈によって広がりを見せているSYNTHWAVE、僕自身が愛して止まない理由として、もちろん大好きなヴィンテージシンセサイザーがふんだんに使われている事もあるのですが、それ以上に、格好悪いくらいにストレートな少年の憧れや夢のようなワクワク感が詰まったカルチャーであること。

皆が巧みな変化球で三振を取り続ける中、ひたすら170km/hのストレートを投げようとしてくるような無骨さが僕の心を掴んで離さないわけなのです。

引用:日本ではあまり耳にする事のないムーブメント、SYNTHWAVE(シンセウェイヴ)とは

こちらの記事でシンセウェイブに関して国内外のシンセウェイブの考察記事をまとめているのでとても参考になります。

その中で引用記事にもあるように「カッコ悪いくらいにストレートな少年の憧れや夢のようなワクワク感が詰まったカルチャー」という言葉に強く賛同しました。今の方がものも技術溢れているのでどことなく閉塞感がある世の中で80’Sの雰囲気はとてもまぶしく映るような気がします。

その閉塞感を少しでも紛らわしたいと思ったサウンドクリエイターが見つけた1つの解答がシンセウェイブだったようにも思います。

シンセウェイブを作るときに大切にしたいこと

シンセウェイブの音色自体はリアルなサンプル音源を必要としません。DAWの付属のシンセでも十分に作れますし、ドラム音源などは良い意味でクオリティが低いざらついたもの方がしっくりきます。しかし、音色だけ似せても何か物足りない雰囲気になります。それは80年代のミックスの質感です。

個人的な主観もありますが、当時の音の特徴は次のような感じです。

  • ご機嫌で陽気な世界
  • 音の硬さ
  • 音の軽さ
  • ディストーションギターにコーラス
  • 抜けはあまり良くない
  • 派手なリバーブ

これらの要素を再現できればより当時の80年代サウンドに近づいて行くことが可能になります。

ただシンセウェイブは概念なので100%当時の質感を再現する必要はありません。当時の音色を今の解釈で扱うのも1つの楽しみ方だとは思っています。

ですが、80年代を生きた人間からすると、あのミックスから味わった「ドキドキ感やワクワク感」は再現したい要素です。

シンセウェイブの作り方について

シンセウェイブが主に使う音色は、シンセ系とドラムマシン、この2つは外せません。そこまでずはドラムマシンとリズムについて考えてみます。

楽曲のリズムと音色について

どのようなリズムにするかによって曲の方向性が決まります。シンセウェイブは8ビートから16ビートまでビートの制限はありません。ジャンルそのもの音色がシンセウェイブ系に置き換わったと考えるとよいでしょう。

1つ面白いと思ったのはスウィング系です。本来直線的なビートである8や16ビートを揺らすことでスウィングわけですが、機械を揺らしたところでやっぱり機械なんです。その揺らしているけど揺れてない。という無機質なスウィングもまたシンセウェイブのらしさであると私は考えています。

音色に関しては808や909といったアナログらしさあふれるものではなくPCM系サウンドがメインになります。これは時代的にも新しいものへの関心が高まりつつあるのがシンセウェイブの特徴であって「よりらしく」という目的に向かっていたように思います。今でこそ808や909の音の価値は誰もが認めるところですが、発売当時は「おもちゃみたいな音」と言われ評価されなかったことは有名です。

よりアタックがはっきりした。サウンドが好まれていました。

代表的なものはLinnDrum、SP12、シモンズ、などがよく聴かれるサウンドでした。

シンセサウンドについて

主にアナログシンセがメインに使われています。この時代のアナログシンセをレトロシンセ(音源)という呼び方をすることもあります。またDX7などのデジタルシンセサイザーも徐々に使われるようになります。

また大型のワークステーション、CMIフェアライトやWaveFrame の Audioframeなどのサンプリングによって生の楽器を使ったサウンdも使われるようになっていきますが、シンセウェイブという言葉からもサンプラーを多用したものはあまりシンセウェイブとしてみなしてもらえない空気感もあります。

ディストーションギターにコーラス

今ではほぼ見かけないディストーションギターにコーラスをかけるそのサウンドは80年代〜90年代の頭まで聴くことができました。まさに時代を彩ったサウンドの1つとも言えます。

シンセウェイブのミックスダウンについて

デジタルにはないアナログ特有の飽和感こそシンセウェイブ重要なファクターだと思います。そこから思ったのはクリアにしすぎないこと。本来ミックスはクリアであるべきですが、シンセウェイブに関してはクリアさはむしろ邪魔です。少しくらい汚れているくらいの方がいいです。

このことを踏まえながら上記の音の特徴を考えて音作りをしていきます。

音の軽さや硬さについて

基本的にローよりに音を作らない。当時はハイファイを求めていた時代です。このハイファイはすべての周波数がキレイにでるというよりは「高域の抜け」がその定義に当てはまる時代でもありました。リズムマシンではロービット/ローレートの音色は暖かい低音域より突き刺さる高音域でした。

それを再現するには、ドンシャリではなくトンシャリくらいのイメージで作るのが望ましいです。

派手なリバーブ

リバーブを深けることで派手さを追いかけようとしたのだと思います。しかし、デジタルリバーブであってもやはり音抜けが悪く、その質感が逆に個性となりました。

今回使った音源は後に紹介しますが、すでに作り込まれている要素もあったので、各トラックの処理はあまり行わずにバランスだけ取るようにしています。しかし、高域が痛い、抜けが良すぎる音源に関しては、ざっくりとハイカットしても良いでしょう。

基本このミックスはLogicProXに付属のエフェクトプラグインを使っていますが、2つだけサードパーティのものを使っています。

1つはトランスエミュレータのTrue Ironと80年代のリバーブを再現したJP-ME-1です。

トランスエミュレータに関してはもう本当に細やかな音質の差なので、別に無くても全然問題はありません。しかしJP-ME-1に関しては80年代のリバーブサウンドを再現できるので、今回のミックスでは重宝しました。

まず、当時の音の特徴は高域がでないため力技で高域を上げることで「シャリシャリ」した感じになってしまうという部分を再現するにあたって、マスターにフィルターをかけて高域をカットします。

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可能であればアナログフィルターを再現したプラグインの方がより質感がよいように思いますが、付属のフィルターでも大丈夫です。

次にTube系のイコライザーで音質を調整します。

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このあたりは好みのところではあります。LogicProXに付属のTubeEQはパルテックというTubeEQを再現しています。BOOSTとATTENというノブで周波数のカットとブーストを同時に行うのが特徴的なイコライザーです。ここで、Highを若干ブーストしながらもATTENで5〜6にして、高域を抑えます。これで80年代の独特の高域のサウンドを再現できます。

低域に関してはあまりブーストせずに3程度、LOW ATTENでも3〜4くらいにして低音を少しカットします。80年代のサウンドには派手な低域はなく、全体的に固く尖っているのが1つの特徴です。なので、少し低域をカットするくらいの方向で行くとより雰囲気あ近くなります。

最後はCompです。

画像

ガッツリと音圧がある時代ではないので、ピークを抑える程度の方がよいのですが、全体的にゆるくコンプがかかった方が全体のまとまり感があるのでここではOPTO系のコンプを使ってリダクションは-5dB程度を目安にコンプレッションします。

完成したものがこちら、マスターにコンプだけかけたものと、フィルターとTubeEQでトリートメントしたものを聴き比べてみます。

まずはコンプオンリーです。

続いて、フィルターとイコライザーでのトリートメントしたもの

良い意味でローファイ化しています。

音の広がりや音圧も大切ですが、それらを使わずに音に元気を出すミックスを心がけてみました。

このサウンドは私が子供の頃にテレビで聴いたサウンドをイメージしています。当然、音の解像度も悪く良い音ではないのですが、当時のワクワク感は再現できているように思います。

個人的にもうひと押しするならば、ここからカセットサウンドを再現するプラグインを使うことでよりらしくできるように思います。

シンセウェイブに特化した音源

今回の曲を作るに当たって使用した音源です。

UJAM vice beat maker

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80年代の古き良きドラムマシンサウンドに特化した音源でまさにSYNTHWAVE専用のリズム音源とも言えます。

他のドラムマシン音源やDAW付属のドラムマシン音源でもある程度再現できる部分もありますが、手軽にクオリティの高いサウンドを得られるのはUJAMの目指すところで、今回はとても活躍してくれました。

Arturia Analog Lab4

SYNTHWAVEは主にアナログシンセや80年代のデジタルシンセによって作られています。Arturia Analog Lab4はシンセウェイブのための音源ではありません、その用途は120%活かし切ることができる音源と言えます。

Arturia Analog Lab4 21,341円で販売されています。

Audio Plugins from Pluginboutique.com

ですが、今ならArturia Analog Lab4も収録したV COLLECTION7が50%セール中なので、そちらを購入したほうがお得です。

UVIの拡張音源にも古き良き80’Sシンセサイザーがたくさんあります。とくにvintage-vault-3は古今東西のシンセサイザーをサンプリングしたモンスター音源です。音作りより音選び!という人にはUVIの方が使い勝手がよいでしょう。

これらを使うときには基本キレイすぎる場合は汚す意味でのトリートメント処理が求められます。

まとめ

シンセウェイブは80’Sサウンドの再現でありながらもそこに現代的なアプローチを入れることで個性化できる楽しいジャンルです。今回は当時のミックスの質感に拘ってみましたが、もちろん現代的にするのもありです。

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